「それで、『あの超重力砲』はなんだ?」
と『白鯨』のCIC内で艦長が聞くと、ハクが
「あの超重力砲の波長及び重力波は、『霧の欧州艦隊』の一艦である『レパルス』の兵装である『拡散重力砲』と呼ばれる兵器です」
「拡散重力砲?」
「はい、通常の霧の重巡洋艦以上のクラスには、重力砲が装備されていますが、その重力砲には、幾つかの艦にはその重力砲の機構を応用したサブタイプが搭載されています。多分あの兵器は、超重力波動を線ではなく面での制圧を目的の兵器です」
「そうか。その重力砲と言うものは他にもサブタイプが存在すると言う事か」
「はい、現在の所、誘導式、超長距離狙撃式などが確認されています」
「なるほど、では、今の攻撃で撃破した数は?」
「はい、およそ300発の完全消滅を確認。ただ未だに200発が健在です。なお、我々の『DH砲』はいつでも発射可能です」
「了解した。武器管制員!『DH砲』照準補正が直ちに発射せよ」
「了解!直ちに補正に掛かります。管制員現在までの最新情報を送ってくれ。頼むぞ」
「分かりました。速やかに再計算後補正します。 ...補正終わりました」
「早かったな。まあいい速やかに発射せよ」
「「「了解」」」
そして、照準補正された情報は速やかに『白鯨』の上甲板にせり上がった『DH砲』に送られ、砲塔がスムーズに旋回後固定され、砲身が上方にせり上がり固定された。
「ターゲット視認。最終安全装置解除。発射タイミングを艦長に譲渡します。お願いします」
その時、艦長席の肘掛の中からトリガーがせり出した。
「了解した。トリガーを引き受けた。艦長用最終暗号入力完了」
と艦長席の専用モニターに暗号を入力後、専用モニターの横から2つの鍵穴とカード式の取り入れ口が出てきた。
そのことを確認した艦長は、服装の裏ポケットからプラスチックに包まれた薄い板を取り出し、躊躇なくそれを二つに割り、中からカードを取り出しそれをカード用の取り入れ口にいれた後、首に掛けていたチェーンを引っ張り出し、其れに取付けていた複製不可能の特殊キーを手に持ち、
「それでは、ハクさんお願いします」
「分かりました。それでは」
と言った後、手の平を開き、其処から淡い光を放ち、キーを精製した。
そして、艦長とハクさんが鍵穴の前に並び立ち
「「3.2.1.今」」
と同時に鍵穴にキーを差し込んだ。
そして、艦長席の肘掛から出て来てトリガーの固定ロックが解除され、其れを艦長がもち、数回引き金を引いた後、トリガー上部の赤ランプが、緑ランプになり
「これが、この世界が良い方向に変わることを信じて」
と呟くように力強く引き金を引いた。
その瞬間、『DH砲』の砲口部が光り出しマイクロプラズマエネルギーが砲口部最後尾の一点に収束し始め、それが球体状に変化し放出された。それは瞬く間に極超音速に加速し、目標地点に向かって行った。丁度その頃、目標地点に幾つかの弾道弾が通過がしてしまったが、まだ多数が残っていたが、そのど真ん中を超高速で打ち出された球状のエネルギーが飛翔し、着弾点誤差なくそのエネルギーを解放した。
そして、そのエネルギーを一気に解放した瞬間、空間湾曲が発生し、超絶した重力がその湾曲空間に発生し、ブラックホールを形成し、その超重力に吸い込まれる様に今まで直線に向かって行った弾道弾が軌道を強制的に変えられてブラックホールの中に消えていった。また、一部の弾道弾同士が重力波の影響で衝突し爆発したが、そのエネルギーは瞬く間にブラックホールに飲み込まれた。
その現象は、約1分半の現象だったが、現時点でもう2分以上その現象が続いており、『白鯨』艦内では、艦長が次の指示を出した。
「やはりこういう事態に成ってしまったか。仕方がない『プランθ(シータ)』に移行する。甲板VLS展開!弾種対空間用特殊弾頭用意!準備出来次第発射!」
「了解」
『プランθ』とは
『DH砲』後の空間影響が残った場合に備えたプランであり、緊急性の高い場合のみプランの開示が許可される。
そして、その特殊弾頭を取り付けたミサイルが4発同時に『白鯨』の上部甲板VLSから白煙を上げ飛翔した。そして其のまま『DH砲』の効果が残っているブラックホールの周囲に向かい、それぞれの方向に向かった弾頭がほぼ同時に信管を炸裂させ、その効果を最大限に現出させた。
その効果とは、現時点では、我々の科学力一つでは到底到達できず、『霧の艦隊』出現によって、その弾頭とそれに関連する『DH砲』が共同開発によりセットで完成したが、その代わりに莫大な開発費が必要の為限定生産かつ極秘裏に日本国が非常時且つ緊急時のみの使用に限り装備していった。
その名は、『特39式対空間弾 リージョン・リストリクター弾頭(通称『D・R弾』)』
「『D・R弾』効果確認。現在、急速強制空間安定中。修復完了まで残り30秒。現在まで空間の突発的異常は検知されていません」
「了解した。なお、空間修復後、急速潜行に移行し、対ソナー・レーダー妨害爆雷後部発射管から散布と同時にアクティブデコイも同時射出後、ステルス航行を以て、この海域から離脱する」
今迄の一連の光景を少し離れた海域で見ていた『霧の艦隊』の三艦(レパルス・ヴァンパイア・マヤ)の内の旗艦であるレパルスの艦橋内の大型モニターで見ていたマクレーンが口を開いた。
「恐ろしいな。流石に肝が冷えたぞ。まさかあれほどの高威力の戦略兵器を作り出すとわ。いやはやメイドインジャパン侮りがたし、か。土台技術が少しでもあればそれを発展拡大応用が出来る人材技術が日本は豊富だな。やはり先の大戦で活躍した事はあるな」
と呟いていると、隣にいたレパルスが、
「如何しますか?このまま追跡しますかご主人様」
と聞いてみると、マクレーンは、
「いやこの辺りで良しで良いだろう。余り追撃していると意外と強烈で痛いしっぺ返しが起きると思うし、それに多分、あちらさんも馬鹿じゃないだろう」
と言った時レパルスが、
「アクティブデコイ反応感知。追尾用ソナーが妨害されました」
「了解した。なら、戻るか。後ろの二艦にも概念伝達で『速やかに回頭せよ。最大船速を以て、ハワイオアフ島に帰還する』と」
その通信が終わった後、速やかに三艦がぐるりと回頭し、ハワイに向けて進行方向を変えた。
海上の騒がしさの一方、その頃、その海域の海底辺では、一艦と一人が其処に居た。
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今年最後です。感想とか欲しいな