【一刀】「ここは・・・どこだ・・・。」
ゆっくりと辺りを見回す。
一言でいうなら、闇。
一切の存在を否定するような、漆黒の景色。
混乱する頭でひとつの答えをだす。
ここは成都ではない。
悪夢から覚めるような錯覚に陥る。
違う。
こっちが悪夢なのだ。
そう言い聞かせる。
視線を定めることもできず、後ろへよろめく。
そこではじめて気づく。
俺は今、立っているのだと。
自分の足元すら見えない世界の中で理解できるものを探す。
【???】「・・・・・。」
少しずつ冷静さを取り戻す中で、気配があることに気づく。
【一刀】「誰・・・だ?」
【干吉】「そういえば、まだ名乗っていませんでしたね。・・・わが名は干吉。」
聞き覚えのある声だった。
この声はあのときの―
【干吉】「貴方をここへ連れてきた者ですよ。」
俺が答えを出す前に突きつけられた。
【一刀】「これは・・・どういうことだ」
そう口にしていた。無意識に今一番求めている疑問を。
【干吉】「そうですね・・・。結論から言うと、さきほど壊した世界。あれは私と左慈・・・私とともにいた彼で作り上げたものです。」
【一刀】「作った・・・?」
【干吉】「ええ。貴方が先日までいた世界。それを模倣して作ってみたのですが・・・・やはり他人のものを作るというのは不安定すぎるようですね。1日持たせるのが限界でした。」
何を・・・言っている?
【干吉】「我々が外史と呼ぶ世界。それは様々な形を持ち、統一性など皆無に等しいものですが、ひとつだけ揺ぎ無く等しいことがある。」
俺の動揺を無視して、干吉は続ける。
【干吉】「必ずしも、それらは正史・・・貴方の世界より誰かが生み出したものということ。」
理解できる要素がひとつも無い。ただ・・・聞くしかなかった。
【干吉】「それが外史。人の手によって生み出され、その者の手によって終わらされる世界」
【一刀】「がい・・・し・・・」
【干吉】「そして、あの三国志を改変した世界。あれは貴方が生み出した外史なんですよ。北郷一刀。」
【一刀】「俺が生み出した外史・・・」
いや、理解は・・・・していた。
たしかにあの瞬間、俺は知った。
ここは・・・
【干吉】「あそこは・・・終端をむかえるはずだった。」
【一刀】「・・・・・だった?」
干吉の雰囲気がかわった。
冷徹なものからどこか悲哀のこめられたものに。
――――あの外史は・・・膨らみすぎたんですよ――――。
―――カリカリ
部屋で日常の政務を進める。
少し、頭が疲れ始めるところで顔を窓へ向ける。
窓から外を眺める。
今の気分に対して嫌味なほど晴れ渡った空。
【華琳】「ふぅ・・・」
あいつがいなくなって、どのくらいだろう。
はじめこそ魏の上層部はかつて無いほど混乱した。
それでも、今ではなんとか平常を取り戻しつつあった。
3国での大陸平定も昔ほど否定するものではなくなっている。
―――コンコン。
【華琳】「・・・・っ!」
【秋蘭】「華琳様、そろそろ時間ですが。」
まったく。
【華琳】「ええ。すぐにむかうと伝えてちょうだい。」
【秋蘭】「御意」
吹っ切れたつもりだったのに。
少しでも片鱗を見ると期待してしまう。
でも
【華琳】「こんなところ、死んでも見せられないわね。」
扉を開き、広間へ向かう。
―――――――――――。
会議は進んでいく。
軍儀が会議となった。それだけのことだけど、それはやはり戦のない世を作り上げた証。
【華琳】「それで治安のほうは?」
【凪】「問題ありません。小さなものはいくつかあがっておりますが、対処の簡単なものばかりなので大丈夫かと。」
一刀の後任には凪がついている。その補佐として沙和と真桜が。
当然といえば当然の人事。
【華琳】「そう。その調子で引き続き警備のほうは任せるわね。」
【凪】「は!」
なにより以前のようにここへ来ても緊張しなくなったのは大きい。
【桂花】「華琳様、他に議題がなければこれで会議を終了しようとおもいますが。」
【華琳】「ええ、そうね。お願い」
【春蘭】「では、これにて本日の会議を終了する!」
広間を出て、離れへと続く通路の途中。
以前はよくここで出くわした。
・・・・さて
【華琳】「いつもどおり出来たつもりだけど」
秋蘭あたりには気づかれたかもしれない。
会議中にもこちらをチラチラと見ていたけれど。
あれから、不定期ではあるが
周期的に感情の波がぶりかえす。
これではほとんど病気だ。
【華琳】「・・・・・・あまり考えたくもないわね。」
あろうことか、魏の覇王とも呼ばれる者が。
わかっているのだ。
考えたところで、それが呼ぶのは思考のループ。
でも、
きっかけがどれほど小さいものであろうと、
堰を切ったようにあふれてくる。
駄目だとわかっていてもはまってしまう。
敵を屠る術ならいくらでも知っている。
国を支える知恵だってある。
王としての器も誰かに劣るとは考えたこともない。
なのにとまらない。
――ずっと・・・側にいなさい・・・――
――そうしたいけど、もう・・・無理かな・・・
俺の役目は・・・・・これで終わりだろうから――
だめ
とまらない
あの瞬間に逆行したように
溢れてくる。
せめて、見られるわけにはいかない。
覇王としての最後の抵抗をつづけ、部屋へ戻る。
扉を開き、そのまま後ろ手で閉める。
――――――――。
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真・恋姫無双(魏ED)後のASです。
ようやく、華琳登場です。
でも今回も短いです;;
すみません(´・ω・`)
それから、しばらく一刀主観で行くといいつつ、いきなり華琳視点がでてます。そこらへんもすいません(´・ω・`)
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