玉座にて臨禅や宗閑の敗走の報告を受けた焔王と側近は表情一つ変えることなく、むしろ予想通りと言わんばかりに様子で報告を聞いていた。
「思った通りと言ったところか…恐らく、敗走の責を重臣になすりつけるつもりだろう。こちらも動いておいて正解だったな…それで、魏の様子はどうだ?」
「未だありませんが、領内では食料を集めたり兵を配置したりと準備だけは行っているようで、しばらくはこちらに仕掛けてくる事はないかと…」
「そうか…分かった、下がれ」
焔王は報告に来た兵士を王の間から退室させてから、少し考え込むような仕草を見せる。
「恐らく臨禅達はすぐにでも戻って来るだろう。臨禅達が戻るまでにはなんとか重臣を領内から出しておかねばならんな。」
「では、すぐにでも私が予定通りに焔王様の書状を持って魏に使者として向かいます。その後は魏に滞在しつつ、当初の計画通りに進めていきます。そして蜀の援軍や呉の援軍に関しても、既に魏にかなり近づいているようなので使者を送り、こちらの手の内を明かすと言うことでよろしいでしょうか?」
「それで構わん…では、すぐに魏に向かってくれ。それともう男の恰好をするのは止めて良いぞ。魏に着いてからは本来の名である楼音として振舞うんだ…真名を使うのは抵抗があるかも知れんが…頼むぞ…」
楼音の前に歩み寄って肩の上に手を乗せて微笑みかける焔王に対して、楼音は涙を浮かべながら焔王に抱きついていた。
「どうかご無事で…」
「お前もな…また会おう。さぁ…行け!」
焔王にそう言われて楼音は駆け出して行った。
魏では偵察を任された天和達が華琳に報告をするために戻って来ていた。
「良く戻ったわね。では、偵察に行って得た成果を教えてちょうだい。」
「え~~っと…なんか、やる気ないみたい」
華琳だけでなく、その場に居た桂花や琉々、凪達まで「は?」といった表情で呆然としていた。
そこへ人和が割って入り…
「やっぱり、そうなりますよね…私から話しますと、敵兵から話を聞いたところ誰かを待っているみたいでそれまで動く事はないと言う事です。今回の進軍も魏への侵攻が目当てではないような話もしていました。」
「そうなのよ~だから、あたしたちが見つかった時は殺されるかと思ったけど、むしろ大歓迎!って言う感じで迎え入れられたよね~なんか、すべては待ち人が来れば分かると思うみたいな事も言ってたしね~」
人和と地和の話を聞いてなんとか全員が大方の話を理解することが出来たが、なぜか天和だけは不満そうにしていた。
「2人の話が確かなら、こちらからわざわざ仕掛ける事もないわね。」
「はい。それと先程、風達から伝令が届き蜀から翠殿や呉から蓮華殿が援軍に来て敵を退けたとのことです。蜀と呉の本隊が2,3日後にもこちらへ到着するだろうと言う事でした。敵に援軍などの動きが無ければ風と稟、そして蜀の蒲公英と翠が砦に残って、あとは最低限の兵を残しておき、春蘭たちはこちらに帰還している途中とのことです。」
「そう…とりあえず当面は心配なさそうね。でも、待ち人って誰の事なのかしら…?」
「それは敵の都合ですから…ですが、仕掛けるのは危険です。罠の可能性もあります。」
「そうね。今は無理をすることはないわね。」
仕掛けるべきかを悩んでいた華琳は桂花の指摘を受けて無理をしないことを決めて一刀達を待つことにした。
その頃の一刀達は桃香率いる一刀を含めた蜀軍が華琳たちのもとへ向けて、最後の休憩をとっていた。
「この調子ならあと1日半ほどで魏に着きそうですね。こんな方法を思い付くとは…さすがご主人様です!」
「ホント、さすが私の夫ね~これも私たちの日頃の修練のたまものね。当然、夜の修練も含めてね♪」
「な、何を言って…!!」
愛紗にとっては聞き捨てならない言葉が聞こえてきたので、声のする方へと向いてみると雪蓮率いる呉軍が少し遅れて到着していて、ここに2つの軍勢は合流することに成功していた。
「まぁ、雪蓮の事は放っておいて私から伝えたい事があるのだが話しても良いか?」
雪蓮のあからさまに不満そうな表情を無視して冥琳が割って入って話し始める。
「まず、蓮華様とそちらの翠殿の援軍はなんとか間に合ったようだ。敵が撤退したと言う報告が入っているが、問題は敵軍の本隊と思われる軍勢が撤退とほぼ同時刻に進軍を始めて魏の領地の目前に陣を張っているらしい」
「う~ん、何が目的なのかしらね~どうする?桃香?」
「そうですね。すぐに出発して早く華琳さんのところに行きましょう!頑張れば今日中に着くはずです!」
その場にいた全員が「えぇ~」と言わんばかりの表情で桃香を見ていたが、すぐに事態は急転することになった。
一刀がこれからの事を全員で話し合っている時に1人の兵士が駆け込んできたのだ。
「ろ、絽漢の使者を名乗る者が御遣い様にお会いしたいと言って、こちらに来ています!」
「分かった。連れてきていいよ。」
一刀がそう答えると兵士が1人の男を連れて来てた。その男は浪人の様な姿をしていたが、身体の動きなどから相当の鍛錬をしている兵士と言うのはその場にいた全員に容易に理解できた。
「天の御遣い様とお見受けします。私は絽漢の焔王様より書状やお伝えしたい事があり、ここに参りました。」
使者が一刀に書状を手渡し、一刀がそれをじっくりと読んでいく。
「ご主人様…なにが書かれていたの?」
「簡単に言うと少なくとも敵の…つまり絽漢の焔王と言う人はこちらと争うつもりはないみたいだな。むしろ助けて欲しいって言ってるように感じるかな…」
「そうです。魏に向かっている軍は焔王様の直属であり、戦闘の意思は一切ございません。焔王様からの伝言は可能であれば、その軍を保護して欲しい事と絽漢の中に巣くう反逆者の討伐に手を貸してほしいと…」
書状には絽漢にいる臨禅と言う反逆者が魏などへの侵攻をして失敗することで焔王を失脚させて、焔王の首を取ったうえでその代わりに臨禅自身が王位に着き、その後は三国に侵攻を始めかねないと言った事が簡潔に書かれていた。
「なるほどね~内容の真偽はともかくとして桃香が言ってたように急いだ方が良いかもしれないわね。で、どうするの?一刀?」
雪蓮の問いに一刀はしばし考えるような仕草を見せて…
「すぐに華琳のところへ出発しよう!運が良ければ、みんながいるかもしれないし魏に向かってる絽漢の使者も着いてるかもしれない!」
一刀の言葉を聞いていた全員が出発の準備を始めるべく、それぞれ動き始めた。
そのうえで絽漢の使者として一刀達のもとを訪れた兵士に道案内をすることを依頼して、兵士はそれを快く受け入れた。
そして、一刀と桃香、雪蓮達は華琳のもとに向かって凄まじい勢いで向かって行った。
それから、数時間たった魏では華琳のともに一刀達が動き始めた事と春蘭たちが到着した事が知らされていた。
「霞!春蘭!さっき帰還してる途中って報告を受けたのにもう帰って来たの!?」
数時間前に報告を聞いたばかりにもかかわらず、1日かかる道のりをたった数時間で帰ってきた華琳は2人の姿を見て驚いていた。
「し、霞がなんとなく早く戻った方が良いと言い出しまして…事後処理を風達に任せて2人で飲まず食わずの休みなしで馬で走らせてこの通りなんとか…」
「や、やればできるもんやろ…?」
2人は言葉の通り馬を飛ばしてきたせいか、疲れ果てているのが華琳や桂花には見て分かった。
「知ってるとは思うけど、敵が目前まで進攻しているにもかかわらず…誰かを待っているみたいなの。おそらくこちらに仕掛けてくる可能性は低いけど、無いとは言い切れないから今の内に休んでおきなさい。」
「ほんならそうさせてもらうわ~さすがに疲れたわ~」
華琳からの許しが出たのを受けて春蘭と霞は自室へと戻りしばしの休息を取ることとした。
そこへ入れ替わるように桂花が入って来て華琳へと報告を始めた。
「大変です。華琳様!!絽漢の使者と言う者が華琳様に面会を求めております!」
「なんですって!!このタイミングで…待ち人が来たからという事なのかしら…良いわ。連れてきなさい。」
そして、華琳のもとへと楼音と重臣が来たことで事態は大きく動き始める。
あとがき
ここまで読んでくれてありがとうございます!
最近ハロワに行っても検索で終わり家に帰ってくるダメ人間でございます。しかもハロワに行くのは週に1回…おかげで構想を練る時間だけは嫌と言うほどあります。
けれども、書くペースが追いつかないです…申し訳ないです
現在は長編ともうキャラ別を書こうと思っているのですが、どの作品から書こうかものすごく迷ってます。
天下御免にするか、つよきすにするか…別の作品にするか…
ちなみにですが、次からは2828爆弾を投げ込んでいく予定なので~どれくらい2828爆弾を放るのかは出来てからのお楽しみと言うことで~!
それでは、次も宜しくお願いいたします。
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第伍話を掲載させていただきます。
書いてる本人が完全に頭が混乱してきて、整理していかないと自分でも理解できない状態になりつつあり、これからの展開も考えるという二重苦から未だに抜け出せていません。
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