No.729528

魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第百三十一話 海鳴に現れた来訪者達

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2014-10-12 12:52:03 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:18418   閲覧ユーザー数:15563

 「どうだったかね?ダイブゲームの感想は…」

 

 「何ていうか……」

 

 昨日、俺はダイブゲームを使用した事についてお隣さんのジェレミアに報告しに来ていた。

 結果を早く知りたがっているジェレミアの瞳はキラキラと輝いている。……ついでに頭部もピカピカと輝いている。

 それから誰の夢を覗いたのかと、夢の内容を大まかにだが説明した。

 

 「……ふむ……物理的干渉は出来ない。まあこれは当然だね。ダイブゲームはあくまで『他人の夢を見る』だけの機器だからね」

 

 「色々ツッコんだ上ハリセンで叩こうとしたけど、全て空振りに終わったんだよなぁ…」

 

 幽霊相手にツッコミしてたみたいだったよ。

 

 「だが君がそこまで夢に干渉したいと言うなら、その願いを叶えてみせようじゃないか。早速グランツ君と討議してダイブゲームを改良せねば!」

 

 「え?いや、別に干渉したいとまでは言ってな……」

 

 俺の言葉を最後まで聞かず、ジェレミアがダイブゲームを抱えて部屋を出る。

 

 「……申し訳ありません。ああなったドクターはしばらくは周りに目をやる事は無いと思いますので」

 

 「いや、ウーノさんが謝る事無いッスよ」

 

 アレのマッドっぷりはちゃんと理解してますから。

 

 「そう言って貰えると助かるわ。……ところで」

 

 「???」

 

 「勇紀君を含め、他の子達の夢は見なかったの?」

 

 「あー…設定した3日以内の間、俺は夢を見ませんでしたし、ルーテシアとジークも見てない様なので」

 

 あの後は、すぐに現実世界に戻ってきたんだよなぁ。

 夕食の準備を終えたメガーヌさんに『ここ3日以内に夢見ました?』って聞いたら顔を真っ赤にして視線を逸らされた。

 その様を見たクイントさんがニヤニヤして

 

 『メガーヌ、アンタ子供には言えない様なエロい夢見たんでしょ?』

 

 なんてからかいながら指摘をしてたなぁ。

 その後メガーヌさんは物凄い勢いで否定してたけど、あの顔の赤らめ方はクイントさんの指摘通りだったんだろうなぁ。

 …まあ、深く詮索はしないでおこう。

 

 「えーっと…もう話は済んだのかな?」

 

 そんな俺とウーノさんのいるリビングにヒョコッと現れたのはディエチだ。

 

 「おう、丁度時間も良い頃合いだしそろそろ行くか?」

 

 「オッケー♪」

 

 今日ゴットバルト家に寄ったのはジェレミアにダイブゲームの感想、報告をする事と、ディエチと一緒に夕食の買い物に行く約束をしてたからだ。

 ゴットバルト家の家事担当は主にウーノさんとディエチが受け持っており、買い物もよくこの2人と一緒に行く事がある。

 後は反対のお隣さん…アミタも加わる事が多いな。

 

 「ディエチ、今日の夕食の献立は?」

 

 「うーん…ウェンディが『無性に豚キムチが食いたいッス!』とか言ってたからその願いを叶えてあげようかなぁと思ってるんだけど…」

 

 「豚キムチ……なら豚肉を買うのはスーパーじゃなく商店街の肉屋にしなさい。今日はタイムサービスとか無かった筈ですから。売っている肉の質ならばスーパーよりも商店街の方が断然良いです」

 

 「了解~♪」

 

 そっか、今日はタイムサービス無いのか。じゃあ俺も商店街で買い物を済まそう。

 ウチの夕食は何にしようかなぁ?

 

 

 

 2日後…。

 

 「ふはははは!!勇紀君、君の要望通りに夢の中の世界に干渉出来る様、グランツ君と共に改造を行ったよ」

 

 学校から帰宅した俺はすぐにゴットバルト家に来ていた。

 お呼び出しがかかったからもしやとは思ったが、もう改造し終えたのか。

 流石は天才。

 けど、俺は別にお前に頼んではいないからな。

 

 「見た目はあんまり変わってないねー」

 

 「せやけど見るだけやなくて(ウチ)等も干渉出来るってのは面白そうやなぁ」

 

 俺と一緒に着いて来たルーテシアとジークは改良されたダイブゲームを見ている。

 

 「これで私も夢の中でエヴァに乗れるのね♪」

 

 「俺も斬艦刀を振れるのだな」

 

 …おい、そこの大人2人。

 

 「おや?ゼスト・グランカイツ…それにクイント・ナカジマではないか。いつ我が家に来たのかね?」

 

 「たった今よ」

 

 「うむ」

 

 …インターホンとか鳴らしてないですよね?

 

 「無許可で入ってきたら不法侵入なのだが…まあ良い。私は細かい事には拘らないのでね」

 

 寛容だねぇ。

 

 ピンポーン

 

 「誰か来たのかな?」

 

 セインが首を傾げながらも玄関の方へ向かう。

 少ししてセインがリビングに戻ってきて、セインの後ろからはメガーヌさんの姿があった。

 

 「お邪魔するわね。いきなり隊長とクイントが家をすっ飛んで出て行ったからもしやと思ったのだけれど…」

 

 お探しの2人の姿を見て溜め息を吐く。

 

 「ほほぅ、メガーヌ・アルピーノまで。君達はかなりダイブゲームにハマっていると推察する」

 

 「私はクイントと隊長を連れ戻しに来たんだけど…」

 

 「うむうむ。こうも人気があると製作者の1人としては感無量だよ」

 

 「…聞いてないわね」

 

 「ああ言う時のドクターは何言っても聞き流してるからねぇ」

 

 何度も首を振ってうんうんと言ってるジェイルを見てメガーヌさんはまた溜め息。セインは苦笑い。

 

 「では早速起動しようではないか!!ポチッとな」

 

 ちょ!?

 俺が止める間もなく、いきなりジェレミアが起動させる。

 

 ヴヴヴヴヴヴ…

 

 机の上でダイブゲームが震え始める。

 前回の時はこんな振動機能無かった筈なんだが…。

 

 ガタガタガタガタ…

 

 「…何か震えが激しくなってないか?」

 

 「激しいねぇ」

 

 バチバチバチバチ…

 

 「…火花散ってるよな?」

 

 「散ってるねぇ」

 

 ブスブスブスブス…

 

 「…煙が出てないか?」

 

 「出てるねぇ」

 

 「いや!!止めろよ!!明らかにコレはヤバいだろ!?」

 

 眺めてる場合じゃないって!!

 俺が指摘してジェレミアがダイブゲームを止めようとするが、ダイブゲームから視界を埋め尽くす様な強烈な閃光が放たれ

 

 「(マズい!!)」

 

 俺が結界を張って現実空間からゴットバルト家を含む周囲一帯を切り離し、障壁を展開するのとダイブゲームが爆発するのはほぼ同時だった。

 

 「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!」

 

 ダイブゲームの爆発に巻き込まれたジェレミアが悲鳴を上げる。他の者は皆、自分で障壁を張って直撃を防ぎ、セインは障壁を張った俺の背後に回って爆発をやり過ごしていた。

 

 「な、何だ!?敵襲か!?」

 

 「地震!?今のって地震!?」

 

 ドタドタと荒々しくリビングに駆け込んできたのはチンクとノーヴェ。

 

 「もう~、何ですか今の音は~?私、明後日生徒にやらせる小テストの作成で忙しいんですけどぉ…」

 

 続いてクアットロ。

 更にはウーノさん、トーレさん、ディエチとウェンディ。

 ジェレミア一家大集合である。

 しかし室内が煙に包まれて一切周りが見えなくなっている。

 

 「窓!誰か早く窓開けて!!」

 

 ガチャッ!!

 

 誰かが窓の鍵を外した様だ。

 すぐさま窓を開け、室内からしばらく煙が晴れるのを待つ。

 やがて視界が徐々にクリアになっていき、完全に煙が晴れた時に見たのは

 

 「……………………」

 

 爆風で壁際まで吹き飛ばされ、頭を打ってノビていたジェレミアと

 

 「「「「きゅううぅぅぅぅぅ……」」」」

 

 これまた1人の少年、金髪の少女、オレンジ髪の女性、銀髪の女性の4人が目を回して倒れていた(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)………。

 

 

 

 ~~???視点~~

 

 「……知らない天井だ」

 

 目が覚めた人間のほとんどが言うであろう台詞を俺も呟く。

 上半身をゆっくりと起こして辺りを見回すが

 

 「うーん……誰かの家……か?」

 

 見た所は一般人が住む様な部屋の個室。

 ただ机の上には紙の束が山の様に置かれている。

 

 「しかし何で俺は他人の家で寝てるんでしょうかね?」

 

 確か俺はクロノに頼まれ、フェイト、アルフ、リインと共にとあるロストロギアの回収をしようとしてた筈。

 んで目的の(ブツ)を確保しようとしたらいきなりロストロギアが起動してそれから……

 

 「っ!!フェイトは!?アルフは!?リインは!?」

 

 俺はすぐさま他の3人がここにいない事に気付く。

 まさか、あの衝撃を受けた時にはぐれたのか!?

 だとしたらこんな所でのんびりしてヒマは無い!

 ベッドから勢いよく飛び下り、部屋の出入口であるドアノブを掴んだ瞬間

 

 ガチャッ

 

 向こう側から扉が開けられ

 

 ゴンッ!

 

 「ぐべっ!!」

 

 モロに俺のおでこと扉がごっつんこした。

 

 「む?今変な声が聞こえた様な…」

 

 部屋に入って来たらしい誰かさんの声。

 俺はおでこを抑えて蹲る。

 

 「おや?少年、そこで何をしているんだ?」

 

 「……何処ぞの誰かさんが開けた扉の角にでこをぶつけて蹲ってるんです」

 

 うぅっ…痛ぇよぉ…。

 

 「そうか、それは済まないな」

 

 「いえ…気にしないで下さい」

 

 痛みも徐々に引いてきた。

 俺がようやく顔を上げると、そこにいたのは俺と同じかちょい年上ぐらいの感じの見知らぬ銀髪の女の子がいた

 

 「それでもう大丈夫なのか?もし問題無い様なら私に着いて来て貰いたいのだが」

 

 「何処へッスか?」

 

 俺としちゃさっさとフェイト達を探さなきゃならんのだが…

 

 「すぐ下のリビングにだよ。君と一緒に現れた者達は君より早く意識を取り戻して下にいるからね」

 

 そうなのか。探す手間が省けてラッキーだなこりゃ。

 

 「オッケーです」

 

 「じゃあ行こうか。こっちだよ」

 

 女の子の後を着いて行き、部屋を出て階段を下りてすぐのところにリビングがあった。

 中に入ると室内全員の視線が俺達に集まる。

 

 「「「ゼン!!!」」」

 

 俺の姿を見て真っ先に呼び掛けてきたのは当然ながらフェイト、アルフ、リインだ。

 皆、すぐさま俺の側に寄ってくる。

 

 「大丈夫!?怪我とかしてない!?」

 

 「おう!!どこも問題無いぞ。ベストコンディションだ」

 

 フェイトの問いに答えるとアルフやリインもホッと息を吐いた。

 

 「それで…だ、ゼン。今私達がどういう状況に陥っているのかお前にも説明しておこうと思うんだが…」

 

 「頼むわリイン。ここにいる大勢の初対面な人達も関係してそうだし。あ、自己紹介が遅れました。自分、橘禅って言います」

 

 「ふむ…君の事はフェイト君達から聞いているよ橘禅君。私はジェレミア・ゴットバルトと言う。君達をこの世界に招いたかもしれない者だ」

 

 「はぁ…………は?」

 

 今サラリと爆弾発言しなかったかこのツルピカ頭の人は?

 

 「ふふふ!!凄いだろう?次元震を発生させる事無く別世界の住人を呼び寄せた私とグランツ君の技術力は?」

 

 胸を張って答えるツルピカさんだが

 

 「ウーノさん、これどうぞ」

 

 「ありがとう勇紀君。さて……自慢出来る事じゃないのに胸を張って満足気にならないで下さいドクター」

 

 ツルピカさんとは別の男の人が1人の女性にハリセンを渡し、間をおかずにツルピカさんの頭を叩く。

 てかあのハリセンはどこから出したんだ?

 

 「ぐぬ!!痛いじゃないかウーノ」

 

 「叩いたのが私で良かったと思って下さい。トーレやノーヴェなら今頃意識が飛んでますよ」

 

 「だがこのダイブゲームが別世界との干渉を可能にしたのだよ!?」

 

 「そもそもダイブゲームの本来の用途とは違うのですから、喜ぶべき事ではありません」

 

 「しかしだね…」

 

 「言い訳しない!!」

 

 今度は顔面にハリセンの一撃が叩き込まれる。

 良い音が鳴るなぁ。

 

 「……アッチは置いとくとして、話しを進めようか」

 

 ハリセンで叩かれまくってるツルピカさんを無視して会話を続ける事にしたみたいだ。

 異論は無いけどな。

 

 「では改めて。ゼン、私達が封印しようとした直前にロストロギアが起動した事は覚えているな?」

 

 「あー…あの妙な銅像なぁ……」

 

 「アレのせいで私達は飛ばされ、ここにいる訳だが…」

 

 …………???

 何だ?リインが言いにくそうにしてるんだが…。

 

 「良いかゼン。心して聞いてくれ」

 

 「お、おう…」

 

 ズイッと顔を近付けて言うリイン。

 そんなに顔を近付けられたらドキドキするじゃないッスか。

 

 「「……………………」」

 

 …何か2つの大きなプレッシャーを感じるが、気付かないフリしてリインの言葉の続きを待とう。

 

 「私達は……海鳴市に飛ばされたんだ」

 

 「うん………うん?」

 

 海鳴市?

 なら俺達は戻ってきちまったって事ッスかい?

 でもさっきツルピカさんは別世界がどうこうって言ってた様な…

 

 「正確に言うならば……私達の知ってる海鳴市とは別世界の海鳴市(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)なんだ」

 

 ……ナンデスト?

 

 

 

 ~~???視点終了~~

 

 あれから色々話した後、別世界……というより平行世界からやってきたであろう者達、橘君、フェイト、アルフさん、リインフォースは俺の家に連れて行く事になった。

 この世界にゃ彼等の住む場所無いしね。

 

 「……で、橘君に聞きたい事があるから呼んだ訳だが…」

 

 家に戻ってきてすぐ俺は橘君だけを自室に呼び出した。

 個人的に聞きたい事があったからだ。

 

 「あ、俺の事は禅って呼んでくれて良いッスよ。それと畏まらずに呼び捨てで良いんで」

 

 「そう?じゃあ俺の方も名前で呼んでくれ」

 

 「了解ッス。勇紀さん……でしたよね?」

 

 たちば……禅の問いに頷く。

 

 「で、回りくどく言うのは面倒臭いんでズバッと聞くけど、禅ってさ……もしかして転生者?」

 

 俺が真っ直ぐに禅の瞳を捕えながら言うと、目の前の本人はビクッ!と反応した。

 …この反応は確定っぽいな。

 

 「ナナナ、ナンノコトデショウカ!!?」

 

 「いや、片言で返答してる辺り、メッチャ動揺してるよね?」

 

 「キキキ、キノセイデスヨ!!」

 

 「ついでに俺と視線を合わせない様に、必死にアチコチ見てるよね?」

 

 「オ、オチツカナイダケデスノデ…」

 

 「……『クレイジー・ダイヤモンド』」

 

 俺が言うとまたまたビクッ!と身を竦ませた。

 

 「アレって、俺が知ってるマンガに出て来るキャラクターの持つ『スタンド』って呼ばれる能力なんだよねぇ」

 

 「……………………」

 

 ジェレミアの家で自己紹介した時、禅がクレイジー・ダイヤモンドを発現させた瞬間だが……多分あの場にいた誰よりも俺は驚いたと思う。

 何せスタンドだし、この世界ではジョジョ無いし。

 まあ平行世界という事もあってひょっとしたらリリカルなのはの世界観にジョジョ要素が混じってるという可能性もあるが、転生者が転生させた奴から貰った能力という可能性も捨てきれなかった。

 少なくとも『橘禅』というキャラは、リリカルなのは原作にはいなかったので、原作に巻き込まれた…もしくは関わったイレギュラーか転生者のどちらかだというのは察しがついた。

 で、思い切って聞いてみた訳だ。もし間違ってたら俺が『意味不明な事を言う痛い人』に見られるだけだったが。

 結果は目の前の少年の動揺っぷりを見れば火を見るよりも明らかだった。

 

 「とりあえずさ、ゲロっちゃいなよ。別に誰かに言いふらしたりしないしさ」

 

 「……その前に1つ良いッスか?」

 

 何だ何だ?

 

 「もしかして勇紀さんも転生者ッスか?」

 

 「まあな」

 

 隠しても特に意味無いから正直に答える。

 

 「そッスか。……まさか平行世界の先で俺と同じ境遇の人に出会うとは…」

 

 「ちなみにこの世界には俺以外に後6人転生者いるから」

 

 と言っても地球に残ってるのは俺と吉満だけだが。

 

 「多っ!?」

 

 しょうがないさ。神様うっかり屋だもん。

 

 「やっぱアレッスか?チート能力ゲットッスか?」

 

 「そだねぇ…」

 

 俺は神様に叶えて貰って得た能力を1つ1つ詳しく説明していく。

 で、全て言い終えた後に口を開いた禅の一言…

 

 「俺以上のチートが目の前にいる…」

 

 だ、そうです。

 クレイジー・ダイヤモンドも大概でしょ。俺の修正天使(アップデイト)と違って五感のいずれかが一時的に低くなるというデメリットも無い訳だし。

 自分自身に使えないとはいえ、使い勝手は絶対修正天使(アップデイト)より上な気がする。

 

 「ま、お互いの能力については良いとして……禅達の事だけど」

 

 「何か問題が?」

 

 「禅はともかくフェイトやアルフさん、リインフォースは迂闊に外出させられんのだよ」

 

 「あー……」

 

 もし外を出歩いて顔見知りとかに会ったら大変だ。俺の世界のフェイトとリンスはミッドに移住しちゃったし。

 アルフさんは地球のテスタロッサ家に居るから当人同士が出会ったらややこしい事になるし。

 平行世界から来たフェイトは小学生だから、アリサやすずか辺りに出会ったら問い詰められるし。

 

 「ちょっと心苦しいけど、あの3人には外出禁止で納得して貰えるかな?」

 

 「言ってみないと何とも言えないッスねぇ。事情が事情だから納得はしてくれそうッスけど…」

 

 むー、と唸ってるとコンコンと俺の部屋の扉がノックされる。

 どうぞー、と声を掛けると扉を開けて入って来たのはルーテシアと、ルーテシアに抱き抱えられた子犬形態のアルフさんだった。

 

 「お兄ちゃーん、ご飯出来たってママが言ってたー」

 

 「了解」

 

 「ほらゼン。早くご飯食べに行くよ」

 

 「あいよ」

 

 俺と禅が腰を上げ、部屋を出る。

 その後、長谷川家のリビングで食べる夕食の光景は……何というか戦場だった。

 

 「ぜ、ゼン……これ食べさせてあげるよ。あ、あ~んして////」

 

 「ほらゼン。このお肉美味しいよ。食べさせてやるからあ~んしな////」

 

 「ゼン…わ、私が食べさせてあげるぞ。だからあ~んし、してくれ////」

 

 3人の女性にあ~んを迫られる1人の少年橘禅。

 だが、禅は僅かに冷や汗を掻くだけで、箸に摘ままれている食べ物を口にしようとしない。

 それもその筈。フェイト、アルフさん、リインフォースは頬こそ赤く染めて恥ずかしそうにしているが、その態度とは裏腹に背中からは闇のオーラを噴出させている様に見える。

 その闇のオーラが語っているのだ。

 

 『ワタシノヤツヲサイショニタベテクレルヨネ?』

 

 …と。

 つまり禅が誰か1人の箸に口をつけた瞬間、残り2人からの死刑が執行される。

 禅はこの3人の内の誰と誰に殺される事を望むのだろうか?

 そんな事を考えていると、禅と目が合ってしまう。

 当人の視線は俺に言う。

 

 『助けて下さい』

 

 ……と。

 出来れば俺以外の面々に助けを求めて貰いたいのだが

 

 「ゴメンなさい。お隣に回覧板回すの忘れてたから渡してくるわね」

 

 メガーヌさんはそそくさとリビングを後にする。

 

 「おかわりおかわり…っと」

 

 クイントさんはお茶碗を持ってキッチンに消えていく。

 

 「流石ネオ・〇ラだ。無双過ぎ」

 

 ゼストさんは食事を中断し『ス〇ロボOGDP』をプレイしていた。

 …大人達は俺、ルーテシア、ジークを見捨てて逃げたのだ。

 俺とて禅を助けてやりたいのは山々だが、あの闇のオーラを放つ3人にケンカを売る程命知らずでは無い。

 

 「お兄ちゃんお兄ちゃん」

 

 「ん?」

 

 「バラバラ死体になったら後処理が大変だよ?」

 

 「笑顔で怖い事言うねぇルー!?」

 

 裏表のない純粋な笑顔で言うのだから性質が悪い。

 

 「(ウチ)やったら昇龍拳か竜巻旋風脚で意識を刈り取ってから真空波動拳で遺体すら残さんけどなぁ」

 

 「ジーク!?俺、君の教育何処かで間違えましたかねぇ!!?」

 

 義妹の危ない発言に俺は総毛立つ。

 エレミアの子孫だけあって波動拳、昇龍拳、竜巻旋風脚を会得し、波動拳の上位技である真空波動拳も最近使いこなせる様になってきたからこその発言なんだろうが…

 

 「冗談だよ冗談♪」

 

 「そうそう。冗談やって兄さん」

 

 冗談でもそんな事を言い放つ君達の将来が心配です。

 

 「私とジークちゃんの事よりアッチの状況はどうするの?」

 

 「……どうしようか?」

 

 俺とルーテシアは未だに闇のオーラを放出している3人と、この夕食が最後の晩餐になるかもしれないであろう禅に視線を向ける。

 てか俺の家で殺人事件はマジ勘弁して貰いたい。

 

 「(ウチ)等には解決出来そうにあらへんねー」

 

 ジークは既に解決策を考えるのを諦め、ズズッとみそ汁を啜る。

 結局何も出来ず事の成り行きを見守っていた俺達。

 最終的には禅が波紋を用いた手で3人の頭を撫でて気を落ち着かせており、撫でられた3人は更に頬を赤くしていた。

 ……俺からしたら、アレはどう見てもナデポにしか見えないなぁ………。

 

 

 

 禅達がこの世界に来てから1週間…。

 ゼストさんとクイントさんは休暇期間を終えたため警防隊に戻って行った。

 警防隊に戻る前日に秋葉原で大量にゲーム、マンガ、DVD等を買い込んでいた2人を見て、メガーヌさんは溜め息を吐かざるを得なかったそうだ。

 もうかなりオタク文化に毒されている2人は俺でも治療不可能だ。ヒッキーにならない辺りマシな方だけど。

 もっとも、2人が香港へ戻ったとしても我が家には平行世界からの来訪者達がいるからいつにも増して賑やかなままだけど。

 夕食も終えてメガーヌさんが1人キッチンで食器を洗う中、のんびりしてた俺達に禅が今日外出してた時の出来事を語る。

 

 「……で、今日会った高校生の人がこれまた凄い馬鹿な人でなぁ」

 

 「「「「「「へぇ~」」」」」」

 

 「何でも『ぬいぐるみを半分に引き裂いて右半身だけを定価の半額で売って下さい』とか言ってたんだよ」

 

 …ソイツは本当に高校生なのか?

 発想が想像以上に馬鹿っぽいんだが。

 

 「結局ぬいぐるみはしばらくの間、売らずに取り置きしてくれるって事で話がついたんだ」

 

 「禅君はその時見てただけなん?」

 

 ジークは疑問に思った事を禅に尋ねる。

 

 「俺は散歩するために外出してただけで、金は持ち歩いてなかったしな」

 

 「それは仕方ないね」

 

 うんうんとフェイトが頷く。

 

 「けど力になってやれなかったのは悔しいぜ。その子『葉月』ちゃんていうんだけど結構かわいい子だったし」

 

 ピクッ×3

 

 禅の一言に反応する3人。

 

 「ありゃ絶対将来有望な子だぜ。今の内に仲良くしといた方が良いよなぁ」

 

 …禅。そういう事は口に出さずに心の中に仕舞っとけ。

 俺はチラリと禅の側にいるフェイト、アルフさん、リインフォースを盗み見る。

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

 

 これは……ヤバくね?

 俺もルーテシアもジークもゆっくりと禅から距離を取る。

 禅も3人から発せられるプレッシャーを感じ取ったのだろう。固まったまま汗を大量に垂れ流している。

 そんな中、プレッシャーを放つ女性陣が口を開く。

 

 「あー…アタシ腹壊しても良いから生物(ナマモノ)を思いきり齧りたいねぇ」

 

 (ナマモノ)逃げてええええぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!!

 

 「私の最近の趣味はお気に入りのモノをミストルティンで石化させて保存する事でな」

 

 (お気に入り)を石化させちゃらめええええぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!!

 

 「こうなったら私はゼンを殺してゼンを殺るよ」

 

 「俺しか死なねぇ!!?」

 

 禅の死亡率が100%から200%へと倍プッシュされたああああぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!

 

 「あ、私宿題やらなきゃ」

 

 「(ウチ)お風呂入ってくる」

 

 ルーテシアは自室に、ジークは浴場へと逃げ出した。

 俺はというと

 

 ~~♪~~♪

 

 「悪ぃ。携帯鳴ったからちょっと出て来る」

 

 偶然着信が来た携帯を理由にリビングを後にする。

 

 「そんな!?勇紀さんヘルプ!!ヘルウウウゥゥゥゥゥプ!!!!!」

 

 禅の必死の呼び止めが聞こえないフリをしてリビングの扉を閉める。

 と、同時に

 

 「んぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!!!!」

 

 1人の少年の断末魔の叫びが俺の耳に届いた。

 心中で禅に謝りながら携帯に出る。

 

 「もしもし?」

 

 『……勇紀ぃ……』

 

 「…キンジさん?」

 

 着信の相手はキンジさんだった。

 久しぶりに声を聞いた気がするが、やけに元気が無いな。

 

 『頼む……俺に仕事を紹介してくれ』

 

 「は?」

 

 『金が……金が底を尽きそうで』

 

 「いや金って……武偵の仕事は?」

 

 武偵は『何でも屋』っぽい認識もされてるぐらいだから一般人の依頼が無くても国とか政府が依頼してきそうなもんだけど。

 特にキンジさんの武偵事務所にはアリアさんに理子さん、それと未だ会った事無いけど白雪さん、レキさんの『バスカービル』メンバーにジャンヌさんも加えた6人メンバーで営んでいた筈。

 個々の実力は上等の部類なんだが…。

 

 『アリアがしょっちゅう武器と弾薬の購入、理子は主にエロゲー、ジャンヌが洋服や少女マンガに手を出すせいで……グスッ」

 

 グスッ、ってどんだけ苦労してんスか!?

 

 『俺や白雪、レキは節約を余儀なくされて…』

 

 「いやキンジさんが事務所の社長なんだし注意すれば……って、それで聞いたら苦労しないッスよね」

 

 『……おぅ……』

 

 …アカン、絶対キンジさん重傷や。

 未だに心労で倒れない辺り、精神力の強さは半端無いがその分、苦しみ続けてるって事だよなぁ。

 仕事……ねぇ。

 

 「…何かある様ならすぐ電話させて貰いますよ」

 

 『マジで頼む。…割と切実なんだ』

 

 了解ッスと言ってから電話を切る。

 何ていうか……男っていうのは生きるのに必死な生き物だよねぇ。

 リビングから時々聞こえて来る平行世界からの来訪者の悲鳴や、今現在生活苦に陥っている武偵の知り合いを思い浮かべながら俺は静かに涙した………。

 

 

 

 更に数日後…。

 今日は日曜日。

 ジェレミアから『ダイブゲームの修理終わったよ』との事で再びお隣さんにお邪魔する事にした。

 もっとも…

 

 「やぁやぁやぁ!!よく来たね勇紀君とその知り合い一同諸君!」

 

 「「「「「「「「「「お邪魔しまーす(失礼する)(邪魔する、なの)」」」」」」」」」」

 

 今回は超大所帯だ。

 俺だけでなく、俺のクラスメイトやキンジさん達武偵組、禅達平行世界からの来訪者達もいるからな。

 全員俺が招集した。『面白いゲームで遊ばないか?』という誘い文句で。

 

 「うむうむ。私はジェレミアという発明好きなただの科学者だ。以後よろしく」

 

 『よろしくお願いします』と皆も挨拶を短めに済ませ、とっとと本題に入らせる。

 皆にダイブゲームの用途を説明した後

 

 「今回は以前の様に爆発しないから安心して楽しんでくれたまえ」

 

 そう言ってダイブゲームを起動。夢の中へ続く(ゲート)を開く。

 今回の夢の対象者は俺自身の夢だ。

 詳しくは思い出せないまでも夢を見た事、その夢が『あるゲーム』だった事は覚えている。

 

 「なぁ勇紀」

 

 「どうしたんスかキンジさん?」

 

 「これがお前の言ってた依頼…なのか?」

 

 「まあ、そう受け取っておいて下さい」

 

 キンジさんに依頼したのは俺の夢の中のゲームに干渉し、ゲームの勝利条件を達成する事。

 出来たら俺直々に依頼の達成料を渡す事にしている。

 もっともキンジさん以外にゲームの勝利条件を達成出来た奴にも報奨金出すけどな。

 

 「随分変わった依頼だな」

 

 「はは…けど俺が見た夢の中のゲームの攻略は容易じゃないですよ」

 

 「そっか。ま、コッチも必死だから全力で取り組むけどな」

 

 キンジさん超やる気に満ちてます。

 

 「ガキンチョの夢…ねぇ」

 

 「勇君の夢かぁ…何か楽しみだね」

 

 「貴方がキンちゃんの言ってた『勇紀』君だね。私は星伽(ほとぎ)白雪(しらゆき)だよ。よろしくね」

 

 そしてキンジさんに着いて来た武偵の3人、アリアさん、理子さん、白雪さん。

 

 「よろしくです」

 

 初対面の白雪さんに会釈して言葉を返す。

 それから各々自己紹介を軽くしてから1人…また1人と(ゲート)を潜り、夢の中へ入って行く。

 最後に俺が潜り抜けると(ゲート)が閉じられる。

 さて……俺を含め、何人がこのゲームの勝利条件を達成出来る事やら………。

 

 ~~あとがき~~

 

 ……て事で唐突ですが超・番外編でなく本編内にて『PIGUZAM]』様の作品『楽しく逝こうゼ?』とのコラボが始まりました。

 何つーかネタが思い浮かばないので『いっその事本編でコラボするか』との結論に達しました。

 幸いにも今は『ダイブゲーム』という便利アイテムのおかげで、大抵の無茶ぶりも『夢の中だから』で片付けられますから(笑)。

 やってきたのは主人公の『橘禅』に『フェイト』『アルフ』『リインフォース』です。

 時系列としては『楽しく逝こうゼ?第34話』にて本来機動六課のある未来の平行世界に飛ばされる筈が、『原作介入』の世界に飛んできたという『楽しく逝こうゼ?』側からすればIF的な展開です。

 まあ、ロストロギアの発動とダイブゲームの爆発が全く同じ時間帯に起こった事により、一時的に2つの作品の世界が繋がって『楽しく逝こうゼ?』メンバーが『原作介入』世界に流れ着いたという設定ですね。

 この4人、ダイブゲーム終わってすぐ帰らすか、しばらく留まらせるかはまだ未定です。

 留まった場合は『原作介入』側の本人達と邂逅する可能性も無きにしも非ず。

 全ては作者である自分の気分次第です。

 後、今回勇紀の夢に干渉した人物達ですが誰が来たかと言うと

 

 『リリカルなのは』シリーズから

 

 ルーテシア

 ジークリンデ

 アミティエ

 キリエ

 

 『おまもりひまり』から

 

 優人

 緋鞠

 凜子

 静水久

 

 『緋弾のアリア』から

 

 キンジ

 アリア

 白雪

 理子

 

 『怪盗天使ツインエンジェル』から

 

 遥

 葵

 クルミ

 

 『楽しく逝こうゼ?』から

 

 禅

 フェイト

 アルフ

 リインフォース

 

 …以上に『原作介入』主人公の勇紀を含めて合計20人の大所帯です。

 更に夢の中の住人で今回参加していないキャラや、なのは達も久々に登場させます。

 勇紀が見た『あるゲーム』に必要なキャラ達ですので。そのせいで次回の登場人物の数はエラい事になりそうですが。

 はてさて、ゲームをクリアできるキャラがいるのかいないのか……これまた作者の気分次第です。

 多分誰かは出来る……筈。

 乞うご期待…………なのかな?

 


 
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