No.728591

「スカレーの冒険」③(全5話)

lotus045さん

つづきです。

2014-10-07 21:30:45 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:607   閲覧ユーザー数:606

外国の海で見た魚が綺麗だったこと、

金曜日になるとカレーを上手につくる人がいて、いい香りに包まれたこと。その日になると、心なしか、乗ってるみんなの声が明るく聞こえたこと。

いつだったか、ひろいひろい大海原にひょっこり浮いたとき、空に星がまたたいて、ラッパの音がして、それがとても美しくて、すごく感動したこと。

 

ラッパの音が、しました。

あたりはすっかり、夕暮れを迎えていました。

 

金色に輝くさざ波にうたれながら、潜水艦は話を続けました。

 

「あの基地に見える護衛艦には、大きくて眩しいあかりがついていて、それをつけたり消したりすることで、遠くの人と会話ができるの。役目を終えて、空にのぼった護衛艦は、夜に、人がいなくても、あかりを光らせることができるの。自分の言葉を伝えられるの。一番よくしてくれた乗組員の人に、ありがとうって言えるし、ひろいひろい海の上で迷子になった人に、こっちだよ、あっちだよって、助けることができるの。私もあかりを持っているのよ!だから、役目を終えるのは、ちっとも悲しいことではないの。だけど、空にいけなければ、何の役にもたたないの。ありがとうって言えないの」

 

潜水艦は、またしくしくと泣きはじめました。

 

スカレーは、どうしていいか分からなくなって、ふと、横須賀基地を見ました。

真っ白な制服姿のお兄さんが、ロープを片づけています。

 

「あ!」スカレーは、いいことを思いつきました。

「ねぇ!」だしぬけにスカレーは、言いました「ロープでひっぱったら、空、飛べるんじゃない?」

 

カモメ達がいっせいにスカレーを見ました。

 

「そんなこと、考えたことなかった」

「できるかな」

「やってみようか?」

「やってみようよ!」

 

一羽のカモメがパッと飛んで、ロープをくわえてもどってきました。

 

「いらなくなったロープ置き場、知ってるんだ、オレ」

得意気に言いました。

 

「すごいや!」

「ね、それでどうやってくくるの?」

 

すると魚たちが海から顔を出して言いました。

「海の中はわたしたちがくくるわ。わたしたち、この潜水艦と泳ぐの、とても好きだったの。だから、何かさせて欲しいの」

 

「わーい!」スカレーは嬉しさのあまり、バンザイをしました。

 

こうして、カモメと魚たちが協力して、潜水艦をロープでくくりました。

スカレーはロープをしばる係です。

 

つづく


 

 
 
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