第42話 キリトの思惑は…?
No Side
黒き剣士が神々しくも禍々しい槍を用いて光の神たるバルドルを穿ち殺した直後、世界はその姿を一変させた。
アースガルズは闇に呑まれた。
恵みを齎す日の光も、瞬く星の輝きも、安寧を齎す月の光も、全てが闇によって覆い尽くされた。
光が閉ざされたことで世界に暖気はなくなり、寒気が猛威を振るわせていく。
雪が舞い、風が吹き荒れ、氷の剣が降り注ぎ、草木は間を置くことなく全て枯れ落ち、数多の狼と巨人がさらに姿を現した。
さらに各所において事態は進行していく。
アルヴヘイムはかつてのヨツンヘイムのように闇に閉ざされるだけでなく、
川や湖だけでなく海までもが全て凍りつき、草木の葉は一瞬で氷結してしまった。
また、ヨツンヘイムも同様にかつての凍てつく世界へと変わり果ててしまい、
一部の場所では丘の巨人族と霜の巨人族が諍いを始めている。
ニブルヘイムとムスペルヘイムにはそれぞれの魔物や巨人達が集結し、彼らを従える強者達も開戦の号砲を待つ。
再び場所は戻り、アースガルズ。
バルドルが穿たれたことで世界が変化した時、祝いをしていた神々は一斉に立ちあがり、ロキに睨みを効かせる。
ハクヤとハジメとヴァルが囲むロキは笑みを浮かべるとその口を開いた。
「さぁ神々に妖精達よ、時は来た! 僕らの黄昏を始めようじゃないか!」
「お前…!」
美しい容姿とは裏腹に終わりを迎え入れようとし、笑みのままにそう宣言するロキにハクヤは苛立ちを隠さない。
「いきり立つのはいいけれど、いま僕に構っている暇はないんじゃないのかい?
あのお嬢さんは既に
「くっ、そがぁっ!」
ロキの指摘にハクヤは唇を噛み締めてから仲間達と共に、去って行ったローブの少年と彼を1人で追いかけて行った少女の後を追った。
ハクヤ自身も気付いていた……ロキに警戒しながらも横目で見たバルドルを討った者の顔を、それが親友であったということも。
だからこそ、彼は悪態を吐きながらこの場をあとにした。
いまは親友とその愛する女性の方が気がかりであったから。
「ロキよ、決着を付ける時が来たということだな」
「ああ、そうだよオーディン。キミ達が望み、僕達が忌避した黄昏だ。
だが僕達も留まる必要が無くなった。僕は僕自身の願いの為に突き進むんだ」
「我々は元より、相容れない存在だったということだ」
「そうだ、僕達もキミ達も所詮はただの傀儡であるからね。
だが、僕達は反乱の因子を与えられたからこそ、僕達自身のままで居られるんだ」
「……どういう意味だ…?」
「ふふ、ただの操り人形なキミ達には分かり様も無いことさ……それじゃあ、さようならだ、
「……ああ、永久にな、
「他のみんなも、ね…」
会話を終え、ロキはその姿を鷲に変えると飛び去り、ヘズもまたその姿を消した。
巨人の血を引き神々の敵でありながらも神であることを誇るロキ、そんな彼を認めていたオーディン。
2人の義兄弟はここに置いて、完全に引き裂かれることになった。
これが『
No Side Out
アスナSide
なんで、なんで、どうして、どうして……キリトくん、どうして、キミが…!
とにかく、キリトくんに早く追いつかないと…!
「ユイちゃん、キリトくんの位置は?」
「このまま、真っ直ぐ行ったところの森の中です!」
バルドルを槍で殺したキリトくんは素早くその場を離れていった。
最早飛べなくなってしまったけれど、彼の移動速度は相変わらず尋常じゃない。
わたしも全力で走って、胸ポケットに居るユイちゃんの指示に従ってその場所に向かう。
すると、後ろから声が聞こえてきた。
「アスナさん!」
「ヴァル君!?」
後方を見てみればヴァル君が居て、彼はすぐさまわたしの隣に追いついて並走する。
さらに後ろにはハクヤ君やハジメ君、ルナリオ君にシャインさん、クーハ君も追随してきてる。
そのもっと後ろにはリズ達も居るけどやっぱりこの6人は速い…。
「アスナさん。キリトさんは?」
「この先の森、そこに居るみたいなの」
「了解しました、アスナさんは先行してください。僕はみんなを引き連れながら向かいます」
「お願い!」
ヴァル君の言葉が適切だと判断してわたしは駆け抜ける速度を集中することでさらに速める。
森はもう目の前で、その中を突き進む……そして…。
「ママ、そこです!」
ユイちゃんに言われて木々を抜ける。
そこには、黒いローブを纏いながらもフードを外しているキリトくんの姿があった。
あの神々しくて、だけど禍々しい槍を右手に持ちながら。
「キリトくん…」
「パパ…」
「アスナとユイか……他のみんなは…?」
「多分、すぐに来ると思うよ…」
そこに居た彼はいつも通りの彼で、さっきまでの行動がまるで嘘のように感じられる。
でも、それでもキリトくんの表情には憂いがあって、なのに真剣でいつものなにか覚悟を決めた時の表情。
こうなった彼はもうわたしにも止められない、全てをやり遂げるまでは。
「キミは何時も1人で決めちゃうよね? 心配するわたし達の身にもなってほしいんだけど」
「はは、悪いな……けどさ、今回もやっぱり俺の分野なんだよ。
みんなにとってのSAOでもあったけど、俺にとってのSAOでもあって、その後始末はつけなくちゃならないんだ、俺達自身が。
とはいえ、今回はアスナ達にも手伝ってもらうけどな」
「手伝えないけど、手伝うの?」
「そんな感じ」
苦笑しながら話すキリトくん。
謎々みたいな問答だけど、敢えて言うなら言葉にしないわけではなくて、言葉にするべきじゃないのかもしれない。
教えてくれる時は全部教えてくれるけど、教えてくれない時は本当になにも教えてくれない。
それなのに、ううん……それでもわたしは、キリトくんを信じられる。
「わたしは、わたし達はどうすればいいの?」
「戦ってほしい、俺達が率いる終末の軍勢と。オーディンの側につけば必然と俺達と戦うことになる。
そこで俺達と戦ってほしいんだ」
「それが、わたしやみんなに出来ることなんだね?」
「ああ、今回はみんながみんな同じ場所に立てるわけじゃない、それぞれが立つべき舞台がある。
だけど別に悲観して別たれるわけじゃないし、どうするべきか分かっているからこそ、剣を交えることが楽しめる」
結局のところ、わたしは今回に限っては彼の味方であることは許してくれないらしい。
それが少し残念で悲しいけれど、彼を信じて支えるのもわたしの役目だものね。
「キミは本当に我が道を往く、だよね……でも、そんなキリトくんだからこそ、わたしは変わらずに愛することができるから」
「それは俺だって同じだよ。キミを愛しているからこそ、やるべきことをやろうと思える。
まぁ、若い身空で苦労を掛けるのも申し訳ないけど…」
「そういうものなのかもしれないよ、わたし達の場合は」
「ふっ、そうかもな」
わたしは心の底からの彼への想いを伝えて、キリトくんもわたしへの想いを伝えてくれた。
《接続》で心を通わせていることもあるけど、やっぱり言葉で伝え合うことも大事だと改めて思うなぁ。
「さて、もうみんなも着く頃だろうから、そろそろ始めよう」
キリトくんはそう言うと手にしていた神々しくも禍々しい輝きを放つ槍をわたしに向けて構えた。
普段は剣や刀を扱い、時には《二刀流》を用いる彼が、いまは真剣な表情で槍を構えてわたしと相対する。
「その槍、
「ああ、銘を『魔槍ミスティルティン』という。
俺が世界樹の枝である『トネリコの枝』とヴァルハラ西部に生えている『ヤドリギの枝』を手に入れて、ロキが生み出した槍だ。
ロキとヘズの攻撃でさえ囮にし、俺が本命を果たす為に用意した」
以前から用意していたとは思えないから、ALO全体で異変が起きてから手に入れる用意をしたんだよねぇ。
この前の情報収集の時かな?
シノのんがイグシティでキリトくん似の人を見たって言ってたし、わたしもユーダリルでキリトくんを感じたし。
それなら辻褄が合うものね…それにしても、また伝説級武器なのね。
「『狼剣フローズヴィトニル』といい、キミは本当に名のある武器にも好かれるよね。
でも、そういうことならわたしも本気で行かなくちゃ、いけないわね」
この世界でも結婚システムが導入されて、この世界で結婚を果たしているわたし達のアイテムストレージは共通化されている。
そんな中でわたしは彼の伝説級武器に渡り合う為にSAO時代に使用していた愛剣『クロッシングライト』を取り出して構える。
「久しぶり、というか2年ぶりになるのかな。キリトくんと本気で戦うのって」
「SAOの第56層の時の
「そうだね。それじゃあ、胸をお借りする気持ちで…」
キリトくんと初めて本気で戦ったあの日、彼は本気であったものの全力ではなかった。
だけど、いまの彼が放つ闘気は間違いなく全力のもの、勝てる術などないはず。
それでも、勝敗なんて関係無い。
「ユイちゃん。そこでわたしとキリトくんの戦いを見ていてね」
「はい。ママもパパも、ご武運を…」
ユイちゃんは
両方を応援するなんて、ユイちゃんらしいなぁ。そしてわたし達は距離を取って相対する。
わたしと彼の立ち位置が別たれることに意味があるのだから。
だから、わたしは持てる力の全てを揮うだけ!
「ギルド『アウトロード』サブマスターにしてチーム『
「ギルド『アウトロード』ギルドマスターにしてチーム『
「「行きます!・参る!」」
交錯するわたしの細剣とキリトくんの槍。
リーチとパワーは彼の方が上だけど、速さと正確さならわたしの方が上だと、いまの状態ならハッキリと言える。
実際、わたし達の戦いは拮抗しているから。
「バックアップを熟すようになったとはいえ、衰えを見せるどころかどんどん速くなっていくなぁ、キミの剣速は」
「それ、嫌味? キリトくんの連撃とかヴァル君の最速にはわたしついていけないんだけど」
「褒めてるんだよ。現に俺の槍にはついてこれてるだろ?」
「そういえばそうだね。でも、槍も使えるんだね?」
キリトくんの槍捌きは生粋の槍使いであるヴァル君と比べれば少し劣るものがあるけど、それでも凄まじいものだと思う。
普段は使わない槍を自在に操り、突き技だけでなく薙ぎ払いをしたり、槍を巧みに振り回すなどして攻撃を行う。
その技術力はヴァル君に勝るとも劣らないもののはず。
「当然だ。『神霆流』の師範代である俺と
最も得意なのが刀剣類で二刀流というだけだよ」
「反則な気もするけど、キミの場合は鍛練による努力の賜物だよ、ね!」
彼の懐に潜り込んで刺突を行うけどそれは避けられた。やっぱりこの程度じゃダメみたいだし、それならもっと速くっと!
「てぇい! せぇあ!」
「おっ、くっ…!」
剣速が上がったことでキリトくんは2撃だけどその攻撃を左脇と右肩に受けた。
さらに攻撃を繋げていくと彼にダメージエフェクトがどんどん増えていく。
でもそこで、彼の表情が獰猛な笑みに変わった……やばっ!
「ぜぇあああっ!」
「ひぃっ!?」
キリトくんの放った渾身の一突きは凄まじい衝撃と共に避けたわたしの顔の隣を突き抜けていった。
その衝撃は後ろの樹に直撃して樹が弾けて、ドンッという音と一緒に倒れ伏した。なんて、一撃なのよ…。
「俺が槍を使う場合はさ、ヴァルとは違って速さよりも力に重きを置いている。力による覆滅、それが俺の槍だ」
「あはは……二刀流でも充分怖いのに、なんでもござれっていうのは無いんじゃないかなぁ…」
「なんでもとはいうが、弓とかは無理だぞ」
いや、そういう意味じゃないんだけど……というか、ヴァル君達はまだかな?
そう思った瞬間、目の前にいたはずのキリトくんの姿が消えた。彼の場所は…!
「そこっ!」
わたしの背後に回っていた彼に向けて振り向きざまに鋭い一撃を放つと彼の腹部を抉った。
あぁ、強い彼に一撃を与えられたことが嬉しいけど、アバターとはいえ彼を傷つけるのはやっぱり心が痛いなぁ。
それが伝わったのか、キリトくんは優しい表情に戻ってわたしに訊ねてきた。
「ぐっ…! はは、なんでわかった?」
「こんなに近くにキリトくんが居るのに場所が分からないはずがないよ」
「恐るべし、対俺用アスナセンサー……っと、丁度良いタイミングだな」
「えっ、くぅっ!」
キリトくんがそう言った途端に再び鋭い一撃が来て、わたしは咄嗟に細剣で防いだけどそのまま後ろに吹き飛ばされた。
その時、わたしの体が誰かに受け止められて、キリトくんに向けて一斉に飛び掛かった。
鎌が、刀が、槍が、鎚が、剣が、短刀が、キリトくんに向けて襲い掛かるけれど、
彼は自分の槍を自在に振り回すことでそれらを防ぎ切った。
襲い掛かったのは『神霆流』のみんなで、わたしを受け止めてくれたのはリズとカノンさんだった。
「大丈夫、アスナ?」
「うん、平気」
「良かったわ。それにしても、キリト君がね…」
心配してくれるリズとカノンさんだけど、キリトくんに対して困惑と僅かな怒りを向けているのがわかる。
大半はなんでこんなことをしたのかという困惑だけど、
少しの怒りは多分わたしに対してキリトくんが
「少しばかり遅かったんじゃないか?」
「そりゃまぁ全員でまとまってきたわけだからな……それよりもさ、事情とか説明してくれねぇわけ?」
「お断りだよ。知りたければ力ずくで来ればいいだろう?」
軽口にも聞こえるキリトくんとハクヤ君の掛け合い、だけどその空気は一触即発だね。
2日前にハジメ君とシャインさんも交えて話しをしていたから分かっていると思うけど、
ハクヤ君の場合は感情的な部分もあるのかもしれない。
彼は怒れば怒るほど、冷静で冷徹になっていくものね。
「……お前が誰にも話さずに1人である程度のことを終わらせることはいいが、それはアスナを傷つけてまで為すことなのか?」
「そう言われると耳が痛いが、生憎と今回ばかりは詳しいことを誰にも話せないし、話すつもりもない」
「やっぱ力ずくしかないっすかね?」
ハジメ君もルナリオ君もキリトくんのことを分かってはいるんだろうけど、それでも感情的になっちゃうものだと思う。
2人の言葉の端には棘を感じるし…。
「んじゃ、力ずくで教えてもらうとするか!」
「先手必勝!」
シャインさんとクーハ君が駆け抜けてから剣と短刀で斬り掛かって、だけどリーチが長いキリトくんが槍で防ぎきる。
そこに他の4人がさらに斬り掛かってくるけど、キリトくんは槍を振り回して牽制、直後に勢いよく槍を地面に突き刺した。
「
槍が地面に突き刺さった瞬間にその箇所から中心に円形の衝撃波が発生して、男の子達を一斉に吹き飛ばした。
みんな武器で衝撃波を防いで着地したから無傷だけど、衝撃波そのものはわたし達のところまで届いた。
地面に座り込んだり、樹に掴まったりしてやり過ごしたらなんとかそれが治まった。
「なんてOSSですか……伝授してくれませんか?」
「ああ、また今度な……だが、今日はここまでだ。迎えが来たみたいだからな」
ヴァル君が槍のOSSであるいまのスキルの伝授を求めたけれど、キリトくんが返した言葉にわたしは本当にここまでだと直感した。
――ぐおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!
直後にはとてつもない大音響の咆哮が鳴り響いて、わたし達の周りに暴風が吹き荒れた。
そしてわたし達の前に、黒い竜が現れた…。
「なに、よ……コイツ…」
「黒い竜、神々の黄昏……まさか、ニーズヘッグっ!?」
シノのんが驚愕する中、ティアさんが思考したのちに叫んだ。
そういえば、世界樹ユグドラシルの根を齧る竜のニーズヘッグは、ラグナロクの時に翼を広げて羽ばたくって…。
「如何にも、我がニーズヘッグである。同志キリトよ、撤収するぞ。
既に我らの大将は引き下がった。これ以上の戦闘は時間の無駄だ」
「了解した。それじゃあみんな、またな」
黒い竜、ニーズヘッグが言葉を発したあと、キリトくんはそれに応えてからジャンプして、竜の背中に乗って飛び去っていった。
さすがのわたし達も呆然として見送ることしかできなくて、彼を乗せた竜はあっという間にその姿が見えなくなった。
「ふぅ、アイツに会ったら問答無用でブン殴るとして……アスナちゃん、ユイちゃん、話し聞かせてもらうよ?」
この場を纏めるように声を出したシャインさんにわたし達は頷いて応えた。
アースガルズも闇と雪と氷に包まれたことで飛ぶことも出来なくなって、
それでも結晶は使うことが出来たから『回廊結晶』を使ってわたし達はアインクラッドの自宅に帰ってきた。
そこでわたしとユイちゃん、というよりもわたしはキリトくんに追いついてからのことをみんなに話した。
「へぇ~、キリトが俺達と戦いたいねぇ…」
「真意はまた別にありそうですけど、それも本心なんでしょうね」
ハクヤ君とヴァル君が言うようにキリトくんの本心だとは思うけど、わたしとしても少し腑に落ちないところはある。
まぁそれはキリトくん本人に聞くのが一番良いかな。
「けどなぁ、やっぱオレとしちゃ納得いかねぇ気もするんだけどよぉ…」
「仕方が無いっすよ。むしろクラインさんの反応が正しいっす。女性陣もみんなそうっすからね」
クラインさんの言うことは解る。わたしだって全部を全部納得してるわけじゃないから。
リズやシリカちゃん達はキリトくんがわたしに対して加減をしないで攻撃したことに不満を感じていると思う。
だっていきなりだものね、理由も聞かせてもらえないでそんなことになっていれば、誰だって不満になると思うし。
「ですが、やはりキリトくんの意図が掴めませんね。
彼が起点となってバルドルを倒したこともですが、そのままロキの側に付くことやアスナさんと戦おうとする姿勢、正直読めないです」
「元から飄々としているところはあるが、アイツの場合はそれが普通の人間の非じゃないからな…」
ティアさんとエギルさんが指摘することは最もだけど、なんだかキリトくんの評価が人外になっているような…。
(「人外? 褒めるなよ」)
キリトくんなら褒め言葉で受け止めそうだよね、うん。
「結局のところ、キリトを信じるしかないってことか」
「そうだと思うよ。でもね、わたし少しだけ楽しみなんだ」
ハクヤ君が呟いたことにわたしが答えるとみんなが少し驚いた顔をした。
ふふ、なんか面白いなぁ、キリトくんはいつもこうやってみんなが驚く顔を見て楽しんでいるのかも。
「さっきは途中で終わっちゃったけど、やっぱり本気で全力のキリトくんと戦ってみたい気持ちもあるの。
いままで出来なかった彼との本当の意味での戦い、楽しみじゃない?」
「ぷっ、くくく……さすがアスナさん! あのキリトさんの恋人は伊達じゃないな!」
「……同感だな。こうでなければキリトの恋人は務まらない」
「いやしかし、キリトとマジで戦争か……いいなぁ、面白い」
「普段はやられてばかりですからね。そろそろ一矢報いたいと思いますし」
「にっしっしっ、打倒覇王っすか! 目標は強く高くって感じっすね!」
「ついでに世界の平和も守るってのは、男として浪漫があるな」
クーハ君、ハジメ君、ハクヤ君、ヴァル君、ルナリオ君、シャインさん、
彼らはみんな揃って既にキリトくんとの戦いに思いを馳せている。
「やれやれ、男ってのはどうしてこうバトル脳なのかしらね~」
「まぁキリトに勝ちたいって気持ちは解るわね」
「いつもしてやられてばかりだもんね。あたしもお兄ちゃんに一矢報いたいかな」
「凄く大変だと思いますけど、面白そうなのは分かります」
「それなら私は全力でサポートに徹しましょう」
「僕も真っ向から立ち向かうのは勘弁かな~」
リズ、シノのん、リーファちゃん、シリカちゃん、ティアさん、リンクちゃん、
彼女達も彼らの様子を見て気持ちが軽くなったみたいだね。
「よっしゃぁ! こうなりゃキリの字に目に物みせてやろうぜ!」
「大変だけど、遣り甲斐はあるわね」
「キリトは大丈夫だと言っているからな。俺達は楽しむ路線で行くか」
クラインさん、カノンさん、エギルさんもやる気を見せ始めた。
「ユイちゃん。パパの行動パターンの解析、お願いね」
「了解です!頑張っちゃいますよ♪」
「きゅ~!」
そしてユイちゃんにお願いすれば胸を張って応えて、ピナちゃんも楽しそうにしている。
キリトくんの思惑がどんなもので何処に向かっているのか、それは幾らわたしでも全部解ることは出来ない。
だけど、彼が信じてと言って、その思いが真っ直ぐなものだから、だからわたしは彼を信じて、自分の思うよう行動するだけ。
だからね、キリトくん……わたし達も、負けないんだから!
「あぁ、楽しみにしているよ、アスナ…」
「どうかしたのか?」
「いや、なんでもないさ、ニーズヘッグ」
アスナSide Out
To be continued……
あとがき
今回は言葉の掛け合いが主な内容にしました。
ここからいきなり戦いに、というのも少々つまらないような気がしたといいますか、そんな感じです。
一応、次までは戦闘は無しの方向でいきます・・・次回は各方面での反応やラグナロクへの準備回にするつもりです。
それではまた・・・。
追伸
企画に参加したい方でまだアバターをコメント欄などに投稿していない方もいらっしゃると思います。
締切は次回の話投稿までになっておりますので、参加希望の方はお早めに。
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第42話です。
バルドルを穿ったキリトを追うアスナ、果たしてどのような会話になるのか。
どうぞ・・・。