No.719471 欠陥異端者 by.IS 第二十六話(裏の裏≠表)rzthooさん 2014-09-19 22:19:09 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:983 閲覧ユーザー数:957 |
いい加減、諦めて帰ってくれないかな・・・?
巻紙「・・・」
怪しまれないように尾行して既に30分が経過していた。
途中、上級生に呼び止められてキャッキャッと騒がれた時は肝を冷やしたが、何とかバレずに今まで来ている。
零(でも、校舎に居ないからってアリーナにいる訳ないでしょ・・・)
第3アリーナまで足を運ぶ仕事熱心さに呆れながらも、あの一瞬で感じた狂気が気になってしょうがない。
巻紙さんが男子更衣室に無断で入った時、私はエチケットの欠片もない行動にまた呆れながら、更衣室の扉の傍まで寄る。
そして、そっと耳元を壁に付け───
巻紙「何してんだ、てめぇ?」
零「ぇ・・・」
次の瞬間、私の体は宙に浮いていた。
殴られた訳でも蹴られた訳でもない・・・髪を掴み上げられて投げられたのだ。しかも片手で。
零「な、何で、背後に───非常口か」
更衣室の扉は電子ドアだから、もしトラブルなどで開閉が出来なくなった時のため、手動の非常口を用意されている。
目の前の巻紙は、それを通って私の背後を取ったという事か・・・。
巻紙「こちとら仕事があるのに、チョロチョロと尾行するなんてな・・・喧嘩売ってんのか?」
零「ぅぐ・・・」
巻紙「んじゃ、ちょっとそこでお話を聞きましょうかね・・・じっくりと」
私は更衣室に引きずり込まれ、思いっきりロッカーへ投げつけられた。
抵抗しようとした腕は踏みつけられ、左右のこめかみに巻紙の指が食い込む。
巻紙「一体、誰の差し金だ? それとも若さゆえの正義感か? お前以外に誰もいないみたいだし・・・随分と馬鹿な奴だな」
零「そう、でもないですよ。私が戻ってこない事を気にして、必ず私の事を探し出して、くれます」
巻紙「だったら、その前に口封じしないとな。出来れば、織斑一夏に会う前に問題を起こしたくはなかったんだが」
零「こっちだって・・・そうですよっ!」
部分展開させたISの腕を振るい、巻紙を引き離す。
許可されていないISの展開は御法度だが、友達の名前を出されたからには四の五の言ってられない。
絶対に拘束する。
巻紙「おっとっと・・・! ったく、穏便に済みそうにないな、こりゃ・・・まぁ、その方がやりやすいけどなぁ!」
光の粒子が巻紙を取り込んでいく。
零(ISっ!? コイツ、ただの渉外担当者じゃないぞ・・・)
「誰だ、お前は?」
オータム「『亡国機業』が一人、オータム様と言えば分かるかぁ!?」
黄色と黒を主体とした不気味なカラーリング。
背部に生えた八足の装甲脚。その一本一本に砲門が備えられている。
八足歩行するISは、まるで蜘蛛だ・・・。
オータム「食らいやがれっ!」
両手の平からと、八本の脚から発射されたビームが、確実に私を殺りにきた。
すぐさま規律よく並ぶロッカーの後ろに回り込んだ。
オータム「ちょこまか逃げてんじゃねぇよ!!」
戦車の大砲でさえ耐えられるロッカーでさえ、オータムが扱うISの弾幕にボコボコと凹まされ、倒されていく。
オータム「この『アラクネ』相手に十秒持つとはな・・・だけどよ!」
跳躍した『アラクネ』は、本物の蜘蛛みたいに天井に張り付く。
つまり、どこに逃げ回ろうと死角は・・・ない。
零「ちっ・・・」
ドドドドドドッ! と持ち上げて盾にロッカーが凹んでいく。
『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅢ』は、相手の機体に接触することによって、拡張領域をハッキング、装備のコピーなどを行う事の出来る癖のある機体。
初期武装もないし、後付装備もない。
零(何とか、近づかないと・・・)
オータム「分かってんだぜ。その機体、相手から装備を盗み取れないと、戦えないんだよな~?」
零(何で知っているんだよ・・・)
オータム「さぁさぁさぁ! どうすっよ!?」
自分を近づけないために放射される弾幕。
エネルギー切れを狙うしかないが、その前に私の方がやられてしまう。
だったら───
零「脚二本・・・もらうぞ!」
ロッカーを盾にしたままオータムに突っ込む。
オータム「わざわざやられに来たか! やっぱ餓鬼だな!」
一点集中された射撃は、見事に盾のロッカーをぶち抜いて、雨のようなレーザーが直撃する。
零(これぐらい、堪えてみせる!)
オータム「なっ!? コイツ、神聖の阿保だなっ!」
零(阿保で結構っ!)
レーザーに怯むことなく、背部ユニットに連結されている『アラクネ』の二本の脚部を掴む。
オータム「離れろ、クソガキ!」
零「お言葉に甘えて、ねっ!」
オータム「いぐっ!?」
一斉放射を食らう前に、オータムの顔面を蹴りつけ、その反動で装甲脚を引き千切り距離を取った。
その蹴りつけた時、『アラクネ』の拡張領域にあった後付装備をコピー、展開不能にしておいた。
オータム「こ、この餓鬼ィ!」
零「これで、本気を出せる・・・」
コピーした"レーザーサブマシン"を展開して、天井に張り付いた『アラクネ』を撃ち落とすと、拝借した脚部パーツ二本を『カスタムⅢ』の腰部装甲に押し付ける。
『同調率10%・・・50%・・・80%・・・完了。
オータム「んな!? 聞いてねぇぞ、そんなシステムっ!」
腰部に取り付けられた『アラクネ』の脚部パーツは、完全に私の意志で動かせる。
後ろに体重を置くと、虫のように俺の体を二本の脚で運び、砲口を敵の方に向ければ射撃行動を取ってくれる。
これぞ、『カスタムⅢ』の
オータム「くそっ、次から次へとイレギュラーが起きる・・・!」
この能力は、学園側にも開発国のフランスにも伝えていない。
織斑先生にはバレているだろうが・・・。
零(何とか、時間を稼いで───でも、この事がバレれば学園祭は)
それは駄目だ。
明日は、簪お嬢様と一緒に学園内を回る約束をしている。
そしてまた、私が初めて会った時と同じように・・・いやそれ以上に、良い関係を築いてほしい。
零(だったら、ここでねじ伏せる!)
捕えた後の事は・・・後で考える事にしよう。
両手で構えたマシンガンと、奪った脚で連射しながら突っ込む。
オータム「舐めんじゃねぇ!!」
向こうも格闘戦闘に切り替えたらしく、跳躍後に残り六本の脚で攻撃を仕掛けてきた。
その動きは、非常に機敏で相手の操縦スキルの高さが窺える。
壁を壁へ、上へ下へとレーザーを避けていく『アラクネ』は、いとも簡単に懐へ飛び込んで、私を四本の脚で拘束し、残り二本の脚で『カスタムⅢ』に付けられた脚を抑え込む。
諦めず、ゼロ距離でマシンガンで攻撃するが、まったく傷がつかない。
オータム「ハッ! 勝ちを急ぎすぎたな!」
奪った脚二本は引き千切られ、抵抗していた攻撃も止められた。
糸にまかれ、捕食を待たされている虫の気分だ。
オータム「さ~て、どう料理してやろうか」
腰に取り付けられたカタール二刀を持って、不敵な笑みを浮かべるオータム。
零「・・・」
オータム「その顔、気に入らねぇな!」
侮蔑な目をした訳でもないのに、急に怒り出したオータムの剣撃が着実にSEを削り取っていく。
殺られる・・・と思っても時すでに遅く、『カスタムⅢ』は光の粒子となって消えていった・・・エネルギー切れだ。
零「くっ・・・」
オータム「ひひっ、震えてんじゃねぇか!」
カタールの刃が、左目の眼帯のゴムを切る。
ひらっと落ちるラウラさんから借りた眼帯・・・弁償しないと。
オータム「せっかくだ、その目玉を引ん剥いてやんよ」
生身の人間が、ISの力に勝てる訳もなく、左の瞼を無理やり剥がされた。
零「あぁぁっ!」
激痛と、止めどなく流れる血液。
きっとオータムは、苦痛に顔を歪める私の顔を見て笑っているのだろう。
オータム「・・・」
だが、うっすらと目を開けると、オータムの表情は驚愕一色に染まっていた。
オータム「てめぇ・・・"ファクター"か」
零「え?」
ファクター・・・?
オータム「やっぱ、ここで始末する」
先ほどまでの狂気は消え、冷徹・冷静にそう宣言された。
カタールを振り上げたのを視認する。
死ぬのか・・・私はここで・・・!
??????「その人を離して!」
オータム「うぐっ!?」
突如、一発の銃声が響くと、私を拘束していた『アラクネ』の脚部が砕けた。
その後も、数発の弾丸が私の拘束を解いていく。
オータム「くそっ、新手か・・・出直した方がよさそうだ。命拾いしたな」
更衣室の照明灯を落としたオータムは、非常灯が点くまでの数秒の間に姿を消す。
??????「まてっ!」
????「いや、追わない方がいい。追いつけないだろうから」
零「・・・デュノア、さん?」
シャルロット「大丈夫? って、目から血が出てるよ! 早く保健室に!」
『カスタムⅡ』の展開を解いたデュノアさんが、駆け寄ってくる。
私は咄嗟に左目を手で覆い隠した。
シャルロット「ほら、よく見せて」
零「だ、大丈夫ですから」
シャルロット「大丈夫じゃないって!」
どうにかして介抱しようとしてくるデュノアさんの手を、払い除け続ける。
すると、デュノアさんと一緒にいたスーツの男性が口を開く。
????「本人が"別にいい"って言ってるんだから、そこまで構う必要もないんじゃない?」
シャルロット「あなたは黙っていてください!」
????「お~、こわっ。義理の兄に対する言葉とは思えないね」
零「兄?」
シャルロット「気にしないで。それよりも早く保健室に行こう」
????「なら、僕は先生でも呼びに行こうか」
零「っ・・・それは、ダメです」
この事を知られたら、学園祭は強制的に打ち切られる!
シャルロット「何言ってるの? 落合君は襲われたんだよ! それにあの人を放っておいたら───」
????「いや、確かにその方が僕らとしてもいいね」
シャルロット「っ、でも!」
????「シャルロット。君は自分の立場を考えて、発言をした方がいいと兄は思う訳だ」
シャルロット「・・・くっ」
????「この更衣室の整理は任せておいてくれ。君はその怪我をどうカモフラージュするかを考えた方がいい」
上から目線の話し方、デュノアさんを脅すような発言・・・しかも、デュノアさんの義理の兄。
この人は何者・・・?
????「ではな、シャルロット。また明日」
シャルロット「・・・行こ」
零「う、うん・・・」
肩を持ってくれるデュノアさんの顔は暗い。
男の方は、私達が出ていくのを見つめている・・・監視しているみたいに。
シャルロット「あの人と一緒に居た事、誰にも言わないで」
アリーナを出た時、デュノアさんがか細い声で言ってきた。
私は頷いただけで返して、人気のない校舎裏を通り、保健室へと向かう。
この時、何で学園祭を中止にしなかったのかと、明日の私は後悔した・・・。
スコール「マーム、そろそろ日本よ」
マーム「[パチッ]・・・はい」
旅客機のリクライニングシートに腰掛ける高級なドレスを着こむスコールと、お馴染みの修道服で身を包むマーム。
マーム「・・・」
マームが首に下げている十字架に祈りを捧げてる。
その様子を、スコールは冷めた目で見つめていると、胸の谷間からバイブ音が鳴る。
スコール「もしもし・・・オータム? 何かあったの?───へぇ。面白いわね」
マーム「?」
スコール「ああ、こっちの話よ───ええ。エムの方には私から伝えるわ。もう、そう警戒しない。彼女は私に逆らえないわ。ええ、それじゃ」
通話を切った携帯を再び胸の谷間に戻したスコール。
スコール(ふふっ。まさか、あんなところに"過去の遺産"が残されているなんて・・・欲しいわね、そのファクター)
『まもなく着陸します。シートベルトのご確認の上───』
スコール「マーム、あなたにも働いてもらうわ」
マーム「はい・・・あなたのご命令ならば」
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