story17 対決!サンダース大学附属高校!
『説明した通り、今回はどちらかのフラッグ車を先に戦闘不能にすれば勝ちになります』
一列横隊に戦車が並び、無線で各車に伝えられる。
『事前に秋山さんと鈴野さんが掴んでくれた情報通りみたいです。サンダースは簡単には撃破されないと読んで、フラッグ車の護衛は無く、九両を投入してきます』
「・・・・・・」
『となると、全車輌でディフェンスラインを押し上げてくるつもりです。性能が攻守共に私達より上ですから・・・・・・とにかく、こちらは落ち着いて戦いましょう!』
(落ち着いて、か・・・)
『機動力を生かして、常に動き回ってください!敵を分散させ、一両ずつⅢ突と五式、四式の前に引きずり出して、確実に撃破しましょう!』
『はい!!』
『それでは、試合開始!!』
アナウンスと共に試合開始の合図である照明弾が揚がると、西住達のⅣ号を筆頭に前進する。
――――――――――――――――――――
それから如月達は移動し、森の中に身を隠す。
『ウサギさんチーム、右方向の偵察をお願いします。アヒルさんチームは左方向を。クマさんチームは中央をお願いします』
『了解しました!』
『こっちも了解!』
「了解した」
『我々あんこうチームとカバさんチーム、ネズミさんチームはカメさんを守りながら前進します』
『あのチーム名はどうにかならなかったのか』
と、河島の呟きが無線越しに聞こえる。
『パンツァーフォー!』
西住の掛け声と共にM3と八九式、如月達の五式はそれぞれの方向へと戦車を進ませる。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「しかし、本当に相手は情報どおりに動くでしょうか」
キューポラから上半身を出して双眼鏡で周囲を見渡している私に早瀬が咽喉マイクを通して聞いてくる。
「向こうだって情報が漏れたんだ。向こうの隊長がフェアな戦いをすることで有名だと言っても、多少の変更はあるはずだ」
「・・・・・・」
『こちらウサギチーム!B0885S地点でシャーマン三両を発見!これから誘き出します!』
と、通信でウサギチームの報告が無線越しに伝わる。
「早速見つけたか」
如月は車内に戻ってキューポラハッチを閉める。
「っ!」
すると無線越しに砲弾の着弾音が響く。
『反対側から更にシャーマンが三両!?完全に包囲されちゃいました!?』
今度は悲鳴に近い声が返ってくる。
「何!?」
『ウサギさんチーム!援軍を送りますから、何とか逃げてください!アヒルさんチーム!クマさんチーム!付いて来て下さい!』
『はい!』
「了解した!早瀬!」
「はい!」
早瀬はすぐに左レバーを引いて五式を方向転換させるとアクセルを踏んで全速力で前進させる。
少ししてⅣ号と八九式と合流してM3の救援に向かう。
「数に物を言わせた戦いとはな。まぁ、そこまでは情報通りか」
「・・・・・・」
しかし鈴野は深く何かを悩んでいた。
「っ!?」
すると突然轟音と衝撃が車内を襲う。
「今度は何ですかっ!?」
「っ!」
如月はとっさにキューポラハッチを開けて外を見ると、左の方より三両のシャーマンが接近して来ていた。
「ファイアフライにイージーエイト、それにジャンボだと!?」
「三両!?囲まれた!?」
隣に併走しているⅣ号のキューポラから上半身を外に出している西住も思わず声を上げる。
「北東に六両、南南西から三両って・・・全十両中九両を一気にこの森に投入するなんて!?」
「やる事が派手な・・・」
思わず舌打ちをする。
「ウサギさんチーム!このまま進むと危険です!停止できますか!?」
『六両から追われて無理でーーーーす!!』
切羽詰り出したな。
「分かりました!アヒルさん、クマさんチームと合流後、南南西に逃げます!」
『分かりました!』
「ちっ!」
如月は急いで車内に戻ると、砲弾ラックより砲弾を取り出して装弾機に乗せ、砲尾のスイッチを押して砲弾を薬室に装填する。
「如月さん!前方にM3を確認!」
「よし!鈴野はシャーマンを牽制!早瀬は西住達と共に逃げるぞ!」
「はい!」
「了解」
そしてM3と如月達が合流すると南南西に方向転換し、そこからⅣ号と五式の砲塔がシャーマン六両の群に向き、主砲から轟音と共に砲弾が放たれてシャーマンの近くに着弾して牽制する。
「っ!前方にシャーマンが二両!」
「なに!?」
とっさにキューポラの覗き窓を覗くと、進行方向にシャーマン三両が回り込んで来ていた。
『回り込んでいた!?』
『どうするの!?』『う、撃っちゃう!?』
「このまま前進します!!敵車輛と混ざって!」
「了解した!」
『マジですか!?』
『了解!リベロ並のフットワークで!』
そのままシャーマン二両へと戦車を走らせると、シャーマン二両が主砲より砲弾を放ってくると、一発がM3の装甲を掠める。
「くっ!」
その直後に砲弾の一発が五式の砲塔天板を掠れて車内に嫌な音が響く。
「うぅ!この音嫌なのに!!」
「無駄口叩いている暇があったら牽制しろ!」
「は、はい!」
坂本はとっさに耳を塞いでいる両手を外して副砲の狙いを付けると、引き金を引いて轟音と共に砲弾が放たれる。
しかし37ミリの砲弾では当然シャーマンの装甲を貫けるはずが無く弾かれるが、少なくとも車内に衝撃を与える事は出来て、行動を遅らせる事に繋がる。
そして如月達の戦車は二両のシャーマンの間を通り抜けると、そのまま一気に高地をジグザグに動きながら登って行き、追手を振り切る。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「な、何とか無事に逃げ切りましたね」
「あぁ」
高地を登り終えて如月は安堵の息を吐く。
「しかし、いきなり九両も投入してくるなんて、大胆不敵ですね」
「だが、あれだけの数が一斉に集まるとはな・・・」
「まるで、最初から分かっていたかのように、私達を待ち伏せていたような・・・」
「・・・やっぱり」
すると鈴野がボソッと言葉を漏らす。
「・・・何か心当たりがあるのか」
「・・・もしかしたら、相手は無線傍受機を使用している可能性があります」
「なに?」
鈴野の言葉を聞き、如月はすぐに首の咽喉マイクを外す。
「無線傍受機を?」
「潜入調査の中で、去年もその手を使っていると聞いたので、もしかすれば今回も・・・」
「・・・・・・」
「・・・?」
すると如月のパンツァージャケットのスカートのポケットに入っているスマホより黒電話の音が鳴る。
(こんな時に誰だ?)
如月はポケットよりスマホを取り出す。
「と、言うより、渋い着信音ですね」
「悪いか?」
「そういうわけじゃないんですが・・・」
「・・・・・・」
「・・・武部からだと?」
送信者は武部からであった。
『C9806G地点に全車両集合とのみぽりんの指令あり。あと、無線封鎖を実行』
「・・・・・・」
私如月無線の電源を切るとコードも抜き、すぐにキューポラのハッチを開けて立ち上がって外に上半身を出すと、上空を見上げる。
「・・・・・・」
視線の先には、ワイヤーに繋がれたバルーンが浮かんでいる。
(鈴野の言った通り、無線傍受機が打ち上げられている・・・。西住もこれに気付いたのか・・・)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そうして指定されたポイントに全車両が集まり、無線傍受機について西住から話される。
「なんてやつらだ。勝つ為には手段を選らばねぇってわけか!」
二階堂は右拳を左掌に叩き付ける。
「ルール上無線傍受機の使用は違反にはなりませんが・・・」
「フェアで戦うと言うのは偽りだったか」
「ひどい!!いくらお金があるからって!!」
「とんだ連中だ」
「この事を講義しましょう!!」
「・・・いいや。その必要は無い」
「え?」
如月が言った事に武部は目をぱちくりと瞬きさせる。
「相手がこちらの通信を傍受するのなら、それを逆手に取ります」
既に策は思い付いているようだな。
「つまり嘘の情報を流すってわけっすね!」
「はい!」
「それで、どういった作戦でいくんだ、隊長殿」
「はい」
そうしてサンダースに流す嘘の情報を話し合う。
――――――――――――――――――――
『全車、0985の道路を南進!ジャンクションまで移動して!敵はジャンクションを北上して来るはずなので、通り過ぎた所を左右から狙って!』
『了解です!』
『こっちも了解!』
『了解した!』
インカム付きのヘッドホンを持って耳に当て、通信傍受機で傍受した通信を聞いてふっとサンダース附属のアリサは鼻で笑う。
「目標はジャンクション。左右に展開している。囮を北上させて、本隊はその左右から包囲!」
傍受した内容を逆手にとって隊長であるケイに伝える。
『オーケーオーケー!でも、なんでそんな事まで分かっちゃうわけ?』
「女の感です」
『アッハハハッ!そりゃ頼もしい!』
―――――――――――――――――――――
「・・・・・・」
「・・・・・・」
丘の上から如月と西住はキューポラから上半身を出して双眼鏡を覗いてサンダースの動きを見張る。
嘘情報に釣られて三方向に戦車が展開し、その先の丘の向こうにある茂みに八九式が隠れている。
「かかったな」
如月が西住を見ると、軽く頷く。
「囲まれた!全車後退!!」
西住が指示を出すと、八九式は繋がれた木々や丸太を引きずって砂煙を上げながらその場を離れると、サンダースの戦車はその後を追う。
「見つかった!みんなバラバラになって退避!38tはC1024R地点に隠れてください!」
指示を出し終えると、西住は首につけている咽喉マイクを外し、如月も咽喉マイクを外して見ると、互いに頷き合って車内に戻る。
「早瀬!C1024Rに向かうぞ!」
「了解!!」
早瀬は右履帯を中心に信地旋回を行って五式を後ろに向けさせて囮の地点へと進ませる。
既にその地点には四式とⅢ突が待機しており、五式とⅣ号を四式とⅢ突の両側に茂みに隠して停車させる。
「・・・来たか」
するとキルゾーンにシャーマンとジャンボが入ってきて、砲塔を回転させて周囲を確認する。
と、シャーマンがⅢ突に気付いたのか砲塔が動きを止めるが、時既に遅し。
「撃て!!」
如月の叫びと同時に、五式の主砲と副砲が轟音と共に砲弾を放つと同時にⅣ号とⅢ突、四式も砲弾を放ってシャーマンとジャンボに着弾する。
五発中三発の直撃を受けたシャーマンは砲塔天板より撃破された事を知らせる白旗が揚がる。
ジャンボは正面装甲にⅣ号の砲弾と五式の副砲の砲弾が着弾したがどちら共砲弾を弾いており、とっさにその場を離れようと撤退する。
「逃がすな!」
如月は砲弾を装弾機に乗せてボタンを押し、薬室に装填した直後に主砲より砲弾が放たれるが、ジャンボの砲塔後部に着弾するも弾かれる。
「ジャンボ硬すぎる!!」
その光景を見て坂本は言葉を漏らす。
「やはり、車体後部を狙うべきだったな」
「すいません。とっさに狙いを付けたのでずれました」
「まぁいいさ。一両撃破したのだからな」
キューポラの覗き穴越しに撃破されたシャーマンを見る。
「ここからが本番だ」
ニヤリと口角が上がる。
「やりましたね、如月さん!」
と、坂本が如月に向けて言う。
「あぁ。しかし、西住も演技がいい。それとも向こうの警戒心が緩いからか。まぁどちらにしても成功したのだ」
それから立ち上がってキューポラハッチを開けて上半身を外に出して隣で停止しているⅣ号のキューポラから同じく上半身を出している西住を見る。
「それで、これからどうする」
「はい。既に武部さんに作戦を伝えて各戦車長に伝えています。これから偽の情報を流します」
「そうか」
「ですが、フラッグ車を探すのに時間を掛けてしまったら本隊に勘付かれます」
「そうなると、勝機は薄くなる、か」
「はい」
「・・・・・・」
本隊と合流されてしまえば、大洗の勝ち目は薄くなってしまう。
(と、なれば、戦力を削るのは必須・・・)
「西住」
「何ですか?」
「意見具申をするが、偽情報を流した後、我々とネズミチームは別行動をとらせてもらう」
「どうしてですか?」
当然西住は疑問に思い、聞き返す。
「フラッグ車を発見するまでか、もしくは発見後フラッグ車と合流させないように本隊の戦力を削る」
「そ、そんな!?一両撃破しても、まだ相手は九両も居るんですよ!フラッグ車を退かしても八両。たったの二両では・・・」
「心配するな。五式と四式の性能だからこそだ。それと、偽情報と一緒に、もう一つ情報を流してもらえないか?」
「え?」
西住はキョトンとする。
「いい考えがある。うまく行けば、全車両を一度に相手にしなくて済む」
如月はニヤリと口角を上げる。
――――――――――――――――――――
「いい気になるなよ・・・。無名校が」
苛立った様子でアリサは無線傍受機の電波を調整する。
『全車、さっきの115高地に集合してください。ファイアフライが居る限り我々に勝ち目はありません。危険ではありますが、115高地に陣取って、上からファイアフライを一気に叩きます』
と、傍受した無線がアリサの耳に届く。
『そして、五式と四式は38tを連れてB0895G地点を陣取ってください』
その無線を聞き、アリサは「くっくっく・・・」と静かに笑う。
「アッハッハッハハハハッ!!」
そして高らかに笑いを上げる。
「捨て身の作戦に出たわね!!
でも、丘に上がったら良い標的になるだけよ。115高地に向かってください」
『どういうこと?』
疑問な声で隊長のケイより返事が返ってくる。
「敵の車輌がそこに集結するようです。それと、B0895Gに車輌を回してください。そこにも集結しているようです」
『ちょっとちょっと。それ本当なの?どうしてそんな事まで分かっちゃうわけ?』
当然正確過ぎる情報にケイは疑いをかける。
「私の情報は正確です」
『!・・・オッケー!』
そうしてケイは無線を切る。
――――――――――――――――――――
「・・・・・・」
自分が指名したポイントに、ネズミチームの四式と共に茂みの中に隠れ、五式の前で双眼鏡を手にして覗き、監視する。
「しかし、本当に連中は来るのか、副隊長よ?」
隣で同じく双眼鏡を手にして覗く二階堂が聞いてくる。
「無線傍受機に頼っている輩がさっきの返り討ちは偶然だと思っているのなら、位置が分かってるフラッグ車を見す見す逃すはずが無い」
「そりゃ、まぁフラッグ車をやれば勝てるんだからな。向こうがその情報を真に受けているかは別だがな」
「そうだな」
そこはある意味賭けに近い。失敗した時のデメリットが大きい。
「で、もしこっちに大量に来たらどうするんだ」
「恐らくは来ない。来ても精々半分ぐらいだろうな」
「どうして分かる?」
「西住が最初に流した偽情報を元に本隊を向かわせて迎撃する。フラッグ車が居る別働隊にも向かわせるとなれば、二つに分けるだろう」
「・・・・・・」
眉を片方顰めるも、二階堂は双眼鏡を覗いて茂みの隙間より前方を監視する。
「・・・・・・!」
すると、こちらに向かってくる戦車が視界に入る。
「シャーマン二両に、イージーエイト、ジャンボの四両か」
「さすがにファイアフライが居るのは、さすがに欲張りすぎたか」
一番厄介なファイアフライを撃破出来れば楽だったが、他に厄介な二両がこっちに来ただけでも良しとしよう。
「だが、大方副隊長の読み通りだぜ!」
「あぁ」
そうして如月と二階堂はすぐに五式と四式に戻ってキューポラハッチより車内に戻る。
『それで、どう攻める気だ?イージーエイトならまだしも、ジャンボの硬さはさっきの通りだろ』
無線傍受をされない為に二階堂は無線ではなく、携帯電話で如月と通信を交わす。
「分かっている。だが、例外があっても、大抵の戦車は後ろが弱い」
『それはそうだろうが、簡単に後ろを取らせるわけないだろ?』
「だから、今から作戦を伝える」
如月はキューポラの覗き窓越しに前方を覗き、四両の動きを監視する。
「最初の砲撃で先頭のシャーマンを撃破する。混乱している内に素早く次弾を装填。すぐにイージーエイトとジャンボの足を止める」
『うまく行くのか?』
「戦いに絶対は無い。だが、多少の無茶は通せれる。この二両ならな」
『なるほどな。相手も相手なら、こいつは幻に終わった対決って言った所か』
「今思えば、そうだな」
元々はシャーマンに対抗する為に作られた五式と四式。当時では成し得なかった対決が、今始まろうとしている。
「まずは先頭のシャーマンを叩く。その後は速やかに次弾を装填し、そちらがジャンボの足を止めてくれ」
『了解した』
「では、健闘を祈る」
『そっちもな』
如月はスマホをポケットに戻す。
「鈴野、坂本。さっき言った通りに、先頭のシャーマンに撃ち込め。発射のタイミングはそちらに任せる」
「了解!」
「はい」
「その後鈴野はイージーエイトの転輪、もしくは履帯に向けて砲弾を撃ち込め。二回の砲撃後、合図と共に早瀬は五式を発進させろ」
「分かりました!」
各員が身構える中、如月はキューポラの覗き窓を覗いてシャーマンの動きを見る。
向こうは怪しむ様子もなく、道を大きく外れた場所にある茂みの前を通り過ぎろうとしていた。
その瞬間に、五式の主砲と副砲と四式の主砲より轟音と共に砲弾が放たれ、一直線に先頭を走るシャーマンに着弾し、その瞬間に撃破を知らせる白旗が揚がる。
更に撃破されたシャーマンに続いていたシャーマンとイージーエイト、ジャンボが次々と追突して混乱する。
「次弾装填!!」
如月は空薬莢が排出されると同時に持っていた砲弾を装弾機に乗せて砲尾のスイッチを押して薬室に装填すると叫び、それを合図にして鈴野は引き金を引いて砲弾を放ち、同時に四式も砲弾を放ってそれぞれイージーエイトの転輪やジャンボの履帯に着弾して動きを止める。
「よしっ!派手に行こう!!」
早瀬はアクセルを踏んで五式を発進させると、四式も同時に発進して茂みを押し退けて飛び出す。
シャーマンはとっさに砲塔をこちらに向けて砲弾を放ってくるが、とっさに向けて撃った為に明後日の方向に飛ぶ。
「青嶋!!ぶちかませ!!」
二階堂が叫ぶと同時に三枝は四式を急停止させ、直後に砲手の青嶋は引き金を引き、四式の主砲より轟音と共に砲弾が放たれてシャーマンの砲塔基部に着弾し、直後に砲塔天板より白旗が上がる。
イージーエイトが五式に主砲を向けると砲弾を放つも、砲弾は砲塔右側部をかすめ、すぐに五式は砲塔を回しながらイージーエイトの背後に回る。
とっさにジャンボが砲塔を回転させるも、砲身がイージーエイトの砲塔に引っ掛かって動きを止める。
「撃て!」
真後ろを取って五式の主砲より砲弾が放たれ、砲弾は一直線にイージーエイトの車体後部に着弾し、エンジン部より煙が上がって砲塔天板より白旗が揚がる。
ジャンボはその場から動こうと残った片方の履帯で破壊された方を中心にして回転し、何とか五式の方を向くと主砲を向けて砲弾を放って五式の車体に着弾させるが、火花を散らして弾かれる。
「っ!」
しかし車内に衝撃が伝わり、砲弾を抱えていた私は衝撃でバランスを崩し、左腕から床に倒れ込む。
「貰ったぁっ!!」
と、ジャンボが車体の後ろを向けた方には、四式が待ち構えており、主砲より轟音と共に砲弾を放ち、ジャンボの車体後部を撃ち抜き、直後に砲塔天板より白旗が揚がる。
「大丈夫ですか、如月さん!?」
「あぁ。心配ない」
砲弾を抱えたまま何とか立ち上がり、砲弾を装弾機に乗せてスイッチを押し、薬室に装填する。
「・・・・・・!」
しかし、左腕に湿った感触が広がっていき、地味に痛い間隔が広がる。
(くそ・・・。これくらいで出血とは・・・)
痛みを気にせずに、一旦席に座る。
「少し焦りましたね」
「だが、75ミリ装甲そう簡単には抜けはしない」
キューポラハッチを開けて立ち上がり、上半身を外に出すと四式がバックで五式の隣に来るとキューポラハッチが開き、二階堂が出てくる。
「すげぇなホント。まさか一気に四両も、しかもイージーエイトやバカに硬いジャンボまで撃破出来るとは」
「私もまさかここまでうまく行くとは思ってなかった。だが、これで向こうも黙っては無いはず」
「・・・・・・」
すると如月のスマホより黒電話の着信音がしてスカートのポケットより取り出す。
「武部からか。と言う事は西住から何かの連絡か」
スマホを操作してメールを開く。
『敵フラッグ車発見し、現在フラッグ車を追撃中です!先ほどサンダースの戦車撃破のアナウンスが流れたので、ホッとしています。如月さん達もすぐに合流を!』
と、フラッグ車発見と追撃の報告と、フラッグ車発見ポイントが書かれていた。
「どうやら向こうはフラッグ車を見つけたようだな」
「おぉいいね。どうやらこっちにも運が向いてきたようだな」
「だと良いんだがな。とりあえず、西住達と合流する」
如月は砲塔内の鈴野より地図を手渡してもらい、天板上で広げる。
「だが、少しばかり距離があるな」
現在地点と発見ポイントと距離が開いている為に、そこから今現在の西住達がいると思われる地点を推測しても、合流には時間が掛かる。
(下手すれば残りの本隊と鉢合わせになる可能性がある。ファイアフライが残っているとなると、さすがに五式と四式でも耐えられん)
頭の中で即時に計算を行い、西住達と確実に合流できるポイントを探る。
「ネズミチームは我々に付いて来い」
「了解!」
二階堂が砲塔内に戻ると、如月も砲塔内に戻ってハッチを閉める。
「早瀬。私が指示するとおりに走らせろ」
「了解!」
そうして早瀬は右のレバーを引いてアクセルを踏み、右側履帯を中心に信地旋回し、後ろを向くとレバーを戻して前進させる。
その後に同じように信地旋回して後ろを向くと、四式が後に付いて行く。
「ほ、本当にそんなルートで行くんですか?」
如月が言ったルートに早瀬は戸惑いを見せる。
「こうでもしないと、早期に西住達と合流は出来ん」
「しかし・・・こんな荒れた林の中を通るなんて、途中で立ち往生する可能性が」
「承知の上だ」
「えぇぇ・・・」
「とにかく急ぐぞ。合流する前に西住達が全滅したなど、シャレにならん」
「それは・・・まぁそうですが・・・」
戸惑いながらも、ギアを一速上げて速度を上げる。
「っ!」
すると今までにない砲撃音が響き渡る。
「今の砲撃音は!」
「・・・ファイアフライ。17ポンド砲!」
「かなり距離があるはずなのに、それでも聞こえるなんて・・・」
「しかも、砲撃音があったと言う事は・・・!」
如月も坂本と同じ考えであった。
「本隊が西住達を見つけたか。急ぐぞ!」
「了解!」
ギアをもう一段上げてアクセルを踏み、スピードを上げる。
「・・・・・・」
現状はかなり追い詰められていた。
アヒルチームがフラッグ車を発見し、そのまま開けた場所へと誘導し、五両でフラッグ車の追跡を開始。
最初こそ優勢になったかと思われた。
がしかし、しばらくしてファイアフライを含む五両のシャーマンがこちらを見つけ、反撃を開始する。
フラッグ車を続けて攻撃するも、行進間射撃で、しかも最高速度で走行しているとあって、ほとんど当たらない。
そしてアヒルチームの八九式が撃破され、その後ファイアフライによってウサギチームのM3までもが撃破されてしまう。
そうして今に至る。
前後からシャーマンの砲撃がある中、西住は打開策を何とか考え出そうとするも、もう考えうる手を出し尽くしてしまった。
既に如月達にフラッグ車追撃の事は伝えてはいるが、距離を考えると、現状で合流は望めない。
するとⅢ突が速度を落としてフラッグ車である38tの後ろへと移動する。
「弁慶の立ち往生のようだな」
「もはや・・・・・・これまでか」
「蜂の巣に、されてボコボコ、さようなら」
「時世の句を詠むな!!」
歴女チーム事カバチームのメンバーがぼやいたり叫んでいる間にも、シャーマンは次々と砲弾を放ってきて、38tの近くに着弾する。
「・・・・・・」
西住は震えている手を反対側の手で押さえて、深呼吸をして落ち着かせる。
――――――――――――――――――――
「・・・・・・」
鬱蒼としている林の中を五式と四式が突き進む中、如月の左腕より僅かながら出血するも、腕を組んで貧乏揺すりする。
結構血がジャケットの袖に染みて来ているが、ジャケットの色から出血は気付かれていない。
少し前に八九式とM3の撃破を知らせるアナウンスが流れてから、車内の空気が少し湿気っていた。
「ファイアフライの砲撃音がまた響いてから、西住隊長から連絡は無いんですか?」
「あぁ」
「もしかして、やられたのでしょうか」
不安げな声で坂本が言葉を漏らす。
「縁起でも無い事を言わないで」
少し苛立った声で鈴野が言う。
「・・・・・・」
坂本はビクッと身体を震わせるとすぐに副砲のスコープを覗く。
(耐えてくれよ、西住)
「四両撃破したと思ったら、一気に形勢が逆転したっすね」
「予想より向こうの動きが速かったか」
三枝はギアを一段上げて速度を上げる。
「・・・・・・」
砲弾を抱えている高峯の表情に少し影が差す。
「こいつは・・・まずいかな」
四式の車内でも、それぞれがぼやいていた。
「おめぇら!こんくらいで湿気るんじゃねぇぞ!!」
二階堂が叱責して全員気を引き締める。
「まだ負けたわけじゃねぇんだ!!次弱音吐いたらぶっ飛ばすぞ!!」
『は、はい!!』
「・・・・・・」コクコク
――――――――――――――――――――
Ⅳ号と38t、Ⅲ突は降り注ぐ砲撃の中、とにかく走り続ける。
Ⅳ号が轟音と共に砲弾を放つも、砲弾は明後日の方向へと飛んでいく
すると砲弾が38tの砲塔側面を掠り、Ⅲ突の近くに砲弾が着弾して衝撃で少し軌道がずれる。
『あんなに近付いてきた!!』
『追いつかれるぞ!!』
『ダメだぁ!!揺れたぁぁぁっ!!』
無線で悲鳴は声が飛び交う中、西住は手を握り締める。
「み、みんな落ち着いてください!!」
と、咽喉マイクに手を当てて、大声で言うと慌てていたメンバーは静かになる。
「落ち着いて砲撃してください!敵も走りながら撃ってきますから!!」
「みぽりん」
「・・・・・・」
「行進間射撃では当たる確率は低いです!フラッグ車に当てさえすれば、勝つんです!!今がチャンスなんです!!」
「西住殿」
「諦めたら・・・・・・負けなんです!!」
最後に間を置き、大声で叫ぶ。
「諦めたら――――」
「負け・・・・・・」
『その通りだな!!隊長!!』
『よく言ったぞ、西住!』
「っ!」
と、無線で聞き慣れた声がすると、Ⅳ号だけではなく、38t、Ⅲ突のメンバーも驚く。
するとシャーマンが通り過ぎた所で、近くの林より五式と四式が草や小さい木々を踏み倒しながら飛び出て来て、ドリフトの様に下り坂を滑りながらシャーマンの後ろを取る。
「五式と四式です!!」
喜色が戻った声でハッチを開けて後ろを見ていた秋山が叫ぶ。
「翔さん達!!間に合ったんだ!!」
「あの距離からここまで」
西住は信じ難い表情で言葉を漏らす。
「何とか間に合いましたよ!!」
シャーマンを追撃しながら、如月はキューポラの覗き窓越しにシャーマンを覗く。
「如月さんの読みが当たりましたね」
「あぁ。ネズミチーム。砲弾が無くなるまで撃ち込め!」
『了解!!』
と、四式より轟音と共に砲弾が放たれ、シャーマンの近くに着弾すると、続いて五式の主砲より轟音と共に砲弾が放たれ、シャーマンの車体後部に着弾し、動きを止めると同時にエンジン部より煙を上げながら砲塔天板より白旗が揚がる。
行動不能になったシャーマンを避けながら、如月は既に抱えている砲弾を装弾機に乗せてスイッチを押し、薬室に装填させる。
慌てた様子でシャーマン二両の内一両はこちらに砲を向け、砲弾を放ってくるが四式と五式の間に着弾する。
「ファイアフライを最優先に狙え!あれさえ撃破出来れば形勢はこちらに傾く!」
「はい!」
『おうよ!』
と、四式の主砲と五式の主砲と副砲より轟音と共に砲弾が放たれ、ファイアフライの周囲に着弾し、副砲の砲弾が砲塔後部に着弾して弾かれる。
するとⅣ号が丘の上へと登って行くのがキューポラの覗き窓を覗いて分かった。
(上からフラッグ車を狙い撃つつもりか)
するとファイアフライがⅣ号の後を追いかけようとしていた。
とっさに五式と四式は主砲をファイアフライに向けて砲弾を放つも、砲弾は近くに着弾するだけで撃破出来なかった。
「くっ!最低でも目の前のシャーマンを撃破しろ!最悪の場合我々でフラッグ車を撃破する!」
すぐに砲弾を装弾機に乗せてスイッチを押し、薬室に装填すると同時に鈴野が引き金を引いて砲弾を放ち、シャーマンの近くに着弾すると、すぐに四式も主砲より砲弾を放ち、先ほど外したシャーマンに砲塔基部に着弾させ、砲塔天板より白旗が揚がる。
すると直後にファイアフライの17ポンド砲の砲撃音が辺りに響き渡る。
「っ!」
如月はとっさにキューポラハッチを開けて立ち上がり、上半身を外に出して外を見る。
しかしⅣ号が撃破されたアナウンスは流れてこない。
(うまく避けたのか)
胸の撫で下ろして安堵の息を吐くと、すぐに車内に戻る。
それから少しして、二つの音が違う砲撃音が響き渡り、二つの鈍い金属音が響く。
「・・・・・・」
次の砲弾を装弾機に乗せようとした時にそれがした為に、如月は動きを止める。
それは他のチームの戦車も同じで、サンダースの戦車も(もう一両しか目の前には残ってないが)動きを止めている。
『大洗女子!Ⅳ号戦車走行不能!』
そのアナウンスを聞いて一瞬背筋が凍るような感じが過ぎる。
『同じく、サンダース大学付属高校フラッグ車!走行不能!!よって、大洗女子学園の勝利!!』
しかし直後にアナウンスが流れる。如月達の勝利を伝えるものであった。
「か、勝った、の?」
呆然として坂本は言葉を漏らす。
「そう・・・・・・みたいね」
鈴野も信じられないように言葉を漏らす。
「か、勝ったんだよ!!私達!!」
早瀬は嬉しさのあまり声を上げ、両手を上に勢いよく上げるも、ハッチに思い切って両手を打ち付ける。
そして呻き声を出して悶絶する。
「・・・・・・」
如月はゆっくりと息を吐くと、砲弾を砲弾ラックへと戻す。
(よくやったな、西住)
微笑みを浮かべて、内心で呟く。
――――――――――――――――――――
「一同!!礼!!」
『ありがとうございました!!』
そうして両校は横に一列に並び、一斉に頭を下げる。
すると観客席より一斉に拍手喝采が送られる。
「凄い拍手です」
「勝ったぁぁぁぁ!!」
大きな拍手に五十鈴が驚いていると、武部が両腕を上げて飛び跳ねる。
「シャーマン相手に勝てるなんて・・・感動です!!」
「・・・・・・」
「これが勝利の美酒と言うやつか」
拍手喝采を受けて如月は内心で勝利を喜んだ。
「本当に私達・・・勝ったんですね!!」
「あぁ」
「無理をして情報を手に入れた甲斐がありました」
鈴野の表情に笑みが浮かぶ。
「ハハハ・・・。嬉しいけど、痛い・・・」
まだ両手が痛いのか、早瀬は涙目で両手を摩る。
「あなたがキャプテン?」
と、サンダースの隊長であるケイが西住の元へとやって来た。
「は、はい」
西住は戸惑いながらも返事をすると、ニヤリとケイは口角を上げる。
「エキサイティング!!こんなに楽しい試合が出来るとは思わなかったわ!!」
と、西住をハグして言葉を掛ける。
「・・・・・・」
驚いて固まる西住をケイは離れると肩に手を置く。
「あ、あの」
「なに?」
「どうしてあの時四両でしか来なかったんですか?」
「あなた達と同じ車輌数で来たのよ。残りは別の所を陣取っていた部隊に向かわせたの」
「ど、どうしてですか?一気に来ていれば勝てたはずじゃ・・・」
「ザッツ戦車道!!これは戦争じゃない!道を外れたら戦車が泣くでしょ?」
「・・・・・・」
(ここまでフェアな隊長だったのか。と、なると、無線傍受機など汚い手を使うとは思えない。部下の誰かが独断でやった、と言う事か)
一瞬疑っていた自分が恥ずかしいと思った。
「しかし、本当に悪かったわね。無線傍受なんてつまらない手を使って」
申し訳なさそうに髪を掻きながら言う。
「いえ。もしあの時残りのメンバーが来なかったら、負けていました」
「・・・・・・」
もし如月達の到着が遅れていれば、恐らく西住達はやられていたかもしれんな・・・
「でも、勝ったのはあなた達よ」
と、右手を差し出すと、西住は戸惑いながらも「あ、ありがとうございました!!」と言い放って右手で握手を交わす。
その後サンダースの列に戻ると、アリサの肩に手を置いて数回頷き、何かを語り掛けるとアリサは表情が涙目になり、ガクッとうな垂れる。
するとケイは戦車の前に立つと、こちらの方に向き直り、それと同時に他の生徒も足を揃えると未だにショックなアリサも姿勢を正し、ケイが敬礼をした直後に他の生徒も敬礼をする。
「これは・・・」
「・・・・・・」
「みんな、いい相手と戦えたわね!」
と、如月達の元に試合を観戦していた超野教官がやって来る。
「負けても襟を正す。これは中々出来る事じゃないわ。でも、それが真の戦車道なの!」
「・・・・・・」
「こうした精神があってこそ、かつては戦争の道具でしかなかった戦車は、一つの武道へと昇華されたのよ!だから!」
と、超野教官はビシッとスタンドを指差す。
「今こうして、みんなで盛り上がる事が出来る!
なら、あなた達のすべき事は?」
超野教官の言葉に、私と西住はすぐに敬礼を崩さないサンダースの方を向く。
「大洗女子!サンダース大附属に、敬礼!!」
如月が言い放つと、他のメンバーもすぐにサンダースの方に向き直ると、サンダースに向けて敬礼をする。
戦車道は礼に始まって、礼に終わる。まさにこういう事なのだな。
対戦相手や試合を見ていた観客だけではなく、戦車道の歴史を築いてきた者達への敬意を払っている。
――――――――――――――――――――
空がオレンジ色に染まりつつある中、隊長が乗っていたシャーマンとファイアフライ以外はトレーラーの荷台に乗せられて運ばれていく光景を私達は見ていた。
「さぁて!!私達も撤収!」
背伸びをしながら武部が呟く。
「帰ったらアイス食べて帰ろっか?」
「あぁ。行く」
冷泉が頷いた直後に、冷泉の携帯電話より猫の鳴き声の着信音がする。
「ケータイ鳴ってるよ?」
「あぁ」
携帯電話を取り出して相手を見る。
「誰から?」
「知らない番号だ」
疑問に思いながらも、電話に出る。
「はい・・・・・・・・・・・・え?」
すると冷泉の表情に動揺の色が浮かぶ。
「どうしたの?」
「い、いや。な、なんでもない」
平然を装うとするも、声と手は震え、携帯電話を落としてしまう。
「!何でもないわけないじゃない!!」
ただならぬ状況に武部は問い詰める。
「・・・・・・おばぁが倒れて、病院に」
「えぇっ!?」
「・・・・・・!」
「す、すぐに病院へ!」
「でも、撤収までにはまだ時間が掛かります!」
「学園艦に寄港してもらうにも、ここから大洗まで距離がある。すぐには着けんぞ」
「・・・・・・」
すると冷泉は靴と靴下を脱ぎ始める。
「な、何してんの、麻子!?」
「泳いで、行く!」
「ま、待ってください、冷泉さん!!」
「無茶言い過ぎよ、麻子!!」
「冷静になれ!冷泉!」
制服を脱ぎ出そうとする冷泉を五十鈴と武部と私が止める。
「私達のヘリを使って」
「・・・・・・?」
すると後ろから聞き覚えのある声がして、そっちの方を向くと、まほと試合開始前に西住と話していた黒森峰の生徒と、斑鳩家の焔が居た。
「お姉ちゃん」
「・・・・まほ」
「急いで」
「た、隊長!こんな子達にヘリを使わせるなんて!」
如月達が気に食わないのか、黒森峰の生徒・・・・・・エリカが反論する。
「これも戦車道よ」
「・・・・・・」
まほに言われて黙り込むも、その表情はどこか納得の行かないものだった。
少しして黒森峰のヘリが準備されていつでも離陸できる状態になる。
「・・・・・・」
まほはエリカに一言言うと、西住の隣を通り過ぎる。
その際に西住は「ありがとう」と言う。
「斑鳩家は困った人を必ず助けるって言う家訓があるのよ。無論、早乙女家以外にはね」
まほに続いて焔も後に付いて行き、如月の隣で一旦立ち止まるとそう告げ、そのまま歩いていく。
そうして冷泉と一緒についていく武部を乗せた黒森峰のヘリは離陸して、大洗の病院へと向かって飛び立った。
「・・・・・・」
するとまた左腕より血が出てきて、僅かに制服の袖に血が染みる。
――――――――――――――――――――
その後黒森峰女学院とと知波単学園との試合が行われ、黒森峰の圧勝に終わった。
その時の映像には、まほが乗る『ティーガーⅠ』を中心に、右にエリカが乗る『ティーガーⅡ』、左に焔が乗る88ミリ砲搭載の『パンターⅡ』が並んでいた。
次に去年の優勝校であるプラウダ高校とポンプル高校との試合が行われ、こちらもプラウダ高校の圧勝に終わる。
最後の映像には、プラウダの副隊長の姿と、『T-35-85』の操縦席のハッチを開けたショートヘアーの金髪の暗い水色の瞳の女子生徒が倒した戦車を見下ろす。
一回戦目の最後の試合では、暗い中とある学園と学校の試合が行われたが、一方的な戦闘でその学園が勝利を収める。
その試合を見ていた人の証言によると、一方的にその学校の戦車が撃破されていき、相手は姿を見せること無く勝利を収めたらしい。
そして最後の映像に映ったのは、勝利を収めた学園の白き虎であったとの事・・・・・・
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『戦車道』・・・・・・伝統的な文化であり世界中で女子の嗜みとして受け継がれてきたもので、礼節のある、淑やかで慎ましく、凛々しい婦女子を育成することを目指した武芸。そんな戦車道の世界大会が日本で行われるようになり、大洗女子学園で廃止となった戦車道が復活する。
戦車道で深い傷を負い、遠ざけられていた『如月翔』もまた、仲間達と共に駆ける。