No.697892

九番目の熾天使・外伝 ~短編その⑫~

竜神丸さん

幽霊騒動その20

2014-07-01 18:09:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1676   閲覧ユーザー数:989

異界と地上世界を繋げる“鍵”。

 

その内部にて支配人、ディアーリーズ、美空の3名はアザゼルと対峙していた。

 

『暁零……貴様ナラ、ここまで辿リ着クだろうと思ってイタ』

 

「こっちも意外だぜ。お前なら、集めるだけ魂を集めてとっとと鍵を発動するもんだと思っていたが」

 

『鍵の力をヨリ強める為ニハ、更に死者の魂ヲ集メテいく必要がアッタのでなァ……それに、貴様をココまで導く必要モアッタ』

 

「俺をだと?」

 

『ソウ、アークコアを所持シタ貴様だ。我等が王ヲ打チ破った貴様の魂ナラ、鍵の力を完全ナモノまで近付けてくれる事ダロウ…』

 

「はん、過大評価してくれちゃってまぁ…」

 

『…それはソウト』

 

「「…!!」」

 

アザゼルの覇気がディアーリーズと美空に向けられ、その瞬間二人の全身が震え出した。

 

『貴様等は何故コノ場にイル? 貴様等にナド、我ハ何の興味も無いのダガナ』

 

(ッ……何だこの覇気は…気力を保つのが、やっと…!!)

 

「ッ…は、ぁ……あ…ぁ…!!」

 

ディアーリーズはどうにか気力で耐えているものの、美空はディアにしがみ付く形でなければ今にも意識が飛びそうな状況だった。それもその筈、美空は本来なら非戦闘員。アザゼルのような強敵がいる場所に、とても立てるような人間ではないのだ。

 

『我を恐レルか……ならば始メカラ、我の前ニ立つな』

 

「ッ!?」

 

無関係かつ戦えない者がこの場にいる事に憤慨したか、アザゼルは構えた剣を振るい美空に向かって巨大な斬撃を放つ。飛来した斬撃は美空の身体を無惨に斬り裂く―――

 

≪ディフェンド・ナウ≫

 

『!?』

 

―――事は無かった。美空の前に割って入ったディアーリーズが即座に氷の障壁を張り、アザゼルの斬撃を防いだからだ。

 

「僕がさせると思いましたか…!!」

 

『貴様カ、面倒ナ…』

 

アザゼルが面倒そうにしている中、ディアーリーズが震える美空の手を握る。

 

「あ…」

 

「大丈夫です、僕が付いてます。あなたは一人じゃない」

 

「…はい…!」

 

ディアーリーズに励まされたからか、それとも自分は一人じゃないと理解したからか。まだ恐怖に怯えつつも美空はディアーリーズの手をしっかりと握り返す。

 

『こんな所マデ来て仲のヨロシイ事だな……ダガ、余所見をシテくれるトハ良い度胸をしてイル…!!』

 

「おっと待ちな」

 

『ッ…!!』

 

再び斬撃を繰り出そうとしたアザゼルに支配人がブレイラウザーで斬りかかり、アザゼルもそれを剣で防ぎ鍔迫り合いとなる。

 

「お前とはいい加減、ケリを着けようと思ってたんだ……まずはクレアを返して貰おうか…!!」

 

『ホウ、アノ小娘の事がソンナニ大事か? ドウせ既に死ンデいる存在だろウ』

 

「死んだ者だろうと、安らかに成仏して欲しいとは思ってるんでね。ま、テメェに今更こんな事を言っても無駄なんだろうけどな」

 

『フン、よく分カッテいるじゃないカッ!!』

 

「ぐ…!?」

 

ブレイラウザーを力ずくで押し返したアザゼルが支配人の腹部を蹴りつけ、持っていた剣を足場に突き刺す。

 

『ならばソノ頑張り……今コノ場で、我が剣の錆トシテくれようッ!!!』

 

「ッ…支配人さん!!」

 

「大丈夫だ、こっちの心配はいらねぇ!!」

 

≪TURN UP≫

 

足場から大量に突き出して来た剣状エネルギーが襲いかかるも、支配人は剣と剣の合間を縫う形で攻撃を回避していき、一本の剣状エネルギーをブレイラウザーの一撃で粉砕。それと同時に支配人の全身をオリハルコンエレメントが通過し、彼をブレイドの姿に変える。

 

「正直、俺も美空ちゃんを守りながら戦える自信は無ぇ!! 付いて来る事を許したのはお前なんだ、何が何でも最後まで守り通せよ!!」

 

「問題ありません、始めからそのつもりです!!」

 

≪オリジン・ナウ!≫

 

「…美空さん、絶対にここから出ないで下さいね」

 

「あ…!」

 

≪イエス・キックストライク! アンダースタン?≫

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

「ウェェェェェェェェェェイ!!!」

 

美空の足元に出現した魔法陣が、彼女の周囲に結界を展開。それを確認したディアーリーズはすぐさまウォーロック・オリジンスタイルへと変身し、冷気の纏われた飛び蹴りをアザゼルに向かって繰り出し、ブレイドもブレイラウザーに電撃を纏わせアザゼルに再び斬りかかる。

 

『愚かナ、そんなに死ニタイのか貴様等は……ならバ』

 

アザゼルが足場に右手を突っ込ませ、そこから大剣を出現させる。

 

『往ねよ、安ラカなままニ』

 

「「!?」」

 

そしてその刃は、二人に向けて振るわれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“鍵”の内部でそのようなやり取りが行われている一方、街中では…

 

 

 

 

 

 

 

『フハハハハハハハ!! さぁ死ね、人間共がぁ!!』

 

『『『『『イィーッ!!』』』』』

 

『『『グルァァァァァァァァ…!!』』』

 

「…ふぅ、やれやれ」

 

巨大戦車に乗ったまま進撃するザリガーナと、その後から率いられるショッカー戦闘員や怪人達。そんな軍団とうっかり遭遇してしまったUnknownは面倒臭そうに薙刀を構える。

 

「あぁもう嫌になっちゃうな。本気出せないからチマチマ倒していかなきゃなんないし、miriは多分逃げようとしたBlazを強制連行してるだろうし…」

 

「はいはい、文句言わずにパッパッと倒しちゃいなさい。どうせこの街じゃ、コジマも駄目でしょうし」

 

「はぁ、最近コジマと触れ合ってないなぁ…」

 

朱音に注意されるも、Unknownはあまり調子が出そうにない。その時…

 

『Unknown、聞こえるかね』

 

「!? 団長?」

 

「え?」

 

Unknownの脳内に、クライシスから念話が届く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「湯島さん!!」」

 

「あ……みん、な」

 

別の場所では、二百式達の案内で刀奈がユウナ達と合流しているところだった。

 

「一人で勝手に動くんじゃねぇよ湯島、心配しただろうが!!」

 

「あ、うん…ごめんね、皆」

 

「あ、あの…! 刀奈ちゃんも、色々ありましたから…」

 

優馬が刀奈の肩を揺さぶりながら怒るも、それをみゆきが宥める。ここで静香が気付く。

 

「そういえば湯島さん、さっき一人で行動してたのって…」

 

「ッ…」

 

「待て、そこからは俺が説明しよう」

 

二百式の口から、これまでに起こった事を説明。事情を知ったユウナ達は、薄々気付いていたスノーズ以外が愕然とした表情になる。

 

「そんな……隼君が、死んだ…?」

 

「すまん湯島……俺、何も知らずにお前を…」

 

「良いの……私も、最初は隼が死んだのが信じられなくって…自分から死のうとしてた…」

 

「湯島さん…」

 

「でも、だからこそ私が生きなきゃいけないって分かったんです。キリヤさんに助けられて、そう思ったんです……だから、私は大丈夫です」

 

「キリヤ兄さんが? …全く、あの人らしいですね…」

 

「? え…」

 

刀奈が無理をしつつも笑顔であろうとするのを見ていられなかったのか、ユウナが刀奈を自身の下まで引き寄せてから抱き締める。

 

「兄さんだけじゃありません、私達も付いています。どうか、自分一人だけで抱え込まないで下さい…」

 

「…ッ…!!」

 

ユウナに抱き締められた事で限界が来たのか、刀奈はユウナの胸元で静かに泣き始め、ユウナはそんな彼女を抱き締めながらその頭を優しく撫でる。それを見て静香や優馬、雅也がやるせないような表情でいる中、二百式は無言でその様子を眺めていた。

 

『聞こえるかね、二百式』

 

「! 団長…?」

 

その時、二百式の脳内にもクライシスからの念話が届いて来た。

 

『団長、今何処で何を…』

 

『この街全体を見渡せるような場所だ。たった今、亡霊達が外に出ないようにする為の結界を張り終えたところなのだが、何しろ相手は亡霊だからな。流石の私も結界で奴等を抑え込むのが手一杯だ……あぁそれと。先程ライオトルーパー部隊から、民間人の避難がほぼ完了したという連絡もあった』

 

『! では…』

 

『結界を張った以上はどれだけ破壊を尽くそうと、結界を解除すれば街は元に戻る。民間人がいない以上、もう被害を心配する必要もなくなったという訳だ。その為、Unknownにも既に連絡済みだ』

 

『Unknownに? …団長、まさかとは思いますが』

 

『あぁ、闘鬼神の使用を許可してやった』

 

『…マジですかい』

 

クライシスから伝えられた言葉に、二百式は思わず頭を抱える。

 

『状況が状況なのでな。何、お前ならちょっとしたフレンドリーファイアに巻き込まれるくらい、大した問題ではなかろう?』

 

『そんな規模のデカいフレンドリーファイアは嫌です、団長』

 

『残念だが、この状況が覆る事は無いだろう。その証拠に、私の視界には現在やたら楽しそうに闘鬼神を振るい続けているUnknownの姿が見えている』

 

『はぁ……分かりました。では俺も、本気で戦っても構わないのですね?』

 

『構わない。鍵の方には現在、支配人とディアーリーズが向かっている。もし行けるようなら、お前も助太刀に向かってやってくれ』

 

『了解です、では…』

 

クライシスとの念話を切り、二百式はユウナ達に声をかける。

 

「さて……全員、話を聞いてくれ。たった今、ほとんどの民間人は避難し終えたと連絡があった。お前達も早く街の外に避難してくれ、ここから先はお前達を巻き込まずに戦える保障は無い」

 

「そのようだね……向こうのビルの先、とてつもなく強い力を感じるよ」

 

「何? …まさか」

 

スノーズの指差した方向に二百式が振り返ると、その視線の先に存在していた複数のビルが突如、細切れにされてバラバラに崩壊していってしまった。これには二百式も数秒間だけ無言になる。

 

「(少しは自重しろ、あの男の娘め)…とにかく、今のような事態がここから先は何度も起こる。命が惜しい奴等はさっさと避難しろ、それを無視するようであれば俺は知らん」

 

「ま、避難した方が利口だろうね……さて、ユウナちゃん」

 

「あ、はい。皆さんも早く」

 

スノーズに案内される形でユウナや教え子達が避難していく中、二百式は手に持っていたスナイパーライフルの弾倉を素早く取り換える。

 

「さて……そこの二人はどうするつもりで?」

 

「私はまだまだ戦えるよ。それに早いところ、アルと合流したいしな」

 

「わ、私も早く、ウルさんやアキさん達と合流したいですから…!」

 

「そうですか。では俺も支配人やディアーリーズの援護に向かいたいので、ひとまず別れ―――」

 

-ズドォンッ!!-

 

「―――ッ…!!」

 

キーラやみゆき達と話していた二百式目掛けて、一発の銃弾が飛来してきた。予め察知していたからか、その銃弾は二百式の持つ太刀で防がれる。

 

「…話してるところを狙うとはな」

 

二百式が睨み付ける方向……その先には、ビルの上から拳銃を構えているバットオルフェノクの姿があった。

 

「キーラさん、後はお願いします。俺は奴とケリを着けなければなりません」

 

「分かった。君も気を付けてな」

 

「お、お気を付けて…!」

 

キーラとみゆきをその場に残し、二百式はバットオルフェノクの待ち構えるビルまで一気に飛び立つ。

 

「さぁ来い、蝙蝠野郎…!!」

 

『フン…!!』

 

二百式のスナイパーライフルから放たれた銃弾と、バットオルフェノクが拳銃から放った銃弾。それらが互いに相殺し合うと同時に、二人は至近距離まで迫り行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、Unknownは…

 

 

 

 

 

 

 

「―――うぉららららららららららららららららぁっ!!!」

 

『『『『『イィィィィィィッ!?』』』』』

 

「…これまた凄い暴れっぷりね、アン娘ちゃん」

 

闘鬼神の装備を許可されたUnknownが、狂喜の笑みを浮かべながらショッカー戦闘員達を次々と斬り伏せているところだった。果敢に挑んだ戦闘員は儚く散って行き、怖気付いて逃げようとした戦闘員も悲運な最期を遂げていっていたりと、傍から見ればあまりに凄まじ過ぎる光景だと思えてしまうだろう。現に、Unknownの暴れっぷりを後ろから見ている朱音は若干だが引いてしまっている。

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハハ!! 良い気分だ!! さぁ、次に私に狩られたいのは一体何処のどいつだい!? 正直に名乗り出て来たまえ!!!」

 

『え、えぇい、何をしている!? 早く奴を始末せぬか!!』

 

『『『キシャアッ!!』』』

 

(…あら? どっちが悪役だったかしら)

 

マスカレイド・ドーパントを容赦なく斬り捨てるUnknownと、そんな彼を意地でも打ち倒そうとするザリガーナ達。朱音の視界からはUnknownの方が悪役のように見えてしまっている辺り、なかなかにシュールな状況と言えるだろう。

 

「かかって来るが良い!! 歓迎しよう、盛大になぁっ!!!」

 

『『『ギシャァァァァァァァァッ!?』』』

 

闘鬼神が一振りされるだけで巨大な衝撃波が発生し、Unknownに飛び掛かろうとしたアントロードの群れが一瞬で消滅。それでもゴ・ベミウ・ギやペリカンオルフェノク、サイ怪人などは怯まず挑みかかる。

 

「臆さず挑みかかる、その意気や良し……だがそぉい!!」

 

『ウグゥッ!?』

 

「お前達如きが今の私に勝とうなど、十年……いや、百年を越しても足りんわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

『ジャ、ジャレソ……アァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?』

 

「それそれもっともっとぉっ!!!」

 

『『『『ガァァァァァァァァァァァァァッ!?』』』』

 

「フハハハハハハハハハハハハハハハ!! 良い気分だぁ!!」

 

「…しばらく放っとこうかしら」

 

ゴ・ベミウ・ギの胸部を闘鬼神が貫き、そこから噴き出した黒い邪炎が彼女の全身に燃え移り始める。そのまま闘鬼神で彼女の身体を斬り裂いてからペリカンオルフェノク、シャークファンガイア、アルゴス、サイ怪人などをすれ違い様に次々と一閃し、撃破していくUnknown。その楽しそうに浮かべている醜悪な笑みに、朱音すらも突っ込みを放棄しそうになるレベルである。

 

『お、おのれ!! ならば我等ゴーストショッカーの開発した、この最新型戦車で吹き飛ばして―――』

 

「あらよっと」

 

-スパァンッ!!-

 

『…ゑ?』

 

ザリガーナが言い切る前に、闘鬼神の刃が戦車の砲身をスッパリと斬り裂いてしまった。これにはザリガーナも思わず目が点になる。

 

「はい、それじゃあトドメの一発5秒前~」

 

『ま、待て!? いくら何でも無慈悲過ぎるだろう!?』

 

「4…3…」

 

『おい、そのカウントダウンをやめろ!? 何をする気だ貴様!!』

 

「2…1…」

 

『『『『『イ…イィーッ!!』』』』』

 

『な!? コ、コラ、お前達!! 私を置いて逃げるんじゃな―――』

 

「0、はいドーン!!」

 

『ま、待て…ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!??』

 

『『『『『イィィィィィィィィィィィィィィィッ!!!??』』』』』

 

Unknownが闘鬼神を一振りした瞬間、そこから発生した巨大な衝撃波がザリガーナの乗った戦車や逃げようとしたショッカー戦闘員達を纏めて飲み込んでしまった。そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬぉぉぉぉぉぉぉ亡霊こっち来んな…ほがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!??」

 

「Blaz-!?」

 

「「…あ」」

 

亡霊に追いかけられていたBlazをも飲み込んだ衝撃波は、そのまま複数の建物ごとザリガーナ達を消し飛ばしてしまった。衝撃波が収まった後、建物があった場所にはBlazが黒焦げの状態で倒れており、ニューがそんな彼の下まで駆け寄る。

 

「「……」」

 

「…おやおや」

 

またやってしまった。もはや回数も覚えてないくらい行われているフレンドリーファイアを、たまたま近くで戦闘中だったデルタが目撃。Unknownと朱音、デルタの3名はそれぞれ視線を合わせる。そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ごめんちゃい☆」

 

「アン娘さん。あなたの部屋、コジマは全て浄化させて貰います」

 

「ギャァァァァァァァァァァァスッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

この日もまた、アン娘が戦犯として確定するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んあ? 何、どうしたんだBlazの奴」

 

「な、何という事だ……美人な亡霊さんまで、一緒に消えてしまった…!!」

 

「まだ美人の亡霊追ってたのかお前」

 

後から合流してきたmiriや蒼崎は、そんな事など知る由も無かったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――何やら、凄まじい音が聞こえたような気がするな』

 

「ッ…うん、それは僕も同感だね…(多分、アン娘君辺りがやらかしたんだろうけど)」

 

別の場所では、ショウとガドルが激戦を繰り広げている最中だった。既にショウは全身から血を流しており、ガドルも身体の数カ所が傷付いていた。そして彼等の周囲は、戦争が起こったと言っても過言ではないほど建物は崩壊し、地面には地割れが発生していた。

 

『まぁ良い、続けるとしよう』

 

「ッ……君は確か、グロンギだったね。君がそこまでして戦う理由は何だい? 君は既に死んでいる存在なのに、そんなにゲゲルとやらを成功させたいのかい?」

 

『…俺が戦う理由、か』

 

ガドルは足元の小さな瓦礫を拾い上げる。

 

『俺はかつて、ゴのリーダーとしてゲゲルに臨み、そしてクウガと戦った……そして俺は負けた。だが俺が負けたのは、クウガの力だけが敗因ではない』

 

「何…?」

 

『お前達リントの戦士の力も、俺が負けた敗因の中に存在していた。あの者達がいなければ、俺は今頃ゲゲルを成功させていたかも知れない……いや、それもあくまで負けた言い訳にしかならんか…』

 

「リントの戦士……なるほど、警察の事か」

 

『だからこそ、俺は今まで以上に興味を持つようになった。リントがどれ程の力を有しているのかを。だからこそお前達の戦う姿を、俺はしばし眺め続けていた……そしてようやく出会えたのだ。俺の全力を正面から受け止めてくれるであろう存在に』

 

「それが僕って訳か……だが、何故僕なんだい? 強い者なら、僕以外の他にもいた筈だけど」

 

『何を言う。貴様の中から感じるリントならざる邪気、俺が気付けないとでも思ったか』

 

「…あぁ、分かるんだ」

 

ショウが小さく笑みを浮かべると、その両手からほ炎と冷気が発生する。

 

「確かに僕は、かつて多くの戦士を率いる集団の中で副リーダーだった。今とて、その時の力が衰えた覚えは無いよ」

 

『ほう…?』

 

「君がもし、僕と戦う事でリントの力を試そうというのならば…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お見せしよう。僕が持つ力……そして、僕が持つ本気という物を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…ッ!!』

 

その言葉と共に、ショウの全身から黒いオーラが放出され、大地や空気が大きく震え始めた。それを直に感じ取ったガドルはショウの持つ力に驚愕し、同時に心の底から歓喜する。自分は今から、これ程の力を持った人物と戦う事が出来るのだと。

 

「そういえば、まだどちらも名乗っていなかったね……僕は傭兵ギルド“ナイツ・オブ・フェアリーズ”の副ギルドマスター、ショウ・ブレイヴだ。君の名前を知りたい」

 

『…良いだろう』

 

ガドルは両目の色が赤から緑に変化し、胸部のアクセサリーを一つ手に取る。

 

『俺は破壊のカリスマ……ゴ・ガドル・バだ。この地でお前と戦える事、誇りに思おう』

 

「あぁ、僕もだ。この地で君と会えた事、とても嬉しく思うよ」

 

ガドルが手に持ったアクセサリーは大型の銃へと変化し、ショウは右手に氷の魔剣“アイス・ファルシオン”を出現させる。二人は無言のまま、ジリジリと互いに距離を保ち続ける。

 

「―――グレン・ケネ・ヒル・ハルフォード!超原子崩壊励起(ジオダ=スプリード)!!」

 

先に動いたのはショウだった。ショウの構えた魔剣に粒子レベルの魔力が集まり、そこから原子分解を起こす程の光線が発射される。しかし…

 

『―――フンッ!!』

 

-ドゴォォォォォォォォォンッ!!-

 

「!?」

 

それくらいで怯む程、ガドルも脆弱ではなかった。手に持った銃から一発の弾丸が放たれ、それがショウの放った光線に命中。その瞬間、互いの一撃が相殺され大爆発を引き起こした。

 

「く……はぁっ!!」

 

『ム…!!』

 

ガドルは続けて2、3発と弾丸を発射。ショウを撃ち貫こうとしたその弾丸はショウが身を屈めて回避した事で空を切り、そのまま彼の後方に存在していた大きな瓦礫を粉々に粉砕する。何とか弾丸を回避したショウはそのままガドルの下まで目に見えない速さで接近し、ガドルに向かってアイス・ファルシオンを振り下ろす。

 

『まだだ……まだだぁっ!!!』

 

「うぉ!?」

 

その一撃でもガドルは倒れず、己の腕力だけでショウを遠くまで殴り飛ばした。殴り飛ばされたショウは建物の壁を破壊して突っ込み、瓦礫が崩れてその姿が見えなくなる。

 

『……』

 

そんな状況でも、ガドルは警戒し続ける。その目は緑から紫へと変化し、手に持っていた銃も大型の両手剣へと変化する。

 

「…でりゃあ!!」

 

『ッ!!』

 

すかさず、瓦礫の中からショウが飛び出して来た。ガドルもすかさず両手剣を構え、アイス・ファルシオンを構えたまま迫り来るショウを迎え撃つ。

 

『「オォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」』

 

互いの剣は刃がぶつかり合い、その衝撃は周囲の瓦礫や車などを次々と吹き飛ばす。その衝撃の中、二人は互いに押し返してやろうと手に持った剣で鍔迫り合いが続き…

 

「―――がぁ!?」

 

『ヌゥ…!?』

 

互いに押し返された事で、両者共に瓦礫の中へと吹っ飛ばされるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“鍵”の浮遊する上空にて…

 

 

 

 

 

 

「うぉらあっ!!」

 

『ギシャァァァァァ…!?』

 

PDオーズはタジャドルコンボのまま空中を舞い、龍騎はサバイブのままドラグランザーに乗って迫る怪物達を一体ずつ確実に撃墜し続けていた。しかしその最中、PDオーズは全身が大きく点滅し始める。

 

「!? やべ、そろそろ限界か……なら仕方ない…!!」

 

PDオーズは左腕のタジャスピナーを開き、ドライバーにセットしていた3枚の赤いコアメダルを抜き取ってからその中にセット。更にセルメダルを4枚程セットしてからタジャスピナーを閉じ、オースキャナーで7枚のメダルをスキャンする。

 

≪タカ・クジャク・コンドル・ギン・ギン・ギン・ギガスキャン!≫

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ…セイヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

『『『グガァァァァァァァァァァァッ!?』』』

 

全身が炎に包まれ、巨大な火の鳥と化したPDオーズ。PDオーズはそのままウブメ達に向かって突っ込んで行き、3体纏めて爆散させる……そして爆風の中から、変身の解けたokakaが真下に落下していく。

 

「真司ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! 乗っけてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「え、ちょ…えぇ!? 一城、お前何で変身解けて…おわたたたたたた!?」

 

okakaがいきなり真上から落下して来た事に驚く龍騎だったが、ギガンデスヘブンの群れが連射して飛ばす毒針の中を掻い潜り、何とかokakaをドラグランザーの背中に乗せる事を成功させる。

 

「ふぃぃぃ……サンキュー真司。うし、もっかい行くぜ」

 

≪5≫

 

≪5≫

 

≪5≫

 

≪Stunding by≫

 

ファイズのベルトを装着したokakaはファイズフォンを打ち込み、更にワームホールから取り出したトランク型ツール“ファイズブラスター”に、そのファイズフォンをセットする。

 

「変身!!」

 

≪Awakening≫

 

「うぉ、何だ…!?」

 

その声と共に、okakaの全身が赤い光に包まれ始める。龍騎が思わず顔を手で覆う中、okakaは全身が赤く発光したファイズ―――“ブラスターフォーム”への変身を完了した。

 

「!? さっきまでと、姿が違う…!!」

 

「ファイズだ。結構便利だぜ、このベルトも」

 

≪1≫

 

≪0≫

 

≪3≫

 

≪Blaster Mode≫

 

「んじゃ、また行って来るぜ」

 

≪5≫

 

≪2≫

 

≪4≫

 

≪6≫

 

≪Faiz Blaster Take Off≫

 

ファイズはファイズブラスターを銃型に変形させた後、背中のユニットを変動させそのままドラグランザーの背中から飛び立って行ってしまった。龍騎はしばらく呆然としていたが、すぐに首を何度も振ってから自分のやるべき事に集中する。

 

「と、とにかく、今はコイツ等を倒さなきゃな……ウル達も、大丈夫だよな…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして“鍵”の内部では…

 

 

 

 

 

 

 

「ッ…ウルさぁん!!」

 

魔法陣の結界の中で、美空が悲痛な声を上げる。その視線の先には…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうシタ。先程マデの威勢は、一体何処ニ行ッタというのかネ?』

 

 

 

 

 

 

『『『『『グルァァァァァァァァァァ…!!』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ……はぁ、はぁ…!!」

 

 

 

 

 

 

「言って、くれるじゃねぇか…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アザゼル率いる怪人軍団を前に、全身傷だらけのまま膝を突く支配人とディアーリーズの姿があった。

 


 
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