No.693476 九番目の熾天使・外伝 ~短編その⑫~竜神丸さん 2014-06-12 23:03:16 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:3837 閲覧ユーザー数:1578 |
『フム……貴様のヨウな存在、我は招イタ覚えは無イのだガナ』
「知らねぇよ、んな事」
ビルの屋上にて、クリムゾンと対峙したアザゼル。アザゼルの周囲は既にクリムゾンの召喚したブラッディードールで囲まれている。
『何故貴様は我ヲ妨害スル? 我の邪魔をしたトコロで、貴様には何ノメリットも無い筈ダが』
「理由なんざいるかよ」
アザゼルの仮面に、クリムゾンガンの刃が向けられる。
「俺は俺の殺りたいように殺るだけって話だ。テメェこそ、今まで人間を殺すのにいちいち許可なんて貰ったのかよ?」
『…それモそうカ。シカシ、疑問が尽きンナ……貴様如キガ、この我をどうやッテ止めるつモリだ?』
「こうすんだよぉっ!!!」
『!』
クリムゾンがすかさず斬りかかり、アザゼルがそれを剣の鞘で防御する。
『力ずくで止メル、という事か……ソレも面白イナ』
「覚悟しやがれっつったよなぁ、鎧野郎……逃げられると思うんじゃねぇぞゴラァッ!!!」
『ヤレルものならやってミルが良い、若僧メが』
「―――ッ!!!??」
早過ぎる出来事だった。
アザゼルを囲んでいたブラッディードール達は一瞬で全滅し、クリムゾンは気付けば自身の身体が宙に舞ってしまっていた。意識を失う直前だった彼の視界には、剣を鞘に納めようとするアザゼルの姿が逆さまに映って見えていた。
『愚カナ……身の程を知ッテ来るが良イ』
落下していくクリムゾンを眺めながらアザゼルが剣を納め切り、同時にビルの真下で建物の屋根を突き破る音が大きく響き渡った。
『グガァァァァァァァァァァッ!!!』
「うぉぉぉぉぉぉぉ何か針を飛ばして来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「よっしゃあ!! 弾幕ならこっちも負けんぞ!」
「ちょ、アン娘さん!? だからこっちにまで飛ばしギャァァァァァァァァァァァァッ!?」
一方、公園付近で巨大な怪物達と戦闘を繰り広げていたメンバー達。エラスモテリウムオルフェノクが額部分から飛ばして来る無数の毒針を蒼崎が連続前転で回避し、弾幕勝負なら負けまいとUnknownの飛ばした魔力弾による流れ弾がルカに命中したりと、先程までよりも更にカオスを極めていた。
「あーもう我慢ならないわ!! もうチューナーの用意も出来たんだし、一気に潰す!!」
「え、アキさん!?」
「冷たい炎は全てを包み込む、漆黒の華よここに開け!! シンクロ召喚!! 現れよ、ブラック・ローズ・ドラゴォォォォォォォンッ!!!」
『グギャォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!』
「うぉぉぉぉぉぉこっちも何か凄いの出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「蒼崎さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?」
蒼崎の足元に出現した巨大魔法陣から、ブラック・ローズ・ドラゴンが召喚される。思わぬ事態に蒼崎が吹っ飛ばされる中、オトシブミヤミーの動きをアキの振るった茨の鞭が拘束する。
「黒薔薇の糧となり、闇に散れ!!」
『グォォォォォォォォォォォォォッ!!!』
『ギシャァァァァァァァ…!!?』
ブラック・ローズ・ドラゴンの繰り出した息吹きに、オトシブミヤミーの全身が飲み込まれる。息吹きが収まる頃には、既にオトシブミヤミーはその場から消滅し切った後だった。
「よし、まず一匹!」
「ちょ、何でそんなドラゴン出したんですか!? 団長の許可が無いと駄目なんじゃ…」
「後で言い訳も考えとくからノープロブレムよ!!」
「いや問題だらけですから!?」
「…楽しそうだな~アイツ等」
『ピギャッ!?』
また一体の亡霊を退治しながら、ガルムがそう呟く。先程から早くエラスモテリウムオルフェノクを撃破しようと頑張っているのだが、他の亡霊達が邪魔で上手く攻撃に転じる事が出来ないでいるのだ。
「せめて攻撃のタイミングを作れればなぁ……あ」
その時、ガルムは閃いた。
「…その手があったか」
ガルムは小さく笑みを浮かべ、接近して来た亡霊に気弾をぶつけてから足元に紫色の裂け目―――スキマを出現させる。
「早苗、カモーン!!」
「―――うひゃあ!?」
ガルムがそう叫ぶと、スキマの中から緑髪の巫女らしき少女―――東風谷早苗が飛び出して来た。早苗は何が何だか状況をよく分かっていないまま、地面に落ちて尻餅をつく。
「痛たた……あ、裕也さん!? 何をしてるんですか、こんな所で!!」
「うぉわた!? ちょ、抱き着かないでくれ!? 当たってる、色々と当たってる!!」
「当ててるんです!!」
「それが当然の事みたいに言わないでくれ俺が変態みたいに思われるから!! それより周り見て周り!!」
「ふぇ、周り? えっと…」
ガルムは強引に抱き着いてきた早苗を何とか引き離し、早苗に周囲の状況を確認させる。早苗は言われてから周囲に亡霊や怪人達がいる事に気付き、思わず叫び出す。
「な、何ですかこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
「とにかく手伝ってくれ!! 俺は怪物の方を仕留めていく、お前は亡霊の方だけ浄化させてくれれば良いから!!」
「浄化? …あぁ、分かりました! コイツ等を
「何か違う!? いや合ってるけど何か違う!?」
「それならばお任せ下さい、現人神の力は伊達ではございませんよ!!」
『『『『『ウォォォォォォォォォォォ…!!?』』』』』
早苗によって周囲にばら撒かれたお札が亡霊達の頭に命中し、次々と浄化させられ無力化していく。それによりガルムにも攻撃の余裕が出来上がる。
「どうですか? これが奇跡の力です!」
「俺も手伝うぜ、ガルム……あ~らよいしょっとお!!」
『グガァッ!?』
いつの間にか戻って来ていた蒼崎がガルムの横を駆け抜け、今なお暴れるエラスモテリウムオルフェノクの真上までジャンプ。自身の魔力で上空に巨大な十字架の状エネルギーが出現し、それがエラスモテリウムオルフェノクの背中に突き刺さる。それと同時にエネルギーの形状が鎖状となってエラスモテリウムオルフェノクの巨体を拘束し、封じ込めていく。
「早苗、それに蒼崎もナイスだ!! 後は俺の手で決める!!」
『グルゥゥゥゥゥ…!!』
僅かな隙が出来た以上、決めるなら今しか無い。力ずくで鎖状エネルギーを破壊しようとするエラスモテリウムオルフェノクを一刻も早く撃破するべく、ガルムはミニ八卦炉を取り出し更に何丁ものビームライフルを出現させる。
「喰らっときな!! ファイナルマスタースパーク・特別バージョンッ!!!」
『グ…ガォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!?』
巨大なエネルギー砲と無数のビーム光線が襲い、強過ぎる破壊力に流石のエラスモテリウムオルフェノクも耐え切れず一気に灰化。倒すべき敵を倒した事により、地面に着地したガルムもホッと一息つく。
「うし、討伐完了!」
「流石です、裕也さん!」
「ちょいちょーい、地味に頑張った俺の事も褒めてくれないかなー?」
「「あぁはいはい、よく頑張りました」」
「棒読みっぽく聞こえるのは何でなのかなぁ!?」
落ち込む蒼崎を放置し、ガルムと早苗は引き続き亡霊達を退治していく。その時だった。
「ん!? な、何だ―――」
「え、裕也さん!?」
「な、何だ!? ガルムが消えたぞ!!」
突然ガルムの身体が光り出し、次の瞬間にはその場から消えてしまっていたのだ。これには早苗も大きく慌て出す。
「ど、何処に行っちゃったんですか裕也さぁん!? こんなんじゃ、私が外の世界に出て来た意味がなくなっちゃって、裕也さんとキャッキャウフフ出来ないじゃないですかー!!」
(あ、心配する事そこなんだ)
『『『『『イィーッ!!』』』』』
そんな早苗達の周囲を、ショッカー戦闘員達が取り囲むも…
『…イッ!? イ、ィ…ィ…!!』
『イィィィィ…イ…!?』
『イィーッ!? ィ、イ…ィ…!?』
「へ?」
「? 何だ…?」
何故か一斉に苦しみ出し、全員がその場に倒れ伏してしまった。早苗と蒼崎が首を傾げる。
「全く。もっと早く片付けられないんですか、あなた達は」
「あ、デルタさんだったのか…!」
マスカレイド・ドーパントの首根っこを掴んだまま引き摺って来たデルタを見て、蒼崎は理解した。恐らくこのショッカー戦闘員達も、デルタの能力の一つである『蠍』の力で猛毒を注入されたのだろう。
「まぁそれは良いでしょう……ところで、今ここに残ってるメンバーは誰がいますか?」
「えぇっと…」
蒼崎は指で数え始めた。
自分、デルタ、早苗、ルカ、アキ、Unknown、miri、Blaz…
「…あれ?」
ここで、一同は気付いた。数名程、いつの間にかこの場からいなくなってしまっている事に。
「ガルムどころか、朱音さんやkaitoの奴までいなくなってたでござる」
「…はぁ」
どうやら想像以上に面倒な状況になってしまっているようだ。そう考えたデルタは溜め息をつき、通信機で他のメンバーに連絡が取れないかどうか確認するのだった。
「うぉぉぉぉぉぉぉまだ幽霊がいやがるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!?」
「あれ、何してんのBlaz」
ちなみにBlazを追いかけていた幽霊は、後で早苗によってきちんと浄化されたという。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
『…!!』
一方で、二百式はバットオルフェノクやダークローチの大群と戦闘を繰り広げていた。互いの放った銃弾を互いに撃ち落とし、接近しては格闘戦に発展し互いの急所目掛けて拳を振るう。なかなか決着がつかない状況に至っていた。
「チッ……しつこいんだよ!!」
『フンッ!!』
二百式のライフルを蹴り落としたバットオルフェノクが二丁拳銃を連射し、二百式はすかさずロングバレルショットガンを取り出しバットオルフェノクに向ける。
「喰らえ!!」
『ハァ!!』
「!? 何…がっ!?」
ロングバレルショットガンの近距離射撃をも回避したバットオルフェノクが大きく身体を捻り、その勢いを利用して二百式の腹部を蹴りつけ、ミシミシと骨の軋む音が鳴る。
「ぐぅ…このぉっ!!」
『ッ!?』
二百式も素早く反撃に回り、ロングバレルショットガンの砲身を利用してバットオルフェノクの顔面を思いきり殴りつける。思わぬ反撃を受けた事に驚くバットオルフェノクも、殴られた勢いを利用してバク転し、着地してから体勢を整える。
(くそ、思ったよりもやるなコイツ…!!)
『…フン』
「!?」
蹴られた腹部を押さえながら息を整え、バットオルフェノクを睨みつける二百式。そんな彼の目にも圧倒される事なく、バットオルフェノクは再び二丁拳銃を構え直す。
「…はっ!!」
『!!』
駆け出した二百式はジャンプして宙に舞いながら、バットオルフェノクは床をスライディングしながら互いに銃弾を乱射。それらは一発も相手に致命傷を与える事は無く、二百式は着地すると同時に複数の銃火器を一斉召喚し、バットオルフェノクはスライディングしたままダークローチの大群の中に滑り込む。
「貴様等の相手をしてる暇は無いんでな、一気に潰す!!」
『…!』
「バレット・サーカス!!」
召喚されたショットガン、ライフル、マシンガン、バズーカなどの銃火器が一斉に火を噴き、ダークローチの大群を次々と撃ち砕いていく。そして一斉掃射を終えた後、ダークローチの大群は一掃出来たものの…
「…逃げたか」
爆風が晴れたそこに、バットオルフェノクの姿は無かった。ダークローチの大群を盾に利用し、その隙に離脱したのだろう。
「まぁ良い、あまり時間も無駄に出来んしな……さて」
二百式は銃火器を収め、通信機を取り出す。
「こちら二百式。ロキ、そっちの状況はどうなってる?」
『ん、二百式か……すまん。こっちは少し、面倒な事態になってる』
「…何?」
『ユウナ・タカナシの教え子だと?』
「あぁ。その内の一人が今、この海鳴市を一人で動き回ってるらしくてな。すぐに見つけ出して、何とか保護しないといけない」
通信先であるロキは、建物の屋根から屋根へと移動を続けていた。双眼鏡なども使って街中を探し回っているものの、目的の人物はなかなか見つからずにいる。
『一体、何がどういう状況なんだか……分かった。ひとまず俺も、そっちの援護に回るとしよう』
「へぇ、珍しいな。お前が自分から他人の手伝いをするなんて……先に言っておくと、これはあくまで俺一人の私用であって、お前が無理に手伝う必要は無いんだぜ?」
『民間人の避難、怪人や亡霊の退治は他のメンバーに任せている……それと、お前には恩があるからな。見捨てるようなマネはしないさ、キリヤ・タカナシ』
「変なところで義理堅い奴だな……まぁ良いや。俺はとにかく捜索を続けるから、お前も何か見つけたら連絡してくれ。目標の人物画像も送る」
≪バディ。湯島刀奈の特徴についてですが、ラッキースケベの際に写した映像でよろしいでしょうか?≫
「…何でも良いから早く送ってくれ」
『キリヤ、今さり気なく変な台詞が聞こえたが俺の気の所為か?』
「お前の気の所為だ。とにかく頼んだぜ、一哉」
通信を切ってから、ロキはペットショップの屋根に降り立つ。
「さぁて、一体何処に行っちまったのかねぇ? 世話の焼けるお姫様だよ…」
「はぁ、はぁ…!!」
そのお姫様―――刀奈はというと、一人街中を走り続けていた。その周囲には亡霊や怪人達が未だ暴れ続けており、被害は増えていく一方である。
『グルァッ!!』
「あがっ!? あ、ぁ…か…」
「ッ…!!」
また一人、シャークファンガイアにライフエナジーを吸われた男性が死亡。透明化した状態で倒れる男性を見た刀奈は恐怖に震えるも、すぐに頭を振ってから再び走り出す。
(こんな所で立ち止まる訳にはいかない……早くあの子を、奴等より先に見つけ出さないと…!!)
「待ってて隼……今、お姉ちゃんが行くから…!!」
自身が誰よりも愛している、たった一人の弟。そんな彼の無事を祈りながらも、刀奈は危険を恐れず路地裏を通じて走り続ける。
≪ADVENT≫
『グギャォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!』
『グ…ヌォォォォォォォォォォッ!?』
『『『『『イィィィィィィィッ!?』』』』』
一方、龍騎はジャーク将軍やショッカー戦闘員達を相手に善戦していた。しかし、その姿は先程までとは違っている。
「はぁ、はぁ…!!」
龍騎サバイブ。仮面ライダー龍騎がサバイブのカードを用いる事で変身出来る、最強形態だ。そしてパワーアップしているのは龍騎だけではない。ドラグレッダーも進化を遂げ、ドラグランザーという新たな姿となっていた。
『お、おのれ……仮面ライダー…!!』
「俺は、ここで終わる訳にはいかないんだ…!!」
ドラグランザーの火炎放射でダメージを受けているジャーク将軍達を前に、龍騎は覚悟を決めたかのように一枚のカードを抜き取り、召喚機―――ドラグバイザーツバイへと装填する。
≪SHOOT VENT≫
『グォンッ!!』
『な、何だ…ヌグゥ!?』
ドラグランザーが龍騎の真後ろに舞い降り、龍騎サバイブはドラグバイザーツバイからレーザーポインターを照射し、ジャーク将軍をロックオン。そこにドラグランザーが強力な火炎弾を放つ。
『グォォォォォォォォォォォォォンッ!!』
『な、ぁ…グワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?』
『『『『『イーッ!?』』』』』
ドラグランザーの放った一撃―――メテオバレットがジャーク将軍を焼き尽くし、ジャーク将軍はショッカー戦闘員を巻き添えにする形で大爆発。見事、龍騎を勝利へと導いた。
「ふぅ……結構、手強かったな」
龍騎は疲れを取る為、ひとまずその場に座り込む。実はジャーク将軍との戦闘中、既にクリムゾンがかけたドゥレイションの魔法は効果が切れてしまっていた為、こうして彼は体力を回復させなければならなかったのだ。
「けど、何時までもこうしちゃいられないな……早くウル達と合流しないと…!!」
-ドゴォォォォォォォンッ!!-
「!?」
突如、龍騎の耳に大きな爆発音が聞こえてきた。
「今の爆発……近いぞ!?」
『アハハ…アハハハハハハハハハハハハハハハ!!』
「ぬぁ、く……チィッ!?」
テニスコートにて、支配人は悪霊化したクレアと戦いを繰り広げていた。支配人はオーガフォンから変形させたフォンブラスターと、ミッションメモリーを装填済みのオーガストランザーを装備。対するクレアは全身からドス黒いオーラを放ち続けており、そこから複数の黒い触手を伸ばしている。
『アハハ、ソレソレェ♪』
「うぉ、この…!! おいおい、お前確か召喚専門だったろうが!! 何がお前をここまでパワーアップさせてんだ!?」
『何ヲ言ッテルノ? モット一緒ニ遊ボウヨ…♪』
「ッ…疾走れ“真空撃”!!」
支配人はオーガストランザーから斬撃を放つも、クレアはそれを難なく回避。反撃として複数の触手を一度に伸ばし支配人を捕縛しようとするが、そんな簡単に捕まるほど支配人も弱くはない。フォンブラスターから放たれる銃撃が何本かの触手を強引に押し返し、残りの触手をオーガストランザーで全て切断する。
『ムゥゥゥゥ…早ク捕マッテヨ、レイィィィ…!』
「無茶言うな!!」
クレアの放つ黒いエネルギー弾を、支配人が縦に一刀両断。すぐさまクレアと距離を離し、しゃがんだ状態のままクレアの次の一手を警戒する。
『ネェネェ、一体ドウシタノレイ? モットモット私ヲ楽シマセテヨ……ソレガアナタノ、私ニ対スル罪ノ償イニナルンダカラサァ…!!』
「…罪の償い、ねぇ」
支配人がゆっくりと立ち上がる。
「俺の償いは、全部で3つ存在する」
『…?』
「1つ、お前の分まで長く生きる事……2つ、お前とのかつての約束を果たす事……そして3つ」
フォンブラスターを一旦しまい、オーガストランザーで居合いの構えに入る。
「クレア・クレスメント……お前をその呪縛から、解放する事だ!!」
『寝言ハ寝テ言イナサイッ!!』
支配人が居合いから繰り出した一閃とクレアの召喚した黒い魔剣による一閃がぶつかり合い、互いの刃と刃の間に電撃が走る。
『コノ私ヲ置イテ、自分ハ他ノ奴等ト仲良ク過ゴスナンテ!! 私ハ許サナイ!! 私ノ事ヲ思ッテイルノナラ、何時マデモ私ノ事ヲ考エテイレバ良インダヨ!!!』
「闇の書で再会した時、お前は言っただろうが!! この俺に、他の皆も幸せにしろと!!」
『知ラナイヨソンナノ……モウ良イ、早ク死ンジャエ!! 私ノ事ヲ碌ニ考エナイヨウナレイナンカ、早ク私ノ前カラ消エテナクナッテシマエバ良インダ!!!』
「俺の言葉も届かないって言うのかよ……クレアッ!!!』
魔剣を力ずくで弾き返し、支配人が一気にクレアの目の前まで接近。そのまま手に持ったオーガストランザーを振り下ろし―――
『…?』
「ッ……チィ…!!』
―――クレアの眼前で、その刃がピタリと止まる。
(畜生……まだ、俺は…未練を断ち切れないってのか…!!)
『…退イテヨ、邪魔』
「!? く…がはぁっ!?」
触手が支配人を押し退けると同時に、クレアの全身が黒いオーラに包まれ始める。そこから出現した巨大な黒蛇の幻影が、赤い目を光らせながら支配人を睨みつける。
『消エロ……消エロ消エロ消エロ消エロ消エロォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!』
「く、ヤベぇ…!?」
黒蛇がその大口を開けてから、支配人に喰らい付く―――
≪SWORD VENT≫
―――事は無かった。
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
『!? 何ィ…!!』
「な…!!」
フェンスを飛び越えて来た龍騎サバイブが、炎を纏ったドラグバイザーツバイを振るって黒蛇の牙と正面からぶつかり合ったからだ。しかし互いのパワーが強過ぎたが為に、その拮抗も長くは続かず…
-ドガァァァァァァァンッ!!-
「「おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」
『グゥゥゥゥゥゥ…!?』
大爆発が起こり、龍騎サバイブと支配人、そしてクレアと黒蛇をも吹き飛ばした。支配人は吹っ飛ばされた勢いでフェンスにぶつかり、龍騎サバイブは変身が解けて真司の姿へと戻ってしまった。
「痛っつぅぅぅぅぅ…!!」
「ぐ、何が起こって…ッ!?」
後頭部をぶつけて痛がる真司と、倒れた状態から起き上がろうとした支配人の視線が合わさる。
「お前は…!?」
「え、えっと……誰?」
支配人と城戸真司。
少しおかしな状況とはいえ、二人は初めて対面する事となった。
「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」
「うおりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃあっ!!!」
一方、海鳴図書館付近にてライオトルーパー部隊が亡霊や怪人達を相手に奮闘していた。更にはシグマも大斧を振るって迫り来る怪人を片っ端から薙ぎ倒し、ライオトルーパー部隊の方には亡霊だけが向かうよう上手く誘導している。
「シグマ隊長!! 上空から、多数の飛行生物が接近!!」
『『『『『キュォォォォォォォンッ!!』』』』』
「「「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」
「!? あぁもう面倒臭ぇ!!」
しかし怪人や亡霊はどれだけ倒しても数は一向に減る気配が無く、更には上空から複数のギガンデスヘブンが襲来したりと状況はあまり芳しくなかった。何名かのライオトルーパーがギガンデスヘブンの放った針爆弾で負傷してしまい、シグマは舌打ちしながらも援護に回るべく大斧を投げ飛ばし、一体のギガンデスヘブンを真っ二つに両断する。
「くそ、俺一人じゃ流石にキツいぜ…!!」
「「ならば助太刀しよう」」
「!?」
その二人分の声と共に、シグマの後方から無数の魔力弾が飛来しギガンデスヘブンの大群を次々と爆破。更に地上ではライオトルーパー部隊を襲おうとしていたアントロードの大群が、一本の斬撃によって大半が撃破される。
「久しぶりだな、シグマ」
「相変わらず野蛮な男じゃのう、お主という男は」
「んな、ユリス!? ていうかフレイアまで一緒かよ!?」
「ほう? まるで儂はいてはならないと、そういった口ぶりじゃのう」
「痛デデデデ!? ほ、頬を引っ張るな痛ぇひゃねぇは!!」
「フィアレスから事情は聞いている、俺達も加勢する!!」
「リ、リッドさんにフレイア様まで来て下さったぞ!!」
「やった!! これで何とか形成も逆転出来る!!」
「総員、リッドさんに続けぇ!!」
「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」
フレイアがシグマの頬を引っ張る中、ユリスは何処からか取り出した長柄の斧を振るい、近付いて来たアントロードを叩き伏せる。それを見たライオトルーパー部隊は士気が上がり、ユリスに続くかのように迫る亡霊達を次々と撃破していく。
「む? ユリスの奴め、この儂を置いて先に行くとは良い度胸をしておろうの……まぁ良い、ならば儂も力を見せつけてやるまでじゃ」
「痛ててて…たく、本当に容赦の無ぇババ―――」
「何か言うたかの?」
「イエ、何デモアリマセン」
ユリスが戦闘を開始していた事に気付いたフレイアは気に入らなさそうに頬を膨らませるも、すぐに自らも前線に立ちスイーツ・ドーパントを華麗に蹴り飛ばす。シグマはそんな彼女に対して愚痴を零すも、彼女から軽く一睨みされたのですぐに片言で誤魔化す。
「お~い、三人共~!」
「あ?」
「「?」」
「
そこにちょうど、フィアレスが翼を展開した状態で飛んで来た。彼女の手から投げられたベルトはシグマ、ユリス、フレイアの三人の手にキャッチされる。
「ハッハァ!! ちょうど良い、また一暴れと行こうじゃねぇか!!」
「む、ライダーシステムか……フレイア、これはどうすれば変身出来るんだ?」
「いやいや何を言うかユリス? お主は今までにも何度か変身したじゃろうに、何故いつも変身の仕方を忘れてしまうのじゃ? 全く…」
シグマは楽しそうにベルトを装着し、ユリスはフレイアに変身方法を教えて貰いながらベルトを装着、そしてフレイアもユリスの物忘れに呆れつつベルトを装着する。
「「「変身!!」」」
≪≪≪Open Up≫≫≫
ベルトから黄、赤、緑のオリハルコンエレメントが出現し、ユリスはグレイブ、フレイアはラルク、シグマはランスへの変身を完了する。
「貴様等の企み……この俺が断ち切る!!」
「身の程を知るが良い、人ならざる愚かな者達よ」
「暴れて暴れて、暴れまくってやるぜヒャッハァァァァァァァ!!!」
「…うん、個性が溢れ過ぎてて分かりやすいや三人共」
グレイブ達の決め台詞を聞いて、フィアレスは思わず苦笑せざるを得ない。そしてフィアレス自身も、手元に赤いハートが刻まれたベルトを取り出し装着する。
「異世界でレイが見つけて、修理したこの力。私達の為に役立って貰うよ……変身!!」
≪Change≫
蟷螂の紋章が描かれたカードをベルトにスキャンし、フィアレスは黒い蟷螂のような姿をした戦士―――仮面ライダーカリスへの変身を完了する。
「さぁ、刈り取らせて貰うよ…!!」
醒弓カリスアローを構え、カリスは獣のように唸りながら怪人達と相対していく。
場所は変わり、“鍵”の浮遊する上空では…
「うっはぁ、近くで見てみると結構デケぇな…」
ハードタービュラーに乗ったPDダブル・ルナトリガーが、“鍵”の近くまで何とか飛来していた。“鍵”の周囲を飛ぶ形で守っているレイドラグーンやピラニアヤミーなどは、トリガーマグナムを使って片っ端から撃墜していっている。
「早いところ、あの鍵を破壊した方が良さそ―――」
『ズゥーカァーッ!!!』
「うぉ危なっ!?」
そんなPDダブルの乗るハードタービュラーに、一発の砲撃が命中。PDダブルはハードタービュラーから飛び降りてビルの屋上に転がり込んだが、ハードタービュラーはビルの下へと墜落していってしまった。
『ズゥーカァー…!!』
「テメェの仕業か、この亀野郎が!!」
背中の甲羅がバズーカと融合した怪人―――カメバズーカの行いにPDダブルは激怒し、トリガーマグナムを駆使して戦闘を開始する。
『シャアッ!!』
「何…おっと!」
そんなPDダブルに、突然マンティスオルフェノクも飛びかかって来た。マンティスオルフェノクの振るう鎌をPDダブルはトリガーマグナムで防御する。
『今度コソ捻リ潰シテクレル、仮面ライダァ…!!』
「あぁ、お前どっかで見た事あったな。これ見たら…」
≪カメンライド・ファイズ!≫
「…お前も相当、怒るだろうなぁ?」
『!? そうか……貴様、あの時のファイズかぁっ!!!』
『ズゥカァッ!!』
『『『ブブブブブブッ!!』』』
「おうおう、増えてきやがったか。上等だ、全員纏めてかかって来やがれ!!」
挑発目的で変身したプロトディケイドファイズ(以下PDファイズ)。その姿を見たマンティスオルフェノクは生前の出来事を思い出して激昂し、そこにカメバズーカ、更には蜂型モンスターのバズスティンガー達も容赦なく襲い掛かるのだった。
そして、そんな彼等の戦闘を…
『……』
黒い軍服を着た男が、無言のまましっかりと見据えていた…
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幽霊騒動その15