No.691784

九番目の熾天使・外伝 ~短編その⑫~

竜神丸さん

幽霊騒動その13

2014-06-05 19:21:46 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4084   閲覧ユーザー数:1882

第97管理外世界、地球の海鳴市…

 

 

 

 

 

 

「ぼ、亡霊だぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

『『『『『オォォォォォォオォォォオォォォォォオオォォオォォォ…!!』』』』』

 

ここでは現在、亡霊の大量発生による騒動が起こっていた。街中のあちこちに出現した亡霊達の大半が、生前の未練や生きた人間に対する恨みで民間人に襲い掛かっている。しかし、民間人にとっての脅威は亡霊達だけではない。

 

「ギャァァァァァァァッ!?」

 

「た、助け…ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「ば、化け物だぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

『『『『『イィーッ!!!』』』』』

 

『『『『『グルァァァァァァァァァァァァッ!!!』』』』』

 

亡霊達と共に地上世界に侵攻して来たゴーストショッカーの怪人達も、民間人に向かって次々と襲い掛かって来たのだ。ショッカー戦闘員や怪人達が民間人を襲う中、その後方からはザリガーナ、イカデビル、ガラガランダの乗った巨大戦車が侵攻する。

 

『フハハハハハハハハハハハハハハハ!! どうだ人間共!! 怖がれ、震えろ、泣き叫べぇっ!!!』

 

『さぁ、どんどん進め!! 地獄から蘇りし怪人達よ!!』

 

『何人かは生け捕りにして来い!! 歯向かう者は一人残らず排除するのだぁ!!』

 

『『『『『イィィィィィィッ!!!』』』』』

 

「き、来たぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「やめて、来ないで…嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

ガラガランダの指令を受けたショッカー戦闘員達が一斉に突撃し、民間人の捕縛を開始する。主にショッカー戦闘員が民間人を捕縛し、無理やり逃げ出そうとした民間人は怪人達によって無惨に殺害されていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…フン』

 

とある高層ビルの屋上にて、アザゼルが海鳴市全体の騒動を見渡していた。その真上には“鍵”が紫色の禍々しいオーラを纏いながら浮遊しており、その周囲にも亡霊達が漂っている。

 

『ゴーストショッカーを利用して、ここマデ進出出来たノハ計算通り……全テの世界を混沌に陥レル為に、奴等には精々働いて貰うとしよウ…』

 

地上世界に進出したアザゼルの目的はあくまで世界の破滅であり、世界の支配ではない。その為ゴーストショッカーには協力するフリをして、もうしばらく利用させて貰おうという算段のようだ。

 

『所詮、奴等ニハ騒動を起コス事以外に利用価値ナド無い。実ニ哀れな連中ダ…』

 

クククと低く笑いながら、アザゼルは真上で浮遊している“鍵”を見上げる。その“鍵”の周囲にはエネルギーになり損なった亡霊達と、“鍵”を守る為に飛び回る怪人達の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海鳴市から少し離れた位置にて…

 

 

 

 

 

 

「―――ほら、到着しましたよ」

 

「!? あれは…」

 

「何て数だ……さっきまでとは比べ物にならない…!!」

 

竜神丸のテレポートによって、無事に異界から脱出したユウナとスノーズ。見上げた先に存在している“鍵”や飛び回っている亡霊達を見て、ユウナだけでなく流石のスノーズも戦慄する。

 

「さて、私は後々ソラさんやアン娘さんと合流する予定がありますので。騒動に巻き込まれたくないのであれば、精々何処かに隠れた方がよろしいですよ」

 

「待てNo.01、君はどうする気だ?」

 

「どうするも何も、あの状況をどうにかしに行くんですよ。どうせ楽園(エデン)で待機してるメンバー達も今頃、我等が団長の指示で嫌でも戦わされてるでしょうから」

 

そう言って竜神丸はガイアドライバーを取り外し、代わりに装着したベルトのバックルを展開。すると何処からか緑色のショウリョウバッタ型のメカ“ホッパーゼクター”が飛び跳ねながら出現し、そのまま竜神丸の左手へと収まる。

 

「変身」

 

≪HENSHIN≫

 

≪CHANGE KICK HOPPER≫

 

「では、また後ほど」

 

ホッパーゼクターがベルトにセットされると同時に、竜神丸は仮面ライダーキックホッパーに変身。彼はそのまま持ち前のジャンプ力で街まで移動し、二人を置いて行ってしまった。そこに…

 

「「「「先生ー!」」」」

 

「! おとと…」

 

その時、ユウナの下に刀奈達が駆け寄って来た。その中で静香が真っ先にユウナに飛びつき、ユウナも驚くもののちゃんと受け止める。

 

「先生、無事で良かったです…!」

 

「なぁ、マジで先生なのか!? めっちゃ久しぶりじゃねぇか!!」

 

「美川さん、市崎君……二人こそ久しぶりです」

 

「先生、怪我はしてませんか!? 大丈夫でしたか!?」

 

「刀奈さん、本当にうるさいね君は…」

 

「何よ、アンタは心配じゃなかったって言うの!?」

 

「誰もそうとは言ってないだろ!!」

 

ユウナが教え子達に囲まれている一方、ソラはスノーズと対面していた。

 

「? あなたは…」

 

「俺はソラ・タカナシだ。君がキリヤの言ってたスノーズ君かな? 妹を守ってくれていた事、俺からも礼を言うよ。ありがとう」

 

「…自分のやれる事をやり通したまでだよ。それより、早くあの鍵みたいなのをどうにかした方が良いんじゃないかい? たった今、No.01が街の方に向かって行っちゃったけど」

 

「え、竜神丸もう向こうに行っちゃったのか!?」

 

「となると、俺達も早く街に向かった方が良いだろうね。あの鍵、何か嫌な予感がする」

 

「んじゃそういう事で、俺は先に行くからな~」

 

「いや待て早ぇよシグマ!?」

 

ロキの制止も聞かず、シグマは一人でさっさと街まで飛び去って行ってしまった。

 

「あんにゃろう……まぁ良いや。兄さん、俺達も行こう」

 

「あぁ…っと、その前に」

 

ソラは一旦立ち止まり、後ろを振り向く。振り向いた先には教え子達と共に駆け寄って来るユウナの姿があった。

 

「ソラ兄さん、キリヤ兄さん…」

 

「急いで終わらせて来る。それまで待っていろ」

 

「…はい!」

 

ソラはユウナの頭を撫でてから、再びスノーズと視線を合わせる。

 

「妹とその教え子達の護衛……任せても良いかい?」

 

「…任されたよ」

 

スノーズの両手に氷の拳銃が出現する。始めから答えは決まっているようだ。

 

「キリヤ、行くぞ!!」

 

「おう、兄さん!!」

 

ソラとロキは同時に飛び立ち、亡霊達のいる街中へと向かって行く。

 

「…どうか、無事に帰って来て下さい」

 

そんな二人の後ろ姿を見て、ユウナは彼等の無事を祈る事しか出来ないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『『『シャァァァァァァァァッ!!』』』』』

 

街の上空を飛び回っている、大量のレイドラグーンやウブメ。その街のとあるビルの屋上に巨大な魔法陣が出現し、そこにディアーリーズ達が姿を現す。

 

「くそ、もうこんなに出て来たのか…!!」

 

「どうする? あの鍵、亡霊達を次々とこの街に溢れ出させてるようだが」

 

「となれば、あの鍵を破壊するのが一番手っ取り早いだろう。私は先に行く、後で合流しよう」

 

「俺も行くぜ。そんじゃ皆、お先に失礼」

 

それだけ言ってから、awsとFalSigは先にビルからビルに飛び移る形で先に行ってしまう。

 

「おっと、真司」

 

≪カメンライド・リュウキ!≫

 

okakaは既にプロトディケイドに変身しており、再び真司の前にゲートを出現させる。

 

「ゲートは残しておく。後でまた合流しようぜ」

 

「あぁ…!」

 

≪カメンライド・ダブル!≫

 

プロトディケイドは再びPDダブルとなってから、携帯型装置スタッグフォンを使い飛行型マシン“ハードタービュラー”に飛び乗り、そのまま“鍵”の方まで飛んで行く。残ったのはディアーリーズとその関係者達、そして真司のみ。

 

「こうしてはいられない、僕達も行こう!」

 

「あぁ……なぁウル」

 

「?」

 

「さっきの話、本当なのか? さっきまでいたあの病院に…………雲雀さんの亡霊がいた事」

 

「「「……」」」

 

ハルトの問いかけに、ディアーリーズだけでなくアスナやこなた達も無言になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異界を脱出する、数分前の事…

 

 

 

 

 

「おいおい、何だあの鍵!?」

 

「亡霊達が……一緒に空に上がっていく…!!」

 

「ぼ、亡霊って……あんなにたくさんいたんだ…」

 

突然の“鍵”の出現に、ディアーリーズ一同は驚きを隠せずにいた。その“鍵”と共に、無数の亡霊や怪人達が一緒に地上世界に向かおうとしていたのだから。

 

「あの“鍵”がこの空間を出ていくって事は、あのまま放っとくのは色々とマズそうだな……もし地上の世界に溢れ出たりしたら、今までにないパニックだぞ」

 

「じ、じゃあ早く向かった方が良いんじゃないか!? 亡霊が人を襲うかも知れないし、あの中にひょっとしたら雲雀さ『『シィィィィィィィィィッ!!』』もがが…!?」

 

「? どしたの?」

 

『い、いや、何でもないわ!! 大丈夫!!』

 

『とにかく早く向かうぞ、このままじゃ色々と面倒だ!!』

 

「「「?」」」

 

素早く真司の口元を塞ぐアンクとメズール。そのおかげでハルトやこなた、アスナは気付かなかったが…

 

「…お母さん、が…何です、か?」

 

『『!!』』

 

美空だけは、真司の言葉をキッチリ聞き逃さずにいた。

 

「い、いや、何でもないよ美空ちゃん!!」

 

『そ、そうよ美空ちゃん!? 別に何でもな…「雲雀おばさん、悪霊になっちゃったの…」ちょ、そこでバラしちゃうの咲良ちゃぁぁぁぁぁん!?』

 

「「「!?」」」

 

「…お母、さん…が…?」

 

「あ…」

 

咲良が口を滑らせた為、そのまま美空達にもバレてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、現在に至る。

 

「…雲雀さんは悪霊化していました。そのまま僕の事も殺そうとしたんです……どうして娘を守れなかったのって」

 

「!? 雲雀さんが…」

 

「ね、ねぇウル!! 嘘だよね!? 雲雀さんがそんな事する筈が…」

 

「本当なんだよ。実際、この傷も雲雀さんに付けられたものだから」

 

「「「…ッ!!」」」

 

これには流石のハルト達も何も言えなくなった。特に一番ショックを受けているのは他でもない美空だ。自分の母親が悪霊化しただけでなくディアーリーズの命をも奪おうとしたのだから、衝撃を受けるのも無理は無いだろう。

 

「とにかく、僕は早く雲雀さんの魂を救ってあげなくちゃいけない。一刻も早くあの鍵まで…」

 

「待って」

 

ディアーリーズの手を美空が掴み、そしてとんでもない事を言い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、も……連れてって…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「…はい!?」」」」」

 

ディアーリーズ達の視線が一斉に美空に集まる。

 

「ちょ、駄目だって美空ちゃん!? 行くのは危険過ぎる!!」

 

「そ、そうだよ!! 安全な場所に避難した方が…」

 

「違う」

 

「!?」

 

「それじゃ、駄目……お母さん、が…今も、苦しんでいる…なら……私が、心を…助けないといけない…」

 

「美空さん…」

 

「お願い……私、も…一緒に、連れて行って…!」

 

美空の目に、一切迷いは無かった。本当なら彼女を安全な場所に送りたいディアーリーズだったが、彼女の強い意志にはどうにも拒絶する事は出来ず…

 

「…絶対に、僕達から離れないで下さい」

 

「! …はい」

 

美空もまた、ディアーリーズ達と共に向かう事となった。

 

「…まぁしゃーないな。んじゃ話は済んだ事だし、そろそろ向かおうじゃないの!!」

 

「よ、よし! そうだよな!!」

 

「まぁ、仕方ないね。ウル、美空ちゃんをしっかりエスコートしてあげなよ」

 

「私達も手伝うわ。後は早くアキや凛達とも合流出来れば良いんだけど…」

 

「…美空さん!」

 

「はい…!」

 

ハルトや真司達が戦闘準備に入る中、ディアーリーズと美空は互いに手を繋ぎ、遥か上空に浮遊している“鍵”を見据えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『ギギギギギギ…!!』』』

 

「や、やめ…いぎぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

『フフフ…♪』

 

「い、嫌、来ないで…は、ぁが…!?」

 

街中では、惨劇が次々と発生していた。ダークローチやアルビローチの大群が一斉にサラリーマンの男性を襲って喰い殺し、OLと思われる女性がバタフライオルフェノクの伸ばした触手を口内に挿し込まれ、そのまま無惨に灰化させられてしまう。そんな惨劇の中、必死に逃げ惑う人達の中には…

 

「はぁ、はぁ…!!」

 

「ッ…しつこい…!!」

 

「二人共、こっちだ!!」

 

「化け物いっぱーい!」

 

白蓮が蓮を背中に背負いながら、アザミとルイを連れて怪人達から逃げているところだった。先程から向かって来る怪人は白蓮とアザミが次々と叩きのめしていっており、そのおかげでルイは未だ無傷のまま逃げる事が出来ている。

 

「はぁ、はぁ……何なんですか、この状況…!! 幽霊や、怪物がいっぱい出て来て…!!」

 

「…分からない。ただ事じゃないのは、確か」

 

「私にも理解しかねるよ……全く、こんな時に耕也は何処で何をしているのだ…!!」

 

「! お母さん、前!」

 

「ッ…おっと!!」

 

『グギャッ!?』

 

また一体のラットファンガイアを薙ぎ倒してから、白蓮達は狭い路地の中へと逃げ込んで行く。その後方からはゴースターやガライ、コレオプテラワームやエナジー・ドーパントなどが追いかけて来る。

 

「ッ!? そ、そんな…!?」

 

「チィ、よりによって袋小路か…!!」

 

そんな白蓮達だったが、とうとう袋小路まで追い込まれてしまった。せめてルイと蓮が襲われないよう、白蓮とアザミが怪人達と対峙していく。

 

「く、思った以上に数が多い…!!」

 

その時…

 

「ライダァ…キィィィィィィィィィック!!」

 

『グギャァァァァァッ!?』

 

「「「「!」」」」

 

真上から飛び降りて来た仮面ライダー1号が、コレオプテラワームを一撃で粉砕。更に支配人やユイ、凛達もその場に駆けつけ、怪人達を次々と倒していく。

 

「お父さんだー!」

 

「全く、遅いぞ耕也。今まで何をしていた?」

 

「悪いな、少し遅くなってしまった」

 

「ふふ♪」

 

ガライをライダーチョップで沈めてから、1号はげんぶの姿に戻ってから白蓮達の下まで駆け寄る。蓮は喜んでげんぶに飛び付き、白蓮は呆れながらもげんぶの帰還を純粋に喜ぶ。

 

≪EXCEED CHARGE≫

 

「ふん…はぁっ!!」

 

『『ガァァァァァァァァァッ!?』』

 

サイガの発動したサイガスラッシュにより、ゴースターとエナジー・ドーパントが爆散。白蓮達を襲っていた怪人がいなくなった事から、支配人達も白蓮達の下まで駆け寄る。

 

「げんぶの奥さんか。よくこんな状況の中、無事でいられたな」

 

「私を誰だと思っている? あんな雑魚共を相手に死にかけるようじゃ、耕也の妻など努められんのでな」

 

「あ、際ですか」

 

えへんと胸を張る白蓮に支配人が少し圧倒されている中、ルイは凛と対面する。

 

「ルイちゃん、無事で良かった!」

 

「凛さん! あの、ハルトさんは…?」

 

「あ…ごめん、ハルトとはまだ合流出来てないんだ」

 

「そうですか…」

 

「まぁどうせウル達も一緒だろうし、たぶん大丈夫でしょ。それよりも早く安全な場所に…」

 

『ブニャアッ!!』

 

「!?」

 

突如、真上から飛び掛かって来たバケネコ。その爪が凛に向かって振り下ろされる。

 

「ヤバ!? 油断し―――」

 

-ズドォンッ!!-

 

『ギニャア!?』

 

しかしその爪が、凛を傷付ける事は無かった。何故なら…

 

「うし、これで30匹目」

 

「「miri!?」」

 

miriの射撃によって撃墜されたからだ。

 

「よう、テメェ等。探し人は見つかったかよ」

 

「miri、何時からここに?」

 

「ついさっき、団長から指令が下ったんだよ。今ここで起こってる事態を、一刻も早く収拾つけて来いって感じでな」

 

「じゃあ、朱音さんや二百式も…」

 

『当然、ここに来ている』

 

「!」

 

支配人達の下に、二百式からの通信が入る。

 

「二百式、今何処に?」

 

『私立聖祥大附属小学校、その校舎屋上だ。ちょうど休日で人が誰もいないから助かる……それよりお前達、あの鍵の存在は見えているか?』

 

「あぁ、思いっきり見えてるぜ。亡霊共がウジャウジャ漂ってやがる」

 

『見たところ、あの鍵が騒動の原因である事は調べが付いている。俺は今からお前達の援護に回る、どうにかしてあの鍵の破壊に専念してくれ』

 

「あいあい、了解ですよっと」

 

『それと亡霊や怪人達の事だが、奴等の事は―――ブツンッ』

 

「ん? おい、二百式!?」

 

突然、二百式との通信が切れてしまった。その後はどれだけ頑張っても、二百式との通信が繋がる様子は無い。

 

「向こうでも何かあったみたいだな……とにかく、あの鍵がこの騒ぎの原因なんだろ? 多分お前等の方が色々知ってるだろうし、あれの破壊はお前等に任せるぜ。俺は怪物共の駆除に回る」

 

「あぁ、分かった」

 

「「レイー!!」」

 

そこにちょうど、フィアレスとシグマが飛来してきた。

 

「フィア、シグマ!」

 

「ライオトルーパー部隊とゼクトルーパー部隊にも、ひとまず連絡は入れておいたよ! 今は逃げ遅れてる民間人を、安全な場所まで避難させてるって!」

 

「そういう訳だからよレイ、俺様達はとっととあの鍵とやらを破壊しに行こうぜ!! 俺様も破壊衝動が湧き過ぎててさ、暴れたくて仕方ねぇんだよなぁ!!」

 

「相変わらずの暴れん坊だなお前……まぁ良い。ユイ、俺達も行くぞ」

 

「はい、兄さん…!」

 

支配人はユイやフィアレス、シグマを連れて“鍵”の浮遊している上空まで飛び立つ。

 

「白蓮、蓮、それにアザミ。安全な場所まで避難しててくれ、俺も行かなきゃならん」

 

「分かった。必ず帰って来てくれよ?」

 

「お父さん、頑張って!」

 

「耕也さん…」

 

「心配するな、ちゃんと帰って来るさ」

 

白蓮と軽めの接吻をしてから、げんぶはその場で変身ポーズを取る。

 

「スカイ…変身!!」

 

腰に出現したベルト“トルネード”に風のエネルギーが取り入れられ、げんぶは緑色のバッタを模した空を駆ける戦士―――スカイライダーへの変身を完了する。

 

「セイリングジャンプ!!」

 

体内に搭載されている重力低減装置によって、スカイライダーも猛スピードで空へ飛び立つ。

 

「ルイちゃんも、白蓮さん達と一緒に安全な場所に!」

 

「はい! 凛さんも、お気をつけて…!」

 

凛もアメジストの指輪に込められた“空”の力で宙に舞い、そのまま支配人やスカイライダー達に続く形で飛び立って行く。

 

「さて、私達も早く避難するとしよう」

 

「はい」

 

「逃げろー!」

 

「皆さん、どうかご無事で…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ、しつこいなあの蝙蝠…!!」

 

『クックック…フンッ!!』

 

「ぬぉ、くっ!?」

 

一方、二百式はバットオルフェノクの二丁拳銃から放たれる銃弾から逃げ続けていた。支配人達との通信が切れたのも、バットオルフェノクの狙撃によって妨害されてしまったからだ。

 

「まさかこんなに早く見つかるとは…ッ!?」

 

『『『『『ギギギギギ…!!』』』』』

 

二百式が飛び移ったビルの屋上も、ダークローチの大群で支配されていた。その後ろからバットオルフェノクも静かに降り立ち、二百式の逃げ場が封じられる。

 

「やはり、一筋縄ではいかないか…!!」

 

こうなった以上、強行突破する他ありはしない。そう判断した二百式は太刀を抜き、バットオルフェノクやダークローチ達と激突する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霊符『夢想封印』」

 

『『『イィーッ!?』』』

 

『『『オォォォォォォォォ…』』』

 

商店街付近では、同じく異界から脱出していたUnknown達が怪人や亡霊達と対峙していた。その中でガルムの弾幕を受けたショッカー戦闘員や亡霊達の魂が、そのまま“鍵”の浮遊する上空へと吸い寄せられていく。

 

「おいおい、本当に何だってんだよあの鍵は!? さっきから亡霊や怪物共の魂が、どんどんあの鍵に引き寄せられていってやがる!!」

 

「あれが今回の騒動の原因なのは確かなんでしょうけど……こちらの情報が少ない以上、他のメンバーとも合流する他ありませんね」

 

「ふむ、死者の魂を吸い取る“鍵”か……書庫にそれらしき文書が残ってたような…」

 

「アーン娘ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん♪」

 

「ハッ!? ちょ、姉貴…またかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

何処からUnknownの存在を察知して来たのか、朱音がUnknownに向かって体当たりして来た。当然Unknownはそのまま地面に押し倒される。

 

「ハァハァ…アン娘の匂い、アン娘の匂い…♪」

 

「ぐぅ……もうこの状況に慣れてしまってる自分が情けない…」

 

「朱音さん!?」

 

「本当アン娘さんが好きですね、朱音さんって人は」

 

「おう、全員戻ってやがったか…ってうぉわ気持ち悪ッ!?」

 

そこにBlazも到着し、彼は足にしがみ付いて来た亡霊の手を力ずくで振り払う。

 

「Blazか。お前等も来てんのか?」

 

「まぁな。何でこんな幽霊だらけになっちまってのかは知んねぇけど、多分あの鍵が原因なんだろ?」

 

「その可能性があるだけって状況だがな。とにかく、俺達も早く他のメンバーと合流しなきゃならんと思ってはいたんだが―――」

 

その時。

 

-ドズゥンッ!!-

 

『ギャォォォォォォォォォォォンッ!!!』

 

『キシャァァァァァァァァァッ!!!』

 

「「「「「!?」」」」」

 

突如、一同の前にエラスモテリウムオルフェノクとオトシブミヤミーが現れた。二体はそこら中の店を次々と破壊しながら、一同のいる方向に向かって突撃して来る。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉデカいのキタァァァァァァァァァァッ!!」

 

「くそ、また面倒臭そうなのが来やがった…!!」

 

「いちいち厄介ですね……私はそこらの雑魚を引き受けます。あのデカブツに関しては、あなた達だけでどうにかして下さい」

 

「あ、デルタさんの裏切り者ー!?」

 

ルカの叫びも無視して、デルタは一人でショッカー戦闘員やグールの排除に回ってしまった。そんな状況の中でも、エラスモテリウムオルフェノク達の進撃は止まらない。

 

「あぁもう仕方ねぇ!! とっとと潰してやるよデカブツ野郎!!」

 

「もう嫌になるわ、早くウル達と合流したいのに…!!」

 

覚悟を決めたガルム達はそれぞれ武器を構え、巨大な怪物達を迎え撃つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フンッ!!」

 

『ギギャアッ!?』

 

場所は変わり、噴水広場付近。キックホッパーは襲って来る屑ヤミーを片っ端から蹴り倒しつつ、一人で街中を移動して回っていた。

 

「やれやれ、数が多いのも困り物ですね…」

 

『シャアッ!!』

 

「む…!」

 

キックホッパーの思いとは逆に、容赦なく飛び掛かって来るロングホーンオルフェノク。迷わず蹴り飛ばそうとしたキックホッパーだったが…

 

貫くモノ(ブリューナク)!!」

 

『ガァァァァァァッ!?』

 

「…おぉ?」

 

それよりも前に、稲妻を纏った光弾がロングホーンオルフェノクを弾き飛ばした。

 

「あ、あの、大丈夫ですか…!」

 

「あなたは…」

 

駆けつけたのはバリアジャケットを纏ったみゆきだった。持っている槍に電流が走っている事から、先程の光弾も彼女の攻撃による物だろう。

 

「わざわざご苦労な事ですね。さっきの怪人くらい、私一人でも倒せたというのに」

 

「え……迷惑、でしたか…?」

 

「さぁ? ご自分でお考え下さい」

 

キックホッパーの冷たい反応に、みゆきは思わずシュンと落ち込む。

 

「こらこら、あまり冷たい態度を取るものじゃないぞ」

 

「!」

 

その時、アームズ・ドーパントを蹴り飛ばしたキーラがキックホッパー達の下まで歩み寄って来た。これには流石のキックホッパーも仮面の下で顔色が変わる。

 

「何故あなたがここに…」

 

「旅団の皆には色々と世話になったからな、少しばかり手伝わせて貰っている。それとも、私の手伝いが気に食わないか?」

 

「別に、そういう意味では…」

 

「なら手伝っても文句はあるまい? みゆきだって、お前達の手伝いをする為に必死なのだからな」

 

「…分かりましたよ」

 

「!」

 

キックホッパーは溜め息をついてから、一本のベルトを取り出してからキーラに投げ渡す。するとキーラの足元にもう一体のホッパーゼクターが跳んで来た。

 

「ベルトを装着して、そのゼクターを右側からセットして下さい」

 

「…どれ、お言葉に甘えるとしよう」

 

キーラはベルトを装着し、ホッパーゼクターを右手でキャッチする。

 

「変身」

 

≪HENSHIN≫

 

≪CHANGE PUNCH HOPPER≫

 

ホッパーゼクターをベルトに挿し込むと同時に、キーラは灰色のバッタを模した戦士―――仮面ライダーパンチホッパーへの変身を完了する。

 

「ふむ、なかなかの着心地だな」

 

「気に入ったようなら何よりです……さぁ、地獄の宴を再開しましょう」

 

「そうか……では私も、共に地獄を楽しむとしよう」

 

「わ、私も頑張ります…!」

 

キックホッパーとパンチホッパーが並び立ち、みゆきも貫くモノ(ブリューナク)を構えながら怪人達と対峙する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、ディアーリーズ一行は…

 

 

 

 

『『『『『グルァッ!!』』』』』

 

「「「「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」

 

複数の怪人達によって、またしても行く手を阻まれていた。怪人達の一斉に放ったエネルギー弾がウィザードや龍騎、ウォーロックやオーズの4人を襲う。

 

「ウルさん…!!」

 

「あぁもう、邪魔よアンタ等!!」

 

「うぅ~…邪魔ー!」

 

アスナや咲良も助太刀に入ろうとするが、シアゴースト達の妨害もあって上手く身動きが取れない。離れた位置で美空が心配する中、

 

『キィーッ!! 無駄だ、我々を押し退けて通れると思うなよ!!』

 

『貴様等も全員、この場で排除してくれる!!』

 

イカデビルとガラガランダがそう豪語すると、彼等の配下と思われるザンジオーやバッファローロード、ビートルファンガイアやシアゴーストの大群が4人の仮面ライダーへと迫って行く。

 

「ぐ……くそ、数が多過ぎる…!?」

 

「やって、くれるじゃないの…!!」

 

「仕方ねぇ、まだ体力を温存したかったところなんだが…!!」

 

龍騎とオーズが何とか立ち上がり、ウィザードがインフィニティーリングを取り出して再びインフィニティースタイルにチェンジしようとした…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪コネクト・ナウ≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その音声と共に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――はっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀色の銃弾が数発、ウォーロック達を避けるように飛来してきた(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)のは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ドガガガガァンッ!!-

 

 

 

 

 

 

『『『グォォォォォォッ!?』』』

 

「「「「!?」」」」

 

『な、何事だ!?』

 

銃弾は全て、ザンジオー達に命中。突然の事態にイカデビルやガラガランダも驚き、ウォーロック達も思わず仮面の下で目を見開く。

 

「今のは…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これはまた、大変な状況に至ってますねぇ。そこの皆さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「!!」」」」

 

ウォーロック達の振り返った先からは、一人の戦士が歩み寄って来た。その姿を見て、彼等は驚愕する。

 

「仮面、ライダー…!?」

 

ウィザードと同じ深紅の仮面、その上に被っている灰色のフード。全身のアーマーやローブには、竜燐の様な模様が描かれていた。

 

『貴様、一体何者だぁっ!?』

 

「僕が何者か、ですか……そうですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鮮血の魔法使い、クリムゾンとでも名乗りましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鮮血の魔法使い―――仮面ライダークリムゾンは、左手のクリムゾンリングを見せながら言い放つのだった。

 


 
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