第3章 群雄淘汰・天下三分の計編 17話 『 官渡の戦い 白蓮の誤算 』
華琳が白蓮を誘い込み決戦の地と選んだ”官渡”
鄴から南方に位置し、北東へと陸を分断するように流れている”黄河”
”黄河”から分かれる形で、大小の河が南東へと分岐し流れている
”黄河”は中国の北部を流れ、渤海へと注ぐ川の名称であり
全長約5,464kmにも及ぶ長江に次いで2番目に長い川である
ちなみに中国で長江を指す場合、”江”の文字を使用し、”河”という字の時には”黄河”を指す ※黄河WIKI参照
鄴から南下した”黄河”のほとり沿いに、此度の戦いのキモとなる要衝、白馬と延津が位置していた
延津からさらに南下すると”官渡”があり、ここを抜ければ許昌まであとわずかという距離になる
鄴から撤退した華琳は、陳留がある南東方面へと去っていった訳なのだが
これは白蓮達を誘い込む為の偽装、フェイクであった
というのも、この度白蓮がこの度挙兵し鄴を占領した表向きの口実は
魏によって専横された漢王朝の復権、という大義を掲げて出陣していた
白蓮としても、華琳に追い詰められた末の止むに止まれぬ出陣とは知られたくない秘事でもあったからだ
鄴を占領し勢いにのった白蓮は、華琳の”退却先”が”陳留”方面なのを確認した上で
華琳達曹操軍の本隊がいない今ならばと、速攻で漢王朝の玉である献帝を手中にすべく
急ぎ進発したという訳なのであった
「この関? 砦? いや城か 城門が”南北”にしかないし、かなり特殊なんだよな~
まぁいいか! 今更考えた所で意味はないか 公孫の勇者達よ! 一斉に城へと攻め立てろぉーーーーーーーーー!」
「「オオオォーーーーーーーーーー!!」」
「大将へと見事吉報を届けようぞ! 皆の者かかれぇーーーーーー!」
「「ワアァァァーーーーーーーーー!!」」
白馬では白蓮、延津では華雄の号令のもと
夜の間に渡河して終えた両者は、払暁をもって一気呵成に城を落とすべく間断なく挑んでいく
白蓮、麗羽は白馬で、華雄・猪々子は延津で、兵站は斗詩が担当
重要な拠点に造られた急造の・・・こんな砦とも城ともとれるようなお粗末な拠点、さらに敵は少数であり
さっさと両拠点に造られし城を落城させ、官渡城を抜かねば許昌を望むことなど夢のまた夢
白蓮達は時間を無駄にしている暇などなかったのである
一方、自軍の数倍規模の敵方に囲まれながらも、白馬城を守備する司馬懿達はというと
「春華、鍾会」
城から公孫賛軍の陣容を見つめながらも臆した様子もなく
それどころかいつもと同じ冷静な声を発する司馬懿
「なんですか? あなた」
「ハッ! お傍に」
司馬懿同様、呼ばれた妻の張春華、鍾会に動揺する様子もなく、淡々と司馬懿に問い返していた
「以前にも言ったと思うが、相手に不審がられ墓穴を掘るようでは困る
後々取り返す時の事も考慮に入れて行動するようにな?
精々今は戯れてやるがいい くれぐれも殺しすぎるな? 奪い返す時にはお前達の好きにしろ
師には前々から口酸っぱく言っておいたのだが、私の言うことを全く聞かないヤツだからな
もう一度この事を師に言い含めておいてくれ 鄧艾」
「承知しました それでは!」
張春華の影から、器用に頭から首までを出していた鄧艾は、頷くと共に影へと溶け込みその気配を絶ってしまう
この鄧艾の足なら、ものの数刻で延津へと辿り着くこともあり、伝令として使うのには少々勿体無い程の人材なのだが
正確性という点において、右に出るものがいない事から、司馬懿は全幅の信頼を寄せ、鄧艾を延津へと送り出していた
冷静な司馬懿と対照的といってもいいのだろう
司馬懿が危惧していた通り、延津城内では、司馬師がすでに戦闘モードに突入していたらしく
拳を保護する為の鉄甲を気合と共にガチンと合わせている
「やっと始まったか 元姫、郭淮いくぞ!」
火の玉の如く戦場へと躍り出ようと逸る司馬師に
「えっ!? いくの!?」
「ハッ 若! お供しやす!!」
傍にいた元姫は作戦とは違うけどいいの?という驚きの声をあげ
郭淮は司馬師同様、準備万端といった対応をみせていたのだが・・・
「少しお待ちくださいませ 若」
賈充の冷たく冷静な声が、躍り出ようとしていた司馬師の高揚を一瞬で凍らせて静止させていた
元姫はバツが悪くなったのかそっぽを向き関係ない事をアピールしていた
「なんだ? 賈充 言葉遣いを改めやがって・・・ なんだか気色悪いぞ?」
折角の高揚した気分を台無しにされた事への司馬師の恨み節を多分に含んだ反論であったのだが・・・
「若に蛇蝎の如く忌み嫌われたとしても、こちらは別段構いませんが?
御館様より御指図があった筈ではございませんか? もうお忘れですかな?」
司馬師の恨み節など華麗にスルーする賈充 逆に正論で反撃されタジタジとなった司馬師は
「んっ? そうだったっけ? なぁ?元姫」
誤魔化す様に、司馬師は何時も味方となってくれる元姫へと、同意を得ようと話を振った訳なのだが・・・
「えっ! えぇ~~~~~ なんでこんな時だけ私に振ってくるのかなぁ~ 子元ちゃんはっ!
全く空気が読めないんだから! ぷんぷんっ!」
いつもなら司馬師の言う事なら何でも受け入れる元姫なのだが、空気を読め?と逆に元姫にキレられてしまった
女心というヤツは非常に厄介で扱いにくい そう感じていた司馬師であった
事前に司馬懿より、此度の作戦を一緒に聞いていた身の上の為
司馬師の今回の無茶振りに、さすがに元姫でさえこの度はソッポを向かれ最終的に同意を得るには至らなかったようである
「マジかよ・・・ 元姫に振ったのが間違いだったか・・・ そうだ!郭淮・・・っていねぇし! どこ消えやがったあの野郎!」
同意していた郭淮を探すものの・・・さっきまで傍にいた筈なのに
周囲を探せどその姿はなく、虚しく司馬師の愚痴だけが周囲へと木霊するのであった
「そうですよ? 若 仲達様よりの言伝を賜りましたので、こうして伝えに参りました」
漸くの支援が来たのか!?と気配を感じ思い振り返った司馬師は、さらに身体が硬直することになった
「うげっ! 鄧艾 都合の良い時だけ現れやがって・・・
あ~辛気臭いアイツからか くそ面倒臭い ・・・で?」
司馬懿のお目付け役といえる鄧艾の姿を見て、バツが悪くなった司馬師はあ~~と叫びながらガリガリと頭をかいた
「相手に不審がられ墓穴を掘るようでは困る、後々取り返す時の事も考慮に入れて行動するようにな?
精々今は戯れてやるがいい くれぐれも今は殺しすぎるな? 奪い返す時にはお前達の好きにしろ
と仰せでございます よろしいですね? 若?」
司馬師の先程までの高揚は、この言葉でTHE ENDを迎え、完全に霧散する事になったのだった
「もし逆らったら?」
諦め切れなかったのか 尚も悪あがきとも取れる含み笑いを浮かべ、ニヤリと反論してみせた司馬師であったのだが
「敵わぬまでも全力でお止めさせて戴きます」
そう、この女をアイツ=司馬懿が派遣させてくる訳は
移動が素早いのは言うに及ばず、寧ろ司馬師の暴走を唯一止めれる人物でもあったからだった
身内なので鄧艾の技のカラクリは知っているものの
司馬師といえども相性が悪く、しかも破るのに骨が折れ、厄介極まりない代物といえたのである
「あ~ ・・・はいはい わかった! わかりました! 興が削がれた こうして大人しくしていればいいのだろう?」
賈充と鄧艾に見事に押さえ込まれた司馬師は、床にゴロンと大の字に寝転がって降参の意を示した
「お解り戴けましたようで、鄧艾嬉しゅう存じます 若様」
その司馬師の様子をみた賈充と鄧艾は、互いに顔を見合わせ苦笑を浮かべながら
司馬師に対しぬけぬけと、フォローの言葉を投げかけていた
「じゃあさ~ 子元ちゃん! 元姫も暇だからぎゅっとして慰めてあげる!」
大の字でスネていた司馬師の横へ、皆が見ているのにも係わらず、一切躊躇した様子も見せず抱きつく
「うっさいな! 興が削がれたと言っただろう? あっちいけ! 離れろ!元姫!」
「ぶぅ~ぶぅ~~ さっきは子元ちゃん 元姫! 愛してるよと囁いてくれた癖にぃ~!」
「一言もそんな事言ってねぇし! 話が全く噛み合ってないんだよ! お前とはっ!
それに俺は今機嫌が悪いんだから、さっさと離れろっ!」
司馬師と元姫は、辺り構わずゴロゴロと左右へと器用に寝転がりながら揉み合っているが
他人からすれば、どう贔屓目にみても、仲良く早朝から乳繰り合っているようにしかみえなかった
「若 行かないんですかい? 敵さん わらわらと来てやすぜ?」
いつの間にか乳繰り合っていた司馬師の傍へとしゃがみ込み
そんな言葉をのうのうと吐いてみせた郭淮であった
「かぁ~くぅ~わぁ~いぃ~(郭淮)!
てめぇ!何処に消えたかと思えば、外へ様子を見に行ってたのか! 何か一言断ってから見に行けよ!
行けない事情の詳細なら、そこで見ている賈充か鄧艾に直接聞け! 俺は寝るぞ~」
「元姫も子元ちゃんと一緒に寝る~♪」
「もう・・・相手にするのも面倒だ 勝手にしろ!」
「うんっ 好きにする~♪」
元姫へと背を向けて寝転がり目を瞑り停止してしまった司馬師
そんな司馬師の様子をみてくすっと笑い、満足げな表情を浮かべ背に抱きつくように寝ている元姫でありました
「もう帰られるのか? 鄧艾殿 御協力感謝する
おい 郭淮! 若に代わり北門前線へと出て、華雄と文醜を止めろ いいな?」
賈充は鄧艾が消え去る前に感謝の意を述べた
頷くのを感じると共に、鄧艾の気配が賈充の影へと吸い込まれ姿を失ってしまう
「おいおい 賈充 藪から棒になんだ!? その無茶ぶりは!
俺は若じゃないんだから、そんな無茶な芸当出来る訳ないだろう?」
賈充へとそう必死に反論してみせた郭淮でありましたが
「俺も出て指揮をする! 荊州の時の失敗をこの機に挽回するぞ
それに勝てと言ってはおらん ”止めてみせろ”と言っている! 頭を使え 郭淮!」
「はいはい わかりましたよ~ とんだ貧乏くじ引いたもんだぜ」
今度は司馬師の代わりに郭淮が愚痴を言う始末に、賈充はもう聞く耳さえ持っていないのか
周囲の者達へと次々に指示を与えて動かしていく 郭淮も賈充の様子をみて渋々動き出したようである
賈充を始めとした郭淮の指示には本当に無駄がなく、さすがは司馬師の頭脳とも呼べる男の仕事ぶりといえた
延津の城の内部は大軍に攻め込まれ、さぞ殺伐としてるかとおもいきや
こんな夫婦漫才のような、甘く嘔吐しそうな軽い空気が漂っていたのだった
だが事は白蓮達が考えるように簡単には事が進まなかった
元々、白蓮や華雄は城攻めが得意な方ではない、隊と隊がぶつかり合う野戦の方が性に合っていた
そこを見越していた華琳の術中に見事嵌まってしまった形で
白蓮と麗羽は、渡河した”黄河”の畔に軍を集め、白馬城の”北門”へと迫り果敢に攻め立てた
一方で、華雄も猪々子と共に延津へと渡河し、閑散とした街へと難なく侵入し、延津の城を落としにかかっていた
司馬懿側の総勢は、両拠点とも数千にも満たない僅かな手勢での抵抗であり
一方の白蓮の兵数はというと、白馬、延津と2つに部隊を分けているが総勢1万規模である
準備万端であろうとも、兵数差もあって白馬と延津はすぐに落ちるだろうと計算していた白蓮達であったのだが
すでに攻めかかって3日は経とうというに、司馬懿、司馬師親子が立て篭もる、この2つの城を容易に落とす事が出来なかった
ここで1つ目の躓き、白蓮の速攻で許昌を落とすという計画に狂いが生じてきていた
城を取り囲む事も出来ず、大軍を展開するほどの幅がない地形に拠った造り
しかも城門が南北の2つしか存在しないゆえに、攻撃が単調になりやすく敵に攻撃が読まれやすかった
また、当初の目論見では白蓮の主力である白馬義従なる騎馬隊は、白馬、延津を抜くのに活躍すると見越していた
しかし急造とはいえ、この両重要拠点の白馬、延津に城が築かれていた為、城攻めとなっては残念な事に殆ど役に立たなかった
こんな所で時間を浪費していたのでは、いつ何時隙をつかれて、曹操本隊に襲われても可笑しくはなかった
「麗羽 頼んだぞ」
「おほっほっほ 任されましたわ 行きますわよ 猪々子さん、斗詩さん」
「「あらほらさっさ(うぅぅ~~~これ言わなきゃいけないの~?(泣))」」
麗羽と猪々子はノリノリ、斗詩は心の中で泣きながら愚痴っていたようであるが
挽回すべく白蓮は、一日時間を浪費するのを覚悟の上で、麗羽、猪々子、斗詩の弓部隊を主体とした軍編成へと替え
先ずは白馬へと麗羽達を集中させ、落とした勢いのまま延津へと雪崩れ込む作戦へと変更を余儀なくされていた
するとどうしたことであろうか、麗羽、猪々子、斗詩の攻める勢いが凄まじかったのだろうか?
今まで頑強な抵抗を見せていた白馬の城は、次の朝には司馬懿を始めとした守備兵の姿はなく
城はもぬけの空となっており、あっという間に陥落し占拠することとなったのだ
白蓮と華雄共に、そして戦った麗羽、猪々子、斗詩の方がこの事態に拍子抜けしてしまっていた
きっと白馬を棄て延津へと退いたに違いない、そう読んだ白蓮達首脳陣であったものの、この予想は残念ながら当る事はなかった
延津へと確認をしてみると、こちらもまた守備兵の悉くが煙の如く消え去っていたというではないか
守備していたと思われる司馬懿、司馬師親子の御首をあげることは叶わず
共に何処へか行方を晦まし、遁走してしまっていたというではないか
白蓮や華雄を始め、麗羽、猪々子、斗詩共に、狐ににつままれたかのような顔をしていたのが印象深い
「曹操軍、我らに比肩するに値せず! 諸君、この機に”官渡”を抜き、許昌へと迫ろうではないかっ!」
「「オオオォォォーーーーーーーーーーーー」」
司馬懿、司馬師親子の抵抗により、予想以上の時間は経過してしまったものの・・・
気を取り直した白蓮の号令に応える兵士の面々の表情は、まだまだ疲れなど見せず士気尚高しといった所である
だが、この勢いに疑問を呈す人物がいた その人物とは麗羽であった
「白蓮さん さっさと官渡城を落としてしまいましょう 何だか嫌な予感がいたしますわ」
意気盛んな皆が取り囲む中で、麗羽だけが神妙な面持ちでそう呟いていたのである
何を馬鹿な事を・・・そう華雄は笑い飛ばそうとしたのだが・・・
「こういう時の麗羽さまの勘は妙に当たるんだよな~」
「麗羽さまの言う通りかと思います」
麗羽の呟きを肯定しだす猪々子と斗詩
3人は共に長い付き合いだけに、お互いの事を白蓮より深く知り尽くしている
それだけに麗羽が放ったこの言葉の持つ重みが違うといえた
「予感? おいおい 麗羽達・・・ おどかさないでくれよ」
おどけてみる白蓮であったが効果は薄く、周囲は重い空気が漂っていた
「冗談だろうと笑い飛ばそうとしたが、麗羽の言うことにも一理あるやもしれぬな
頑強に抵抗していたのいも係わらず、最後は曹操軍とは到底思えないあっけなさだった
何かあるやも知れぬな 警戒するに越したことはないぞ? 白蓮」
そう華雄に諭された白蓮は、表情を引き締め今後の動きを麗羽達へと説明する
「そうか 分った 行軍は油断なくいこう! 麗羽達は最低限の兵数を白馬に残した後に延津へと来てくれ
私と華雄は延津へと先行し、延津で合流した後に再編成、その足で官渡城へと向かうことにしよう
華雄には官渡城への先陣を任せる!」
白蓮による今後の方針の説明が終わり、麗羽達は互いの顔を見合わせ、確認するように頷きあうと
「急ぎ延津へと出立するぞ! 延津にて再編成の後、官渡城へと向かう! いくぞ 皆我に続けぇーー!!」
「「オオオォォォォォーーーーーーーーーー!!」」
華雄の号令に皆呼応し叫びながら、意気揚々と自身の武器を天へと高々と突き上げ
次々に白馬南門から出発していくのであった
華琳が今座っている場所は、退却した陳留の玉座などではなく、白蓮達が進軍している先である官渡城の玉座であった
「そう 漸く・・・いえ思ったより迅速だったわ ここ”官渡”まで進軍してきたのね
ここは公孫賛を賞賛すべき所なのかしら? それとも将兵を褒めるべき所なのかしら?」
そう呟く華琳の表情は大胆不敵にも笑みが零れていた
「猪ここに極まれり お陰様で楽が出来て大いに助かります」
傍に控えていた稟が、華琳の問いにそう吐き捨てたのである
「稟 少し言葉が過ぎるぞ? まだ我らは勝った訳ではないのだからな?」
「そうですよ! ここ官渡城が万一落とされるような事があれば、ボク達の方が危うくなるんですから!」
普段の春蘭、季衣なら、自身達の方が猪ぶりを遺憾なく発揮してもおかしくない所なのだろうが
白馬、延津という両重要拠点が落とされたと聞き、慎重になったのやもしれない
稟へと似合わぬ言葉で反論していたのである
「ふふふ 春蘭や季衣達の意見に一理あるわね
それに悪い癖よ? 稟 春蘭や季衣達信のおける者達にまで試すのはおよしなさいな」
その遣り取りの一部始終聞き終えた華琳は、スラリとした足を組み替え
眼を細め笑いながら、稟へと注意を促した
「ハッ 華琳さま! 春蘭、季衣申し訳なかった この通りだ」
華琳にあっさり自身の心底が見破られ、降参とばかりに2人へと頭を下げ謝罪したのである
「あん???」
「え!?」
稟のその言葉とは裏腹な殊勝な態度に、瞬時に理解不能に陥ったのか、稟の意図が全く理解出来ず
春蘭と季衣の2人の頭の中は、疑問符が次々と浮かび上がっては消えていた
「今までの負け戦で臆していないか 皆さんを試されたのですよ
主、ただ今戻りました」
「おかえりなさい 仲達」
「負け犬が何か御用ですか?」
「司馬懿・・・ 負けたお前が何故ここに!?」
司馬懿の声を聞いた華琳、稟、春蘭のそれぞれの反応である
この度の作戦の為、前々から白馬、延津という両重要拠点を任せていた筈なのに
わずか数日で、敵の猛攻に耐え切れずに命が惜しく逃亡した
先程そう報告を聞き、春蘭の頭の中で変換されていた為、口から出た言葉も辛辣であった
稟は敗北以前に、司馬懿の事が気に入らないからなのであるが・・・
「おやおや? 皆さん何やら手厳しい
もしや白馬、延津を放棄し逃亡したから? よくもおめおめと敗北を喫しながら、顔を見せれたものだなという所ですかね?
それと用があるから、こうして参ったのですがねぇ~?」
稟と春蘭の辛辣な言葉など何処吹く風、苦笑しつつやれやれといったゼスチャーをしながら
人をおちょくった態度をみせ、こう司馬懿は反論してみせたのである
「抜け抜けと・・・」
その反省の欠片も見られない司馬懿の態度に業を煮やした春蘭は
怒りに任せて愛刀「七星餓狼」の柄を掴み引き抜こうとした
「やめなさい春蘭 今は仲達の敗北の罪を問うつもりはないわ」
そう華琳に諭されては、春蘭としてはそのまま司馬懿を斬る訳にもいかず
唸りながら、渋々引き下がるしかしょうがなかった
「それよりここに現れたという事は、両拠点を奪い返すつもりなのでしょう? 準備は整って?」
「退散するのも”仕事”の内でしたからねえ
命を下されば、いつでも攻め落とし奪い返してみせますが?」
司馬懿の仕事、それは陳留へと退却してみせた華琳が、この官渡城へと入る時間を稼ぐことにあり
華琳と稟の中では、司馬懿は両拠点を守りきり、焦れた公孫賛が官渡城へと進軍するという思惑を
あっさりと否定し時間だけ稼ぐとさっさと放棄してしまったのだ
これでは公孫賛を包囲する目論見が崩れてしまい、何のために司馬懿に命じて城を事前に強化させたのか
しかも敵の手に委ねてしまうという、その意義すら問題視されかねない司馬懿の失態といえた
「なら早速落として、公孫賛軍を封鎖しておいて頂戴
意気盛んな公孫賛軍全体を恐怖のどん底へと突き落としてあげなさい!」
さすがの華琳も公孫賛軍をこのまま包囲できずに、もし逃がすような事にでもなれば
孫呉との大陸の覇権をかけた一大決戦の日は、益々遠のくばかりな事もあって
さすがにこの舐めたような司馬懿の態度には、さすがの華琳もイラついたようで、語気が強めになっていた
「承知」
華琳の気持ちを知ってか知らずか、司馬懿は淡々と短くこう答え、さっさと背を向け玉座の間を後にする
「それと上党にいる秋蘭、青州にいる風と流琉へ急ぎ伝令を飛ばしなさい!
急ぎ計画を実行に移せと伝えて頂戴!!」
「ハッ 承知致しました」
傍にいる稟へと素早く目配せして、穴がないのかの確認をする
稟は華琳の目配せに素早く頷き返す 稟の頷きに満足した華琳は玉座を立ち号令を発する
「さて・・・ これで舞台の準備は全て整ったわけね
此度の戦いはあくまでも覇業への通過点、なれど油断は禁物よ
皆その事を肝に銘じて、此度の戦に全力で望みなさい! いいわね?」
「「ハハッーーーー」」
春蘭、季衣を始めとした将達は、官渡城のそれぞれの持ち場へと散っていくのであった
「さて公孫賛へと組みした事を地獄とやらで後悔してもらうとしよう!
1番隊・春華! 2番隊・鍾会! 渡河を開始しろ!! 上陸と共に城北門へと雪崩れ込め!!」
「フフフ 久々の戦い 疼くわ・・・ 遅れずに着いて来なさい鍾会 」
「ハッ 奥方様(奥方様の視線が絡みつく、この鍾会より妖艶で恐ろしい)」
そう、司馬懿の開始の言葉は、守備する公孫賛軍にとって、とても長く感じる一日となった
渡河し上陸を果たした1番隊・張春華、2番隊の鍾会に率いられた屈強な精鋭者達が
自身の愛用の武器をそれぞれ抜き放った それは凄惨な殺戮劇の幕開けであった
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「今度は邪魔はしないのだろうな? 賈充」
「ええ そもそも若をお止めする理由がありませんからな オレも存分に殺らせてもらいますから」
「いいだろう 元姫はどうする? 俺に着いて来るか?」
「もちろんだよ 元姫は子元ちゃんとずっと一緒だもん」
「いいだろう だが自分の身は自分で守れ
勝気で我侭なのはまだ笑って許せる範疇だが、弱き女子など唾棄すべき存在だ おれに必要ないし要らん」
「それなら大丈夫! 元姫が子元ちゃんを護ってあげるね!」
「クックック 護ってもらうとしよう!
賈充 アイツからの命だ この勢いだ 間違って全員殺してしまいかねんからな 念のため最初に数人捕まえておけ」
「承知してますよ 若」
「そうか なら話は終わりだ 逝くぞ野郎共!!」
「「ヒャッハァァァーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
司馬師を先頭にして、賈充、王元姫、郭淮と次々に乗り込んでいく
男達は最後にその後ろを様々な奇声を発しつつ、足早に船へと乗り込んでいった
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本隊へと伝令を飛ばし応援要請をしたが、間に合わなかったようだ
華雄に延津を任させた司令官の男が、守備兵の皆に退却命令を出して数刻が経っていた
本隊へと応援を出した手前、もし応援に駆けつけてくれた時にいなければ失礼に当たると思い
最後までこの指揮官の男は律儀に残っていたのだ
指揮官の男の目の前に立つ小柄な男、およそ4.6尺(※140cm)ほどの背丈だろうか
黄巾の乱時、反董卓連合時、組み手などはした事は皆無であるが
都合何度か、天の御遣いである一刀の戦いを見てきていた
その経験から断言してもいい この小柄な男、もしかしたら天の御遣いに匹敵する強さなのではないか?
延津の指揮官は、そう肌で感じていた
その理由として挙げると、小柄で軽装という事もあるのだろうが、尋常でない速さで動かれ惑わされ、こちらの剣先がブレた
接近されてはこちらの剣は鉄甲で難なく防がれ、肘、膝、手首と、肩といった間接部へと正確に攻撃を当ててきた
時に床石すら容易に砕く打撃だ 本気だったならば、一撃で間接部は容易に砕かれていたことだろう
コレまで幾多の戦いに参陣し生き残ってきた者だからこそ、敵う筈がないと絶望の淵へと追いやられる死の恐怖に苛まれた
「ほう?ちょっとは愉しめそうだな 今まで遭った奴らは一撃死だったモノでな
まぁ そうでなくてはこちらも困る 日々の生活に潤いがないとな
この身体で戦う感覚の微調整が、まだまだ完璧でないからな 少しの間相手をしてもらおうか」
こちらは満身創痍だというのに、指揮官より小柄な男にはまだまだ余裕が漂っていた
それはそうだろう、こちらは手傷すら相手に負わせていなかったのだから・・・
「・・・キチガイめがっ!」
額からとめどなく流れる汗が、冷や汗なのかどうかもハッキリしない
吐く息も荒く身体も重い、こんな状況で光明など見出せる筈もなかった
死神に抗うように、剣先を小柄な男の喉元へと素早く突き立てる
小柄な男の喉元へと吸い込まれたと思った矢先に、指揮官だった男の意識は突然途切れ、そのまま帰らぬ亡骸と成り果てていた
グヂィという肉に食い込む音、その直後にボギン、ゴギンという骨の砕く鈍い音を数度響かせると共に
華雄に延津の守備を任されていた指揮官は、床へと前のめりに倒れたままピクリとも動かなくなった
「アハハハハ! 脆い!脆過ぎる!
まだ全力を出しておらんのに壊れるとは・・・実に物足りんな だが まぁ 準備運動としてはこれでよかろう
アイツから、この世界の北郷は昔を遙かに凌駕し手強いと聞いているしな クックック! 実に楽しみだ!
早く北郷一刀と全力で殺りあえる日が来ないものか」
小柄な男、司馬師は鉄甲についた骸に成り果てた男の血を舐め取り
身体を小刻みに震わせ、その身を狂気に委ねるのであった
「若 延津の制圧、完了致しました 満足されましたかな?」
「ん? ああ 賈充か 想像してたより骨のある奴が残っていたようで楽しめた
急ぎ城を含めた北門の復旧に当たらせろ! 守備兵はちゃんと捕まえてあるだろうな?」
「復旧に関してはすでに指示を終えておりますがね
捕虜に情報を与え放逐してもよろしいかな?」
「さすがは賈充 仕事が速いな 捕虜の件は放逐して構わんぞ」
「お褒めに預かり光栄にこざいます では早速手配いたします」
司馬師へと一礼すると部屋から足早に去っていった
「アイツは昔から悪趣味だからな・・・ 今更アイツの計画に口出しする気もないが
俺ならこんな回りくどいことなどしやしない ”どちら”が倒れようが知ったことではないしな」
再び延津の城の主となった司馬師はそう呟き、椅子へと深く座り込み興奮冷めやらぬ身体を預け眠るのであった
・
・
・
「子元ちゃん どこいっちゃったんだろう? この部屋かな~♪ それとも・・・ここかな!」
司馬師が奥の椅子にて眠りこけていた頃、元姫はまだ司馬師を求め、辺りの捜索に余念がなかった
捜索は手当たり次第に行われ、そんな暗所で狭い部屋などに
司馬師が潜んでいる訳など、100%、いや200%ありえないのだが・・・
お構い無しに、そこらへんにあるつづらなど、次々に片っ端から開け放っていく元姫
次々に開け放つつづらの中には、当たりがあったというべきなのだろう
「ヒッヒィィーーーーーーーーー!」
という叫び声と共に、突然男が震えながらつづらから飛び出してきていた
この見つかった男、延津を任された指揮官と共に残っていた者の内の1人なのだが
味方を次々とミンチにしていく、あまりにも狂気に満ちた司馬師の凶暴さを目の当たりにし
つづらの中へ逃げ込み息をひそめ震えながら隠れていたのだった
「あらあら~♪ 子元ちゃん・・・こんな所に隠れて・・・いる訳ないわよね はぁ・・・」
見つかったのが元姫だった事もあって見逃してもらえると踏んだのだろう 賢明な判断といえた
女とみて元姫に襲い掛かっていたなら、即首が転がりこの世からいなくなっていただろう
「頼む!この通りだ!! たったすけてくれ! こっ故郷には妻と子が待っ・・・」
見つけた元姫へと必死に頼み込む男の様子に
「ふふふ」
元姫は男へと月や花も恥らうほどに美しい微笑を浮かべた事で、男は許され助かったと思ったのだろう
安堵の表情で一杯に満たされて立ち去ろうとしたのだ
しかし、元姫の表情が氷のような表情へ一遍し、スゥーーーと猫のように眼を細められた
その数瞬後に元姫の瞳に映るのは、何時の間に取り出したのか手に扇が握られており
先程まで必死に命乞いをしていた男の口に、無惨に突き刺さる数枚の苦無
数枚の苦無はというと、後ろの壁へと貫通しており、壁に縫い付けられるような形で男は死に絶えていた
絶望の表情に彩られた哀れな男の末路、魂は旅立ちこの世に残された唯一の残骸といえた
元姫の手には、先程まで扇を成していた筈の数枚が消え去っており
恐らく突き刺さっている数枚の苦無は、男の口へと瞬時に投擲されたのだろうと推測された
「さっきからゴチャゴチャとうるさいわね あなたの事情なんて興味ないわよ・・・」
「姫こちらにおられましたか! 城はほぼ制圧を終えました
若はこの先の奥の部屋でお休みになられておられるようですぞ?」
「そう、ありがと」
親切な部下の報せに言葉数少なく素っ気無く答えると、数枚無くなった扇を素早くたたみ、胸の谷間へと仕舞い込むと
ここで何事もなかったかのように、元姫はスタスタと報告した方角へと鼻歌を歌いながら
延津の城の廊下を足早に立ち去っていくのであった
「もっ申し上げます・・・ 行方をくらませていた司馬懿、司馬師両隊が突如出現・・・
白馬、延津の両拠点の北側より奇襲を受け、両拠点とも攻め落とされました模様・・・
そして官渡城には・・・ 曹操本隊が駐留しているとのことです・・・・・・・」
司馬懿が官渡城へと現れた頃、白蓮達は延津へと到着しその後に合流した麗羽達の軍を含めて再編成
白馬、延津に最低限の守備兵を駐屯させ、目的地の官渡城を抜くべく行軍していた
だが官渡城へと行軍しだして2日目の夜に
その凶報は、息も絶え絶えな血みどろの伝令が駆け込んできた事によって、白蓮達にもたらされることとなった
そして白馬、延津、両拠点を守備していた者達は
血みどろになって転がり込んできた者達を含め、状況を伝えさせる為、敢えて”意図的”に逃がされたのだろう
状況を伝えてくれた者を含めた重傷者数人しか、軍へと帰還しなかったのである
生き残り辿り着いた者達も、数日を経たずして皆死に絶えてしまうこととなる
守備した殆どの者が、城を放棄して何処かへと逃亡したとは考えにくく
恐らく奪い返した司馬懿達によって、非道にも皆殺しの憂き目に遭ったのだと容易に想像する事ができた
それだけに、公孫賛の本陣に異様に重苦しい空気が漂っていたのである
「なんだとっ! これはまずいことになったぞ 白蓮・・・ 我らの退路を絶たれてしまった格好だな
それにしても何故延津から生き延びてきた者が、官渡城の情報を掴んだのだろう?
それに陳留へと退いたと思っていた曹操が、よもや進軍先の官渡城に入っていたとは予想外だった・・・」
延津から生き延びてきた者が、官渡城の情報を何故掴んだのか?さすがに頭を捻り考えた所で華雄達に分る筈もなく
息を引き取る伝令に静かに黙祷する白蓮に対し、華雄は報告を聞き鼻息を荒くしている
「そんな心配する事か? 華雄
兵糧も存分にあるし、相手が一度落としたのだ このまま軍を反転させてすぐ取り返せばいいだろう?」
突然の事にまだ事情が飲み込めていないのだろう
そんな暢気な言葉を白蓮は華雄達の前で吐露してみせたのである
「何を馬鹿な事を言ってますの? まだ事態を飲み込めていませんの? しっかりなさい! 白蓮さん!!
重要拠点である白馬、延津共に、私達は”北門”のみを攻撃し続け、相手が放棄した為占拠しただけですのよ?
守備兵がいた状態では落としてもいませんのよ? 白馬、延津共に南北にしか城門はなく、大軍を一気に投入することは難しい
司馬懿達が、仮に私達と同じように渡河して、白馬や延津の北門側から攻撃し奪い返したとなると・・・
これから反転して、我らが抜かねばならない両拠点の南側の城門は、現状全くの無傷ですわ・・・
それに拠点の北側へと回りこむには、”黄河”の渡河が必要でしょうけど、恐らく使用した船は破棄されていることでしょう
・・・となると、あのくるくる小娘のこと、白馬や延津へと背を向けた途端に、官渡城と連携して挟み撃ち
なんて事になる可能性すらありますわよ?」
「あっ!! すっすまない 馬鹿な事言ったな・・・忘れてくれ」
麗羽の指摘により、状況の深刻さに気付いた途端
白蓮の周囲の景色が、突然一気にモノクロへと変り果て、瞳は大きく開かれ絶望の淵へと追い詰められていた
「そういうことです 幸いにも急いでいたとはいえ、鄴から兵糧を大量に運んでいた事が幸いしましたけど」
「白蓮さま 見事に誘い込まれちゃいましたねぇ~ 兵糧なかったら戦い所じゃなく、兵達が離散して戦う前に終わってたな」
麗羽、斗詩、猪々子の指摘は的を射ていた
「麗羽さまの勘、見事に当たっちゃいましたね」
あの時、麗羽は注意をしてくれた筈なのに、何故もっと慎重に行動できなかったのだと激しく悔いる白蓮
斗詩のこの言葉は、軍を率いる立場となっていた白蓮には、両肩にズシリと重い錘を乗せられたかのような重圧を感じた
「ここに来てうろたえ、四の五の言っても始まらん
曹操軍にしてやられ、こうして退路を絶たれた以上
前を抜くか後ろへ退くか・・・ 2つに1つだ! 白蓮!! 大将はお前なんだ! 覚悟を決めろ!」
白蓮の絶望に染まる様子をみて、そう、戦はまだ終わった訳ではない!と
華雄は尚も必死に、友である白蓮を励まし発破をかけ続けた
「あっ! ああ・・・ わかっているさ 華雄
少し自身の考えが甘かったようだ それはこの後反省するとして・・・
鄴へと戻った所でジリ貧なんだ 今こちらは勢いに乗っている! 当初の目的通り、官渡城を抜こう!
麗羽、最初から全力でいこう!
蒼白だった白蓮の顔に、漸く血色が戻り、意思が宿った燃える瞳を皆へと向ける白蓮
「いい顔つきになりましたわね 私を負かしただけありますわね
承知しましたわ! そう決めた以上従いますわ 斗詩さん 聞いていましたわね? 至急組み立ての準備にとりかかりなさい!!」
白蓮の表情、言葉に満足した麗羽は、傍にいた斗詩へと命をくだす
「分りました 麗羽さま それでは急ぎ支度致します」
「斗詩手伝うぜ」
「ありがとう文ちゃん それじゃ急ごう!」
2人は頷き合うと一礼をして、本陣から急いで駆け出していく
「白蓮 時間との勝負になってきたな」
「ああ 私の誤算が白馬、延津の皆の犠牲を招いてしまう結果を生んでしまった
だが悔いて立ち止まっている暇など私達にはない」
「そうですわね くるくる小娘がこちらの退路を断ち周囲を固めてしまうのが先か・・・」
「それとも我らが官渡城を抜き許昌へと進軍し、献帝を無事保護できるのが先か・・・
面白くなってきたじゃないか なぁ?」
「ですわね」
「はぁ~ 私は華雄や麗羽のその強心臓ぶりが羨ましいよ」
斗詩と猪々子を見送りながら、白蓮、華雄、麗羽、3人の呟きは誰に聞かれることもなく、儚く闇へと解けていった
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●『真・恋姫†無双 - 真月譚・魏志倭人伝 -』を執筆中
※本作品は【お気に入り登録者様限定】【きまぐれ更新】となっておりますので、ご注意を
人物設定などのサンプル、詳細を http://www.tinami.com/view/604916 にて用意致しております
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お手数をおかけ致しまして申し訳ありませんが、ご理解とご了承くださいますよう、何卒よろしくお願いいたします<(_ _)>
■■■【オリジナル人物紹介】■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
○孫堅 文台 真名は緋蓮(ヒレン)
春秋時代の兵家・孫武の子孫を称し、各地で起こった主導権争いに介入し
『江東の虎』の異名で各地の豪族を震撼させた
優秀な人材を率い転戦、やがて軍閥化し孫家の基礎を築いた
容姿:髪は桃色で、孫家独特の狂戦士(バーサーカーモード)になると、右目が赤色に変化するのが特徴で、平時は量目とも碧眼である
祭と同じく胸が豊満で背は祭より高い 体格は祭よりすこし大きい 顔立ちは蓮華というより雪蓮に似ているだろうか
○張紘 子綱 真名は紅(コウ)
呉国の軍師の一人で主に外交を担当。 魏の程昱(風)の呉版と考えていただけると理解しやすいだろう
『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、姉の張昭と共に臣に迎え入れられる
張昭と共に『江東の二張』と称される賢人
※史実では、呉郡の四性でも張昭と兄弟でもありませんのでお間違い無きように。。。
呉郡の四性の中で張温しか見当たらなかった為、雪月の”脳内設定”です
容姿は青眼で背丈は冥琳より少し低い 顔は姉の王林とは似ておらず童顔で人に安心感を与える顔立ちである
髪は腰にまで届こうかという長く艶やかに保った黒髪を束ね、ポニーテールと呼ばれる髪型にしている事が多いが
その日の気分により、長髪を肩辺りで束ね胸の前に垂らしている場合もあるようである
服装は藍色を基調とした西洋風ドレスを身を纏っている
○魯粛 子敬 真名は琥珀(コハク)
普段は思慮深く人当りも良い娘で、政略的思考を得意とし、商人ネットワークを駆使し情報収集・謀略を行う
発明に携わる時、人格と言葉遣いが変化し、人格は燃える闘魂?状態、言葉遣いは関西弁?風の暑苦しい人に変化する
このことから「魯家の狂娘・後に発明の鬼娘」と噂される
※穏(陸遜)は本をトリガーとして発情しちゃいますが、、琥珀(魯粛)は発明に燃えると・・・燃える闘魂に変身って感じです
容姿は真名と同じく琥珀色の瞳をもち、髪は黒で肌は褐色がかっており月氏の特徴に似通っている
背は明命と同じくらいで、服装は赤を基調としたチャイナドレスを身に纏っている
○張昭 子布 真名は王林(オウリン)
呉国の軍師の一人で主に内政を担当。 冥琳とはライバル同士で互いに意識する間柄である
『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、妹の紅(張紘)と共に臣に迎え入れられる
張紘と共に『江東の二張』と称される賢人
妹の紅は「人情の機微を捉える」に対して「政(まつりごと)の機微を捉える」という感じでしょうか
容姿は冥琳より少し高めで、紅と姉妹でありながら顔立ちが似ておらず、冥琳と姉妹と言われた方がピッタリの美人系の顔立ちである
眼鏡は使用しておらず、服装は文官服やチャイナドレスを着用せず、珍しい”青眼”でこの眼が妹の紅と同じな事から
姉妹と認識されている節もある 紫色を基調とした妹の紅と同じ西洋風のドレスを身を纏っている
○程普 徳謀 真名は楓(カエデ)
緋蓮旗揚げ時よりの古参武将であり、祭と並ぶ呉の柱石の一人 「鉄脊蛇矛」を愛用武器に戦場を駆け抜ける猛将としても有名
祭ほどの華々しい戦果はないが、”いぶし銀”と評するに値する数々の孫呉の窮地を救う働きをする
部下達からは”程公”ならぬ『程嬢』と呼ばれる愛称で皆から慕われている
真名は・・・素案を考えていた時に見ていた、某アニメの魅力的な師匠から一字拝借致しました・・・
容姿は祭と同じくらいの背丈で、端正な顔立ちと豊かな青髪をうなじ辺りでリボンで括っている
均整のとれた体格であるが胸は祭とは違いそこそこ・・・ちょっと惜しい残念さんである
○凌統 公績 真名は瑠璃(ルリ)
荊州での孫呉崩壊時(※外伝『砂上の楼閣』)に親衛隊・副長であった父・凌操を亡くし、贈った鈴をもった仇がいると
知った凌統は、甘寧に対して仇討ちを試みるものの・・・敵わず返り討ちにあう間際に、一刀に救われ拾われることとなる
以来、父の面影をもった一刀と母に対してだけは心を許すものの・・・未だ、父の死の傷を心に負ったまま
呉の三羽烏の一人として日々を暮らしている
容姿はポニーテールに短く纏めた栗色の髪を靡かせて、山吹色を基調とした服に身を包んでいる小柄な少女
(背丈は朱里や雛里と同じくらい)武器は不撓不屈(直刀)真名の由来で目が瑠璃色という裏設定もございます
○朱桓 休穆 真名は珊瑚(サンゴ)
『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の朱氏の一族
槍術の腕を買われ、楓の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人
部隊内では『忠犬・珊瑚』の異名がある程、一刀の命令には”絶対”で元気に明るく忠実に仕事をこなす
容姿:亞莎と同じくらいの背丈で、黒褐色の瞳に端正な顔立ちであり黒髪のセミロング 人懐っこい柴犬を思わせる雰囲気をもつ
胸に関しては豊満で、体格が似ている為よく明命から胸の事で敵視されている
○徐盛 文嚮 真名は子虎(コトラ)
弓術の腕を買われ、祭の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人
『人生気楽・極楽』をモットーにする適当な性格であったが
一刀と他隊長である珊瑚と瑠璃・隊長としての責に接していく上で徐々に頭角を現し
後に部隊内では『猛虎』と異名される美丈夫に成長を遂げていくこととなる
容姿:思春と同じくらいの背丈で黒髪のショートヘア 体格も思春とほぼ同じく、遠めからでは瓜二つである
二人の区別の仕方は髪の色である(所属部隊兵談) またしなやかな動きを得意としている為、思春の弓バージョンと言える
○諸葛瑾 子瑜 真名は藍里(アイリ)
朱里の姉 実力にバラツキがあった為、水鏡から”猫”と称される
その後、水鏡と再会時に”猫”が変じて”獅子”になりましたわねと再評価される
天の御遣いの噂を聞きつけた藍里が冥琳の元を訪れ、内政・軍事・外交とそつなくこなす為
未熟であった一刀の補佐にと転属させられる
初期には転属させられた事に不満であったが、一刀に触れ与えられる仕事をこなす内に
一刀に絶大な信頼を寄せるようになる
後に亞莎が専属軍師につくと、藍里の内政面への寄与が重要視される中で、藍里の器用な才を愛し、軍師としても積極的に起用している
容姿は朱里より頭一つ高いくらい 茶髪で腰まであるツインドテール 朱里とよく似た童顔でありながらおっとりした感じである
服装に関しては赤の文官服を着用しており、胸は朱里と違い出ている為、朱里とは違うのだよ 朱里とは・・・
と言われているようで切なくなるようである(妹・朱里談)
○太史慈 子義 真名を桜(サクラ)
能力を開放しない雪蓮と一騎打ちで互角に闘った猛者 桜の加入により瑠璃が一刀専属の斥候隊長に昇格し
騎馬弓隊を任されることとなった(弩弓隊・隊長 瑠璃→子虎、騎馬弓隊・隊長 子虎→桜に変更)
本来の得物は弓で、腕前は祭を凌ぎ、一矢放てば蜀の紫苑と互角、多矢を同時に放てば秋蘭と互角という
両者の良い処をとった万能型である
武器:弓 不惜身命
特に母孝行は故郷青州でも有名であり、建業の役人街が完成した際に一刀の薦めもあって一緒に迎えに行く
隊長として挨拶した一刀であったが、桜の母はその際に一刀をいたく気に入り、是非、桜の婿にと頼み込む程であった
容姿はぼん・きゅ・ぼんと世の女性がうらやむような理想の体型でありながら身長が瑠璃ぐらいという美少女系女子
眼はブラウン(濃褐色)であり、肩下までの黒髪 気合を入れる時には、白い帯でポニーテールに纏める
一刀の上下を気に入り、自身用に裁縫し作ってしまう程の手先の器用さもみせる
真剣に話している時にはござる口調であるが、時折噛んだりして、ごじゃる口調が混ざるようである
一時期噛む頻度が多く、話すのを控えてしまったのを不憫に思った為
仲間内で口調を指摘したり笑ったりする者は、自然といなくなったようである
○高順
「陥陣営」の異名をもつ無口で実直、百戦錬磨の青年
以前は恋の副将であったのだが、恋の虎牢関撤退の折、霞との友誼、命を慮って副将の高順を霞に付けた
高順は恋の言いつけを堅く守り続け、以後昇進の話も全て断り、その生涯を通し霞の副将格に拘り続けた
○馬騰 寿成 真名を翡翠(ヒスイ)
緋蓮と因縁浅からぬ仲 それもその筈で過去に韓遂の乱で応援に駆けつけた呉公に一目惚れし
緋蓮から奪おうと迫り殺りあった経緯がある
この時、緋蓮は韓遂の傭兵だった華雄にも、何度と絡まれる因縁もオマケで洩れなくついて回ることとなるのだが・・・
正直な処、緋蓮としては馬騰との事が気がかりで、ムシャクシャした気持ちを華雄を散々に打ちのめして
気分を晴らしていた経緯もあったのだが・・・当の本人は、当時の気持ちをすっかり忘れてしまっているが
この事情を孫呉の皆が仮に知っていたのならば、きっと華雄に絡まれる緋蓮の事を自業自得と言いきったことだろう・・・
○孫紹 伯畿 真名を偲蓮(しれん)
一刀と雪蓮の間に生まれた長女で、真名の由来は、心を強く持つ=折れない心という意味あいを持つ『偲』
”人”を”思”いやる心を常に持ち続けて欲しい、持つ大人へと成長して欲しいと2人が強く願い名付けられた
また、偲という漢字には、1に倦まず休まず努力すること、2に賢い、思慮深い、才知があるという意味もある
緋蓮、珊瑚、狼をお供に従え?呉中を旅した各地で、大陸版・水戸黄門ならぬ
”偲”が変じて”江東の獅子姫様”と呼ばれる
○孫登 子高 真名を桜華(おうか)
一刀と蓮華の間に生まれた次女で、子供の扱いが分らぬ蓮華の犠牲者1号となり
早々に侍従長の咲と思春の手により育てられることとなる
そんなエピソードがあるのにも関わらず、聡明な娘で人望も厚く育ち、王となってからは自身の才能をいかんなく発揮させる
一刀や蓮華に似ているというより、姉である雪蓮に似ているとの蓮華談有り
後年孫呉の王として、天皇となりし姉・偲蓮を支えることとなる
●その他武将
蒋欽ー祭の副将、董襲ー楓の副将
歩シツー珊瑚の副将、朱然ー昔は瑠璃、現在子虎の副将、丁奉ー昔は子虎、現在は桜の副将 周魴ー瑠璃の副将
○青(アオ)
白蓮から譲り受けた青鹿毛の牝馬の名前
白蓮から譲られる前から非常に気位が高いので、一刀以外の騎乗を誰1人として認めない
他人が乗ろうとしたりすれば、容赦なく暴れ振り落とすし蹴飛ばす、手綱を引っ張ろうとも梃子でも動かない
食事ですら・・・一刀が用意したモノでないと、いつまで経っても食事をしようとすらしないほどの一刀好き
雪蓮とは馬と人という種族を超え、一刀を巡るライバル同士の関係にある模様
○狼(ラン)
珊瑚の相棒の狼 銀色の毛並みと狼と思えぬ大きな体躯であるが
子供が大好きでお腹を見せたり乗せたりする狼犬と化す
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【あとがき】
常連の読者の皆様、お初の皆様 こんばんは 雪月でございます
いつも大変お世話になっております
いや~6月に祝日欲しい、出来れば3連休で!と思うの雪月だけでしょうか?
陛下! 6月に生まれていただけないでしょうか!(ぉぃ
さてこの度の話へと移行しますと、一刀さん達の荊州攻めの事は一時置いておくととなります
期待してくださっている皆様、本当に申し訳ありません<(_ _)>
なら何故書いたのか? ・・・といいますのも、これまで混乱しないように、別々に区切ってそれぞれの話を描いて来た訳なのですが
華琳と白蓮の戦いと同時進行をしているという”時系列”を意識した作りも描きたくなったという”個人的な理由”からです
悪く言えば、ぶっちゃけ”作者の我侭”です ごめんなさい<(_ _)>(こういう描き方も一度やってみたかったのです)
白蓮がいきなり窮地へと追いやられている辺り、やはり官渡の戦いは華琳勝利で幕を閉じるのか!?
といった所が、これから先の最大の焦点かと思います
案の定というか司馬懿達が暗躍しておりますけど、華琳達との亀裂が生じ修復不可能な所まで進行している模様
司馬師が不気味な言葉を吐いておりますが、こちらの係わりが物語へどういった影響を及ぼすのかも描いていきたいと思っております
結果をカキコできない歯がゆさで一杯ではありますが
最後までお付き合いくださいますよう、何卒よろしく御願い致します<(_ _)>
これからも、皆様の忌憚のない御意見・御感想、ご要望、なんでしたらご批判でも!と何でも結構です
今後の制作の糧にすべく、コメント等で皆様のご意見を是非ともお聞かせ下さいませ
それでは完結の日を目指して、次回更新まで(*´∇`)ノシ マタネ~♪
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常連の皆様&お初の方もこんばんは いつもお世話になっております
この作品は真・恋姫†無双・恋姫†無双の2次創作となっております
主人公は北郷一刀 メインヒロインは雪蓮と蓮華と仲間達でお送りしております
※猶、一刀君はチート仕様の為、嫌いな方はご注意を! ※オリキャラ紹介は本文下記参照のこと
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