一刀「遅いな・・・・・」
指定されていた午後の時間。
一刀はやることが無かった故に、いち早く集合場所に来ていた。
春蘭「なんだ、一刀。随分と早いな」
一刀「ん、春蘭か。華琳たちは?」
春蘭「髪の纏まりが悪いとかでな。今、秋蘭が整えさている」
一刀「暫く、掛かるかも知れんな。待つか」
春蘭「うむ」
桂花「ええ」
一刀たちは軽く世間話をして、華琳達を待った。
華琳「待たせたわね」
一刀「来たか」
華琳「どうかして?」
一刀「いや。春蘭が髪が纏らないと言っていたから」
華琳「・・・・・どう?あなたから見て変じゃないかしら」
一刀「特に異常は見れんな・・・・・季衣はどうした?」
秋蘭「今朝、山賊のアジとが分かったという報告が入ってな。討伐は姉者が出るから街を見て来いといったのだが、聞かなくてな」
一刀「ふむ・・・・」
春蘭「あぁ。自分の村と同じ目に遭っている村を見ていられんのだろう。張り切って出かけたぞ」
一刀「そうか・・・・・土産くらいは買っていくか」
春蘭「なんだ、考えていることは同じか」
桂花「あんた達、遊びに行くわけじゃないのよ」
一刀「分かっている。視察は行う。帰りの道中で買っていけばいいだろう」
華琳「さて、揃ったのなら出掛けるわよ。桂花、留守番よろしくね」
桂花「華琳さまぁ・・・・。なんで桜華は連れて行くのに、私はお留守番なんですかぁ・・・・?」
一刀「俺は、軍師ではないからな非常時が起こったときに判断が出来んのだよ」
女の子「あれが陳留か・・・・・」
女の子「やっと着いたー。凪ちゃん、もう疲れたのー」
凪「いや、此れからが本番なんだが・・・・・」
沙和「もう竹籠売るの、めんどくさーい。真桜ちゃんもめんどいよねぇ・・・・・」
真桜「そうは言うてもなぁ・・・・売れへんかったれ、せっかく編んでくれた村の皆に合わせる顔がないやろ」
凪「そうだぞ。折角此処まできたのだ、みんなで協力してだな・・・・・」
沙和「うぅーー。わかったの」
真桜「最近は何や、立派な州牧様が来たとかで治安も良うなっとるみたいやし、気張って売らんとな」
沙和「・・・・そうだ。人が多いなら皆で手分けして売らない?」
凪「・・・・・そうだな、一理在るかも」
真桜「それじゃ、三人で分かれて一番売れやつが勝ちってことでええか?」
凪「・・・・なら、夕方には門の所で集合だな」
旅芸人「はい!それでは、次の一曲聴いていただきましょう」
旅芸人2「姉さん、伴奏お願い」
旅芸人3「はーい」
秋蘭「ほぅ。旅芸人も来ているのか・・・・・」
一刀「珍しいか?」
秋蘭「芸人自体はさして珍しくも無いが、あれは南方の歌だろう。南方からは今まで無かったからな」
一刀「そうか・・・・南方は危険な道中も多いしな」
秋蘭「商人と違って街道が安全でなければ連中は寄って来ないからな」
華琳「私たちは歌を聴きに来たのではないのよ。狭い街でもないし、時間も無いから手分けしていきましょう。一刀は私についてきて」
一刀「あぁ」
秋蘭「華琳様。私が右手側、姉者は左手側から廻ります」
華琳「いいでしょう。突き当たりの門の所で落ち合いましょう」
秋蘭「はっ」
春蘭「はっ」
一刀は、華琳と共に中央を廻ることになった。
華琳「一刀。あなたはこの当てりを見て、どう思う?」
一刀「ふむ・・・・・・。そうだな。やたら食に関するものが多いな」
華琳「それで?」
一刀「鍛冶屋がないんだな」
華琳「鍛冶屋は三つ向こうよ」
一刀「遠いな」
華琳「その分、向こうには料理屋が無いの」
一刀「詳しいな」
華琳「そのくらい地図を見れば分かるわよ」
一刀「そうだな」
華琳「人の流れは地図や報告書だけでは実感できないわ。客層や雰囲気もね」
一刀「確かな。視察をし実際に確かめないと民の意にそぐわない指示を出してしまいかねん」
華琳「分かっている様ね・・・・・それに、あの様な光景は、紙の地図だけでは確かめられないもの」
真桜「はい、寄ってらっしゃい見てらっしゃーい!」
露天らしき女の子が籠をずらりと並べて売り子をしていた。
一刀「ほう。カラクリか・・・・いい出来だな」
真桜「あぁ、そこのお兄さん、お目が高い!こいつはウチが発明した、全自動カゴ編み装置や!」
一刀「全自動か・・・・・」
真桜「せや!この絡繰の底にこう、竹を細ぅ切った材料をぐるーっと一周突っ込んでやな・・・・・お兄さん、そっちの取っ手を持って」
一刀「あぁ・・・・」
一刀は、言われるがまま、機械のハンドルを手に取る。
真桜「でな。こうやって、ぐるぐるーっと」
一刀「回せばいいのだな」
言われるようにグリップを回しセットされた竹の薄板が機械に吸い込まれていく。
暫くすると、装置の上から編み上げらた竹の籠の側面がゆっくりとせり出していく。
真桜「ほら、こうやって、竹籠の周りが簡単に編めるんよ」
一刀「へぇ・・・・・」
華琳「底と枠の部分はどうするの?」
真桜「あ、そこは手動です」
一刀「全自動じゃないじゃん」
真桜「う。ツッコミ厳しいなぁ・・・・。そこは、雰囲気っちゅうことで・・・・・・・あ、ちょ!お兄さん、危ないっ!」
一刀「ん?」
そう叫んだが時既に遅し。
一刀「なっ!?」
華琳「大丈夫、一刀?」
一刀「ビックリした・・・・・爆発しやがった・・・・・・」
真桜「あー。やっぱダメやったかぁ・・・・・・まだ其れ、試作品なんよ。普通に作ると、竹の撓りに強度が追い付かんでなぁ・・・・・こうやって、爆発してしまうよ」
一刀「物騒すぎる・・・・」
真桜「置いとったらこう、目立つかなぁって」
華琳「ならここに並んでいる籠は、この装置で作ったものではないの?」
真桜「あぁ、村の皆の手作りや」
華琳「・・・・・」
一刀「・・・・・」
真桜「なぁ、お兄さん・・・・・・せっかくの絡繰を壊したんやから、一個くらい買うて行ってぇな」
一刀「・・・・・・・仕方が無い、壊したんだ一つくらいは・・・・・」
春蘭「この辺りは、服屋ばかりか・・・・・・・・・・・・・これ、華琳様がお召しになったら似合うだろうなぁ・・・・・・・・」
結局のところ、春蘭は服の誘惑に負け服屋に足を運んでしまった。
店員「いらっしょいませー!」
春蘭「おぉ、これはなかなか・・・・!」
店員「あの・・・・お客様。失礼ですがこの辺りは、お客様よりも少々小さめで・・・・・似合うものでしたらあちらの棚に」
春蘭「あぁ、これは、華り・・・・っ、知り合いに頼めれたものだ。気にせずに放っておいてくれ」
店員「はぁ・・・・そうですか」
店員は、春蘭に言われるがまま傍を離れていく。
春蘭「うむ、これも悪くない・・・・・。あぁ・・・・こっちも」
??「じゃあ、こっちは?」
春蘭「おぉっ。これは素晴らしい」
沙和「やっぱりなの!それだったら、こっちも似合うと思うのー」
春蘭は、少女と服の話を花開かせていく。
春蘭「って誰だ貴様は!」
沙和「うーん。さっきから服を見る目が熱かったから・・・・・・こういう服が好きなら、これも気に入るんじゃないかなーって思ったの」
春蘭「ほう。最近はそういうのが流行りなわけか」
沙和「そうなのー。でも、お姉さんは自分の拘りがあるみたいなの」
・・・・・・・・・・・・・。
春蘭「うむ。久しぶりに良い戦いであった」
沙和「わたしも楽しかったの。その服も、きっとその子も気に入ると思うのー」
春蘭「しかし、少々買いすぎたな。それでは帰りに落としてしまう・・・・」
沙和「あー。それなら、この竹籠を使うといいの」
春蘭「おお、それは助かる!」
沙和「あ・・・・でも、それ売り物なの・・・」
春蘭「なんだそうなのか?だったら勝負の礼だ。その籠。わたしが、引き取ろう」
沙和「ありがとうなのー」
秋蘭「・・・・・・」
凪「・・・・・・」
秋蘭「・・・・・・・・」
凪「・・・・・・・・」
秋蘭「・・・・・いいものだな。この竹籠」
凪「・・・・・どれも、入魂の逸品です」
秋蘭「・・・・・そうか」
凪「・・・・・はい」
秋蘭「・・・・・・・・」
凪「・・・・・・・・」
秋蘭「・・・・・・ふむ、これを一つ貰おうか」
凪「・・・・・はっ!」
集合場所は突き当たりの門。
ゆっくり回ったと思っていたのだが、早くに着いたのが一刀と華琳。
それほど待たずして、春蘭、秋蘭が到着を果たす。
華琳「・・・・・で?」
春蘭「・・・・・・」
秋蘭「・・・・・・」
一刀「・・・・・・」
華琳「どうしてみんな、揃いも揃って竹籠なんて抱えているのかしら?」
秋蘭「はぁ。けさ、部屋の籠の底が抜けているに気が付きまして・・・・」
華琳「・・・・・まぁ、仕方が無いわね。どうせ貴女のことがだから、気になってしまったのでしょう?・・・・で、春蘭は?何か山ほど入れているようだけれど?]
春蘭「こっ、これは・・・・季衣の土産にございます!」
華琳「なに?服?」
春蘭「はっ!左様にございます!」
華琳「・・・・そう。土産もいいけど程々にしなさいね」
秋蘭「・・・・で、どうして一刀までそんな籠を背負っているのだ?」
一刀「・・・・・・やむにやまれね事情だ」
春蘭「・・・・事情か」
秋蘭「・・・・そうか」
華琳「それで、視察はちゃんと済ませたのでしょうね。籠なり土産なりで選ぶのに時間をかけすぎたとは、言わせないわよ」
春蘭「はい!」
秋蘭「無論です」
一刀「あぁ」
華琳「ならいいわ。帰ったら今回の視察の件、報告書に纏めて提出するように」
こうして、視察を終え帰ろうとした矢先に声をかけられた。
占い師「そこの、若いの・・・・・・」
華琳「・・・・誰?」
占い師「そこの、お主・・・・・・」
声をかけたのは、占い師。
顔は頭巾で隠しきり、表情を見ることも出来ずにいる。
だが、一刀だけは微妙な顔つきで見ていた。
春蘭「誰だ!貴様!」
秋蘭「占い師か」
春蘭「華琳様は占いなど信じならん。慎め!」
華琳「春蘭、秋蘭。控えなさい」
春蘭「・・・・・はっ」
占い師「強い相が見えるのぉ・・・・・・稀に見ることの無い、強い相じゃ」
華琳「一体何か、見えると?言って御覧なさい」
占い師「力の有る相じゃ。兵を従え、知を尊び・・・・・。お主が持つ葉この国の器を満たし、栄えさせることの出来る相じゃ・・・・・。この国にとって、稀代の名臣となる相じゃ・・・・」
春蘭「ほほう、分かっているではないか」
占い師「・・・・・・この国にそれだけの器があれば・・・・・じゃがな」
秋蘭「・・・・・・どういうことだ?」
一刀「・・・・・・」
占い師「お主の力、今の弱った国の器には収まりきらぬ。その野心、留まる事知らず・・・・・・溢れた野心は、国を侵し、野を侵す。・・・・・・いずれこの国に名を残すほどの類稀に見る奸雄となる」
秋蘭「貴様!華琳様を愚弄する気か!」
一刀「・・・・・落ち着け秋蘭」
秋蘭「しかし!」
一刀「いいから」
秋蘭「・・・・・・・・」
華琳「ありがとう、一刀」
一刀「気にするな」
華琳「そう。乱世においては、奸雄となると」
占い師「左様・・・・・それも、今までに無いほどに・・・・・」
華琳「・・・・ふふっ。面白い。気入ったわ。・・・・秋蘭、この者に謝礼を」
秋蘭「は?・・・・・しかし、華琳様」
華琳「・・・・・一刀。この占い師に、幾らかの礼を」
一刀「あぁ」
一刀は言われたと様に財布の中から謝礼金を占い師の前に置く。
華琳「乱世の奸雄大いに結構。その程度の覚悟も無い様では、この乱れた乱世に覇を唱えるなど出来はしない」
占い師「それから、其処のお主・・・・・」
占い師は一刀の方を向き、語りかける。
一刀は、また微妙を顔つきで占い師を見る。
一刀は、念話にて語りかける。
薫というのは、一刀と同じ管理者の仲である。
別命、太公望。
華琳「一刀?」
一刀「・・・・・(なんでいるの?薫)」
薫「・・・・・・(あははは・・・・・。ちょっとだけ気になって来ちゃった)」
一刀「・・・・・・(まぁ、仕事のほうは頑張っているようだし良いけど・・・・・この事、結衣には話しておくからな)」
薫「・・・・・(か、一刀君!?ちょっと待って。結衣はダメ。)」
一刀「・・・・・(様子を見に来るのは大いに良いけど、せめて自分の水晶にしてよね)」
薫「・・・・・(ごめんなさい・・・・・・。顔を見ておきたかったし)」
一刀「・・・・・(まぁ、いいや)占いは良い、また今度にしてくれ」
薫「わかりました・・・・・・」
一刀「・・・・・(またな、薫)」
薫「・・・・・」
一刀は、背を向け去るとき小さく手を上げて手を振る。
薫も其れに答え、手を振るう。
華琳「それにしても春蘭。よく我慢したわね、偉かったわ」
春蘭「・・・・はぁ」
確かに春蘭はよく我慢していた、華琳のことになると直ぐに血が頭に上っていたはずが。
だが、春蘭自身なぜ褒められているのか分からず、首をかしげていた。
春蘭「・・・・・なあ、一刀」
一刀「なんだ」
春蘭「乱世の奸雄、とはどういう意味だ?」
一刀「・・・・・・」
華琳「・・・・・・」
秋蘭「・・・・・・」
春蘭の発言で、空気が微妙になった。
一刀「はぁ・・・・」
秋蘭「・・・・・姉者。奸雄というのは、奸知に長けた英雄ということだ」
春蘭「・・・・・そうか。かんちか」
一刀「・・・・疑問系になっているぞ」
華琳「奸知とは、ずる賢く、狡猾な、という意味よ」
春蘭「えぇと、ということは・・・・・」
一刀「簡単に言ってしまえば、ずる賢い英雄、ということだ」
春蘭「な、なんだとっ!言うに事欠いて華琳様になんて事を!華琳様、直ぐに引き返しましょう!あのイカサマ占い師め!木っ端微塵に叩き斬ってやる!」
華琳「・・・・だから、いいと言っているでしょう」
その後、春蘭は大暴れし止めるにも一苦労した。
旅芸人三女「・・・・はぁ。今日も実入りも、今一つだったわね」
旅芸人次女「あーあ。こんなで、大陸一の旅芸人になれるのかなぁ・・・・」
旅芸人長女「ほら、二人とも、気にしないの。明日はきっと、良いことあるって」
旅芸人次女「天和姉さんは気楽でいいわね・・・・・」
天和「えー。ちーちゃんもれんほーちゃんもひどーい」
人和「それよりも、何か新しい策を考えないと、本当に行き倒れよ?宿泊費もあまりないのだから・・・・・・」
地和「ちょっと、折角こんな都会まで来たのに、また田舎まわり!?わたし、イヤだからね」
人和「私だって嫌よ・・・・・。もっと大きな都で有名でならないと、多寡が知れるもの」
天和「もぅ、二人とも辛気くさいなぁ・・・・・・。お姉ちゃん、外の空気吸ってくるからねー」
地和「はいはい。あーあ、誰か後援者が付いて、大陸中をも回ったりとか出来ないかなー」
人和「それなら、もっと有名にならないとね」
天和「あーっ、空気がおいしー!まったくもぅ。人生まだまだ長いんだから、もっと楽しくやれないかなぁ・・・・・?」
男「あ・・・・・あのっ!」
天和「んー?誰ですかー?」
男「張三姉妹の張角さん、ですよね!」
天和「そうですけどー」
男「あの、俺・・・・・張角さんの歌、凄く好きなんです!これからも頑張ってください!」
天和「え?本当?」
男「あと、これ貰ってください!貴重な本らしいですから、売れば、ちょっとはお金になると思います。軍資金の足しにでもしてください」
天和「え?いいんですかー?嬉しいですー」
男「では、追われてるんで」
天和「え?」
地和「どうしたの?天和姉さん・・・・・なにそれ?」
天和「なんかお姉ちゃん達を応援してくれるって人がくれたの。売ったらお金になるって」
地和「ホント!?ちょっと見てみましょう」
天和たちは、男から貰った包みを開ける。
人和「表題が書いてあるわ。ええっと・・・・・南華老仙・・・・。太平・・・・要術・・・・・?」
天和「・・・・・・・」
地和「・・・・・・・」
人和「・・・・・・・」
天和たちは太平要術を手に取った瞬間に、心を奪われていった。
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ようやく、黄巾党ルートに突入しました。