「葛城特戦隊隊長……葛城、か」
「ご名答♪ 知ってくれてるようで何よりだよ」
支配人が警戒する中、遺跡の入り口付近に立っていた葛城は気楽そうな雰囲気を出しながら、彼と向かい合うように立つ。一見普通の女子高生にも見える彼女だが、そんな外見に騙されれば確実に手痛い目に遭わされてしまう事を、支配人はよく知っている。
「わざわざこんな場所にまでやって来るとはな……目的は俺の捕獲か?」
「いやぁ違う違う。今回は単純に、詳細不明の怪物を退治する事だけが私の任務。で、その任務をちゃっちゃと遂行してしまおうと思っていざ現場に来てみれば、ちょうどアンタがいたって訳」
「つまり、俺との遭遇は予定には無かったと? だったら俺は、アンタから頑張って逃げ出したいところなんだが」
「まぁ待ちなって。せっかく出くわしたんだし、アンタにちょいと聞きたい事もあったんだ」
「聞きたい事?」
「そ、聞きたい事……デルタは今どうしてる?」
「!」
葛城の問いかけに、支配人は一瞬だけ驚く反応を示すも、すぐに表情を真剣な物に切り替える。
「…悪いが知らねぇな。何せ、デルタさんが今どうしているのかは、俺も知らされていないんでね」
「ありゃま。それじゃあ仕方ないね……んじゃ、最後に一つ」
葛城の足の爪先が、地面をトントン叩く。
「ちょっとばかし…」
「アタイと遊んで行きなよ!!」
「ッ!!」
直後、支配人との距離を一瞬で詰めた葛城は、彼に向かって回し蹴りを繰り出した。しかし彼女の動きをある程度予測出来ていた支配人は、この攻撃をヒラリとかわしてみせる。
「チィ、やっぱこうなっちまうか…!!」
「ほらほら、ちゃっちゃと戦う準備しな!! じゃないと怪我するよ!!」
「んな事まで急に言われてもな……ぬぉっ!?」
葛城の蹴りを両腕で防御した支配人は大きく吹き飛ばされ、大木に背中を打ち付ける。
「よいしょおっ!!!」
そこへ更に追撃を仕掛けるべく、葛城が支配人に向かって蹴りを放ち―――
『それ以上、レイへの暴力は止して貰おう』
―――支配人が、その蹴りを右手で受け止める。
「!?」
自慢の蹴りが片手で受け止められた事に驚きを隠せなかった葛城だが、彼女が驚いた理由はそれだけではなかった。
「…アンタ、何者だい?」
葛城の疑問通り、支配人の醸し出す雰囲気は先程までと違っていた。
後ろに結ばれた長い黒髪。その黒髪に入っている銀色のメッシュ。額に巻かれている白い鉢巻。そして紅と蒼のオッドアイだった筈の瞳が、両目共銀色の瞳に変わっている。
「私が何者、か……ただのしがないイマジンだ」
「ッ…!!」
掴んでいた葛城の足を離すと同時に支配人の身体中から大量の砂が流れ、その砂が地面の一箇所に集まって一つの異形が形成されていく。西洋の兜を被った馬のような頭部、上半身に纏われている強固な鎧、両肩には黒い毛皮の生えた肩当て、ベルトには馬の頭部を模したマーク。
『ブルルルルル…』
形成された異形―――イマジンは低く馬の鳴き声を上げながら、その姿を現したのだ。
「おぉ、待ってたぜジンバ」
『すまないな。ここまで来るのに、少し時間がかかってしまった』
「問題ねぇよ……んじゃま、ちょっくら行こっかね」
現れたイマジン―――ジンバの肩を軽くポンと叩いてから、支配人は一つの黒いパスケースを取り出す。すると腹部に巻かれていたベルトのバックルが銀色に点滅し始め、洋風のファンファーレらしき待機音が鳴り始める。
「変身!」
≪Cavalry Form≫
パスがベルトに翳され、支配人の全身が黒いライダースーツへと変化。周囲に出現した複数のオーラアーマーがその上半身に装着され、頭部には馬の顔らしき形状をしたパーツが出現、それが複雑な変形を遂げて騎士の兜らしい電仮面が形成される。
支配人は西洋の騎士をイメージしたような戦士―――“仮面ライダー
「…まさか、仮面ライダーかい?」
葛城が驚いている中で、王騎はベルトに常備されている四つのパーツ“ナイトガッシャー”を組み立てていき、銀色のオーラソードが出現したソードモードへと形成する。
「ジンバ」
『あぁ』
王騎が指を鳴らすと同時にジンバがその場から跳び上がり、頭部が突き出た円型の盾“スヴォル”へと変化。周囲をブーメランのように飛来してから、王騎の左腕に装備される。
「平伏せ、我が剣の前に」
「OK……やれるもんならやってみなよ!!」
ナイトガッシャーで軽く素振りをする王騎を相手に、葛城は非常に楽しそうな表情をしながら戦闘態勢に入り、そして突撃して行くのだった。
一方、海鳴市では…
「ぐぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
本郷家から場所を移動し、廃工場跡地まで吹っ飛ばされたげんぶ。破壊された壁からは、黒騎士が悠々と歩きながらげんぶに迫って行く。
「ぐ、この野郎…!!」
『本気を出した上での力も、所詮はこの程度か。これでは先が思いやられるな…』
「ッ…随分と、勝手な事を言ってくれんな…!!」
全身がズタボロの状態にも関わらず、げんぶは血の流れる右肩を押さえながら立ち上がる。
「俺だってなぁ……頑丈さだけなら、自信はたっぷりあるんだよ!!!」
げんぶの姿が光り、ゴッドガンダムの姿に変化。背中のエネルギー発生装置は大きく展開して日輪のような光の輪が発生し、胸部の装甲からはエネルギーマルチプライヤーが露出。トランプのハートマークに二本の剣が交差した紋章“キング・オブ・ハート”が浮かび上がり、ゴッドガンダムは“ハイパーモード”へと切り替わる。
「行くぞ、黒騎士!!」
『ほう…?』
そこから更に明鏡止水の境地に達し、ゴッドガンダムの全身が黄金色に輝き始める。そんなゴッドガンダムを眺めつつ、黒騎士は剣を構え直そうとする。
「げんぶ!!」
『む?』
そんな黒騎士の背中に、数発の銃撃が被弾。怯みもしない黒騎士が後ろを振り向くと、その先からは複数の銃火器を装備した二百式が接近して来ていた。
『榊一哉か…』
「黒騎士…団長の命により、貴様を排除する!!」
『そうか……出来るのか? お前如きに』
「沈めぇっ!!!」
二百式はショットガン、ジャイアント・バズ、グレネードランチャーなどを一斉に放ち、黒騎士に集中砲火を仕掛ける。
「こいつもオマケだ!!」
更にチェーンマインも飛び、黒騎士に命中。大爆発が引き起こされる。
『…それだけか?』
「!?」
煙が晴れると、そこには未だ無傷の黒騎士が立っていた。これには二百式も驚きを隠せない。
「馬鹿な、直撃弾だぞ!? こんな事が……ならば!!」
「俺もいるぞ!!」
二百式はすぐさま二本の太刀を抜き、黒騎士に接近。更にゴッドガンダムもビームサーベルを構え、二百式とは逆方向から黒騎士に向かって突撃する。
『…ふん』
それを見た黒騎士は剣を一旦鞘に納め、代わりに一丁のボウガンを構える。
『突っ込むだけとは……浅はかな』
「何ッ!?」
「ぐぉあっ!? この…!!」
黒騎士は二百式の振るった太刀を左腕で防御し、逆方向から突撃して来たゴッドガンダムをボウガンで射撃。その一撃でゴッドガンダムはげんぶの姿に戻ってしまうも、げんぶはすかさず黒騎士に向かって何発もの気弾を飛ばす。しかしそれでも、黒騎士の鎧には傷一つ付かない。
『弱い……まだ弱いっ!!』
「な…ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「げんぶ!? 貴様ァッ!!」
黒騎士のボウガンから放たれた矢が、げんぶの周囲を次々と爆破。げんぶがそれに巻き込まれるのを見た二百式は黒騎士に反撃を仕掛けようとするも、黒騎士は二百式の構えていた太刀を二本纏めて掴み取る。
『そんなナマクラで、俺を壊せると思ったか?』
「ごふぅ…!?」
黒騎士が軽く握り締めただけで、二百式の太刀が二本同時に粉砕。更なる追撃として二百式の腹部に蹴りを命中させ、二百式を吹っ飛ばして壁にめり込ませる。
「ぐ、この……鉄クズ如キガァッ!!!」
二百式はすぐさま“無の反響”を発動。すぐにめり込んでいた壁から飛び出し銃火器で何度も黒騎士を攻撃するが、やはり黒騎士には少しもダメージも与えられていない。
『闇雲に撃てば良いものではない。榊一哉……それはお前とて、既に分かり切っている事だろうに』
「貴様ニ何ガ分カル!! 俺ハ守ラナキャイケナインダ……ハヤテノ事ヲ、何ガ何デモ…!!」
『その弱さで、お前如きに何を守れる? お前も八神はやても、二人纏めて犬死にするだけだぞ』
「黙レェッ!!!」
頭に血が昇ってきていたからか、黒騎士の挑発にあっさり乗ってしまった二百式。鬼のような形相をしたまま咆哮を上げ、至近距離からロケットランチャーを黒騎士に向ける。
「終ワリダ、黒騎士ィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!!!!」
『確かに、お前が終わったな。榊一哉』
一瞬だった。
黒騎士が鞘に剣を納めると同時に、ロケットランチャーは細切れに斬り刻まれ、二百式の身体中から血飛沫が舞い上がる。
「ガ、ァ……は、や…て…」
『本気で守り抜きたいのであれば、もっと強くなってみせろ。そしてそれは…』
「はぁ、はぁ…!!」
『…お前も同じ事だぞ、本郷耕也』
黒騎士は二百式がその場に倒れるのにも振り向く事なく、今にも倒れそうなくらいフラフラしているげんぶの方にも忠告する。
「何だと……お前、結局何がしたいんだ…!!」
『お前達はこれからも強くなれ。さもないとお前達は……己の弱さに、後悔する事となるだろう』
「? どういう事だ…!!」
『今のお前達にはもう、“次”は無いという事だ』
「ッ!?」
黒騎士が放つ闘気に、げんぶは思わず圧倒される。周囲の建物や地面が大きく震え、あちこちに地割れが生じ始める。
(何だ、これ…!? 今の俺じゃ、とても敵わねぇ…!!)
『仮にお前達が、先の戦いを生き延びる事が出来たとしても……このままでは、貴様のやる事全てが途方に終わる』
黒騎士の歩く地面が、闘気によって少しずつ陥没していく。
『戦え……そして強くなれ……何もかも、失いたくなければな…!!』
「ぬ、ぅ…く…!!」
黒騎士の放つ闘気に圧倒され、げんぶは思わず意識を失いそうになった……その時。
「申し訳ないけど、その辺にして貰えるかしら?」
『!』
黒騎士の胸部に、何発もの斬撃が命中。傷は付けられなかったものの、動きを止める事には成功する。
「げんぶさん、大丈夫でしたか!?」
「ごめんなさいげんぶさん、遅くなってしまったわ」
「ルカ…それに、朱音さん!?」
げんぶの下に、朱音とルカの二人が参戦。げんぶを守るように、二人はそれぞれの武器を構えて黒騎士と対峙する。
『朱音、アキヤ・タカナシか…』
「!? 何故僕の本名を…」
「あなた、一体何者なのかしら?」
『俺は黒騎士……それ以外の、何者でもない』
黒騎士が再び剣を構え、朱音とルカも同じく構えようとしたその時…
「ゥ、グ…ァ…」
突如、倒れていた筈の二百式がフラリと立ち上がる。
「―――ウグァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」
「「「!?」」」
『…!』
鬼のような形相をしていた容姿は更に凶悪化し、髪も逆立って瞳も紫色に染まる。怪物のような姿に成り果てた二百式は、その場で高い咆哮を上げ始める。
「ハヤテェ……ハヤテェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!!!!!」
「!? 大変、暴走してるわ!!」
『無の反響を酷使した結果か……馬鹿な男だ』
「グルルルルルルル…!!」
呆れたような感じで呟く黒騎士に、二百式は唸り声を上げながら近付いて行こうとしたその時…
「一哉、さん……耕也、さん…?」
思わぬ人物が、この場に介入した。
「「「!!」」」
「グル…!?」
『…ほう』
聞こえてきた声にげんぶが硬直し、暴走していた二百式も思わず動きが止まる。
「な……はやて…!?」
「グ、ゥ……ハヤ、テ…!!」
「何で…」
「何でここにおるんや、二人共…?」
その場の空気は、一瞬にして変わり始めるのだった。
一方、
「―――以上で、一通り分かりましたか?」
「…なるほどな」
竜神丸の話を聞きながら、ガルムは熱いお茶を一口ずつ啜っているところだった。
「要するに、“その女”も関係者の一人だと」
「そういう事です。恐らくデルタさんはそんな彼女と戦わされて、あんな風になってしまったと思われます」
「…団長、随分とエグい事すんのな。どう考えたって、デルタさんに勝ち目は無いってのに」
「今のデルタさんを諌めるのは、口だけでは無駄だと悟ったのでしょう。だからこそ、デルタさんには現実を見て貰ったという訳です。団長さんなりのやり方でね」
「おぉ、黒い黒い」
ガルムが若干の冷や汗を掻きながら、お茶を飲み続けていたその時…
-ドガァァァァァァァァァンッ!!-
「「!?」」
突如、
「何だ…!?」
「…多分、最上階からですね」
「…全く」
クライシスは壁にかけていたシルクハットを手に取り、深く被る。
「それだけ散々な目に遭っておきながら、まだ分からないというのか? デルタよ」
「ッ…ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…!!」
いつも通りの様子で立っているクライシスに対し、デルタは身体中から血を流しつつも辛うじて立っている状態だった。部屋中のあちこちにナイフや銃弾の跡があり、デルタが召喚したであろう兵士“
「一度彼女と対峙すれば、お前もいい加減理解してくれると思っていたのだが……私の見込み違いだったという事か?」
「知った事、じゃ……ねぇよ…!!」
デルタが強力な殺気を放つも、相変わらずクライシスは涼しい顔でデルタを見据えている。
「俺は絶対に、成し遂げてやるんだよ…!! もう旅団なんざ関係ねぇ……邪魔する奴は、誰だろうがぶっ殺してやる…!!」
「…はぁ」
クライシスは小さく溜め息をつく。
「デルタ……私は出来る事なら、お前にこんなマネはしたくなかったのだが…」
「あぁ? 何の話だ…!!」
「私の部屋で、ここまで派手に暴れられてしまった以上……少しばかり、私はお前から
「訳の分からん事をほざいてんじゃねぇぞっ!!!」
「む?」
デルタが指を鳴らすと同時に死体だった
「まずはテメェを殺す!! 楽には殺さねぇぞ……その無駄に頑丈な身体、じわじわと嬲って
「やってみると良い。出来ればの話だが」
「―――ッ!?」
刹那。
その瞬間に、デルタは全てを失ったかのような感覚に陥った。
更に…
「!?」
復活した筈の
「…は?」
そして今、とてつもない違和感を感じているのは他でもないデルタだ。
「は…え、あ、え……お、おい…何だよ……何だよこれ…!!」
デルタは、現在自身に起こっている状況が信じられなかった。
「何でだ……
彼の中にあった“蟲”の力は、全て機能を果たさなくなってしまっていた。彼がどれだけ発動しようとしても、能力は何も発動しないままだ。
「おい、どういう事だよクライシス…!? テメェ何した……この俺に、一体何をしやがった!?」
「あぁ、実に簡単な話だ」
「私がお前から、
「―――何、だと…!?」
それを聞かされて、デルタは再び顔が青ざめる。
「驚くのも当然だろう。何故ならこの能力は、まだソラと竜神丸にしか教えてなかったからな。いずれはお前とガルムにも教えるつもりでいたんだが……そして」
-ザシュッ-
「が、ぁ…!?」
クライシスの手にしたナイフが、デルタの首下を一瞬で斬りつけた。デルタの首下から血が噴出し、死亡するかに思われたが…
「―――あ、ぁ…?」
何故かデルタは、死ぬ事なく生き続けていた。
「“アレ”に歯向かう以上、お前は自ら命を絶つ可能性もあったからな。
「あ……う、ぁ…あ…!!」
それを聞かされたデルタは絶望のどん底に突き落とされたかのような表情になり、腰が抜けながらもクライシスの前から逃げ出そうとする。
しかし…
「逃げられると思ったかね?」
「ッ!?」
突如、デルタは自分の身体を動かせなくなった。痺れ薬を飲んだかのように、身体が麻痺して上手く動かせない。
「お前の能力を、私が使用する事も可能だ」
「ッ…そ、そんな…!?」
「先程、お前は言ったな。楽には殺さない、じわじわ嬲って
「ッ!? お、ぉい…来るな……やめろ…!!」
デルタがどれだけ拒絶しようが、クライシスはお構いなく彼に歩み寄って行く。
「
「や、やめてくれ…ぉ、おい、やめろ…来るな……来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!???」
「「……」」
団長室の前にて、ガルムは聞こえて来る断末魔に唖然とせざるを得なかった。逆に竜神丸は楽しそうに断末魔を聞いているが。
「…今、この中で何が起きてんだ?」
「大方、団長さんがデルタさんにお仕置きをしているところでしょう。団長さんの能力は、いかなるメンバーも歯向かう事が不可能ですし」
「…団長の能力って、どんな物なんだ? 俺はよく知らないんだが」
「あぁ、まだ説明してませんでしたね。団長さんの能力とは…」
竜神丸が耳打ちすると、ガルムも同じように顔を青ざめ出した。
「お、おい、何だよそれ……そんなの、誰も歯向かう事なんて出来ないじゃねぇかよ…!?」
「だからこそ、あの人は団長の座に着いてるんでしょうよ。裏切り者に、少しもの慈悲も与える事が無いように、ね…」
竜神丸が面白そうに笑うのを見て、ガルムは滝のように汗が止まらなくなる。そんな中、デルタの断末魔はしばらく響き渡り続けるのだった。
場所は変わり、某次元世界…
「うぉらっしゃあ!!」
「フッ!!」
王騎と葛城の戦闘は激化していた。王騎はスヴォルで葛城の攻撃を防御し、葛城は王騎の振るうナイトガッシャーを蹴る事で攻撃の軌道をずらしている。
「く、この…いい加減当たりなって!!」
「そりゃこっちの台詞だっての……ジンバ!!」
『あぁ!!』
「え…ぬぉわっちゃ!?」
王騎がスヴォルを投げ飛ばした途端、スヴォルはすぐさまジンバの姿に戻って葛城を蹴り飛ばす。その間に、王騎はナイトガッシャーのパーツを組み替えてランスモードへと切り替える。
「さぁ、仕切り直しだ…!!」
ナイトガッシャー・ランスモードの先端に出現したオーラソードが煌く中で、王騎は仮面の下で不敵な笑みを浮かべるのだった。
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王の騎士・黒き騎士