No.672651

【F-ZERO小説】Pit area. Nothingness ~貴方は一体何者?~

【F-ZERO GX ~Story Mode~ 奴らは“神”で武装する】
・と言う訳で、多分原作を知らなくても読むのに支障は無い、二次創作としてそれはどうなんだ?的なF-ZERO小説(笑)ちょっぴり長めですが、宜しかったらどうぞです。

Prologue KILL ALL ~所詮それは“駒”だった~ http://www.tinami.com/view/668883
LAP.1 Distortion ~今はまだ…~ http://www.tinami.com/view/668886

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2014-03-21 22:38:48 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:606   閲覧ユーザー数:606

【F-ZERO GX ~Story Mode~ 奴らは“神”で武装する】

Pit area. Nothingness ~貴方は一体何者?~

 

 俺の名前はフェニックス。こっちはナビゲーションロボのQQQ。

 29世紀から来た時空警察官だ。

 いやまあそこは信じる信じないは好きにしてもらって構わないが……ともかく俺たちは重要な任務を全うする為に、ここ、26世紀にやって来た。

 

 この時代の治安維持部隊とはまた違う管轄で、俺たちもまた、この時代を守っている。

 

 こうして別の時代に飛ぶ場合、予め、その現地の治安部隊に話を通す事にしている。そうしないと、地元の人間に「怪しい人がうろついてます」と通報されて、その度に捕まっていたら仕事にならないからだ。

 

 どんなにタイムトラベルが絵空事な時代でも、国家のトップクラスの役職のものは把握している筈だ…俺たちのような存在を。

 勿論、トップシークレット的な事項で。

 

 事情を聞かされた現地の治安部隊の反応は様々で、カモフラージュ的にその部隊に所属した形になるケースもあれば、ほぼ放置と言うか、末端の部隊にまで話が行かなくて事前に告知した意味がまるで無かった…なんてケースも残念ながらある。

 

 ちなみに今回の銀河連邦の場合は、放置と言うより黙認のような形で、ある程度は好きにしていいケド、基本的には感知しないよと言った感じだった。

 まあ変に待遇が厚いと逆に動きにくいから、俺としてはこのくらいが丁度いいがな。

 

 そんな訳で、来た初日はバタバタしたまま終わる事も珍しくない。

 俺も今、やっと一区切りついて銀河連邦の建屋の屋上で一息ついてると言った所だ。

 

 気がつけば日もとうに暮れ、空に星が瞬くような時間になっていた。

 俺は軽くため息をつきながら、ボンヤリと空を見上げる。

 星空って言うのは、どこの時代でも、どんな惑星でも極端に変わる事は無い。それを見ていると、何ていうか、俺が“異端児”なんだと言う事がちょっとだけ頭から離れて行く。

 別にそんな事は普段は意識していないのだが……そう感じると言う事は、心の奥底でそう思っているのかも知れないな…無意識のうちに。

 

 そうやって少しの間、ボンヤリと空を眺めていたら……

 コツコツと、後ろから何者かの足音が近づいて来る。

 

 別にここは立ち入り禁止になっている訳じゃないから、誰か来たっておかしくはないんだが……

 わざわざ俺の方に近づいてくると言う事は、俺に用でもあるのか?と……

 

 だから俺は、声をかけられる前に、その音のする方を振り返る。

 

 そこにいたのは、先ほどまで一緒に話をしていた一人の女性、ジョディ・サマーだった。

 銀河連邦に挨拶をしに行った時に紹介された女性隊員の一人だ。

 1つの小隊を任せられていると言うのだから、優秀な人材なのだろう。

 彼女はBS団監視目的も兼ねてF-ZEROのパイロットとしても活動していると言う。

 

 いや、一緒に話をしたと言っても上官たちの前だし、挨拶がてら簡単に言葉を交わしただけだ。

 その彼女が、また改めて何だと言うのだ…?

 

「……何か用か?」

 彼女に問われる前に、俺は自らそう切り出す。

 

 彼女の雰囲気からして、楽しく世間話でもしましょう……と言う訳では無いようだ。

 職務に忠実で、良くも悪くも隙が無い……そんな彼女が、何の考えも無くここに来る訳がない。

 

 彼女は単刀直入に切り出して来た。

 

「貴方は一体何者?」

 言葉こそ短いが、キツく鋭い声だ。

 

 いや、もちろん簡単なことは先程説明済だ。

 しかし、相手が銀河連邦でも、全てをつつがなく話せる訳ではない。

 

 俺たちは重大な事柄を止める為に調査に来た。

 それは“もう少しで、この世界の時間が止まる”と言う事。

 

 流石にそこまで具体的に話をしてはいない。

 

 いや、俺が全てを話せない事は彼女だって織り込み済みの筈だ。

 銀河連邦の小隊を率いる立場上、彼女にだって“守秘義務”はあるだろうからな。

 

 以上を踏まえて、俺は彼女の問いに答えなかった。

 答えようがなかった。

 先ほど話した、タイムトラベラーだと言うペテン師のような肩書きしか持っていないし、それを信用してくれと言っても無理なものは無理だろうからな。

 

 だから俺は、彼女の問いに答えなかった。

 

 聞いた所で、俺は答えない…

 彼女もそれくらい分かっている筈だ。

 だから黙っていれば、俺が語らざるを得ない切り札か何か出して来るんじゃないのか?

 

 そう思って、俺は彼女の問いに答えなかった。

 

 妙に長い沈黙。

 ザワザワした大都会独特の喧騒が時折耳に入ってくるだけ。

 

 そんな中、彼女は黙ったまま右手を払うようなしぐさを見せ、俺との間に仮想モニターを展開する。

 そこに映っていたのは、先ほどまでの顔合わせの内容……銀河連邦の幹部たちと俺たちの姿……

 恐らく彼女も、自分の任務行動中は超小型カメラを回し、自分が見たものを全て記録するようにしているのだろう。隊によっては義務だし、俺もやっている事なので別にそこら辺は何とも思わないのだが……

 

 彼女が見せたいのは、幹部の姿や俺の姿…では無く、俺がこの時に提示した小さなカード…“身分証明書”なのだろう。

 

「実に精巧且つ巧妙に作られているわよね」

 呆れているのか感心しているのか、よく分からないニュアンスでジョディは言う。

 

 そうか…彼女は見抜いたんだな…

 この身分証明書が、俺自身が作り出した巧妙な偽物である事を。

 

 本来、その時代に生きていない者が活動すると言うのは色々と面倒くさい。

 ある程度の文明が進んだ時代では“身分証明”が出来ないだけで不審者扱いだ。

 だから“身分証明書”は必須だが、証明するも何も、その時代に生きて存在しない筈の人間の存在を証明出来る訳がない。何故なら本来なら存在していないからだ。

 

 “身分証明書”が必要です。

 でも、身分を証明出来る存在じゃありません。

 となると、残った道はただ一つ…

 

 でっち上げるしか無い。

 

 いくら銀河連邦の幹部だって、住民ネットに勝手に侵入して勝手に偽造データを放り込むなんて事は出来ない。だから、その手の作業は俺たち…もとい、QQQの方でやってもらう。

 QQQの力があれば、パッと見で偽物と分からない、あらゆる意味で精巧なものが作れる。

 

 なのに何故、彼女が見破ることが出来たのか……

 恐らく、俺に会う前から何らかの疑念を抱いていた彼女が、カメラで密かにデータを飛ばして部下に調べさせたのだろう。

 QQQのデータの書き込み作業だって一瞬で終わる訳じゃない。恐らく、そのタイムラグを察知されたのだろう。

 

 ……いや、職業柄、疑念を持つ事も周到に調べる事も不可欠だから、別にそこを責める気は無い。寧ろ仕事熱心だと褒めてやりたい気分だ。

 

 だから俺は、敢えて否定をしなかった。

 

「…俺たちを告発するか?」

「いいえ」

 言いながらジョディは指を鳴らして仮想スクリーンを畳む。

 

 彼女は実に鋭い。

 俺は幹部達から直接紹介されている。

 と言う事は、身分証明が偽造されている事も、幹部達は恐らく知っている。

 彼女が自身の正義感に伴い、それを告発しようとしても、それを受け取る相手は誰もいない。

 

 俺はここに今日は顔を出しに来ただけだ。

 その理由は、俺が仕事している時に逮捕される事を避ける為。

 例え、この身分証が偽造だと発覚したとしても…な。

 

 勿論「そんなの知った事か!!」的な対応をする上層部もある。

 その時はあまり取りたくない手段を取る事もままある。

 記憶を書き換え、意識を変えさせる事も多々ある……

 俺たちが本気を出して未来の技術を総動員すれば、現地の人達は対抗する術を持たないからな。

 

 …我ながら滑稽な話だ…

 治安当局のトップに通じて、身分証明書を偽装して立ち回っているんだから、事情を知らない人間が見たら、どちらが犯罪者なのか分かりゃしない。

 

 そう…

 “時の流れに反している”と言われれば、俺だって犯罪者と大差無い存在だ…色んな意味でな。

 

 だが、俺たちのような存在がいないと、デスボーンのような連中に好き勝手をさせる事になってしまう。

 俺もデスボーンも、この時代から見れば“異物”だ。

 奴が毒ならば、俺は薬。

 本来なら時代と言う名の肉体には異物は入れない方がいい……だが、毒が入ってしまったら、完全に回ってしまう前に薬を使って救うしかない。

 

 そう言った意味では、俺たちは必要悪とも言える……

 そう言い聞かせているだけだろ?と言われれば…まあ否定はしない。

 

「…………で、告発しないと言うなら、わざわざ俺に何を伝えに来たんだ?」

 スクリーンが畳まれた後、俺は黙って立ち尽くし、彼女もまた、黙って立ち尽くしていた。

 ミュートシティの夜の風は冷たく強く、彼女の長い髪をなびかせている。

 

「私の目が節穴でない事。それだけを伝えたかっただけ」

 そんな暫くの沈黙の後、彼女はそれだけ呟くと、俺に背を向け、ゆっくりと屋上の階段を下りて行った。

 

 そうして、冷たい屋上には俺たちだけが取り残される。

 

 …そうだな。

 俺は無意識のうちに苦笑いを浮かべる。

 俺もそうだが、例え上官から命ぜられた事でも、それが間違っていると思えば、処分覚悟の上で命令に反する事だってある。

「……節穴ではない、か……」

 それは彼女とて同じ事か。

 俺が幹部たちを味方につけていようと、彼女の正義の意思に反したら、その時は覚えていた方がよいと言う警告か。

 

 彼女は実に優秀だ。

 それだけのバイタリティーが無いとやっていけない世界だと言うのもあるが、骨がある相手と言うのも俺は嫌いじゃない。寧ろ頼もしいじゃないか。

 

 そう思いながら、俺たちもその場を後にする。

 後には都会独特の冷たい空気だけが残る。

 明日から本格的に臨戦状態に入らなければならない。

 まだ何も終わっていない。

 いや、まだ始まってすらいない。

 俺たちは立ち向かわなければならない。

 

 ここの根底を全て破壊しようとする、その力に……

 

 

To be continued.→ http://www.tinami.com/view/674360


 
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