No.659491 九番目の熾天使・外伝 ~ライダー戦国大合戦~竜神丸さん 2014-02-01 15:00:02 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:2259 閲覧ユーザー数:670 |
騎神なでしこに連れられ、なでしこ軍の城まで到着したディアーリーズとアキ。
そして…
「「おぉ…」」
和をイメージしたような、それでかつ豪華な雰囲気を持った屋敷。そこで二人は座布団に座りつつ、一番の目的である人物と対面していた。
「ようこそおいで下さいました。私がなでしこ軍の武将、毛利モトナリです」
なでしこ軍武将―――毛利モトナリは、二人に対してペコリと頭を下げる。青色に靡く長い髪と、頭に巻いている白い鉢巻。白い胴着に黒い袴、その上には胸当て。そんな戦う女性としての風格を持ち合わせていると同時に、何処かお淑やかな雰囲気をも醸し出している。モトナリは、そんな女性だった。
「まずはあなた達に、お礼を言わなければなりません。村の民達を守って頂き、本当にありがとうございました」
「い、いえ、そんな大層な事ではありませんって!?」
(てか、ヤケに素直に頭を下げる奴が多いわね…)
「あなた達がここへ尋ねて来た理由は、既に把握しています。あなた達の事は既に、ユキムラ様から話を伺っていますから」
「え、ユキムラさんから?」
「えぇ。少し前に、ユキムラ様からの使いがここへいらっしゃったので」
((流石忍者、お早いお着きで…!!))
どうやら二人がここへ来る前に、既に猿飛サスケが伝えに来ていたようだ。これを知った二人はそろそろ「あれ、この世界ってライダー以外の能力は使えないんじゃなかったか?」という思考を抱き始めるのも時間の問題だろう。
「その為、事情は全て把握しました。ディアーリーズ様にアキ様、私達なでしこ軍もあなた達の目的にご協力致します」
「本当ですか!? ありがとうございます!!」
「え、けど良いのかしら? そんなあっさり決めちゃって」
「私達なでしこ軍は元々、争いを好みません。武力を行使する事なく事態を解決出来るのであれば、それが一番でしょう。構いませんね、騎神なでしこ様?」
「うん、私もOKだよ!」
「「何処から顔出してんの!?」」
天井裏の板が外れ、そこからヒョコッと顔を出してきた騎神なでしこ。二人の突っ込みはさて置き、騎神なでしこも仲間の捜索には文句なしに協力してくれるらしい。
「二人は村の皆を守ってくれたもん、お礼はちゃんとしなくちゃ!」
(す、すごいあっさり決まっちゃったわね…)
(うん……何だか、嫌な予感がするようなしないような…)
実はこれから先、ディアーリーズはある意味で大変な事態に巻き込まれてしまうのだが、そんな事実はまだ知る由も無いだろう。
「…あれ?」
この時、ディアーリーズはモトナリを見てある事に気付いた。
「モトナリさん、もしかして怪我をしていませんか?」
「え?」
「ほら、袖の下に包帯が…」
「あぁ、これですか」
モトナリは右袖をめくり、腕に巻かれている包帯を見せる。
「うわ、どうしたのその怪我!?」
「実は昨日も、私達の領地にあの怪物達が襲って来たんです」
「え、昨日も!?」
「はい。その時は何とか撃退する事が出来たんですが、その際に腕に傷を負ってしまって…」
「あちゃあ、そりゃ災難だったわね」
「…モトナリさん」
「はい?」
「少し、失礼します」
ディアーリーズはモトナリの前まで来て、彼女の腕に巻かれている包帯を解いていく。そして包帯の下からは、刃物で斬りつけられたような一本の傷跡がくっきり残ってしまっていた。
「ディアーリーズ様、何を…?」
「大丈夫です。一瞬で済みますから」
≪リカバー・ナウ≫
「あ…」
指輪がベルトの手形部分に翳され、魔法が発動。ディアーリーズの右手が触れる事で、モトナリの傷付いた右腕が白い光に包まれる。
(この光……温かい…)
そして光が収まる。すると彼女の右腕は、傷跡がすっかり消えてしまっていた。
「これは…!」
「うわぁ、すごーい! 傷が治っちゃったぁー!」
傷が治ったのを見て、騎神なでしこはピョンピョン跳ねて喜び、モトナリも驚いた様子で腕の傷があった箇所を触れる。
「一度傷跡が付いてしまうと、最後までそのまま残ってしまう事がたまにあります。僕の魔法だけで治る傷で本当に良かったです」
「ディアーリーズ様、あなたはとても優しいのですね」
「いえ。僕はただ、やれる事をやっただけです。それにモトナリさんのような綺麗な人に、傷跡なんて似合いませんし」
「まぁ、綺麗だなんて……ふふふ。ディアーリーズ様もお上手ですね」
「嘘なんかじゃありませんよ」
「え…?」
「見ず知らずの僕達に協力してくれて、村の人達の事も大事にしてる……それってずっと綺麗で、ずっと素敵な事だなぁって、僕はそう思えるんです」
ディアーリーズはモトナリの治った右腕にそっと触れる。
「だからモトナリさん……あなたはずっと綺麗で、ずっと素敵な方ですよ」
「…ッ!」
ディアーリーズが見せた、純粋で綺麗な笑顔。それを見たモトナリは若干だが、自身の頬が熱くなっていくのを感じた。
「あれ? モトナリちゃん、どうしたの?」
「え、あ……い、いえ! 大丈夫です!」
「?」
騎神なでしこに顔を覗き込まれ、モトナリはすぐに首を横に振って脳内から邪心を払う。そんな彼女の反応に首を傾げるディアーリーズだったが……その後ろで、アキは気付いていた。
(こ、こいつ…………また一人、堕としおった…ッ!!!)
そう。ディアーリーズはまた一人、異性に惚れられてしまったのだ。しかも、惚れる原因を作った張本人が全然気付いていないのだから余計に性質が悪い。
「…と、とにかく! これからなでしこ軍も、ディアーリーズ様とアキ様の仲間捜索をお手伝いしていきます! では騎神なでしこ様、早速参りましょう!」
「え、ちょ、モトナリちゃん!? 急に張り切り出してどうしたの!?」
「あれ、ちょ、これ僕も一緒に行くんですか!?」
急に張り切り出したモトナリは、騎神なでしことディアーリーズの手を掴んでそのまま引っ張って行ってしまった。そしてそれを見たアキは、目頭を指で押さえつつ呟いた。
「…どうやら、ラヴァーズ会議が必要のようね」
今後も、ライバルは増えていきそうなようだ。
一方。
大陸中央部に存在する地域、カワナガジマでは…
「ほぉう、ここがカワナガジマな訳ね」
「こりゃまた、随分と殺風景な場所だよなぁ…」
リュウガ軍やグレイブ軍、そしてロキとハルトの二人は、果たし状で指定された場所までたどり着いているところだった。彼等の視線の先には、『Ω』の紋章が描かれた旗を上げている勢力が見えてきた。
「あれがオーガ軍の連中か?」
「あぁ。あれがケンシンの率いる勢力、オーガ軍だよ」
「ユキムラもそなた等も、手は出してくれるな。これは我々リュウガ軍と、奴等オーガ軍による一騎打ちなるぞ…!!」
シンゲンは張り切った様子で、リュウガ軍の兵士達と共に前に出て行く。グレイブ軍はその後方へと下がっていき、ロキは双眼鏡を使ってオーガ軍の様子を見ようとする。
「という事は、あそこに上杉謙信がいる訳か……ん?」
オーガ軍の様子を見る事が出来たロキだったが、何やら不思議そうな表情になる。
「ん、どしたのロキちゃん」
「あ、あぁ……なるほど。上杉謙信って、ああいう人だったんだな」
「へ?」
ロキの言った言葉が気になったハルトも、同じように双眼鏡でオーガ軍の様子を伺う。
「…何じゃありゃ」
「ケンシン様!! 戦の準備、無事に整いました!!」
「うむ、ご苦労だった。下がって良いぞ?」
「はっ!!」
オーガ軍武将―――上杉ケンシンは戦の準備を待っていた為か、椅子に座ったまま退屈そうな様子で自身の爪を手入れしているところだった。爪の手入れが一通り終わったのか、ケンシンは自身の爪を見て満足している。
「良い……実に良い輝きだ。今日もこの僕ケンシンは、更なる美しい戦に励む事が出来るぞ…」
「…ねぇ、ケンシン。もうリュウガ軍はそこまで来てるんだけど」
「あぁ、しばらく放置して構わないよ。あんな美しさというものを知らない野蛮な連中に、わざわざこっちが予定を合わせる必要性なんて無いのさ」
「は、はぁ…」
「しかし、今日は実に楽しい一日になりそうだ……見たまえ騎神オーガ君!! 磨きに磨いたこの綺麗な爪!! このピカピカに磨いた鎧!! あぁ、こんなに美しい物を持ち合わせるだけでも、僕はとても幸せな人間だよ…!! あ、そうそう。実は昨日も、美しい宝石をいくつか手に入れてしまってねぇ? あれ等もかなりの高価だし、より最高の―――」
(あぁ、また始まった……ケンシンの美しさ自慢が)
ケンシンの長ったらしい自慢話に、騎神オーガは顔を押さえて呆れていた。どうやら彼は相当美しい物が好きらしく、一度その話が始まるとなかなか終わりが来ないのだ。
(どうしよう……リュウガ軍の人達、絶対怒ってるよねこれ…)
騎神オーガは申し訳なさそうな雰囲気を出しつつ、リュウガ軍の方を見据えた。
「シンゲン様!! あの男、またいつものように自慢話をしております!!」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ…!! いつもいつも戦の開始前で嘗め腐りおって、憎たらしい男よ…!!」
「どうどう」
怒りを滲み出しては騎神リュウガに宥められているシンゲンを他所に、ロキとハルトはユキムラから色々な話を聞いていた。
「えぇっとつまり……あの男、上杉ケンシンは綺麗な物が好きな訳?」
「まぁ、簡単に言うとそうなるだろうね。ケンシン殿は美しい物を集める趣味があって、一度目を付けたら手に入れるまで絶対に諦めようとしないんだ。それにかなりキザな人でね。場合によっては、女性にまで狙いを定める事があるんだ」
「うげぇ、俺の嫌いなタイプじゃねぇかよそれ…!!」
「はははは……ただ、彼の実力が高いのもまた事実だね。オーガ軍は雑兵として、多くのライオトルーパーを従えてる。見たら分かるだろう?」
「まぁ確かにな」
ハルトがもう一度双眼鏡で見直してみると、ケンシンや騎神オーガの周囲には複数のライオトルーパーが集まっており、戦力的にはリュウガ軍の方が不利。一筋縄でいかないのは間違いないだろう。
「えぇい、もう我慢出来ん!! 私の方から直接、奴に声をかけてくれるわ……ケンシィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンッ!!!」
「「うわ声でかっ!?」」
シンゲンが大声で叫び、ロキとハルトは思わず耳を塞ぐ。
「これまで長きに渡って続いてきた、我等リュウガ軍と貴様等オーガ軍の因縁!! 今度こそ、ケリを着けてくれようではないかぁっ!!!」
「やれやれ、うるさい障害が吠えてるよ…」
ケンシンは鬱陶しそうな様子で呟き……そしてニヤリと笑みを浮かべる。
「だがちょうど良いや……あの野蛮なリュウガ軍に対して、終止符を打つ時が来たんだから…!!」
ケンシンは椅子から立ち上がり、腰の鞘から刀を引き抜く。
「さぁ、終わらせに行こうか……我等がオーガ軍の手で…!!」
「「「「「はっ!!」」」」」
(はぁ、大丈夫なのかなこれ…?)
ケンシンとライオトルーパー達が前に出て、騎神オーガは不安そうにしつつ自らも前線へと出て行く。
「ようやく来たか…!!」
オーガ軍が動き出したのを見て、シンゲンは掌に唾を吐き捨てる。
「さぁ行け……騎神リュウガよ!!」
「あぁ、了解…!!」
≪SWORD VENT≫
騎神リュウガはシンゲンの前に立ち、ドラグセイバーを召喚して右手に持つ。
「蹴散らしてあげるよ……騎神オーガ!!」
「はぁ……分かった、行って来るよケンシン…!!」
≪Ready≫
騎神オーガもケンシンの前に立ち、長剣となったオーガストランザーを構える。
騎神リュウガと騎神オーガ。
両者がそれぞれ向き合って立つと同時に、両軍の兵士達がそれぞれ武器を構え出す。
「おぉ、いよいよ始まるのか…!!」
「やれやれ、どうなる事やら」
「シンゲン殿…」
ロキやハルト、ユキムラ達が見守る中で、いよいよ戦は始まろうとしていた。
「…行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」
シンゲンの号令がかかり、リュウガ軍は一斉に動き出した。
「…かかれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁっ!!!」」」」」
それに対してオーガ軍も、ケンシンの号令で一気に動き出す。
「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」
騎神リュウガと騎神オーガも互いに戦い合うべく同時に駆け出し、すれ違い様に互いの剣をぶつけ合った。
両軍の兵士達も一斉にぶつかり合い、本格的な戦が始まった……その時だ。
-ボゴォンボゴォンボゴォォォォォォォォンッ!!-
「「「「「!?」」」」」
突如、何も無い筈の地面があちこち爆発し始めたのだ。リュウガ軍の兵士達は突然の連続爆発でパニックに陥り、オーガ軍の兵士達も何故か慌てた様子で逃げ惑う。
「ッ…何だ!?」
これにはロキやハルト、ユキムラ達も驚きを隠せなかった。最初は戦う場所を指定したオーガ軍の罠かと考えられたが、オーガ軍の兵士達も逃げ惑っているところを見る辺り、どうやら違うようだ。
「…嫌な予感がする!!」
「あ、ちょ、おいロキッ!?」
何か嫌な予感を感じ取ったロキはベルトを装着し、ファイズフォンを手に取って両軍の下まで駆け出していく。
「ケンシィィィィィィィィンッ!! これも全て、貴様等オーガ軍の策略かぁっ!?」
「はぁっ!? 馬鹿を言わないでくれたまえ、騙し討ちなんて僕の流儀に反している!!」
どうやらケンシンも、こんな連続爆発など予定には無かったらしい。では、誰がこんな事を?
シンゲンが考えようとしたその時…
「どうだい諸君、楽しくやっているかね?」
「「「「「!!」」」」」
連続爆発を起こした元凶が、姿を現した。
「ッ…騎神ディバイドォッ!!!」
シンゲンが吠えた先の崖から、騎神ディバイドがライドブッカー・ソードモードを構えた状態で面白そうに見下ろしていた。
「そうだ、もっと踊ってくれたまえ。狂乱の宴を楽しもうじゃないか!!」
『アタックライド・エクスプロージョン!』
「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」」」」
「フハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」
兵士達が爆発に巻き込まれていく中で騎神ディバイドは高らかに笑い声を上げ、彼の後ろからホエール・ドーパントを始め大量の怪人達が一斉に崖から飛び降り始めた。
一方、地球の海鳴市…
「~♪」
鼻歌を歌いながら、街中を歩いている紫髪の少女がいた。
彼女の名は月村すずか。アリサ・バニングスの親友の一人である。
この日はちょうど天気も快晴な上に、絶好の散歩日和。すずかは楽しそうに散歩しつつ、とある喫茶店まで向かおうとしていた。
しかし…
-ブゥゥゥゥゥゥン…-
「!?」
その幸せな時間も、あっという間に終わりを迎える。
「何、これ……どうして空が…?」
突然張られた赤い結界で、青かった筈の空が一瞬で赤くなった。周囲にいた筈の人間達も、いつの間にか姿を消していた。
何かがおかしい。
薄々気付き始めたすずかは、一旦自分の住む屋敷まで戻ろうとしのだが…
「…!」
何処からか、妙な雰囲気を感じ取れたすずか。何だろうと思いつつ、彼女はその感じ取れた方向へ歩いていき、路地裏へと入っていく。
「!? これは…!!」
見つけたのは空間の裂け目だった。どうやら、彼女が感じ取った力の正体はこれのようだ。
(? 何でだろう…)
空間の裂け目を見て、すずかは目のハイライトがスゥと消える。
(あの中に、感じる……懐かしい気配が…)
そのまま、すずかは空間の裂け目へと入っていく。
「ここ、は…?」
狭間の空間へと辿り着いたすずか。直後、自分が入った空間の裂け目が一瞬で消えてしまい、それに気付いたすずかは目にハイライトが戻る。
「消えちゃった…」
すずかは周囲を見渡す。周りには木が沢山あり、ここが森の中である事が分かる。しかし空を見上げてみれば、空は様々な色が混ざってぐっちゃになっていた。
「…進むしか、ないよね」
謎の多過ぎる場所に来てしまった事を後悔したすずかだったが、裂け目が消えてしまった以上は後戻りなど出来る筈も無い。勇気を出し、すずかは森の中を歩いて進んでいく。
「…!」
ある程度進んでいった先で、すずかは何かに気付いた。
(あれは…)
『ふむ、ここがそうか…』
すずかが見つけたのは、不死鳥の力を有した黄金の戦士―――“仮面ライダーオーディン”だった。オーディンの目の前には、すずかが入ったのと同じ空間の裂け目がある。
『さて…』
オーディンは腕を組んだまま、空間の裂け目へゆっくり入っていく。オーディンが完全に裂け目の中に入っていったのを確認し、すずかも空間の裂け目の前に立つ。
「この先に……何かがある…?」
すずかは意を決して、その裂け目の中へと突入していくのだった。
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第11話