ひとつ任務を終え、帰還したサムスは連邦軍上官であるアダム・マルコビッチに報告するため、司令室に訪れていた。
アダムとは不思議な男であるとサムスは思う。例えば彼は先日勲章をもらったのだが、軍服にそれをつけるのが普通である。しかしアダムの軍服に勲章はひとつもない。階級を一切気にしてはいない。
「聞きたいことがある……」
サムスが切り出した。
「あのパイレーツが言っていたことは、本当なのか? 私の父がろくでなしだと連邦に言われていると……」
サムス・アランの父ロッドは、地球系コロニーK-2Lで資源採掘団の主任として働いていた。しかしスペースパイレーツの襲撃に遭い、愛娘サムスを守るため自決の策を取った。その際に資源のエネルギーを用いて爆破させていたのだ。それを連邦軍の上層部は快く思っておらず、ロッドら採掘団を「ろくでなし集団」と腐している、と先日逮捕されたパイレーツが言っていた。
「一部の心ない者たちが言っているだけだ、気に病むことではない」
何でもない風を装って、アダムは席を立った。だが、若干怒りの色を表しつつ、続ける。
「……私は、K-2L事件のとき士官学校生だった。彼らの勇気ある行動は、当時の私にも衝撃的だった。その彼らをそんな言葉ひとつで片付ける連中こそろくでなしだと、連邦に言ってやったよ」
「……司令が?」
サムスは心底意外だという顔をする。事実、無感動なように見えるアダムのその行動は予想できなかった。
「意外か?」
彼の問いに、正直にうなずく。
「私も人間だ。怒らねばならないときには……非人道に対しては怒る。それに、キミの父君を尊敬していたからな」
「父さんを?」
「ロッド・アランは上下の関係にとらわれず皆と家族のように仕事をしていて、慕われていたと聞いている……。私は彼のようになりたいと思っていた。そして、兵士から司令官に転属され、キミが私のところに就いた……。正直驚いているよ、レディー・サムス。尊敬していたロッド・アランの娘が自分の部下になったのだから」
自分の知らぬ父の話、そしてアダムの知らぬ一面を聞かされ、サムスは気恥ずかしいようなそんな感情を覚えた。何より、両親の死は無駄ではなかったということが、サムスにはうれしかった。
アダムは冷酷で無感情な人間ではない。血の通った、生きた人間なのだとサムスが自覚した瞬間であった。
「でも、その無表情を直さなければ父さんみたいにはなれないんじゃないか? マルコビッチ司令」
「そうだな……元々、こういう顔つきなのでな」
そう言って、ふっと笑ってみせる。サムスがまともに見た、アダムの笑顔だ。その、ぎこちないながらも秘められた深いやさしさに、自分もつられてほほえんでいることをサムスは気がつかなかった。
(了)
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メトロイド・マガジンZマンガ版ベース。フュージョンのキャラアダム・マルコビッチとサムスの最初期のなれそめ話。