No.655768

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 909

soranoさん

第909話


2014-01-19 00:00:01 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1409   閲覧ユーザー数:1329

~最果ての道~

 

「…………………何事にも備えは必要だ。人間の歴史は、あやゆるリスクにどう対処するかの歴史でもある……そしてキーア君はそれを制御できる素晴らしい力を持っている。それは否定のできない”事実”だ。」

尋ねられたイアンは眼鏡をかけ直して淡々と答えた。

「その結果、キーアをそんな場所に押し込める事になったとしても……?かつての”幻の至宝”はやがて心を病み、自らを消すという結末に至ったと聞いています。あなた方は本当に……一人の女の子にそんな重責を押し付けるつもりなんですか?」

「………”幻の至宝”よりも幼いキーアではとても耐えられんぞ……!」

ロイドの言葉に続くようにツァイトは厳しい表情で答え

「……………」

イアンは黙り込んでいた。

「ロイド、それは――――」

「うふふ、そうならないようにわたくし達がいるわけですわ。キーアさんに世界改変の責任を全て押し付けるのではなく……先生のような有識者が”より正しい方向”へ世界を変える道標をアドバイスしてゆく……それならば話は別でしょう?」

「…………………」

マリアベルの説明を聞いたロイドは呆け

「み、民主主義的なプロセスを全て否定するというの……?」

「……それどころか絶対王政すらも否定しているぞ……!」

「無茶苦茶としか言いようがない……」

「私もかつてはこのような外道共と同じ類だったと思うと恥としか思えませんわ。」

「クロイス家がそこまで墜ちるなんて………」

エリィとユーシスは厳しい表情で声を上げ、フィーは静かな表情で呟き、フェミリンスは不愉快そうな表情をし、エイドスは悲しそうな表情をした。

「……民主主義や絶対王政の弊害はエリィ君達も良く知っているはずだ。ともすれば衆愚政治に陥り、大切なことを迅速に決めることもままならなくなってしまうシステム……クロスベルに限らず、どこにでも見られる現実ではないのかね?」

「………それは………」

「…………………」

イアンの問いかけにエリィは複雑そうな表情で言葉を失くし、ラウラは複雑そうな表情で黙り込んだ。

「それに私とて、自らの知見だけをキーア君に提示するつもりはない。マクダエル議長のような有識者にもいずれ協力を要請したいと思っている。ディーター君もまた、マネジメントという観点から改めて役に立ってくれるだろう。”六銃士”やリウイ陛下達は……あれは駄目だ。あの者達は自らの欲望の為に動いている。逆に――――君達には私達の試みに協力して欲しいのだ。」

「リウイ達が夢見る”理想”やその”理想”の為にどれだけ苦労したかも知らずによくそんな事が言えるわね…………」

イアンの話を聞いてロイド達が黙り込んでいる中、カーリアンは怒りの表情でイアンを睨んだ。

「新たな時代を拓くためには君達若者の意見も必要だ。そして君達ならば……ここに辿り着いた君達ならば、これからの時代に何が必要なのか身をもってわかっているに違いない。どうかね、この提案は?」

「……そ、そんな事………」

(妄言に耳を傾けるな、ティオ!あれはただの悪魔の誘いだ!)

「クソ………変に説得力がありやがるが……」

(ハッ!あたいはそういう”選ばれた奴等”ってのが一番大っ嫌いなんだよ!)

イアンの提案を聞いたティオは不安そうな表情をし、ラグタスはティオに忠告し、ランディは唇を噛みしめ、エルンストは不愉快そうな表情をした。

 

「……………イアン先生。結局、先程の質問にはまだ答えてもらっていませんよ?先生は――――”本当にそれでいいんですか”?」

その時複雑そうな表情で考え込んだロイドは真剣な表情で尋ねた。

「あらゆるものには”尊厳”がある。人にも、社会にも、歴史にも。間違っていたり、悲劇を生み出す結果に繋がったとしても………”それを無かったことにする”のは関わった人達の”尊厳”を犯すことだ。例えば、悲劇から立ち直ることで強さを手に入れる人がいるように……本当は……先生にもわかっているんでしょう?」

「ロイド……………(ガイさん、見ていますか?成長した今のロイドを……)

(フフ、それでこそ私が”守護”すると決めた”英雄”よ……)

ロイドの問いかけを聞いたセシルとルファディエルは優しげな微笑みを浮かべ

「………………………」

イアンは黙り込んだ。

「………確かに……人は時には間違いを犯してしまう存在……」

「だが、その過ちを無かったことにしていては、成長することもできない……」

「……共に学び、力を合わせ、前に進んでいくことの意味………」

リーシャとワジが呟いた言葉に続くようにティオが呟き

「確かに、そいつがバッサリと切り捨てられちまうってわけだな。」

ランディは口元に笑みを浮かべて頷いた。

「…………………」

イアンは黙り込み

「……………ロイド………」

幹に埋まっているキーアは驚きの表情でロイド達を見つめていた。

 

「―――キーア。俺達と一緒に帰ろう。もうこれ以上、俺達のために無理をする必要はないんだ。現に今俺達の傍にいる未来のキーアも無理は止めて俺達と共にいるらしいぞ?」

「また”いつも”みたいに、ロイド達と一緒に鍋パーティーをする方がずっと楽しいよー?」

「……………っ……………!」

優しげな微笑みを浮かべたロイドとロイドの傍にいるキーアの言葉を聞いた幹に埋まっているキーアは泣きそうな表情をし

「……前に何度か俺達が命を落としたという時も………辛くて、苦しくて……哀しい思いをさせてたんだな。ゴメンな、キーア。俺達が不甲斐ないせいで……」

「そ、そんなことない……!あれはキーアが勝手にやったことだから……!だからロイドが謝ることなんて―――」

「だったらキーア。どうしてずっと浮かない顔をしているんだ?」

「………!」

ロイドの指摘を聞いた幹に埋まっているキーアは目を見開いた。

「キーアも気付いているんだろう?俺達の死を哀しむあまり、因果律ってのを操作して現実を変えてしまったこと……―――それがやっぱり”ズル”だったってことを。」

「……………ぁ…………………」

真剣な表情のロイドの言葉を聞いた幹に埋まっているキーアは呆けた後黙り込み

「キーア………」

「ま、死んじまう結末が良かったとはさすがに言えねぇが……それでも”反則技”ってのはどうしても言えちまうかもな。」

ティオは辛そうな表情でキーアを見つめ、疲れた表情で答えたランディは口元に笑みを浮かべ

「……まあ、確かに私達メンフィルや”神殺し”達まで関わらせて、ロイド達の味方にするのは確かに”反則技”としか言いようがないけどねえ?」

「……カーリアン様、少しは空気を読んで下さい。」

苦笑しながら言ったカーリアンの言葉を聞いたエクリアは呆れた表情で指摘し

「アハハ……それを言ったらあたしもそうなるかな?パズモ達やラピス達の事も”反則技”のように強すぎるし。」

「エステル……君も空気を読んで発言した方がいいよ。」

(フフ……例え因果律を操作が原因でも、私達の協力を取り付けたのは貴女の人柄と努力によるものですよ、エステル……)

カーリアンに続くように苦笑しながら言ったエステルの言葉を聞いたヨシュアも呆れた表情で指摘し、フェミリンスは優しげな微笑みを浮かべてエステルを見つめていた。

 

「……イアン先生、ベル。それについては……”政治”も同じだと思います。時には王道ではなく、邪道が必要になる時もあるでしょう。ですが邪道を前提とするのはやはり間違っています。

「………エリィ君……………」

「…………………」

一方エリィの言葉を聞いたイアンは複雑そうな表情をし、マリアベルは厳しい表情で黙り込んだ。

「キーアちゃんと言う個人の超越的な力に頼る事……それは、もはや政治ではなく、ただの神頼みとしか思えません。困難な状況を、しかるべき手続きと対話のプロセスによって乗り越え、全員の問題として解決してゆく………それが”真の政治”だと思います。」

「うむ。女神もそう言う世界を望んだからこそ、私達”眷属”を”盟約”で縛ったのだ。」

「そう……全ては自分達の力で道を切り開く為に……」

エリィの言葉にツァイト、エイドスはそれぞれ続き

「多分、キーアの力が無ければクロスベルが深刻な危機に直面する可能性は高いと思います。大陸全土の混乱、経済危機………そしてもし局長達がエレボニアに攻めていなければ、エレボニアは内戦が終了しだい、クロスベルに牙をむくでしょう。――――それでも俺達は。キーアに全てを押し付けるのが正しい選択だとはとても思えない。与えられるだけの奇蹟に頼ったら俺達自身が成長できないから……だから苦しくても……今は”筋”を通すべきだと思うんです。」

「………ロイド………」

「…………………」

ロイドの言葉を聞いた幹に埋まっているキーアは複雑そうな表情をし、イアンは黙り込んだ。

「――――――クロイス家の末裔とその者に手を貸す哀れなる墜ちた人の子よ。貴女達の”負け”です。”人”は”至宝”を前にして”真なる答え”に辿り着きました。”真なる答え”に辿り着けなかった貴女達では到底人々を幸せにする事は出来ません。貴女の祖先ですらもいつか私が望む世界――――人々が”神”や”奇蹟”に頼らず、人々の手によって紡がれる世界を創る事を夢見ていたのですよ?」

するとその時エイドスは静かな表情で一歩前にでてマリアベル達を見つめて問いかけた…………………!

 

 

 

 

次回はエイドスがいるから期待されているであろうマリアベル達を驚愕させると共に恐怖のどん底に陥らせるか絶望させる、もしくは悔しがらせるシーンです!(ニヤリ)フフフ、この小説では三下に成り下がったヨアヒムの時より受ける精神ダメージはでかいかもしれませんね(黒笑)

 


 
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