幸せって、ああいう事を言うんだよな……
今日はクリスマス、この地に再び降りてからの初めての聖夜。
先程、俺が提案したクリスマスによる宴が終了し、
呑み潰れた皆を寝床に連れ終え、一人自室にて余韻に浸っている。
幸せな時間だった。自然と笑みがこぼれ、一緒に喜び合い、
くだらない事で心踊る。一年前の俺からは想像できなかった。
あの頃の俺は希望など無く日々を怠惰に過ごしていた。
寝ては夢の中でも何度も皆の名を叫び想いを馳せていた。
そして、荒んだ心が影響してか上手く笑えなくなり、
外史に心を置き去りにしてきた、絶望しながら、そう確信したんだ。
皆と共に大志を掲げ駆け抜けた日々は、とても輝かしいもの。
何事にも変えられない大切な思い出。
だから、俺は募る想いを抑えきれず、泣いていた。
泣いて、泣いて、泣きまくった。
戻りたいと心から願いながら。
……奇跡が起こった。
不思議な声に導かれて眼を開くと、再び外史に舞い戻っていた。
俺は無我夢中で走り出し、声が聴こえる方へと急いだ。
―――――もう一度巡り逢えた―――――
俺は再会に泣き顔を見せたくなかったから、涙を必死に堪え笑顔を努めた。
皆も、最初は驚いたものの次第に目に涙を溜めながら笑ってくれた。
そして、彼女が俺の所にゆっくりと歩いてきた。
今でも鮮明に憶えている。これから先も忘れない、
あの言葉を口にして……
―――――――おかえりなさい……隊長!!―――――――
救われたんだ。負のしがらみから解放してくれた温かな君の言霊に。
絶望だらけだった心に日輪の光を注いでくれた愛おしい君に。
…少し思い出し過ぎたかな。どうやら酒に酔っているようだ。
夜風を当たりに城壁に行くとしよう。
…城壁に誰か居る。眼を凝らしてよく見ると先程想っていた彼女が、
空へと手を伸ばしていた。その刹那、奇妙な出来事に遭遇した。
月が一段と輝きを増し、一直線に君だけを照らしていた。
辺りは暗いままなのに君だけを煌々と…
思わず見惚れてしまう。丸で現実とは掛け離れた幻想的な、
絵画を目にしている様な不思議な気分。俺は思わず愛しい人の名を呼ぶ。
君は俺に気付き胸の中へと飛び込んできた。
普段の消極的な君からは考えられない行動だ。
おそらく俺と同じく酒に酔っているのだろう。俺は優しく抱きしめる。
すると、君は嬉しそうに笑顔を差し向け、何かに気付いた。
…え?雪?本当だ……。
君を照らしていた月が役目を終え、雲に覆い隠される。
空からは雪が結晶を形成しながら、深々と振ってきた。
…ホワイトクリスマスだ。ん?意味?
クリスマスに雪が降る事をホワイトクリスマスって言うんだ。
俺が住んでた所では滅多に見れなかったから、縁起が良いものと勝手に解釈しているよ。
説明を終えたら腕の中、君は寒そうにしていた。俺は君の懇願もあって強めに抱きしめる。
そして、君は俺を見つめ語り始めた。
もう一度巡り逢えて良かったと再び寵愛を頂けて良かったと。
俺もだよ。もう一度、君に触れられて本当に良かった。
叶わぬ夢だと思っていたから。
しかし、君は一転して不安を吐露する。
また俺が消えるのではないかと危惧していた。
何も言わず、この世界から立ち去ったが故に出来てしまった心の傷。
君だけではなく、皆も間違い無く傷を負っている筈だ。
これは、決して消える事の無い俺の罪。
自分の意思ではないとはいえ、何て残酷な事をしたのだろう。
苦痛に顔を歪めてしまう。
だが、優しい君は俺の様子に気付き、首を横に振った。
もし、もう一度俺が現世に帰ったとしても、
後を追い、共に道を歩いてくれると誓ってくれた。
また君に救われた。
俺も皆を君を悲しませたりしないと、改めて決意する。
再び世界の大いなる意思に呑み込まれ様としても、ここに存在し続ける。
そう告げると、君は眼を細め最上の笑顔を咲かせる。
そして、君は愛を告白し、キスをしてきた。
舞い散る雪の中、俺も想いを伝える。
離れない、離したくない。命の灯火が消えるその時まで、隣で笑うと約束するよ。
~現実から目を背け絶望し物言わぬ『夢想』で何度も馳せた、あの頃とは違い、今、
君がこうして腕の中に居る、この幸せを噛み締めながら『恋姫』の君に久遠の約束を~
―――――愛してるよ『凪』…Merry X'mas―――――
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こちらは真・恋姫†無双の二次創作でございます。
今年最後の投稿です。思えば6月に投稿し始め早半年、
皆さんの、支援、コメント、お気に入りが
執筆する上での力となり今日まで続けられたと思っています。
本当にありがとうございます。
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