No.645904

九番目の熾天使・外伝 ~改~

竜神丸さん

開演:最高最悪の宴

2013-12-17 14:00:10 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4679   閲覧ユーザー数:1132

某次元世界、管理局研究施設…

 

 

 

 

 

 

「こちら時空管理局、開発研究部!! 緊急事態発生!! 至急、応援を!!」

 

施設内では、研究員や警備隊の者達が慌しく動いていた。何やら只事でない状況のようだ。

 

『こちら地上本部!! どうした、何があった!?』

 

「施設に侵入者が現れました!! 映像に映った特徴からして、恐らく“凶獣”です!!」

 

『凶獣だと!? 馬鹿な、奴は死んだのではなかったのか!?』

 

「そ、それが、突然この施設内に現れて…!! 迎え撃った部隊も全滅、最悪な状況で―――」

 

-ドゴォンッ!!-

 

「ッ!?」

 

その時、通信室の開閉ドアが木っ端微塵に破壊された。通信を行っていた局員が、恐る恐る破壊された開閉ドアの方へと振り向く。

 

「スゥゥゥ……ハァァァァァァァァ…!!」

 

現れたのはZEROだった。大きく吸った息を吐き、右手の骨をゴキンと鳴らす。

 

「よぉう、管理局員……死ぬ準備は出来たんだろうなぁ…?」

 

『おい、どうした!! 応答しろ!!』

 

「あ、ぁ……あぁぁぁ…」

 

野獣の如くギラリと光る目に見据えられ、局員は恐怖で椅子から摺り落ちてしまう。しかし、ZEROにとっては彼の恐怖している原因など知った事ではない。

 

「んじゃまぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とっとと死んでくれや」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数秒後、局員の断末魔と肉をひたすら引き裂く音だけが施設中に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんれぇ~? なんか、爆発の仕方が結構地味だなぁ」

 

「…確かに」

 

そんな研究施設の外にて、蒼崎とawsが遠くから監視を行っていた。研究施設のあちこちが次々と爆発している光景を、彼等は双眼鏡でノンビリと眺めている。

 

『二人共、そっちの様子はどうだ?』

 

二百式から通信が入る。

 

「どうもこうも、任務自体は順調だよ。順調過ぎて逆に怖いくらいに」

 

「いつもに比べると、破壊の規模が少々小さいな。普段の奴なら、もっとド派手に破壊の限りを尽くしているところだろうがな」

 

『やはりか……ZEROの奴め、ここ最近は妙に大人し過ぎる』

 

彼等はZEROの暴れ方に対して疑問を抱いていた。本来のZEROならば周りの事など気にする事も無く容赦の無い暴走を繰り広げるのだが、現在の彼は特にそういった暴走も無く、命令に従って着々と管理局の施設破壊任務を遂行しているのだ。もちろん、いつも通りの暴れ方をされても困る事に変わりは無いのだが。

 

(ZERO……お前は今、一体何を考えている…?)

 

普段なら戦闘もしくは食事の事しか頭に無いZEROが、突然旅団に従順になり始めた。彼をよく知るメンバーからすれば、違和感以外の何物でもない。

 

「…あ、また爆発した」

 

研究施設からまた大きな爆発音が響き渡る。この爆発音は、まだしばらく収まりそうにはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど……あのZEROさんが、ねぇ」

 

楽園(エデン)会議室。

 

現在この場にいるのはクライシス、デルタ、二百式、竜神丸の四人。彼等は通信で蒼崎とawsの報告を受けてから、ZEROの行動に若干の警戒心を強めているところだった。

 

「あれだけ戦いを好んでいたZEROさんが、素直に任務を遂行し始めるとは……やれやれ、今日の夜から血の雨でも降ってくるんでしょうかねぇ?」

 

「呑気な事を言ってる場合でもないぞ竜神丸。あの戦闘バカが急に大人しくなる等、何かしら裏があるに決まっている」

 

「妙に落ち着きがありませんねぇ二百式さん……まさか、この状況に少しでも焦っているとか?」

 

デルタが挑発するかのように嫌味を言い、二百式がデルタを睨み付ける。

 

「馬鹿を言うな。何で俺があんな奴を相手に、焦らなきゃならん? そういうお前こそ、そんな身体じゃ精々地べたを這いずり回る事くらいしか出来んだろうなぁ」

 

「おやおや、言ってくれますね。私の場合は、あなたがZEROさんに成す術も無くボコボコにされている未来以外に何も見えてきませんが?」

 

「貴様…!!」

 

デルタの嘲笑うかのような言い方に、二百式が腰に携えていた太刀を抜刀しようとする。それを見たデルタも軍刀を抜こうとするが…

 

「駄目ですよぉ、お二方」

 

「「!?」」

 

突然、二人の持っていた武器が勝手に彼等の手元を離れ、竜神丸の前まで引き寄せられてから彼の両手に収まる。

 

「いい加減、その仲の悪さはどうにかなりませんかねぇ? 団長の前で仲間割れなんてしたら後で怖いって事くらい、あなた達だって承知済みでしょう?」

 

「「……」」

 

竜神丸に諭されたデルタと二百式は互いを睨みつつも、渋々引き下がって自分の席に座り直す。

 

「しかしまぁ、確かにZEROさんの行動が怪しく感じるのも事実……どう思いますか、団長」

 

竜神丸の視線が、No.1の席に座ったまま目を瞑っているクライシスに向けられる。デルタと二百式も視線を彼の方へと向ける。

 

「…待っているのだろう」

 

無言のままだったクライシスが、ようやく口を開く。

 

「待っている…?」

 

「いずれ来るであろう、管理局との全面戦争ですか。ZEROさんはそれを楽しみにしていると言うのですか? クライシス」

 

「その可能性が、一番高いだろうな」

 

閉ざされていたクライシスの目が開く。

 

「彼は己の中にある力を、出来る限り温存しているのだろう……いつにやって来るか分からない“災厄の日”に向けて、な」

 

「そして、その日が来れば思う存分暴れるという魂胆……ですか。ZEROさんらしい、単純明快な考え方ですねぇ」

 

「全く、戦闘狂はこれだから厄介で困るんですよ」

 

「……」

 

「今は、このままでも特に問題は無かろう。もしもの事も考え、警戒だけは充分に強めておけ」

 

クライシスが席から立ち上がる。

 

「現時点で管理局は、機動六課という部隊を設立しているようだが……それでも我々のするべき事に変わりは無い。敵対する者は一人残さず殲滅する、それだけの事だろう」

 

そう言って、クライシスはその場から瞬時に姿を消してしまった。

 

「やれやれ、結局会議はするだけ無駄なようでしたね…」

 

そう言って、デルタも会議室を退出していく。それに続いて二百式も席から立ち上がり、会議室の出入り口まで向かう。

 

「…ところで二百式さん。先程の喧嘩から、何も言わず黙っているままでしたが」

 

竜神丸の声に、二百式が足を止める。

 

「…それがどうかしたか」

 

「いえいえ。もしかしたら二百式さん、何か他に考えている事があるんじゃないかと思いまして。同じ旅団の一員として、少々心配なんですよ?」

 

心配という雰囲気を微塵も感じ取らせない竜神丸の言葉に、二百式は横目で彼を見据える。

 

「…俺が普段どう考えていようと、お前には関係の無い事だろう?」

 

「おやおや、冷たいですねぇ」

 

「俺は世界がどういう状況であろうと……守れるのなら、それで良い」

 

それだけ言って、二百式も会議室を後にする。会議室には、竜神丸ただ一人が残っている状態だった。

 

「守れるのならそれで良い、ですか…」

 

竜神丸は深く溜め息をついた後、テレポート能力を使って手元にいつものタブレットを出現させる。

 

「例の任務を知っているのは団長さんとデルタさん、そして私のみ……果たして、二百式さんの思い通りにはなるんでしょうかねぇ?」

 

クククと小さく笑みを浮かべつつ、竜神丸はタブレットの操作を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

会議室を後にした二百式。彼は無言のまま、自分の部屋へ戻るべく通路を歩き続けていた。

 

(団長がどういう決断を下そうが、俺には関係ない。俺は守るべきものを守れればそれで良い。守る為なら、世界がどんな結末を迎えようと知った事じゃない…)

 

二百式は一旦立ち止まり、懐から一枚の写真を取り出す。

 

(守る為なら、俺は…)

 

写真には、車椅子に座っている茶髪の少女が映っていた。

 

「必ず守ってみせるさ……はやて」

 

写真を懐に収めた後、二百式はその場から歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時空管理局、地上本部…

 

 

 

 

 

 

 

「機動六課の監視役に選ばれたそうだな。クリウス」

 

「はい、そのようで」

 

電気の点いていない真っ暗な部屋で、マウザーとクリウスが向き合いながら話していた。

 

「私の場合、表向きはレジアス中将の部下という事になっていますので。レジアス中将の指示で派遣されたという形で、六課の監視役を引き受ける事が決定いたしました」

 

「レジアス中将か……確かに、奴はあの部隊の設立に納得はしていなかったな」

 

「そういう訳でしてねぇ。中将殿はかなり、ご立腹な様子でしたよぉ~♪」

 

「…ヤケに楽しそうだな? クリウス」

 

「いえいえ、そんな事はありませんよ?」

 

「ふん、まぁ良い」

 

マウザーは頬杖を突きながら鼻を鳴らす。

 

「あんな子狸なんぞに何かを成せるとは思えんが、一応しっかり見張っておけ。何か少しでも妙な動きをしたら、こちらにも報告を入れろ」

 

「了解しました。では、私はこれで…」

 

クリウスが部屋を退室するのを見た後、マウザーは一枚の資料を取り出す。資料には、miriの顔写真も貼られていた。

 

「いずれは潰す。覚悟すると良い、オブライエンよ…」

 

下卑た笑みを浮かべつつ、マウザーは資料をグシャリと握り締める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ふむ」

 

そんな彼を他所に、部屋の外ではクリウスが呆れた様子で一人立ち尽くしていた。

 

(やれやれ。一佐殿は一人でいると、いつもあんな調子なんですかねぇ…?)

 

「ま、私如きが気にしたところで仕方ありませんか…」

 

クリウスはその場から離れるように通路を歩き始める。

 

「さてさて……OTAKU旅団は既に活動を再開、機動六課も設立され、スカリエッティも動き始め、モンスターも未だ大繁殖。ここから、どんどん面白い事になっていきそうですねぇ~♪」

 

クリウスは小さく笑みを浮かべ……その糸目をカッと見開く。

 

「…良いねぇ良いねぇ、最高に楽しい状況じゃねぇかよ…!! 嘆きや怒り、苦しみが交差する最高最悪の宴が、ようやく始まろうとしてるぜぇ…!!」

 

自分の腹を押さえつつも、マウザー同様クリウスも下卑た笑い声を上げ始める。

 

「ヒヒヒヒヒヒ…ヒィーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミッドチルダ北の、とある山岳地帯…

 

 

 

 

 

-ガシャン…ガシャン…-

 

 

 

 

 

誰も知る事の無い場所で、とある存在が動き始めていた。

 


 
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