【 伏竜の軍勢、始動の件 】
あれから、また一月が過ぎた『ある日の事』
バタバタ! バタバタバタバタ!! ドン!!
兵「 申し上げます! 天水より南側約十里(約4.3㌔)の街に『 黄巾賊 』が現れたそうです! 至急救援を願いたいと使者よりの口上でごさいます! 」
詠「 とうとう、でてきたわね……。 颯馬が予告していた『 黄巾賊の出現 』というのが。 それじゃ、颯馬に伝達! 準備が出来次第現場へ! 」
兵「 はっ! 」 バタバタ、バタバタバタバタ!!
詠「 さて、『伏竜の軍勢』期待しているわよ! 」
ーーーーーーーーーーーー
バタバタ! バタバタバタバタ!! ドン!
兵「 天城様、賈駆様より伝令! 『 黄巾賊 』発見の報
の使者が到着したとの事! 準備でき……! 」
颯馬「 あぁ、ご苦労様! 場所は、いつも訓練をしたあの『狼煙』のの出ている街で良いんだね? 」
兵「 はっ! 間違いありません! 」
颯馬「 では、俺達が急行する! もし、何かあれば、『狼煙』の色が変わるか使者が来るはずだから、確認を怠らないように! 」
兵「 承知いたしました! ご武運を!! 」
颯馬「 ありがとう! では、『伏竜の軍勢』出陣する! 」
兵達「 おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!! 」
◇◆◇
【 天の知識の件 】
島津姉妹、果心居士が合流した後、俺達日の本の将と月様率いる旧董卓軍の将と会合を開く。
議題は、『日の本の知識導入と融合化』を如何に行うか?
はっきり言えば、日の本の政治や軍事の知識を、この世界で上手く活用出来ないかと言う相談話に過ぎない。
こちらが強制的に取り入れても、この世界に合った体制で行わないないと機能はしない。そのような事がないように、事前に相談して改善
する所は改善、削除する所は削除しますよ、という具合。
第一回目の話し合いで決まったのは、『兵農分離』と『狼煙』。
『兵農分離』は、信長主体で動き、常備兵の確立を推進。
農地を持つ家の長男以外の男は、働き口が少ない。
そこで、『 董卓軍に参加しませんか? 給金払いますが、命懸けの仕事ですよ? 』と、勧めてみる。
『 手柄を上げると手当て付きますよ! 』も一言添えて。
そんな訳で、数多くの従軍希望が訪れてくれたが、城の備蓄との相談のため、多くて数百人がやっと。
この者達が、『伏竜の軍勢』の実質最古参になるが、それは後の話。
『狼煙』は、武田勢が得意とするため、信玄殿、信廉殿、昌景殿が主体で動く。 今回は、始めての試みのため、『狼煙』と使者の両方で運用。慣れれば、領国全域に広げる予定。
因みに、雨天時の場合は、鐘や太鼓を使用。 雨が降って駄目なんて軍事では役に立たない。 いつ何時でも使用可能が緊急時に役立つ
のだから…………。
『狼煙』から上がる煙の数は、一つ。 一つに付き賊役千人規模。最大四つまで表示可能。 ……設置場所と費用の都合でこんな具合。
後は、色を付ける方法や音の合図を変えるとか、色々ある。
ついでに、試験運用で『鐙』、『鞍』も制作してもらい、着用中。
これは、第二回目の会合で挙げるため、正式採用されていない。
だけど、事前に話をしたら、月様達が食い付き質問攻め。
そんな訳で試作品を作り、試した結果の感想が…これだ!!
『 何故、早くこんな良い物を言わないのだ、馬鹿者! 』
『 こりゃええな! 次の戦場が楽しみや!!! 』
『 ………………うん。 ……凄い………楽しい! 』
『 すっっごく、いいです! 体勢が楽ですし!! 』
『 へぇーー まだ、こんな知識隠してたんだ…。 もっと、早く言いなさいよ! 馬鹿!!! 』
………兎に角、気に入ってくれたようなので、導入しよう。
◆◇◆
【 黄巾賊との戦いの件 】
今回、敵は約千人。 董卓軍は約三百人。
将は、大将が俺。 後は、霞、恋殿、義輝、昌景殿。
『狼煙』が上がったのを確認した将達が集まり、出発するのだが、
何で霞と恋殿がいるのかと言うと………
霞「 当たり前やん! この馬具を付けたウチの活躍、よく刮目してみい! 何時もの倍の働きが、できそうや!!! 」
恋「 恋も……楽しみ。だけど……赤兎が…ちょっと嫌がる…… 」
と、言う事で来たわけだ。
★★★★
〖 黄巾賊大将視点 〗
街の門付近にて
「 ヒャハァァァァ、門なんぞ邪魔だ! ブチ壊せ! 」
「 開けろ開けろ開けろ開けろ開けろ!!!」
頭に黄巾を巻いた俺達は、出入り口の門を攻める! こんな門、この人数を前にすれば、すぐに開門できるわ!!
黄巾賊A「 いや~、大将! 頭いいですね! 今世間で流行っている黄色の布を被ると、こんなに同士が集まりましたよ! 」
黄巾賊大将「 当然だろう! 各地で蜂起していると言う『 黄巾賊 』は、『 黄色の布を被れば、君もあなたも黄巾賊 』というぐらいお手軽な方法だからな。それに、『 張角様万歳! 』を三回繰り返すと素敵な軍勢に変化する特典付きだぜ! 」
全くありがたい世の中だぜ! 張角様々よ!
ほんの十数人の賊の集まりだった俺らが、話した行動を実践すれば、見よ! この人数! ハハハハ!! 笑いが止まらねーや!!!
黄巾賊B「 た、た、大将! 大変だ! 太守の軍勢がこちらに向かってきてると報告が!!! 」
黄巾賊大将「 なにぃ! 俺達がここを攻めて、まだ少ししか経っていないぞ?! それなのに、もう来やがったていうのか? くそっ!
……………で、官軍の数は? 」
黄巾賊B「 三百人ぐらいだそうです! 」
黄巾賊大将「 は? 俺らの軍勢は千人以上いるんだぞ? 余程自信があるか、ただの命知らずのどちらか、か。 よし、野郎共、街の前に展開するぞ! 」
黄巾賊達「 おおおっっっしゃゃゃああぁぁぁ!!! 」
そう言えば、天水の官軍に「 伏竜の軍勢 」だかいるらしいな。
コイツらがそうなら、戦った情報を黄巾賊の上官に流せば、褒美をたんまり貰えるというものだ! あわよくば討ち取り、駄目なら俺だけでも逃げよう…………………ヘヘヘヘヘヘ。
☆☆☆☆
〖 颯馬視点 〗
颯馬「 ………そうか。黄巾賊は、千人を越える人数を街の目の前で展開。 …陣形は? ふむ…無形か。 ただの烏合の集団だな 」
報告に来てくれた兵に労いの言葉を掛け、俺は策を指示する。
颯馬「 大将である俺が、賊に一当てします。その際に、霞は左に、恋殿は右に撤退して下さい。 俺が合図の旗を振りますので、お二人は左右より、賊の横腹を突いて下さい! 」
と、言って借りてきた「 董 」の牙門旗を見せる。 まだ衣装とかお金が足りないから作れないから。 だけど、この世界だと大将旗が欲しいようだから、早めに用意しなくては…………。
颯馬「 昌景殿は、戦を開始して少し後に、俺の隊より離れて下さい。 敵が烏合の集なら、大将格は人望がないため、不利になれば数人で逃走するでしょう! その時に討ち取るなり、捕らえるなりお願いしたいのです! 兵の数は、昌景殿が二十人、霞、恋殿が、各百人大将の俺が八十人の編成で行きます! 」
霞、恋、昌景「「「 承知( コク )」」」
颯馬「 義輝は………… 」
義輝「 颯馬を守護せよと、月様より仰せ仕っているのを、忘れたのかの? 颯馬…………? 」
颯馬「 ……………俺の護衛をおねがいします………… 」
義輝「 承ったのじゃ! 」
……………………。
………………。
…………。
颯馬「 全軍! 突撃!! 」
ーーーーーーーー
〖 義輝視点 〗
黄巾賊「 官軍が来たぞ!!! 」
黄巾賊「 けっ、ごっつい男かと思えば、色っぽいネェチャンじゃないか!! オイラが倒して……ーーー 」
ポーーーン!
義輝「 ふん! 身の程をわきまえろ! 」
わらわの前に現れた賊の首を一閃すると、簡単に、首が飛んでいく。
生前の下品な笑顔を張り付けたままに…………。
おっ? 霞達が左右に分かれて離れたか………。 それでは、少し本気で行くのじゃ!!
黄巾賊「 ギャー!? 」 「 お、俺の腕、腕があぁぁぁ!! 」
わらわが進むたびに、賊の手、腕、首、足と斬られて、辺りで断末魔を上げて倒れ込む黄巾賊の者共。
お前達も、元は農民の出のはずが、なんでこういう行いを成すようになったかは、知らぬ! だが、悲しみを欲望にすり替えて、他の民を襲おうなど、わらわが許さぬ!!
ーーーーーーーーーーーーー
黄巾賊「 子供がこんなとこ来るな!と説教しても、斬る時は斬るがな!! でええぃぃぃぃ!! 」
昌景「 …どこの世に行っても、同じように言われるか。 まっ、言った奴を斬る展開も、同じなんだが………… 」
昌景殿は、刀を居合いのように使い、敵を斬る!
黄巾賊は、胸の部分を一文字に斬られて、倒れた。
「 はっがっ! 」 ブシューーーーー!!!
昌景「 ……さて、そろそろ行動に移すかのう 」
昌景殿は、手勢を率いて一時離脱、俺は、兵に命じて旗を振らせた!
そして、左右より騎馬隊の突撃が敢行された!
ドカドカドカドカーーーーーーーー!!
霞「 オラオラ、道をあけぇぇぇぇぃぃぃ!!! 」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
恋「 ………………………………………………邪魔! 」
「 し、死にたくーーーーギャー!! 」
「 た、た、たいしょ………… 」
ブシューーーーー!! ザックッ!! ポーーーーーーン!
霞の騎馬隊が、神速の噂通りに馬術を操り、敵を斬り刻む!
霞「 ハハハ! いや~やっぱり凄いわ! 踏ん張りが効く分、より速く刃を返せるから、隙が少なくて助かるわ! 」
恋殿は騎馬隊を自在に操り、縦横無尽に移動する。
しかも、敵の奮発力が上がる直前を叩くので、敵の勢いが落ちる。
恋「 …気合い、入る! ……………どけ! 」
おぉ! 敵が高く打ち上げれていく!
でも、人ってあんなに軽かったか? まるで人形のようだ。
…………………………………………。
……………………………。
千人以上居たという黄巾賊も、今では数十人。満身創痍だ。
黄巾賊C「 こんな、ところで、死ねん! 死ねるものか! 」
黄巾賊D「 て、天和ちゃんに、あ、会うまで! 耐えろ、オレ!」
うん? 最後の一握りの抵抗が、やけに激しい…。 何か事情を知っているのかも知れない……。
颯馬「 誰かある! 伝令を頼む!! 」
伝令兵「 はっ! ここに! 」
颯馬「 張将軍、呂将軍に、あの生き残りの黄巾賊達を捕獲せよ!
と、伝令を頼む! 」
伝令兵「 はっ、承りました! 」
★★★★
〖 黄巾賊大将視点 〗
俺は、混乱した際に、逃げた、逃走した。………いや、戦術的前進を行ったまでの事。 全力前進で此処までたどり着いた。
ハー、ハー、ハー ッング! ハーーー!!
黄巾賊大将「 く、くそったれが!! 何だあの強さは?! 」
俺は、死んでならん大将だ! 兵はまた集えばいくらでも集まる! だが、大将の変えは無い! 俺さえ生きていれば……………!
おっ! 逃げる方角に、見慣れねえガキが、立派な馬を連れて歩いていやがる! へっ、運がいいぜ、ガキから馬を奪うか!
黄巾賊大将「 ガキィィ! 死にたくないなら、馬をよこしな!」
???「 ウワァ、アブナイ! 」
俺が血に染めた剣を頭上に上げると、ガキは馬から少し離れた!
黄巾賊大将「 さて、もらうとするぜ! 」
馬に跨がると見慣れねえ馬具が付いてやがる! こりゃ、土産が増えた、高く売れるぜ!! 俺は、嬉しくなり、つい叫んだ!
黄巾賊大将「 ハハッ! 俺はツイてるぜ! あんな化け物連中から逃げ出し、こーんな良い馬をもらっちまったからなぁぁぁ!! 」
??「 ………誰も、お前みたいな外道に渡すとは、申し渡してはおらんがな…………と! 」
トッ! クルッ! ストッ!!
なんだ? さっきのガキが、後ろに飛んで乗り込みやがった?!
黄巾賊大将「 な、なんだってえんだ! おっおまえはよぉぉ! 」
昌景「 儂か? 儂は、お前の仲間が相手になっている『化け物』の一人よ! お前のような輩など、殺した方が良いんだが……。 」
ゴッッ!! 「 がっっ!! 」
〖 昌景視点 〗
儂は、この『 馬鹿 』の後頭部を、強く打ちつけ気を失わせ、颯馬の元に戻る。 『 馬鹿 』から情報を得るために。
昌景「 …まるで、昔のお館を見るようだったわい……… 」
ーーーーーーーーーーーーーーー
颯馬「 昌景殿、お疲れ様でした! 」
昌景「 他愛も無い敵であった………。まっ、こんな敵ばかりなら我らも助かるが、そういう訳にもいきまいて……… 」
昌景殿は、馬の上から俺の言葉に反応して、手を上げる。
俺達は、最後の敵を捕縛して、天水に向かう準備をしていた。
これが終わったら、月様へ報告しなければ……………。
☆☆☆☆
??「 流石、愛しの颯馬様……。 この地に来ても変わらずの知謀の冴え、凛々しき動作、厳しくとも優しい声……。 あぁ、早くお会いしたいのに………『 老師 』の制止がなければ…………!! 」
颯馬の居る場所より、少し遠い例の街の城壁から望む影。
『 元 日の本の姫武将 筒井順慶 』が、顔を赤くして、モジモジしながら城壁に手を着けて、様子を伺う。
順慶「 ………それにしても、颯馬様の傍には、また多くの穢わらしい女が寄り添って! 本当に憎らしい!!! 」
ズッ、ズッ、ズボッ、バキン!
………そのまま、手に力を込めると、堅い城壁に指が食い込んだ!
順慶「 あらやだ。 まだ『 力 』の循環に慣れていないようですわ。 こんな姿を颯馬様に見られたら、はしたないですわね 」
スッと順慶が動くと、一陣の風を伴って、陽炎のように消えた……………。
◇◆◇
【 颯馬 布石を打つの件 】
天水に帰還後、月様達に報告。
颯馬「 敵の大将及び少数の捕虜を捕らえました。 大将は昌景殿の報告によれば、全くの愚物。尋問の後、公開処刑を望みます。 捕虜は、とても黄巾賊と思えない立ち振る舞い、何かあると思われますので、治療と食事を与えた後、私が尋問に行こうと思います 」
月「 …わかりました。 賈駆と相談の上で行いましょう。 ご苦労でした 」
霞「 ……………………。 なんやねん、これ? 」
歳久「 練習ですよ、霞殿。 董卓軍が主で『 天の御遣い 』が徒であると言う事を示すためですよ 」
霞「 ふーん、成る程。 わざわざ形式張ったやり方で報告をしてか? そないなんで信じるタマや無いと思うがな………? 」
歳久「 おや? どこの勢力か分かるのですか? 」
霞「 馬鹿にしなさんな。 漢王朝あたりやろ? こーんな格式張ったのを喜ぶのは、そこだけや! ……いや、袁家もそーやろが、場所が遠すぎるさかいな 」
歳久「 そうですね。 後、もう少しで黄巾の大規模な戦いが始まり、諸国が集まって戦う時があります。 そんな時にいつもの董卓軍を見て、噂通りなどと言われると、月様達が反逆者にされてしまいます。 そんな事がないように、慣れてもらう必要があるのです 」
霞「 やらんよりは、マシってことか。 わかったで 」
★★★
報告終了後、俺は部屋に戻る。
颯馬「 ……とうとう『 黄巾賊 』が現れたか 」
俺は、考えていた。 三国志に似たこの世界の事を……。
貂蝉は、俺達が元の世界に帰るには、銅鏡が導いた乱世の世を平定
すれば帰る事が出来る、と言う。 また、この世界の元は『三国志』を起点にしていると。 それなら事象はどうなるか?
それが、一番気にかかった。
もし、『三国志』通りに事が起これば対策を立てやすい。 しかも、事前準備に時間を掛けれる。軍師としては、答えを知ってその対策を立てるようなモノだから、もの凄く楽だ。
だけど、もし別の事象が起きたら? 俺達がこうして入ってきた事事態が別の事象故、多いにあり得ることだ。
だが、第一の事象、『 黄巾賊の出現 』が現出された。
このまま行けば、黄巾賊の頭首『張角』を倒すことになるのだろう。
そして、その後の事象は、『 反董卓連合による戦い 』 だ。
あの心優しい月様がそんな事を為さるはずがないが、誰かの謀略、権力争いで被害を被る可能性がある。
今のうちに準備をしておこう。
…いつの間にか、大切になったここの人達、この場所を守るために。
◇◆◇
【 闇に蠢く影の件 その弐 】
〖 洛陽にて 〗
張譲「 ……早くも一月過ぎるか。 」
久秀を、我が手許で女官として雇い入れ、大分日が過ぎた。
はっきり言って、久秀は優秀だった。
蛮族の者とは思えない、優雅な物言い、礼儀にかなった立ち振る舞い
そして、膨大な宮廷儀式の知識、それに伴う鑑識眼。
久秀『 張譲様、そこは、その振る舞いでは無礼になります。 ここは、このように直さなければ……… 』
同国の長年仕える儂ら官吏より、異国の者である久秀の方が、何故か王朝内の行事に詳しく、いろいろと示唆してくれた。
久秀「 ……ふっふっふ! いい仕事してるわね! 張譲様、これは高値で売れますわ?! 久秀が欲しいぐらいな物だもの…… 」
美意識も高く、久秀が目を付けた物は、どれも売る時は高値で売れて儂の懐に入る。 実に掘り出し物の人材だ。
だが、儂の感が囁くのだ。久秀には、別の才能、別の顔、別の…儂の性癖を満足させてくれる予感が…………!
だが、この一月、様子を見たが別に変わりはなかった。
監視の目も付けたが、報告は無し。 儂の予感が違っていたのか?
……いや、儂の宦官としての感は、まだ健在だ! きっと、何かあるに違いないのだ!! 私を満たしてくれる何かが!!!
ーーーーーー
ある日の夜遅く、儂は屋敷に帰ってきた。
霊帝の世継ぎ候補の問題で、喧々囂々と大将軍何進とやりおっていたら、いつの間にこんな時になってしまった…………。
儂は、玄関から入り部屋へと向かう。
ん? 久秀の部屋を通ると、ほのかな灯台の灯りが見える。
気になった儂は、入り口より中を見ると、驚愕した!!
部屋の中に上半身裸になった男達が数人、恍惚の症状で久秀を見詰めている。……中には、監視を命じた男も混じっているではないか!
久秀「 いいわね? 久秀の命令は絶対よ。 …もし、約束を守らないなら、玩具として興味ないわ! 話掛けることも命じる事もしない。ただ無視するだけ……… 」
男1 「 そ、それだけはお許しを! 」
男2 「 久秀様に、貶され、落としめられるのが、我が楽しみ! 必ず役目は果たしますので………………! 」
監視の男「 久秀様! 私は、張譲様に上手く報告しております! どうかご褒美を賜りたく存じ上げます!! 」
久秀「 ………そう、立派ね。こちらに来なさい。褒美を与えて上げる。 そうね、こんなモノでいいかしら……… 」
ドン! メッキョ! 「 アアァァァァァ!!! 」
監視を命じた男が、久秀に嬉しそうに顔を向けると、その顔に久秀が踏みつけたではないか!
くっ! 至高の喜びを味わう男の顔が憎たらしい!!!
久秀「 ………いい加減、出ていらしてはどうです? 張譲様? 」
何、知っていたのか? ……おずおずと入る儂に、驚く顔が数名とにこりと笑う久秀。 いや、いつもの顔とは違う別の顔だ?
儂は、表情はそのままだが、内心ドキドキしている。
久秀「 張譲様。今、申し上げます事に納得していただければ、この場所で行われる行為を張譲様にもして差し上げます。 納得出来なかったのでしたら、この部屋を出て下さい。 久秀はこのまま消えますので…… 」
久秀が申し渡したことは三つ。
① この部屋の行為は、絶対の秘密である。
② この部屋では、立場は久秀が最高位であること。
③ この部屋で命じることは、必ず行うこと。
…………私は、当然、その要求を……………飲んだ!!!
今まで、人に打ち明けれる事が出来なかった性癖が、ここでは、解放できるのだ! なんと、素晴らしい話ではないか!
私は、こうして、久秀の玩具になった。
この日、人である事を、辞めたのだ…………。
◆◇◆
【 模擬戦の件 その壱 】
〖 天水城の練兵場にて 〗
恋「 ……義輝、相手して、欲しい……… 」
義輝「 うむ、暴れ足りない所じゃ! わらわも頼みたい! 」
こんな、二人の会話から始まった勝負、野次馬が大勢集まった。
小太郎「 颯馬様、義輝様は強いのですか? 」
颯馬「 かなり強いけど、恋殿に勝てるかはなぁ? 」
ねね「 恋殿は、強さはこの国随一! 負ける筈がないのです! 」
確かに、この前の戦で体験した時は、はっきり言って人外の強さ。 いくら義輝様でも、無理が……………。
信長「 私では無理だが、義輝には「 一の太刀 」があるから、勝てるのではないか? 」
謙信「 私も恋殿の強さを見ていないため、分からないが、義輝様のアレは驚異だ。 一回お相手して、酷い目にあった! 」
ふむふむ。 これは実際やって見ないと、わからないか?
詠「 …まったく。 帰って来たと思えば、今度は模擬戦? 元気があるのはいいけど、怪我なんかしないでよ? 月が悲しむから… 」
恋「 コク! 」
義輝「 わかっておる! 」
恋殿は、模擬戦用奉天牙戟を用意して、それを肩に乗せる。
対する義輝様は、中段の構え。
義輝「 行くぞ、恋! 」 恋「 来い! 」
義輝様が袈裟切りで攻める。俺の目には、残像が写る程の速さなんだけど、恋殿は簡単に避ける。
次に恋殿が、横から下、一旦手許まで引いての三段突きを行ったりするが、義輝様は、交わしたり、模擬刀を上手く操り、衝撃で折れないように流す。
そんな事を繰り返して三回目ぐらいに義輝が戦法を変えた!
義輝「 流石に恋相手には、このままでは負けるの! 」
恋「 本気……見せる!! 」
どちらも、気が高ぶるためか、二人のまわりが揺らめいて見える!
義輝「 では、行くぞ! 」
そう言った義輝は、中段の構えを取ったまま、動かない。
恋「 ……! 」 ブンブン!!
急に、恋殿が後ろに向かい奉天牙戟を振るう! 別に誰もいない。
ブン! ブンブン!
恋「 ……? ……………! ………?! 」
恋殿が、左側横や後ろを振るが、やはり誰もいない。
恋「 …おかしい。 殺気はしたのに……。攻撃すると消える? 」
義輝「 『 秘剣 一の太刀 』 」
恋「 ……! ! ! ! ! 」
ヒューン! ピタッ
義輝「 勝負ありだな! 」
恋「 ………………負けた 」
詠「 勝負あり! 勝者 足利義輝! 」
勝った? 義輝が…………?
義弘「 ああぁぁっっ! また、アレ使ったの! 一の太刀! 」
謙信「 どうも、そうらしいな。 見ていた限り間違いない 」
信玄「 『 景虎 』が言うのでは、間違いないのでしょう 」
謙信「 信玄! いい加減、その名を呼ばないでくれ! 」
信廉「 姉上、私達は仲間なのですから、景虎殿を景虎と呼ばないようにしなけれ…………! すいません! 謙信殿!! 」
謙信「 うんうん、訂正するように努力してくれるだけでも、有り難いよ…… 」
霞「 ほぉぉぉ? 面白い話やね? 後できかせてぇぇなぁぁ! 」
☆☆☆☆
ねね「 恋殿!どうしました? 相手が居ないのに戟を振って! 」
恋「 ……攻撃が来た! 最後、義輝が前に居るのに、四方から刃が襲いかかってきたから…………… 」
義輝「 あれに反応出来るとは、さすが『 呂 奉先 』じゃ! 」
恋「 ??? 」
義輝「 アレは、『 闘刃 』っていうて、目に映らない闘気の刃。
アレが一の太刀の基本になる物で、達人になれば成る程、反応しやすいらしい。 最後は、四方に闘刃を配置したが、全部気付かれるとは
驚きだった。 また、手合わせを頼むぞ! 恋!! 」
恋「 ! コクコク!! 」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーー
あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
武田、織田を出せば必ず行った業績が付き物ですので、狼煙と兵農分離を出しました。 調べてみたら、農民の徴兵行っていたようなので。
あと、「 一の太刀 」の設定は、ある漫画から使わせてもらってます。「 一の太刀 」は実在する技術ですが、どういう物かは、まったくの不明ですので、それなりに説得力ある設定の物を使用しました。
また、宜しければ、読んで下さい。
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義輝記の続編です。宜しければ読んで下さい。一部誤字ありましたので、削除しました。