No.631021

太守一刀と猫耳軍師 最終話

黒天さん

泰山に攻め入ります。その結末は……

2013-10-24 20:58:33 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:8475   閲覧ユーザー数:6644

戦の準備が整うと、俺達は早々に泰山へと向かった。その道すがらに呉の孫権も合流する。

 

兵達に出した通達は下記の通り。

 

「仇敵、于吉を討ちに行く。

 

これは北郷一刀の私闘である。

 

戦いたくないというものを咎めはしない。共に行ってくれる者を求む」

 

これを原文として、魏、呉、董卓の者達にはそれぞれ

 

魏と北郷の戦を穢した者を討ちにゆく戦いである事。

 

周喩をそそのかし、計略により平穏を無にした張本人である事。

 

月の両親を人質にとるよう、そそのかした者である事。

 

をそれぞれ追記してある。

 

古くからの北郷軍には、俺の暗殺を企てた張本人だと言ってある。

 

集まった兵は霞の予想を超えて3万。

 

本当はもっと居たのだが、あまり数が多くても身動きが取りづらい事もあり、それ以上は断った。

 

情報にあった泰山の城塞へが見えてくれば、兵達は一斉に攻め上がっていく。

 

もちろん、数の差が十倍あろうとも伏兵等への警戒は怠らない。警戒を担うのは紫苑を筆頭とした北郷の軍。

 

兵達の士気は非常に高い。

 

軍のほとんどが古くからの兵達だというのもあるのだろう。

霞、華雄の隊は、元の主である月の両親の仇を討つため、怒りに燃え

 

華琳の隊は顔に泥を塗った于吉を許すまいと雄叫びを上げる。

 

華歆の隊は、華歆と子供の気持ちを踏みにじった者の糾弾を叫び、孫権は、平穏を壊した者を許さないと吠える。

 

俺を筆頭にした元からの北郷軍の者はかつて曹魏に対して見せたような、激しいながら、冷静さを見失わない静かな怒りを見せていた。

 

対する相手の白装束の群れは3千。感情を持たない機械のように、おそれなど無いかのように突き進み、攻撃を仕掛けてくるが

 

あるものは袋叩きにされ、あるものは多数の剣に串刺しにされ、次々に数を減らしていく。

 

おかしな事に、城塞に立てこもってしまうような様子はない。

 

まるでこちらを誘っているかのようにうってでてはやられていく。

 

兵法を知らないわけではないだろうに、と、

 

策を警戒したがそれは杞憂に終わったようで、順調にその城塞の制圧は終わった。

 

その関をくぐり抜け、先に進めばそこには荘厳な景色が広がっている。

 

確かに社、というような感じだ。

 

道士だか仙人だかには似合いそうな場所ではある。

 

多くの兵が入り込める場所でもなさそうだったので、それぞれに精鋭を引き連れ、社の中へと突入していく……。

「やはり来るのが随分と早いですね、北郷一刀」

 

夢のなかで見た、白装束の男、于吉が居た。その傍らには巨大な銅鏡。

 

「于吉!」

 

「この世界の終焉を止めに来たのですか? 『また』」

 

「終焉? 何のことだ? 俺はお前を殺しに来た」

 

はっきりと、殺すと宣言し、于吉へと近づいていく。

 

俺の背後には、霞と華雄、華琳、孫権が控えていた。

 

その後ろには、桂花達と華歆、紫苑、愛紗や鈴々が居る。

 

「く、くくく……、ははははは」

 

于吉は何がおかしいのか、何やら愉快そうに笑う、それが癪にさわり、俺は鉄扇を抜いた。

 

「いやはや、まいりましたね、あなたは何も知らないようだ。

 

まぁそれもまた一興でしょう、詳しく外史について教えて差し上げても良いのですが、あなたはそれを是としないでしょう?

 

それにこの外史のシナリオはそうなのでしょう、おそらく私の死を持って幕になる。

 

そんなあなたに私から良い物をあげましょう」

 

そういって于吉は何かを俺に投げてよこした。俺はそれを左手の鉄扇でもってはたき落とした。

 

「おやおや、いいのですか? ソレを弾いてしまって」

 

「お前の言葉に聞く耳を持つこと自体が間違いだと俺は思ってる、だからその口を早々に塞ぎ、二度と喋れないようにする!」

 

空いている右手で小刀を2本続けて投げつける、それを于吉は直立不動のまま弾いて見せた。

「いくら力を存分に使えないとはいえ、この程度の事はできますよ。

 

さぁ、あなたに私を打ち崩せるでしょうか?」

 

「一人で無理ならみんなで行く。お前と一騎打ちをしてやる義理はない!」

 

俺がそう叫べば、まず華雄と霞が動く。

 

「ウチらもお前への恨みつらみはよーけあるからな、一太刀ぐらい浴びてもらうで?」

 

「全くだな」

 

飛竜偃月刀とその戦斧を振り上げ、雄叫びとともに2人が突っ込んでいく。

 

「全く、血の気の多い人達ですね。まぁ、三国志の英傑であればしかたのないことですか」

 

2人が同時に放った斬撃を于吉はその両手でもって受け止める。

 

手に持っているのは小刀か。

 

「術はあまりつかえませんが、左慈と違って身体能力は据え置きでして……、

 

曹操殿の一撃程度なら簡単に躱せるだけの力はありますよ?

 

ふふ、終焉を前に余興の一つでもせよ、とのことでしょうかね」

 

「できるものならやってみなさい!」

 

華琳が走り、その大鎌の一撃を振るう。両手を霞と華雄に塞がれた于吉はそれを蹴りで返す。

 

「ウチと華雄と曹操と、3人相手にしていつまで余裕かましてられるやろな!?」

 

「手加減はせん、続けて行くぞ!」

 

華雄が救い上げるように斧を振り上げ、対照的に霞は上段から袈裟懸けに切り裂くように偃月刀を振るう。

 

それを于吉は受け切って見せるが、反撃は行わなかった。

愛紗と鈴々はといえば、どうにかその戦いに加わりたいが流石に邪魔になると遠慮しているようで、桂花達の傍から離れない。

 

紫苑は弓を引き、すきあらば射撃をおこなえるように用意をしている。

 

俺はといえば、3人が于吉と大立ち回りをしているすきに、気配を殺し、于吉の後ろ側へと移動していく。

 

孫権は、俺が討ち果たすのを見届ける、と、合流した際に言った通り、戦いを静観している。

 

「3人同時にさばくて、お前の身体能力は呂布っち並かい!」

 

霞がどくづきながら3度続けて于吉に対して突きを放つ。それはことごとくその小刀に受け流される。

 

「ふふ、でもそれも無駄なあがきよ、すぐその首を落としてあげるわ!」

 

華琳は他の2人の邪魔にならぬよう考えてのことか、なぎ払う事はせず上下への斬撃を主にして于吉を牽制し、隙を作り出す事に主体を置いているようだ。

 

「ハァ──ッ!!」

 

華雄が大上段からの一撃を繰り出せば、それを受け止め、それに合わせるようにして霞が同じように上段から切り、再び于吉の両手を塞ぐ。

 

「やれやれ、それでは間に合いませ……」

 

言葉の途中で、于吉の首から小刀が生える。

 

「終わりだよ、于吉」

 

背後から気配を殺し、忍び寄ってその首に小刀を突き立てて、すぐにそれを手放し、大きく後ろに飛び退く。

 

不意打ちをうけて于吉の動きがとまった所で、3人が一斉に動き、

 

霞が胴を袈裟懸けに切り裂き、華雄がその腰へと戦斧を叩きつけ、華琳の鎌がその首を切り落とした。

「残念ながらタイムオーバーです、さぁあなたは正史に戻るのでしょうか、それとも新たな外史に導かれるのでしょうか?

 

ふふ、あの鏡を受け取っていれば、望む外史を描けたかもしれないというのに……」

 

胴体から離れ、鈍い音を立てて床に転がった于吉の首がなお言葉をしゃべる。

 

「一刀、あれ!」

 

桂花の指差す方向を見れば、于吉に投げ渡されて俺がはたき落とした物……。

 

小さな銅鏡が床に転がっている。それは真っ白な光を放っていて。

 

何故こんなに目立っているのに誰も気づかなかったのか……。

 

「言え! コレはなんだ!」

 

于吉の首にそう問いかけてももはや何も喋らず、俺はそれを呆然と見る他なかった。

 

「逃げるで! なんかヤバイ気ぃする!」

 

霞の言葉に俺達は出口に向けて走る。それでもその白い光から逃げる事はかなわず……。

 

俺は光に飲み込まれてしまった。他の皆がどうなったのかもわからない。

 

光に飲み込まれると急速に意識が薄れていき……。

 

真っ白な光の中に、俺の意識は飲み込まれていった。

あとがき

 

どうも黒天です。

 

今回で、『太守一刀と猫耳軍師』タイトルでの連載は終わりになります。

 

次回は……。

 

一刀の記憶引き継ぎ+二周目特典で能力強化して、強くてニューゲームの2周目(一部キャラにおいて、好感度や記憶の一部引き継ぎあり)をやるかもしくは

 

原作のエンディング後にあたる現代編をやるか、のどちらかを考えてます。

 

個人的には二周目を書きたいなー、なんて思っていたり。話しの構想も頭のなかではできていたりします。

 

さて、このシリーズを最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。

 

次回作の投稿時期ですか? 明日とかかもしれないです。

 

要望やネタ提供があればお早めにどうぞ、ということでお願いします


 
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