No.622070

一刀の晋王転生録 第六章十二話

k3さん

成都に帰還した劉備に待っていたものとは?

2013-09-23 21:31:09 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2761   閲覧ユーザー数:2269

 姓:司馬 名:昭  性別:男

 

 字:子上

 

 真名:一刀(カズト)

 

 北郷一刀が転生した者。

 

 

 

 

 姓:司馬 名:懿  性別:女

 

 字:仲達 

 

 真名:理鎖(リサ)

 

 一刀と瑠理の偉大なる母。第三章で死亡した。

 

 

 

 

 姓:司馬 名:師  性別:女

 

 字:子元

 

 真名:瑠理(ルリ)

 

 母を目標にする一刀の姉。一刀を異性として愛す。

 

 

 

 

 姓:張  名:春華 性別:男

 

 真名:解刀(カイト)

 

 一刀と瑠理の父にして、一刀の師。第四章前編で死亡した。

 

 

 

 

 姓:王  名:元姫 性別:女

 

 真名:美華(ミカ)

 

 一刀に異常なまでに執着する一刀の妻。

 

 

 

 

 姓:鄧  名:艾  性別:女

 

 字:士載

 

 真名:江里香(エリカ)

 

 後の司馬家軍の宿将。司馬家に対して恩を感じている。

 

 

 

 

 姓:賈  名:充  性別:女

 

 字:公閭

 

 真名:闇那(アンナ)

 

 司馬家の隠密。一刀のために働くことを生きがいとする。

 

 

 

 

 姓:王  名:濬  性別:女

 

 字:士治

 

 真名:澪羅(レイラ)

 後の司馬家の水軍の将。一刀を気に入り、司馬家のために戦う。

 

 

 

 

 姓:司馬 名:望  性別:女

 

 字:子初

 

 真名:理奈(リナ)

 

 一刀達親戚で、一刀と瑠理とっては義姉という立場。

 

 

 

 

 

 

 姓:杜  名:預   性別:女

 

 字:元凱

 

 真名:綺羅(キラ)

 

 一刀とは同期。親同士の仲は良くないが、当人達の仲は良い。  

  第十二話

   「壊れる心」

 

 

 陸遜は孫権の下に帰還し、彼女に報告する。

 

 石兵八陣の事、そして甘寧の死亡の事を……。

 

「! 思春が……」

 

「はい……彼女が命がけで火計を成功させなかったらこうして勝利を収めることが出来ませんでした」

 

「そうか……後で思春の為に何かしないとな」

 

「……はい」

 

 報告の後、孫権達は建業に戻る。

 

 帰還の最中、孫権は何か異様なものを感じていた。

 

 勝利を収めた今回の戦とケイ州の戦では親しい者達の犠牲によって勝利している。一方、それらの前の戦、合肥での敗北ではそうは

 

ならなかったという現実に。

 

 そう、まるで親しい者の犠牲無しでは勝利は出来ないというような、そんな呪いじみたものを感じていた。

 

(幾らなんでも考えすぎだと思うけど……)

 

 此処に来て孫権もまた、彷徨わざる負えない深い迷路に入り口に立たされていた。

 戦から数日後、劉備は趙雲と共に白帝城から成都に帰還した。

 

(愛紗ちゃん、鈴々ちゃん……御免ね……仇を取れなかったよ……)

 

 彼女は趙雲から敗北を聞かされ、気力が抜けている状態だった。

 

 意気消沈しながら城に戻ると、入り口付近に少女の姿を確認する。

 

(……璃々ちゃん?……)

 

 少女は虚ろな目をしており、沈んでいる。

 

 その姿に劉備は固まる。理由は分からない。だがその姿を見ると、胸がざわつくのだ。

 

 少女は劉備に気付くと、静かに彼女に近づく。

 

「……お母さんは?……」

 

 ただ一言、その言葉で劉備はビクっと身体を震わせる。

 

「そ、それは……」

 

 劉備は口が震え、上手く言葉を繋ぐことが出来ない。

 

「兵隊さんから聞いたの……お母さん……死んじゃった……の?」

 

 その言葉に、その姿に、劉備の震えは大きくなっていく。

 

「どうして、死んじゃったの?」

 

「そ、それは……呉との戦で……」

 

「お姉ちゃんが戦を起こしたって聞いたの……」

 

 しだいに少女は大粒の涙を流す。

 

「どうして戦を起こしたの? どうしてお母さんを連れて行ったの? どうして……」

 

「!? 待て! 璃々!」

 

 趙雲は嫌な予感がして、少女の言葉を止めようとする。しかし少女は止まらない。

 

「どうして……お母さんを死なせたの?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、劉備は思い出した。義勇軍として賊と戦っていた時の事だ。

 ある村が賊に襲われ、多くの村人が死んでいた。村の様子を見ていた劉備は母親の死体のそばで子供が泣いているのを見かける。

 

 子供は泣き叫びながら言った。

 

「どうしてお母さんが死んだの?」

 

「どうしてお母さんが死なくちゃいけなかったの?」

 

「誰のせいでこうなったの?」

 

 子供それらの言葉を何度も繰り返していた。

 

 劉備は村を見ている内にその理由を悟った。恐らく村を守るべき役人が、我が身可愛さに救出行為をせず、見殺しにしたのだと。

 

 劉備は嘆いた。賊を野放しにしている漢の在り方を。そして人を平気で犠牲にして自分だけを守ろうとする役人を。この時彼女は

 

誓った。このような光景を生み出すような人間には絶対にならないと。

 今の少女の姿はかつての子供と同じだった。

 

(どうして璃々ちゃんがこうなったの? 誰がそうしたの?)

 

 本能ではそれは分かっていた。だが認めきれず何度も自問自答を繰り返す。

 

 その間も少女は泣き叫ぶ。

 

「何で!? どうして!? お母さんが死んだの!? みんな! みんな!」

 

 少女はついに言った。

 

「お姉ちゃんのせいで! お母さんが死んじゃった!」

 

 ガシャンという音が聞こえた気がした。劉備の心の何かが崩れたような音が。

 

(あんな人達にはならないって思ったのに! そう誓ったのに! どうして!? どうして!? 私……同じ事をしてる! どうし

 

て!? どうして!?)

 

 劉備は理解してしまう。今の自分は、我が身可愛さに民を見殺しにしていた者達と何も変わらない事に。

 

(私のわがままのせいで……璃々ちゃんをあの子と同じ目に合わせちゃった……)

 

 劉備は絶望した。自分の在り方に。

 

「あ……ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 劉備の叫びが成都に木霊した。

 

 この日以降、劉備は自分の部屋から出なくなり、引き篭もった。


 
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