『少女との出会い』
<荒野>
天気は晴れ、風が程良く吹き、とても過ごしやすいと言っていいだろう。そんな中、2人の旅人は歩いていた。
一刀「あ~いい天気だな~。」
恋「ん(こくっ)。」
2人の旅人、一刀と恋はのんびりと話しながら歩いていた。
一刀「それにしても東へと歩いてみるものの特に何もないよな・・・。」
恋「何か無いと駄目なの?」
一刀「いや、何か無いと駄目って訳じゃないけど・・・・つまらなくないか?」
一刀は恋の質問にそう答える。おそらく恋も共感してくれるだろうと考えて。
恋「・・・(ふるふる)。」
だが、恋は首を横に振った。意外な答えに一刀は少しだけ驚く。
恋「恋は・・・・一刀と一緒だと嬉しい。」
ほんのりと頬を染め恋は答える。それを聞いた一刀は恋の手を握った。
一刀「・・・・・(ぎゅっ)」
恋「あ・・・・。」
おそらく照れ隠しなのだろう。手を握ったまま一刀は恋より少しだけ前に進み、暫く恋の顔を見ずに歩みを進めた。そんな彼を見ている彼女はその暫くの間ずっと笑顔だった。
<村>
暫く歩いていると、一刀と恋は村を見つけた。
一刀「村か・・。恋、ここでご飯食べようか?」
そろそろ昼時だったため一刀は恋に提案をする。もちろん恋はそれを即了承した。
・
・
・
・
・
・
一刀「ん~どうしようかな~?」
一刀は周りを見渡しながら考える。
一刀「点心、ラーメン、炒飯、・・いろいろあるな。」
一刀「恋は何食べたい?」
そう問いながら恋の方を向くと
恋「・・・(じゅる)。」
獲物を狙う獣の目をしながら周りを見渡していた。
一刀「・・・・・・・あの、全部は無理だよ?一つに絞ってね、恋。」
恋「・・・・・分かった(しゅん)。」
明らかに落ち込んでいたが一刀はこれだけは譲れなかった。食費的な意味で。
ごめんな・・・恋。
一刀は心の中で謝罪しながら恋を待った。
恋「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれがいい。」
恋はしばらく考え、ある店へ指を指した。
一刀「あそこ?じゃあ、行ってみようか。」
一刀と恋はその店へと入っていった。
一刀「おじゃましま~す。」
一刀は一声かけながら店を見渡す。中には客はいなくどうやら一刀と恋だけらしい。
女店主「ん?ああ!いらっしゃい!こちらへどうぞ。」
店主らしき女性に席へと誘導され一刀と恋は注文をする。
一刀「え~と、俺は炒飯を。・・恋は?」
恋「・・・恋も炒飯。いっぱい。」
女店主「炒飯2つで1つは大盛りでいいのかい?」
女店主が注文を確認すると、
一刀「いや、大盛りのさらに大盛りでお願いできないかな?」
おそらく大盛りだと足りないだろうしな・・・。
一刀はそう考えながら、意見する。
女店主「・・・失礼かと思うけど、お嬢ちゃん本当にそれだけも食べれるのかい?」
女店主はそう聞くと、恋は一言。
恋「食べれる。」
と呟いた。あまりにも早く答えたので女店主はそれ以上聞かず調理場へと向かった。
そして、だいたい20分くらいだろうか注文した料理が運ばれてきた。
女店主「はい、御待ち遠様。」
一刀「おお~!美味そう!」
出てきた料理は普通に美味しそうであった。おそらく料理人(女店主)の腕がいいのだろう。
一刀「その前に聞きたいこt」
一刀は食べる前にいろいろと聞こうとするが、
恋「!、!!(くいくいッ)」
恋は、早く早くと急かすように一刀の服の裾を引っ張った。
・・・これ以上待たせるのはかわいそうだな・・。
一刀はそう思い、先に飯を食べることに決めた。
一刀「いただきますっと。それじゃあ、恋、食べようか?」
恋「(こくッ!)もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ!」
一刀「はえぇ!そ、そんなにお腹減ってたの!?てか、そんなに急いで食べると危ないから!ほ、ほら、もう少しゆっくりと・・な?」
女店主「おやおや♪」
一刀が恋を心配している中、女店主は2人を見て和んでいた。
そんな時だった。
子供「・・・・ただいま。」
一人の子供が店へと入ってきた。それに気づいたのか女店主はその子供に声を掛ける。
女店主「あら、おかえり。・・・・・で、どうだった?」
子供「・・・・・駄目だった。」
女店主「・・・・・そうかい・・。」
どうやら話を聞く限りこの2人は親子の様だ。一刀はそれを聞きながら一つ気になることがあった。
何かあったな、これは。
一刀はそう思いながら、2人の親子を見る。そして、
ふふ、これは何か面白いことだな。まぁ勘だが。
一刀はすくっと立ち上がり親子に近づく。
一刀「すいません、どうしたんですか?」
女店主「え?」
子供「誰?お客さん?」
一刀「良ければ話してくださいませんか?何か役に立つかもしれないので。」
一刀はどうやら巻き込まれようとしているらしい。突然知らない人に聞かれた子供はどうすればいいのか分からず女店主を見ていた。
女店主「・・・そうだね、何か役に立つかも知れないね・・。」
そう言い女店主が話そうとすると、
恋「・・・ごちそうさまでした。」
恋が炒飯を食べ終わっていた。
一刀「はや!あの量をこの短時間で食べたのか・・。ちゃんと水飲みなよ?」
恋「ん・・・(ごくごく)ふぅぁ、・・・これでいい?」
一刀「ん、よろしい~♪」
一刀はそう言いながら頭を撫でる。一刀と恋がイチャイチャしていると。
女店主「・・・話してもいいかい?」
一刀「あ・・・ごめんなさい。」
恋「・・・?」
一刀が謝ったのを見ると女店主は息を少しはき話し始めた。
女店主「・・・実はね、少し前までこの村はもう少し賑やかな村だったんだよ。」
一刀「へ~、そうなのか。・・・で、今とその時とでは何が違うんだ?」
女店主「それは・・・ある女の子が関係してるんだよ。」
一刀・恋「女の子?」
女店主「そう、あの子は元気の塊みたいな女の子でね?笑顔が素敵な子なんだ。そんなこんなでいつも村の皆を元気づけてくれた・・・そんな子だったんだ。」
・・・そんな子だった、か。
一刀「・・・その子、死んだのか?」
女店主「いや、死んでないよ。・・・・・ただね、あの子の保護者だったじいさんがね。」
一刀「・・・・・。」
・・・おそらく、その女の子のじいさんは亡くなったのだろう。
一刀「・・・何で亡くなったんだ?」
女店主「・・病だったらしい。」
一刀「そうか・・・。その子に両親はいないのか?」
女店主「ああ。・・・その子がまだ物心がついてない時に亡くなったって聞いたよ。それで母方のさっき言ったじいさんに預けられたって・・。」
一刀「・・・てことは、その子はもう・・・。」
女店主「・・・そういうことだよ・・。」
そういうこと・・。
そう、それはその子が天涯孤独ということ。それはまるで・・・。
・・・昔の俺や恋みたいだな。
一刀がそう思っているとふいに服を引っ張られた。
恋「・・・・・一刀。」
恋であった。恋も一刀と同じことを思ったのだろう。その表情は少し懐かしかった。そんな恋の頭を撫でながら一刀は店主に話しかけた。
一刀「・・・店主さん聞きたいことがあるんだがいいかい?」
女店主「?何だい?私が答えれることだったら何でも答えるよ?」
一刀「じゃあ、その子の住んでる場所ってどこにあるか分かる?」
女店主「・・・・分かるけど、聞いていいかい?」
一刀「ああ。」
女店主「その子の住んでる場所を聞いてどうするつもりだい?」
一刀「それは会いに行くからだよ。」
女店主「・・・会ってどうするつもりだい?」
一刀「さぁね。ただ・・・会わないといけない気がするんだ。」
恋「・・・(こくっ)。」
一刀の言葉に恋は頷く。それを見ていた女店主は2人が真剣であることが分かった。
女店主「・・・・・・・分かったよ。それにもともと何か役に立つかもって話始めたんだからね・・。」
一刀「ありがとう。で、その子場所は?」
女店主「村の外れにある山小屋。他には何もないから一目で分かるよ。」
一刀「そうか。・・・じゃあ、恋行こうか?」
恋「ん(こくっ)。」
一刀と恋はお金を払いその山小屋へ行こうとしようとするが一刀は何か忘れ物をしたかのようにあっ!と声を上げた。
一刀「ねぇ、店主さん?その子の名前まだ聞いてないんだけど・・・聞いてもいい?」
確かにこれまでその子やあの子といった感じで肝心の名前を聞いていなかった。
さすがに女の子なんだから名前くらい知ってないと失礼だろう・・。
一刀はそう思っていた。ご尤もなことである様な無い様な微妙な意見である。
女店主「・・・確かに名前まだ言ってなかったね。その子の名前は―――」
どんな子なんだろう?元気の塊って言うくらいなんだから天真爛漫みたいな感じかな?それに皆を元気づけたってことは可愛らしい子なんだろうな~。・・・別の意味でも会いたくなってきたな。何て名前なんだろ?
一刀がその子の名前をわくわくしながら待っていると女店主はその子の名を告げた。
女店主「――――張飛って言うんだ。」
一刀はド肝を抜かれた。
<村の外れ>
一刀と恋は張飛が住む山小屋へと歩いていた。その中、一刀は溜め息を漏らしながら独り言を呟いていた。
一刀「はぁ・・・まさか張飛の名前が出るとな・・。予想すらできなかった・・。」
恋「?・・・どうしたの?」
恋は聞こえていたのだろう一刀の言った言葉に反応した。
一刀「え?あ、いや何でもないよ、恋。早く張飛のとこに行こ?」
恋「?・・・うん。」
恋は少し疑問を持っていたが特に気にすることもなく一刀と一緒に先を急いだ。
それから約5分後、店主の言っていた山小屋らしきものを一刀と恋は見た。
一刀「あれかな?・・行ってみる?」
恋「・・・(こくっ)。」
一刀と恋はその山小屋へと向かった。
一刀「・・・中からは気配がしないな・・。」
恋「・・・?何か聞こえる・・。」
一刀はえ?といいながら耳を澄ます。すると微かだが声が聞こえた。
一刀「確かに聞こえる・・。あっちの森の方からだね。」
恋「ん(こくっ)。・・・行く?」
一刀「ああ、行こう。」
一刀と恋は声を頼りに森へと向かった。
・
・
・
・
・
・
・
???「ハァ!ヤァ!!」
少女は鍛錬をしていた。身の丈を大きく上回る矛を振り回し、鋭い風切り音を鳴らしながえら。
一刀「・・・・あの子かな?」
恋「・・・・・。」
そんな少女を一刀と恋はこっそりと見ていた。少女が張飛であるかどうか少女の力を見て判断しようとしていたからだ。そして、少女の鍛錬を見て一刀と恋は呟いた。
一刀「・・無理してるな・・・。」
恋「・・・無理してる・・・。」
少女は傍目から見たら熱心に鍛錬をしている様だが、少女の目は何かに追われているかの様に切羽詰まっていた。
少女「――ッハァ!・・・タァ!・・・・はぁはぁ、や、やぁ・・。」
少女が矛を振り回そうとすると少女の手から矛がこぼれ、そして・・。
少女「―――――(ばたっ)。」
少女は崩れ落ちた。
一刀「!?まずい!恋、行くよ!」
恋「ん!」
一刀と恋はその少女に近づいて行った。
一刀「おい!大丈夫か!しっかりしろ!!」
少女「―――――。」
一刀は少女に呼びかけ顔を軽く叩く。だが、目覚める気配はまったく無かった。
恋「・・・気絶しているだけだと思う。」
一刀「・・・気絶か。とりあえず寝床に運ぼう。」
恋は頷いた後一刀は少女をおそらく少女の家だと思われる家へ運び寝床に寝かそうと考えていた。
<張飛の家>
一刀「っと、これでよし。あとはこの子が起きるのを待とうか?」
恋「・・・ん(こくッ)。」
恋も一刀の意見に同意のようだ。2人は少女が目を覚ますまでの間この家にいることにした。特にこの家に変わったものは無かったため2人は少女を見つめていた。
恋「・・・・・。」
恋は少女を見ていた。
この子は父様と母様が死んだ時の恋に似てる、一人ぼっちだった恋と・・。
恋はそう考えていた。そして、
・・・恋も一刀と出会わなかったらずっと一人ぼっちだったのかな・・。
隣にいる一刀を見て、彼に寄り添った。
一刀「ん?どうしたの、恋?」
恋「・・・なんでもない。」
そう言いながらも恋は一刀に寄り添って離れなかった。そんな彼女に何か感じたのだろう。
一刀「・・・・(ぎゅう)。」
一刀は無言で恋を抱きしめていた。それに甘えるかの様に恋は寄り添いながら目を閉じた。
一刀「・・・・・・。」
一刀はそれを見届け再び少女に目を向けた。一刀も恋と同じく思うところがあるのだろう。
・・・うん、可愛いな。こう・・・スポーツ少女!てな感じだ。ショートの赤い髪、成長段階の小さなオパーイ、そしてスポーツ少女にとって欠かせないスパッツ!全て、この子をここまで運ぶ時に堪能できました。神様ありがとうございます!て、あれ?この時代にスパッツってあるはず無いと思うが・・まぁいいや、堪能できたし。
一刀は恋とは違いアホなことを考えていた。
それにしても、この子は一体何であそこまで鍛錬をしていたんだ?
一刀がそう考えていると、
少女「ん、んん・・・・・。」
少女は目を覚ました。
少女「・・・・ここは?」
一刀「お、目覚めたか。」
少女「!誰なのだ!?」
少女は一刀を睨む。
一刀「まぁ、落ち着け。ここは・・たぶん君の家だ。」
少女はそう言われ周りを見渡す。ここが自分の家だと分かって安心したのか少女は少しだけ息をはいた。
少女「・・・それでお前らは誰なのだ?」
安心しても少女は一刀たちへの警戒心をまったく無くさず、睨みながら質問してきた。そんな少女に一刀は答える。
一刀「俺たちは、旅人だよ。」
少女「旅人?旅人が何でこんなとこにいるのだ?」
一刀「村の人から聞いてね、ここに張飛って女の子がいるって聞いたから来たんだよ。君が張飛?」
一刀は少女が張飛であるかを確認をした。
少女「そうなのだ。・・何の用なのだ?」
張飛は警戒しながらも問う。
一刀「用というか、君を一目見ておかないと、と思ってね。」
張飛「・・・?」
張飛は訳が分からないといった風に首を傾げる。
一刀「それはそうと、何で倒れるまで鍛錬をしていたんだい?」
張飛「倒れた?・・・あっ。」
その言葉に張飛はやっと何が起こったのかを理解した。
張飛「・・もしかして、鈴々は倒れたのか?」
一刀「そうだね、俺たちが見たときには鍛錬をしていた君が急に倒れたね。ね、恋?」
恋「・・・ん(こくっ)。」
それを聞いた張飛は今まで自分が恩人に対し無礼なことをしていたことに気付いた。
張飛「・・・ごめんなさい。鈴々を助けてくれた人に無礼なことをしてしまったのだ・・。」
一刀「いや、いいよ。いきなり知らない奴が家にいたら、そりゃあ警戒するだろ?」
張飛「でも・・・。」
張飛は納得していないようで食い下がってきた。どうしようかと一刀が考えていると。
張飛「だったら、できる範囲で何かお礼をしたいのだ。」
張飛はお礼をしたいと言ってきた。一刀はそれに対し断ろうと思ったが、あることを思いついた。
一刀「そうか・・・だったら何で倒れるまで鍛錬していたか詳しく教えてくれないか?」
張飛「え・・・。」
一刀はその理由を訊いた。普通に考えても倒れるまで鍛錬をするなんてしないはずだ。倒れてしまっては鍛錬も意味が無いからだ。ならば、それには何かしらの理由があると一刀は考えていた。そして、その理由はおそらく亡くなった張飛のおじいさんが関係しているとも・・。だからこそ、普通に訊いても無駄だろうから一刀はお礼という形でその理由を訊こうとしたのである。
一刀「・・・駄目かな?」
張飛「・・・・・・・。」
張飛はしばし考える。
張飛「・・分かったのだ。」
だが、自らできる範囲でお礼をしたいと言ったため断ることができないこともあり、張飛は素直にその理由を話すことにした。
張飛「・・・おじいちゃんが亡くなる前に言ったのだ。」
張飛「――――強く生きなさい、って。」
張飛は視線を下に向け話す。
張飛「だから、鈴々はもっと強くならないといけないのだ!どんな奴にも負けないくらい強く!」
張飛はそう言い一刀を見た。
一刀「・・・・・・・・・。」
一刀はその言葉を聞き口を閉ざしていた。その姿は普段はあまり見ない真剣そのものであった。
一刀「・・・そうか。・・じゃあ、張飛、俺と戦わないか?」
一刀は突拍子もないことを言った。
張飛「・・・どういうことなのだ?」
一刀「強くなりたいんだろ?だったら俺と戦ってみるのは良いことだと思うが?」
張飛「・・確かにそうかもだけど・・・お兄ちゃん強いのか?」
一刀「たぶん、張飛よりは強いと思うよ?」
張飛「!・・だったら、今すぐ勝負なのだ!表に出るのだ!」
張飛は起き上がり壁に立て掛けてあった武器を取り外へと出る。それに続く感じで一刀も外へと出ようとする。
恋「・・・一刀、どうするの?」
恋は心配したように一刀に訊いてくる。
一刀「たぶんあの子勘違いをしているんじゃないかと思うんだ。だから・・ね。」
一刀はそう言いと外へと出ようとする。
一刀「俺はあの子に教えないといけない。そんな気がするんだ。」
<外>
張飛と一刀は外へと出て、広い場所へと来た。そこは張飛が鍛錬をしていた場所であり、倒れた場所であった。
張飛「・・・・・・・・。」
一刀「じゃあ、始めるか張飛ちゃん。」
一刀がそう言うと張飛は無言で頷き、そして・・・。
張飛「――いくのだァ!!」
張飛は一刀へ一直線に走る。そして、そのまま力任せに武器を振りぬく。
張飛「タァアア!!」
ブゥン!!!
鋭い風切り音がするが一刀は難なく避ける。
張飛「タァア!ヤァア!!ハァア!!!」
休むことなく張飛は振り続ける。一つ一つが凄まじい威力を持っているのが分かるがどれ一つ一刀に当たることはなかった。
クッ!なんで当たらないのだッ!!
張飛は内心穏やかではなかった。目の前の男は自分よりも強いと言っていたがそこらの賊みたいに自分を子どもだからと考えているやつだと張飛は思っていた。だからこそ本気でやり、一瞬で終わらして、いかにその判断が愚かだったか思い知らせてやろうと。だが、張飛は未だに一刀に掠りすらしていなかった。その事実に張飛は戸惑いを隠せなかった。
まさかこいつ、鈴々よりも強いのか?そんな・・そんなはずないのだ!!!
張飛は大振りの一撃を繰り出そうとするが、そこで異変が起こった。
ガシャーーンッ!
張飛が武器を落としたのである。
・・・落ち着くのだ、武器まで落とすなんてよっぽど混乱してるのだ。大丈夫なのだ、鈴々は強いのだ!
そう思いながら落とした武器を拾おうとするが、
張飛「!?」
張飛は武器を拾えなかった。
て、手に力が入んないのだ!?
張飛は武器を必死で掴もうとするが直ぐに落としてしまい、まともに武器を構えることができなくなっていた。
な、何で急に力が入んなくなったのだ!?何が起こったのだ!?
張飛は急に起こった現象に訳が分からず混乱した。そんな状況にも関わらず一刀は特に何もしようとはせず、ただ張飛を見ていた。
張飛「お、お前、鈴々に何をしたのだ!?」
一刀「別に大したことじゃないよ。ただ、避けると同時に気付かれない程度に腕の辺に打撃を入れて腕に力が入んないようにしただけだよ。」
一刀「まぁ、これは張飛ちゃんが事前に鍛錬で疲労を溜めてたから出来たことなんだけどね。」
張飛「そ、そんな・・ありえないのだ・・・。」
一刀は簡単そうにそう言ったが実際それは難しいことであった。いくら疲労していたとはいえ、張飛はそんじゃそこらの賊なんて何十人居ても簡単に倒せる位には強いのである。そんな相手に気付かれず攻撃するなんて余程の実力差がないと出来ないのだ。そして、このことは張飛も気付いた。だからこそ、驚きを隠せずにいたのである。
コイツ、一体どれだけ強いのだ!?こんなやつ今まで見たことないのだ!?
張飛はそう思いながら一刀をじっと見つめていた。しかし、その目は怒りや屈辱、畏怖などの感情でなくただ――
・・・凄いのだ。
―――純粋な尊敬の色であった。
一刀「さて、俺は君に訊きたいことがあるんだ。訊いてもいいかい?」
張飛「え?な、何なのだ?」
張飛の口調が少し柔らかくなっていたが一刀はそれに気付くことなく張飛に問うた。
一刀「張飛ちゃん、張飛ちゃんのおじいさんは強く生きなさいと言ってたんだよね?」
張飛「?・・そうなのだ。」
一刀「それで張飛ちゃんは強くなりたいんだよね?」
張飛「・・そうなのだ。」
一刀は訊き続ける。この問答こそ張飛にとって大切だと分かっているから。
一刀「でも、それって何か違わないかい?」
だから、一刀は話を切り出す。
張飛「??、どうゆうことなのだ?」
一刀「あー・・簡単に言うと、張飛ちゃんが思ってることと張飛ちゃんのおじいちゃんが思ってたことは違っていないか?ってことなんだ。」
張飛「違ってるって・・強くなるってこと以外、読み取れないのだ。」
一刀「いや、ある意味ではそうだと思うんだけど・・・。じゃあ、一つ訊きたいんだけど・・その遺言、他の人に言った?」
張飛「言ってないのだ。」
その答えに一刀は、やはり・・と呟く。
一刀「・・鈴々ちゃん、おじいさんが本当に言いたかったことは鈴々ちゃんが思ってることとは違うはずだよ。」
張飛「本当に言いたかったこと?なんなのだ?それは?」
張飛にとってみればおじいちゃんの言いたかったことが他にあるなんて考えたことなかった。だからこそ、張飛は興味本意といった感じに一刀の応答を待った。
一刀「おじいさんが言いたかったこと、それは、前へと進んで行けってことじゃないかな?」
張飛「前へと進んで行け?」
一刀「そう、おじいさんは自分のせいで張飛ちゃんがいつまでも立ち止まることを恐れたんだろうね。だからこそ、自分が死んでも落ち込んで立ち止まらずにそれを乗り越えて前へと進んでほしい。・・・そういうことじゃないかな?」
張飛「・・・・・・・。」
一刀「と、言っても直接おじいさんに訊いた訳じゃないからね。たぶんt」
張飛「いや、おじいちゃんはそう言いたかったと思うのだ」
張飛は一刀の否定を否定した。
張飛「おじいちゃんのことだからきっと、鈴々にもっと強くなってほしかったのだ。武術も・・・心も。」
張飛「・・・鈴々は何をやってたんだろう。ずっとおじいちゃんと暮らしてきたのにそんなことにも気付けなかったなんて・・。」
だんだんと張飛の頭は下がっていく。
張飛「鈴々は・・・・ッ馬鹿なのだ!!」
そして、張飛は瞳を滲ませながら声を吐いた。その声には悲痛すら伺える。
一刀「・・・・・泣いてもいいんだよ。」
そんな張飛を見た一刀は張飛に対し罪悪感みたいなものが湧き上がっていた。
張飛「ッ・・・な、泣かないのだ。もうおじいちゃんの為にいっぱい泣いたのだ。もう鈴々は泣かない。これ以上泣いたらおじいちゃんが不安になっちゃうのだ。だから武術も心も、もっともっと強くなっておじいちゃんを安心させてあげるのだッ!」
一刀は驚いた。こんなに小さな子がこれほど立派なことを言えることに対して。
一刀「・・・まったく、小さいのに立派だよ張飛ちゃんは。」
張飛「小さくないのだッ!それに鈴々は立派じゃないのだ。まだまだ未熟なのだ。」
一刀「いや、自分のことを未熟と分かってる時点で立派だよ。少なくとも俺が子供の時よりは立派だよ。」
そう言いながら一刀は苦笑いをしながら呟く。
張飛「?、今のおにいちゃんは子供じゃないのか?」
一刀「え!?あ、いや、こ、子供だな!まだまだ俺は子供だよ!うん!」
張飛「?」
焦ったのか少しだけ言葉を詰まらしながら一刀は答えた。そんな一刀を見て?マークを浮かべながら張飛は空笑いしている一刀を眺めていた。そして、息を整え一刀は恋に話しかける。
一刀「じゃあ、恋行こうか。」
恋「・・・どこに?」
一刀「さぁね、でもこの村でやることは済んだからね。もうこの村を出ようと思うんだ。」
一刀と恋がそんなことを話していると。
張飛「!お兄ちゃん達この村から出るのか?」
張飛は驚いた感じに一刀に訊いてきた。
一刀「まぁね、あまりここに居て情が移ったら旅に出れなくなりそうだからね。早めが一番さ。」
張飛「でも・・・。」
張飛は何か言いたそうにしていた。それを見ていた一刀は思っていた。
張飛ちゃんはおそらくまだ一緒に居たいのだろう。でも、一緒に居すぎると情が移ってしまう。そうなれば別れが今よりももっと寂しくなってしまう。そうなると、涙のお別れとなってしまうだろう・・・。おもに俺が泣く、泣いてしまう。そんな姿、絶対に恋や張飛ちゃんに見せられない。男として・・。
一刀「ふっ、なぁにまた何処かで会えるさ。じゃあな、張飛ちゃん!」
そう言いながら一刀は後ろを振り向き手を挙げながら歩いていく。
(これで、いいんだ。このまま帰った方が俺はカッコよく去れる。目を赤くしながら去るよりは十分にいいはずだ。)
一刀がそんなことを考えていると。
恋「・・・一刀(くいくい)。」
一刀「ん?どうした、恋?」
恋は一刀の服を引っ張っぱり、はっきりとこう言った。
恋「・・・もう日が沈みそうだよ。」
一刀「・・・・・・・・・。」
その言葉を聞いた一刀は嫌な汗を流し始めた。
(ま、まずい!これはかなりカッコわるい!!ど、どうにかしないと!)
そう思いながら、一刀は仕方ないから村で宿を取ろうみたいな感じで話そうと決めた。
一刀「し、仕方ない。村で宿を探してそこに一晩泊まるk」
張飛「この村に宿なんて無かったと思うのだ。」
一刀「・・・・・・・・・・。」
まさかの新事実に一刀はカッコよさが無くなるどころか今日、夜を過ごす家すら無いことを初めて知った。
恋「一刀・・・お腹空いた(うるうる)。」
一刀「・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうしよ。」
恋の追い討ちもあり、一刀は途方に暮れていた。そんな、姿を見て、張飛は少しオドオドしながら言ってきた。
張飛「あ、あの鈴々の家に泊まる?鈴々は別に困らn」
一刀「よろしくお願いします。」
一刀は即答しながら土下座していた。
<張飛の家>
張飛「それじゃあ、お兄ちゃん達は先にお風呂入ってくるのだ。鈴々はその間にご飯を作ってるから。」
張飛は手を洗いながら言った。それに対し一刀は。
一刀「泊まらしてもらえるのにそんなことまでさせれるか。俺が料理作ってるから張飛と恋が先に入っててくれ。」
そう言いながら一刀も手を洗い始める。
張飛「別に鈴々は困らないのだ。」
一刀「俺が困るの。」
一刀と張飛が言い争っていると・・。
恋「・・・みんな一緒に入る。」
――まさに鶴の一声であった。
・
・
・
・
・
・
<風呂>
一刀「おお~デカいな。」
恋「・・・大きい。」
張飛の家の横にある小屋。そこはなんとお風呂場であった。それに驚きながらも一刀と恋は服を脱ぎ入っていく。
張飛「おじいちゃんお風呂好きだったから、すっごい拘ってたのだ。」
張飛はそう言いながら服を脱ぎお風呂場に入ってきた。
一刀「まぁ、とりあえず先に・・・。」
張飛「身体を先に洗うのだ!」
一刀の独り言ぎみの言葉に張飛が答える。
一刀「そうだ!張飛分かってるな!」
張飛「えへへ、おじいちゃんが言ってたのだ。」
一刀「やっぱり、張飛のおじいちゃんは良い人だな(なでなで)。」
張飛「~~~♪」
張飛は一刀に頭を撫でられ、目を細めていた。それは、まるで猫のようだった。
恋「・・・一刀、恋も。」
その姿を見た恋は恋しくなったのか一刀にそれを頼んでいた。
一刀「よしきた!(なでなで)」
恋「~~~♪」
しばらく、一刀は恋と張飛とじゃれ合った後。
一刀「んじゃ、身体を洗いますか。・・・ん?」
一刀が身体を洗おうとすると恋が肩をトントンと叩いてきた。そして、恋は。
恋「一刀、いつものしないの?」
最初は何のことか分からなかった一刀だったがしばらく考え理解する。そして、理解したからこそ戸惑っていた。
一刀「え、えと、それはその・・・。」
張飛「何なのだ?」
そんな彼を見ながら張飛は尋ねる。
恋「いつもは恋と一刀、洗いっこする・・。」
張飛「おお!鈴々も一緒にしたいのだ!!」
一刀「!?」
一刀は手で口を押さえながら頭の回転を最大にしていた。
考えろ・・考えるんだ!北郷一刀!今、俺に起こっている事柄を!!何が最善の選択だ・・?
これは、俗にいう美味しい展開のはずなんだ。だからこそ、俺は冷静になるべきだ。冷静になりここは冷静に了承するんだ。
―――――よし、いける!!
一刀「ヨ、ヨーシ、イッショニアラオッカー。」
カタコトの了承の言葉はまったくもって冷静からかけ離れていた。
<張飛の家>
一刀「・・・ふぅ。」
一刀は風呂をあがった後、一仕事終えた仕事人の様に息をはいた。他の意味はないはずだ。
恋「・・・一刀、ご飯(くいくい)。」
一刀「ああ、そうだね。ご飯作ろっか。張飛、食材って何か残ってる?」
張飛「ん~これくらいしかないのだ。」
張飛が見せる食材は軽く大人4人分くらいあった。
一刀「・・・普通に十分あると思うんだけど。」
張飛「でも、2人分くらいしかないのだ。」
一刀はそれを聞き、恋と同じでよく食べるのだろうと容易に想像できた。
一刀「・・・張飛ってすごく食べるんだね。」
張飛「そうなのか?」
一刀「まぁ、とりあえず作りますか!」
恋「うん。」
張飛「やるのだー!」
・
・
・
・
・
・
一刀「ふむ、なかなかの出来だ。」
張飛「おいしそうなのだー!!」
恋「・・・(じゅる)。」
一刀たちの目の前にはたくさんの料理ができていた。
一刀「それじゃあ、食べますか。恋、張飛、いただきますしよ?」
恋「ん(こくっ)。」
張飛「いただきますって何なのだ?」
張飛は問う。張飛にとって初めて聞く単語だったからだ。
一刀「食材に感謝することだよ。食材がなかったら食べれない訳だしね。」
張飛「なるほど~今までそんなこと考えたこともないのだ。でも、どうやるのだ?」
一刀「まぁ、俺と恋のを見て、やってごらん。それじゃあ――」
一刀「――いただきます。」
恋「・・いただきます。」
張飛「い、いただきます。」
ぎこちないながらも張飛は一刀と恋と同じように合掌をした。
<寝床>
食後、もう就寝時になり一刀たちはそろそろ眠ることにしていた。
張飛「おにいちゃん達は鈴々のを使うのだ。鈴々はおじいちゃんのを使うのだ。」
張飛は自分が普段使っている寝床を指さしながら一刀たちに言う。
一刀「・・・普通は逆じゃないか?」
張飛「鈴々の寝床の方が新しいし、寝やすいからおにいちゃん達が使ってほしいのだ。」
一刀「なおさら俺たちはそっちで寝た方がいいじゃないか。俺たちがそっちで寝るよ。」
張飛「いや、おにいちゃん達が。」
一刀「いや、張飛が。」
一刀と張飛が言い合っていると。
恋「・・・みんな一緒に寝る。」
・
・
・
・
・
一刀「まったく、恋には敵わないよ。」
恋「みんな、一緒。」
結局、一刀たちは皆一緒に少し狭いながらも張飛の寝床で寝ることになっていた。
張飛「・・・・・・・・。」
一刀「張飛?どうした?」
張飛「え!?いや、その・・・。」
一刀は張飛がさっきから黙っていることに気付き声を掛けた。それに恥ずかしそうにしながらも張飛は答える。
張飛「何だか、こうやって誰がと一緒に寝るのって久しぶりだと思ったのだ・・。」
一刀・恋「・・・・・・。」
何か思うところがあるのだろう。一刀も恋も黙った。そうしていると。
張飛「なぁ、おにいちゃん、おねぇちゃん。どうして、おにいちゃんとおねぇちゃんは旅をしてるのだ?」
一刀「なんだ、突然?」
張飛「いや、気になったのだ・・。それで、何でなのだ?」
一刀「う~ん、そこまで特別なことではないんだけどな。いいよ、話すよ。」
張飛「ありがとうなのだ・・。」
一刀「と、言っても最初は恋の方がいいかもな。俺と出会った時のこと。」
張飛「え?おにいちゃんとおねぇちゃんは血のつながった家族じゃないのか?」
張飛は驚いていた。てっきり2人は実の兄妹だと思っていたからだ。
恋「ん(こくっ)。でも・・」
一刀「でも、今は家族だよ。だよね、恋?」
恋「・・・うん(///)。」
張飛「・・・・・そうなのか。」
張飛はそう言いながら2人を羨ましそうに見つめていた。羨ましそうに・・。
一刀「じゃあ、恋、話してくれないか?」
恋「(こくっ)・・あの時は―――」
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一刀「―――と、まぁこんな感じで俺たちは旅を始めたってことだよ。」
張飛「・・・すごいのだ。」
張飛は頬を少し染め一刀と恋を見ていた。
一刀「す、すごいとこなんてあったか?」
張飛「鈴々と似たような状況なのにおにいちゃんもおねぇちゃんもちゃんと前へ進んでるのだ。すごいのだ・・。」
一刀「張飛も俺たちと同じように前へと進めるよ。俺が保証する!」
恋「恋も、保証する。」
張飛「・・・・・うん。」
そう言われた張飛は何故か少しだけ寂しそうであった。
<外>
一刀「ん~、良い朝になったな。」
朝、一刀は背伸びしながら恋と共に外へと出ていた。
恋「・・・・・・・ん(うとうと)。」
一刀「恋~二度寝するな~おきろ~。」
一刀は恋の肩を掴み少し揺らしながら張飛へと視線を向けた。
一刀「それじゃ、行くよ張飛。」
そう、一刀たちは出ていく。旅へと戻るのである。
張飛「・・・本当に行っちゃうのか?」
一刀「ああ、この世界を見てみたいんだ。だから、行かないと。」
張飛は明らかに寂しそうに一刀たちを見ていた。それは、一刀も恋も分かっていた。しかし、いつまでもここに居てはいけないと考えていた。いつまでもここに居ると本格的に情が移ってしまい旅に出れなくなってしまう。本当に情が移ってしまう。たった1日でもこんなに情が移っているのに。だからこそ、一刀も恋も直ぐに出ようとしていた。2人とも寂しさを必死に殺しながら。
一刀「・・じゃあな、張飛。」
恋「・・・またね。」
そう言って2人は張飛を背に前へと進む。だが―
張飛「・・・・・・・(ぎゅっ)。」
――小さな手が2人を止めていた。
恋「・・・。」
一刀「・・・張飛?どうしたの?」
一刀は尋ねる。恋はもう何も言えなかったから。尋ねられた張飛は一刀と恋の服の裾を掴み、顔を下げながら言い始める。
張飛「・・・・・・ないで・・。」
一刀「え?」
張飛「行か・・ないで、おにいちゃん、おねぇちゃん・・・。行っちゃ・・・行っちゃ、ヤダなのだッ・・!」
張飛「鈴々はもっとおにいちゃんとおねぇちゃんと一緒に居たいのだ!一緒に鍛錬して、一緒にお風呂入って、一緒にご飯作って、一緒に眠って、たくさん・・たくさんしたいのだ!!・・・鈴々ができることなら何でもするのだ。だから・・だから、もっと鈴々とここに居てほしいのだ!!!!」
一刀・恋「・・・・・・・・・。」
その言葉に一刀も恋も思っていた。
ああ、この子は本当に―――。
一刀は意を決し張飛に話す。
一刀「・・・残念だけど、ここには居られないよ張飛、さっきも言ったけど、この世界を見たいんだ。だからここには居られない。」
張飛はそれを聞いた。否定の言葉を。その瞬間、張飛は震え始める。何かを堪えながら。
張飛「・・・分かって、るのだ・・これはた、ただの我儘なのだ・・・だから、気にしないでほ・・しい、のだ・・ッ。」
一刀の言葉に張飛は強がりながら答えようとするが、それはできなかった。張飛の瞳から一つまた一つと涙が零れる。
張飛「・・・ぅう・・・ひぃく・・・(ぽろぽろ)。」
恋「・・・・・(なでなで)。」
そんな少女に恋は無言で頭を撫でる、撫で続ける。しかし、恋の表情は悲しそうではなかった。それどころか、恋は笑っていた。優しく微笑んでいた。そして、それと合わさったように一刀は優しく言う。
一刀「気にしないでいいの?張飛は俺と恋と一緒に居たいんじゃなかったのかい?」
張飛「・・・らっ・・て(ぐすん)・・らめだって・・(ぐすん)。」
一刀「駄目って言ったら諦めるのかい?諦めるのは俺の中では基本的に嫌いなことだから張飛にはやってほしくないんだがな~。それに、俺は一緒に居ることに対して駄目とは言っていないよ?」
張飛「ひぃく・・・・・・ぅえ(ぐすん)?」
一刀「俺は“張飛とここには居られない”と言っただけで張飛と一緒に居ることに関しては駄目なんて言ってないよ。」
張飛「あっ・・・。」
言葉の意味に張飛は気付く。
張飛「じゃ、じゃあ・・一緒に、一緒に居てもいいの!?」
一刀「ああ、でもそれには条件がある。」
張飛「じょ、条件?」
一刀「名前、まだ教え合ってないだろ?家族になるんだったら名前は知っとかないとな♪」
張飛「そーいえばまだちゃんと名前を言ってなかったのだ。・・・って家族!?」
家族という言葉に張飛は驚く。
一刀「?一緒に居たいって家族になりたいってことだろ?なぁ、恋も張飛が家族になると嬉しいよな?」
恋「ん(こくっ)。・・家族はいっぱいがいい。」
一刀「だよな~。あ、もしかして、張飛は嫌だったか?」
張飛「そ、そんな訳ないのだ!」
張飛は即答していた。嫌な訳がないと。
一刀「なら、お互い自己紹介だ!俺の名前は北郷一刀。字と真名は無いんだ。だから真名に近い一刀って呼んでくれ。」
恋「恋は、名は呂布、字は奉先、真名は恋。・・恋って言ってほしい。」
張飛は涙を拭う。そして。
張飛「鈴々の名は張飛、字は翼徳、真名は鈴々なのだ!一刀おにいちゃん、恋おねぇちゃん、これからよろしくなのだ!」
一刀「よろしくな、鈴々!」
恋「よろしく、鈴々。」
目尻に少し涙が残っていたが鈴々は嬉しそうに笑っていた。
<村>
女店主「・・・まさか、本当に鈴々ちゃんを元気にするなんてな。大した奴だよ、君たちは。」
あの後、鈴々の旅支度を手伝い、村へと行き鈴々について話したのだった。それで今、鈴々は村の皆に色々と言われている。ちなみに恋は鈴々と一緒にそれを聞いてるとこだ。
一刀「いや、俺たちは助言しただけで立ち直ったのは本人の力がほとんどだと思いますよ。」
女店主「助言ができただけでも大したもんだよ。君たちよりも鈴々ちゃんとは長い付き合いの私たちは助言の一つですら言えなかったんだ。鈴々ちゃんを助けてくれて本当にありがとう。」
女店主「それで、お礼と言っちゃなんだけど・・ほれ、肉まん。鈴々ちゃんやあの子と一緒に食べな。」
一刀「お~ありがとうございます!」
一刀はそれを受け取った瞬間、女店主は真剣に一刀へ言う。
女店主「・・・・鈴々ちゃんをよろしくね。」
一刀「・・はい。」
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鈴々「みんな、行ってくるのだ!」
鈴々は村の皆に最後のあいさつをしていた。
子供「鈴々・・・元気でね・・・また会おうね。」
おじさん「あの鈴々が旅にでるなんてな~。正直、まだ信じられねぇーぜ・・。おい!坊主!男ならしっかり女の子2人守れよ!!」
一刀「おう!」
おばさん「鈴々ちゃんが好き嫌いしないようにお願いね。お嬢ちゃん。」
恋「ん(こくっ)。」
おじいさん「鈴々の元気な声を聞いて嬉しかったんじゃがのう。もうその声が聞けなくなるのは残念じゃ・・。」
おばあさん「おじいさん、鈴々ちゃんはまた帰ってきますよ。・・鈴々ちゃん、身体には気を付けてね?」
鈴々「みんな・・・ありがとうなのだ!」
そして、一刀と恋、そして鈴々は村の皆に手を振りながら歩いて行った。
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・
村が見えなくなるまでしばらく歩いた後、一刀は独り言の様に話す。
一刀「さてと、次はどこに行こうかな~?」
鈴々「え!?まだ決めてなかったのか?」
一刀「うん。だから二人とも何処か行きたいとこある?」
恋「・・・特にない。」
鈴々「鈴々も特にな・・・あ!」
何か思いついたという風に鈴々は声を上げる。
鈴々「海と河が見たいのだ!!」
一刀「海と河か・・・ちなみに理由は?」
鈴々「昔、おじいちゃんが話してくれてたのを思い出したのだ。だから一度見てみたかったのだ!」
一刀「うん、良いかもね。恋はどう?」
恋「恋も見たことないから、見てみたい。」
一刀「それじゃあ、決まりだ。次の目的地は海と河だ!」
一刀、恋、そして新たに家族となった鈴々は次の目的地へと歩いて行った。
あとがき!
大変遅れましてすみませんでしたぁあああ!!
どれくらい遅れたんだろう?2ヶ月くらい?かなり遅れました・・。
最近忙しいので遅れることがあるでしょうが絶対に完結させるのでそこは安心してください。(何話くらいになるだろう?)
さて、今回の話は張飛こと鈴々ちゃんとの出会いでした。
え?鈴々ちゃん原作と少し違う?実はこの世界の鈴々ちゃんは原作に比べて賢いです。原作もある程度賢いと私は思うんですが・・。
それでは、コメントについてお話しますね。
(都非様さん)誤字指摘ありがとうございます。
(飛鷲さん)ちなみに漢女は”まだ”この外史にはいません。
(アルヤさん)ハプニングの代償は重いものですw
(nakuさん)たしかに少し贔屓かな?でも蜀って人材の宝庫なんですよねw
(兎さん)この時点で漢女と互角ということはもちろん・・ということです♪
(頭翅(トーマ)さん)SSの漢女2人と華佗はトリオでSSです。
さて武力は今のとこ、こんな感じです。
「鈴々」
*武*
C+(今ここ)※現時点で8歳です。
これからもよければ、誤字脱字などいろいろコメントで教えてください。
質問もおkです。
それでは、またいつか会いましょう。
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どうも、お久しぶりです。てか、すみませんでした!!かなり遅れてしまって!!
9月入るまで忙しくて書けれませんでした。ほ、本当ですよ?
ま、まぁ、とりあえず出来たので投稿しました。
そして、今回は無駄に長い!読むの大変だと思います(すいません)。
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