No.618020

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第020話 後編

おはようございます。

いよいよ後編投降です。
今回は一人のとある人物の過去に少し触れます。

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2013-09-10 07:14:40 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:1890   閲覧ユーザー数:1689

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第020話「(かみ)殺しの(ぞく) 後編」

 

燃え盛る洛陽の中、董卓と賈駆を助けた重昌達は皇甫の案内で、ある場所へと向かっていた。

宮中地下の獄中のとある一室。

そこには更に地下へと続く階段があると言う噂があり、その内容は「男は天国、女は地獄」であり、しかもそれは皇帝の指示により出来たと言う。

そしてその噂も知るのもごく一部であり、葵の知る限りの皇帝の暴挙を聞いていた重昌はその噂の真実を確かめるべく皇甫の案内で向かう。

何故ごく一部の者しか知らない事を皇甫が知っているのかが知っているのは謎であるが、今はそんなことを考える余裕も無かった。

長い階段を下りている最中に、重昌は皇甫に質問をした。

 

重昌「そういえば皇甫殿。君は何故近衛では無くなったのだ?」

 

その様な事を考えずに、いきなりストレートに言う者ではない彼も余裕が無かったのか、その様に口が滑ってしまったことを「しまった」と思ってしまうが、しかしその素振りだけは抑え、なお冷静を装いながら、階段を歩いていく。

 

皇甫「………何故、さっきにでも近衛の兵をまとめていた私を、近衛の兵じゃないと思うんだい?」

 

重昌「いや、君と始めてあった時『”元”将と言うべきか』と言ってた事を思い出してね」

 

皇甫「鋭いね。そうさ、私は劉弁に楯突いたから、さっきの通った牢獄の一つに捕われていたのさ。しかし洛陽があんな事になっちまっただろう?その時にかわいい元部下達が出しに来てくれたのさ」

 

長い階段を退屈そうに思ったのか、そんな話題を簡単に答えてくれた皇甫であったが、徐々に階段を下りていくにつれて、下より何か声が聞こえてきた。

嗚咽(おえつ)の様な、泣き声の様な、笑い声のような、そんな阿鼻叫喚が徐々に聞こえてきた。

すると一番後ろを歩いていた柑奈が、声が聞こえるか、聞こえないかの地点で止まってしまい、自分の両肩両腕で交互に抱え、その場に座り込んで震えている。

重昌は直ぐに彼女の下に駆け寄り、体を支えてやった。

 

柑奈「………重昌様、私は……この先は――」

 

彼は彼女のこの反応を見て、この先に何があるのか悟り、皇甫に彼女を任せ、椿(愛紗)と共に先を目指した。

もはや案内役(あないやく)など不要であった。

彼は階段を駆け下りた。

遅れてくる椿(愛紗)のことなど気にかけるのを忘れ彼は走るように駆け下りた。

そしてそこで目にした光景は、多くの女達が男達に犯され輪姦(まわ)されている地獄絵図だった。

男は下劣に笑い、女は泣き叫び、性の快楽に負けた者は、白目を向き、口に力が入らずに下を出しながら涎を垂らす。

その光景は彼が最も忌み嫌っている光景であるが故、彼は呆然と立ち尽くし、追いついて来た愛紗も、その無惨な光景は彼女ですら口を紡いでしまった。

 

男達は二人に気づくと、まず目で愛紗の品定めを始め、彼女の豊満な体付きに汚らしく笑い、その下劣な目を向ける。

その下劣な目をくり貫いてやらんと冷艶鋸を構え、臨戦態勢に入ろうとする……前に気づいた時には重昌の纏った気に気がついた。

彼の気は少し特殊であり、普通の者が浴びれば――

しかし後から追いついてくる皇甫の事を考えれば、彼女は並の将ではない事は雰囲気で判るのだが、耐性があるかと聞かれれば、確信は持てない。

しかも今の重昌は普通の状態ではなく、恐らく愛紗の声も届くまい。

彼が毘沙門剣・妖(びしゃもんけん)に手をかけようとした時、突然声にならない声を叫びながら、柑奈が二人を駆けて行き、自身の獲物『槍大膳』を大きく振るい男達を嬲り殺し、蹂躙していく。

目を充血させながら襲ってくる彼女に、流石の男(獣)達も自分が助かることを最優先に考え、散りながら逃げていく。

しかしここは地下牢。

出口は重昌達が通ってきた所しかなく、徐々に獣達は追い込まれ、彼女が取り逃した者は、出口目指して逃げていく。

だが何とか逃れた獣も、立ちふさがる鬼に逃げ道を遮られ、無惨に散っていく。

しかも一瞬で殺す柑奈とは違い、愛するものが獣を蹂躙する姿を見て、流石に冷静を取り戻し、彼は近づいてくる全ての獣の足の腱を切り、腕は切り落とされ生き地獄を味あわせる。

そして全ての獣を蹂躙し終えたとき、肩で荒い息を漏らしながら獣の死体の上に柑奈は立ち尽くしていた。

膝から力が抜けた彼女を重昌は急いで駆け寄り、力が抜けても震える彼女の体を強く抱きしめた。

遅れて来た皇甫は二人に駆け寄ると、二人の周りにある獣達の死体をみて驚愕する。

 

皇甫「………これは、彼女が?」

 

重昌「違う、私がやった――」

 

しかし彼の隣にある鉄扇と剣には、それほど血は付いていなく、それに対し柑奈の槍は刃の先から持つ柄の部分まで獣の返り血で塗られていた。

 

皇甫「いや、これはかのj「言っているだろ!!俺がやった!!殺されたいのか!!」!?」

 

彼に威圧され皇甫は後ずさるが、少し間をおいた後、重昌は皇甫に語り掛ける。

 

重昌「………怒鳴って済まない」

 

彼は柑奈を強く抱きしめる。

皇甫が初めての見たときの印象にある勇ましい通綱と、憎たらしいぐらいに冷静沈着な影村の姿は無く、そこには何かに脅えるように震える彼女の姿と、それを暖め抑えてやろうとする、背中から哀愁漂う影村の姿があった。

 

皇甫「どうしたと言うのだ、彼女は。突然叫びながら走り出したとしたら、駆けつけてみればこの惨事だ」

 

しかし彼は答えない。

するとそこに椿(愛紗)が現れる。

 

椿(愛紗)「義父上(ちちうえ)。ここでは何ですので、義父上(ちちうえ)は一度戻って下さい」

 

彼は何も言わずに柑奈を抱えて元来た道を戻っていった。

 

椿(愛紗)「私も余り多くは知らないのだが、元々義父上(ちちうえ)と柑奈は生徒と教え子の間柄であった。柑奈は幼いころから義父上(ちちうえ)に恋をした。しかし親子ほど間の離れた恋など、実るはずも無かった」

 

彼女の語りかけた重昌の年について、皇甫は何か言いたそうにした。

自分と同じぐらいに見える通綱はまだしも、どうみても50もいっていなさそうな影村を何処か認めたくなかった。

だが今年齢のことを聞くのは流石に非常識であるので、少し我慢した。

 

愛紗「二人は戦場で戦った。別に怒りや憎しみがあったわけではない。二人は誇りをかけて戦ったのだ。私もその戦場にいたので彼女の強さはよく判っていた。柑奈の操る水軍は天下一で、陸ではこちらが優勢であったが、水軍ではいつもあと一歩でこちらが敗れていたが、突然戦況が変わりこちらがあっさり勝利を収めてしまった。敵の総大将であり、領主である里見殿の話によれば、柑奈はすこし前に行方不明なっていた。義父上(ちちうえ)は一人で柑奈を探しに行き、彼女を見つけた。しかし義父上(ちちうえ)が見たのは、彼女を輪姦(まわ)していた賊達の姿だった」

 

淡々と話す彼女の言葉を、皇甫は黙って聞いていた。

 

愛紗「その場で何があったかは知らないが、柑奈は穢された自分の体を義父上(ちちうえ)に見られ事を恥いて、一度は死のうとも考えていたが、義父上(ちちうえ)は言った。『お前は私が貰ってやる』と。義父上(ちちうえ)は柑奈が自分に好意を向けている事も知っていたが、まだ若い柑奈を自分なんかが貰っていいのかとも考えていたし、同情でそんなことを言う義父上(ちちうえ)でも無い。私が知っているのはこれぐらいだ。またあの時の記憶が蘇らないように、こういう場面は極力控えていたのだが――」

 

暫くして二人は女達の保護を開始した。

理性が残っているものには、衣服を用意して外にいる近衛兵と西涼軍に託し、託すときも出来るだけ女性の兵に託すようにした。

強く理性が残っているものであれば、「助かる」ということが認識できるが、理性が弱っている者にとっては、今男は恐怖の対象でしかないのだから。

途中からは重昌も参加して柑奈は外で指揮を取った。

光景を見なければ、問題は無いのだから。

保護していく過程で彼らが心苦しく思ったのは、女性の殆どは麻薬漬けにされ、もはや性行為の事しか考えられなくなった彼女らを切らなければならなくなったからだ。

洛陽宮中の火はマシになったとは言え、外は今だ炎に包まれている。

環境があるところで治療できれば、もしかすれば治るかもしれないが、今彼女達を連れて行くことは、洛陽で保護した民でさえも危険に犯す行為でもあるのだ。

だから彼女達には痛みを感じさせないよう、首を一瞬にして落とし、永眠させてあげた。

重昌が身動きを取れなくした獣の話によれば、劉弁が弄ぶことを飽きた女性達がここに集められるらしい。

まだ15にも満たない少女がいたので、彼女達を切る近衛兵や西涼軍は涙を飲んだ。

重昌はその兵をあえて女性の兵のみを起用した。

最後まで男に弄ばれたのであるから、男に切られるのは忍びないとのこと。

そこに命を下した影村本人は参加しなかったが、女性兵は何も言わずに彼女達の首を切り続けた。

むしろ言えなかった。

彼女達はその時一度も影村の顔を見れなかった。

その怒りを押さえ込める様な鬼の表情を。

矛盾しているであろうが、彼は無表情だった。

怒りで顔を(しか)めず、涙で頬を濡らす事も無いただ無表情であった。

しかし兵達はその顔を見ることは出来なかった。

彼の表情で表しているわけではない鬼の表情を。

そして地下より撤退する前に油を撒き、再び地下に火を付けそこを閉鎖し、宮中は取り壊され、洛陽の宮中は悲しき運命に翻弄された女性達の墓となった。

 

……………

 

重昌「それが、私が洛陽で見た全てだ」

 

それを聞くと趙瑜は崩れ落ちるように泣き出し、「趙瑠、趙瑠」と今は亡き愛しき妹の名前を叫び続けた。

 

劉弁「う、嘘だ!!その様な事は出鱈目だ!!」

 

劉協「まだそんな事を言うのですか、弁!!」

 

突然物静かそうな劉協が叫び、その場にいたものは、まさか彼女がそんな表情をするとはと驚いたものも少しいた。

彼女は劉弁の事を「兄上」とは呼ばず「弁」と呼んだ。

 

劉協「そこまで証拠が欲しいのであれば、今ここで見せてあげます」

 

すると彼女は突然衣服を緩ませ服を脱ぎ始める。

皇族である彼女が肌を見せるのは、将来を誓った伴侶か、着替えを手伝う許可を与えられた次女のみ。

人前で肌を晒すことは、出すほうも見たほうも重大な罪にあたることは彼女も判っている。

だから見せたのは背の部分のみ。

彼女の背にはいくつの打たれたような傷跡があった。

 

劉協「これは……彼が行ったものです。弁は女性を甚振りながら犯すのを好み、皇族の私は流石に処女を奪われることはありませんでした。し、しかし、か、代わりに、その……も、もう、一つの………あ、あn――」

 

彼女が涙を流し言うのを一刀が上から着ていたローブを羽織らせ「もういい」と言う。

劉協の話を聞き、この場にいる者は、彼女に何があったのか大体の察しをするが、それより一刀の身に着けている服に目をやった。

彼の白く輝くポリエステルの制服にあちこちより「あれは何だ?」という声が聞こえる。

それに続き愛紗も身に着けているローブを脱ぎ捨て、聖フランチェスカ学園女性服を晒し中央による。

 

椿(愛紗)「逆賊劉弁よ、民を正しき道に導かねばならない貴様がこれほどの大罪を犯した罪は重い。皇室劉協様に代わり天の遣いである我ら、ひいては我らが主である影村様が貴様を裁く」

 

2年前、管輅の占いで天下を収める為に天より使わされた二人の遣いが現れると言う噂があった。

確かに彼らが着ている服は見たことの無い物だ。

 

重昌「もう決定的だな。劉弁、貴様を天・勅命により捕縛させてもらう。衛兵、連れて行け」

 

衛兵が来ると劉弁を引きずり連れて行く。

劉弁は引きずられている間も動かない手足でもがき続けた。

 

劉弁「ふ、触れるな!!安給の雑兵共!!俺は皇帝だぞ!!貴様が、貴様がぁぁぁっ!!」

 

そう彼は重昌に叫びながら引きずられて行くが――

 

重昌「そういえば、劉弁元陛下。それほど性行為が好きならば地下にはそれなりの者を用意しましたので……」

 

彼は劉弁に近づき、彼の髪の毛を掴んで話す。

 

重昌「しかし男色趣味の”男”をね。彼らにその体とケツを存分に味わってもらうがいい。だが不思議な事に、人間とは慣れてくるとそれが快感に変わるのだよ。人間の体とは不思議だな。快感を感じるようになったら、様々な拷問器具を用意しているし、途中で気絶もしないように薬も用意している。存分に楽しんで下さいね。皇帝陛下様」

 

劉弁の顔が青ざめるのを確認すると、重昌は「お連れしろ」と言い衛兵に劉弁を連れて行かせると、彼は断末魔のような叫びを挙げて宴席から消えていった。

 

重昌「今度の董卓討伐の董卓殿は、洛陽を悪政で苦しめたわけではない。むしろ彼女は、悪性に苦しんだ民の生活を少しでも改善しようとしていた。あのまま劉弁が洛陽を貪れば、それこそホントに漢は滅んでいたであろう」

 

彼は二、三度手を叩くと、侍女が何かトレンチの様な板を持ち、丸い物体を布に被せてそこに乗せて出てくる。

その人物を見たとき、張譲は「董卓!?」と言い掛けてしまうが、そこを皇甫に制され口を紡ぐ。

実を言うと、驚く事にこの中で彼女を董卓と知る人物は、重昌、一刀などの一部の西涼将、そして趙瑜や皇甫ぐらいなのである。

董卓は重昌の前に板を置く。

 

重昌「皆の者、この者が董卓だ」

 

その布を取り除くと、女性の首が出てきた。

その首は趙瑜の妹である趙瑠の首であった。

それを見て趙瑜は咄嗟に何か言おうとしたが、そこも皇甫が「少し待て」と言い静止させた。

 

重昌「皆、よく聞け。この者がいなければホントに漢が滅んでいたのかもしれなかった。この英雄の顔・死を忘れるな!!」

 

その時、趙瑜は重昌の気持ちが判った気がした。

妹を救うために馬騰を通じて忠誠を誓った影村と名乗る人物。

その者は言った。

真名(しんめい)に誓って妹を救ってやる」と。

趙瑜も、もしかすると妹は生きていないのではないか?生きるより辛い目に在っているのではないか?それならば、むしろ痛みを与えずに殺してくれた重昌に対し、恨みをせども、むしろ感謝している。

だが、結果的には妹を救うことが出来なかった。

彼はその贖罪(しょくざい)の意味で、妹を名も無き死体と扱わずに、せめて名前は変われど英雄として扱うことで趙瑜の心を癒そうとしているのだ。

彼は趙瑜に近づき、小さな声で「救えなくて済まない」と言うと、趙瑜は涙を流して崩れた。

 

重昌「十常侍の一人であった張譲は、見ての通り私が直に裁いた!!それでも彼の罪が消えることは無いが、これよりは我が下で預かる!!――見世物は終わりだ!!劉協陛下に代わり指令を出す。総員宴会を中止し、軍の編成に取り掛かれ!!明日明刻には長安を出発し、洛陽に向かい今も苦しむ民を救出する」

 

あとがき

今回の反省点は、今まで引っ張ってきた天の遣いを名乗るタイミングが、結局中途半端になったこと。

by IFZ


 
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