「あはは…ゴメンね。ご主人様。尻尾を振っていた仕草が余りにも、
可愛かったから、つい…」
「「うう。申し訳ございません。ご主人様」」
しばらく時間が経過した後、三人は我に返ってくれた。そして、俺は自分で言うのもあれだけど、
奇跡的に欲望に勝利した。危なかった。もう少しで俺のご立派様を召喚してしまう所だった。
それと俺、無意識に尻尾を振っていたのか。気をつけなくちゃいけないのか…な…?
トントントン。
「失礼致します。ご主人様。お茶とお菓子をお持ちいたしましたので、
休憩なさいませんか?」
「月が誘っているんだから、そんな所に突っ立ってないで、
早く準備しなさいよ。この馬鹿!」
「…詠ちゃん。何度も言うけどご主人様にそんな口の聞き方じゃダメだよ~!」
「月~~~っ!」
部屋に入って来るなりいきなり、俺に罵詈雑言を浴びせてくる詠と、鈴の音のような、
優しい声色で声をかけてくれる月が休憩しようとお誘いしてきた。
精神的に少々疲れた俺は、この誘いにのり休憩したいと三人に伝える。
桃香、愛紗、朱里は先ほどの事が尾を引いているのか元気なく了承する。
俺はさっきの事は気にしなくていいと、笑顔を向けて話すと、
三人は安心した様な顔で感謝を述べた。
いや。実を言うと感謝するのは俺の方なんだけど……幸せな時間をありがとう。
正直、三人の感触は、たまりませんでした。
そうして、休憩をとる事にした。
「うわ~!このお菓子おいし~い!ねえねえ、ご主人様。これすごくおいしよ~」
「ん?どれどれ。おっ!本当だ!すごく美味いよ。月」
「へぅ……ありがとうございます。ご主人様。桃香様」
「お茶の香りもすごく良いですね。愛紗さん」
「うむ。そうだな朱里。私はお茶の事は詳しくわからないが、とても美味しいぞ。月」
「ふふ。ありがとうございます。実はお茶を淹れてくれたのは、詠ちゃんなんです。
良かったね。詠ちゃん」
むむむ。詠が淹れてくれたお茶ですと、これは飲まずにはいられない!!
……確かに美味い。成長したな。失敗ばかりしていた頃を思い浮かべると、
何だか感慨深いものがあるな。俺は嬉しいよ。
「詠。すごく美味いよ。お茶淹れてくれてありがとな」
「~~~っ!?うっさい!!別にあんたの為に淹れたんじゃないんだから、
勘違いしないでよね!!」
そう言うと詠はそっぽを向いてしまった。
ツンデレご馳走様。可愛いです。
和気あいあいとしていた、休憩が終了すると月が何かに気付き、こちらを伺っていた。
なんだろう。俺に何かついているのかな?
「あの、ご主人様。少々、髪が乱れておられますが、私がお直しいたしましょうか?」
どうやら先ほどの、ドキッ女だらけの北郷一刀の頭を撫でまわしたい、で髪が
乱れてしまったようだ。俺はせっかくなので月にお願いした。
「はい。かしこまりました。櫛をお持ちしますので、少々お待ちください」
「うん。わかった。急がなくていいからね。」
「ありがとうございます。ご主人様」
月は深々とお辞儀をし、ドアを開け櫛を取りにいった。
その間、三人の様子を伺うと顔を引き攣らせながら、乾いた笑みを浮かべていた。
だから、気にしなくていいのに。
詠にも目を向けると、怪訝そうな顔つきで三人を推察しているように見えた。
さすがは、深謀遠慮に長けている軍師。先ほどの撫で回し事件に勘づいたかな。
トントントン。
ノックが聞こえた後、ドアが静かに開き、櫛を用意した月が一礼して、
部屋に入ってきた。
「お待たせしました、ご主人様。早速、取り掛かりますので恐れ入りますが、
しばらくの間、動かないようお願いします」
手に櫛を持ち、可愛らしく気合を入れる月は、隣に近づき、
俺の頭に触れ優しく髪を梳かす。
…心地いいな……と思った時、月の繊細な手の動きに変化を感じた。
…ああ。犬耳が邪魔なのか。
「ゴメンな。犬耳のせいでやりづらいだろ?」
「いえ。私が髪を梳かしたいと仰いましたし……それに、その…犬耳が生えている
ご主人様は、とても可愛らしいです……へぅ」
……可愛い…か。………何か照れるな。…俺、滅茶苦茶、顔が赤くなってるだろうな。
「あはは。ご主人様。顔が真っ赤っ化だよ♪」
ほらね!やっぱり!恥ずかしさのあまり思わず犬のように
「キューン」と叫びたくなってくるよ!!
「へぅ……あの、ご主人様。大変申し上げ難いのですが、尻尾を振る仕草が、その、
あまりに魅力的で集中できませんので、慎みなさいますよう
お願いします」
「ん?あ…ああ、ゴメンな。気をつけるよ」
また、無意識に尻尾を振っていたのか。危ない危ない。もう一度欲望と死闘を
繰り広げる事になったかもしれない。そうなったら、俺は闘わず、
即座にタオルを投げ、ガッチリと握手を交わすだろう。
完敗で本望、ゆえに乾杯と清清しいほどの笑顔と親父ギャグを告げながら。
「はい。終了しました。お疲れ様です」
…馬鹿な事を考えていたら、髪が整え終えたようだ。俺は月に感謝を伝え、
確認の意をこめて、髪に触れようとしたが、犬耳が邪魔をした。
……そういえば、これ、自分の意思で動かせるのかな?
プルプルプル!
うーん。…動いているというよりは小刻みに震えているなぁ。
「か~わ~い~い~♪」
「~~~~~~~!?」
「はわわ~~~っ!」
「へぅ~~~」
何だろう?……部屋が桃色の空間になった気がするんだけど…。
ふと、正面を向くと詠と目が合った。視線に気付いた詠は目を背けたが、
俺が気になるのか顔を紅潮させ、チラチラとこちらを伺っている。
………まさかな。
「詠さん。つかぬ事をお聞きしますが、俺の頭を撫でたいと思ってませんか?」
「!!!?ばばば馬鹿じゃないの!!誰がアンタなんかの頭を撫でたいと思うのよ!
妄言を吐くのも、い…いい加減にしなさいよね!!」
詠は熟し過ぎたトマトの様に更に顔を赤くさせ、言葉がしどろもどろになっている。
……間違いない。
ま た こ の 展 開 か!!
……いや、待てよ。攻めてしまえば従順な詠という、新たな一面が見れるんじゃないか?
桃香達も俺の姿を見て魅了された様だったし、詠は今、酷く動揺している………
そう思うと好奇心もとい、いたずら心が沸々と湧いてきた。
よし、からかおう。からかうべき。そうすべき。
「詠ちゃ~ん。本当は撫でたいんじゃないか?ほら、尻尾も
振ってあげるよ。ほらほら♪」
「だ……だからボクはいいって言ってるでしょ!!」
「またまた~。我慢は身体に毒ですよ。素直になっちゃいなよ。
え・い・ち・ゃ・ん♪」
ブチッ!
ん?何か聞こえた様な…
「……調子に乗るんじゃないわよ!この馬鹿ち○こ!!」
「ぎゃああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!」
……結果、従順な詠など見れなかった。それどころか、詠が激昂のあまりに放たれた、
閃光の様な右ストレートが…あろう事か股間に直撃した。俺は断末魔に似た
悲鳴をあげ、詠の前で土下座の様な体勢になってしまった。
教訓
ツンツンツン子ちゃんには、調子に乗ってからかっては、いけない。
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こちらは真・恋姫†無双の二次創作になります。
前回、拝読、コメント、支援、お気に入り
してくださった皆様。誠にありがとうございます。
引き続き一刀視点のお話、そして月、詠が登場します。
稚拙な小説、おかしい所があるお思います。
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