萌黄視点)
久しぶりの休日、朝目が覚めると私はパジャマから普段着に着替えて
下の階に向かった。午前8時、少々遅い目覚めだったが辺りの雰囲気が静まり
かえっているように思えた。
いつもは居候いている幼女とマナカちゃんの賑やかな話しが多かったのだが。
私は台所に足を向けると食器を洗っている命ちゃんの姿があった。
「あ、萌黄。おはようございます」
「おはよー。ねぇ、二人はどうしたの?」
「二人?あぁ、みんなヒトミさんが遊びに連れていったので今私一人
なんですよ」
その言葉を聞いて私の中で興奮の度合いが高まった。
つまりは最近人が多いせいで命ちゃんとイチャイチャできなかったから
こういう状況はありがたかった。
「ねぇねぇ、この後一緒にベッドで二度寝しない?」
「もう、萌黄ったら・・・」
もう長いこと私といるから今の言葉の意味合いくらいすぐに見抜いて
しまっている。命ちゃんは顔を赤らめながらややうつむきながら呟く。
「仕方ないですね・・・」
「やったあああ」
「そこまで喜ばなくても」
私は子供のように激しく喜んでいると余計恥ずかしそうにもじもじする命ちゃん。
正直その反応が見たくてわざとやっている節はあるんだけどね。
洗い物が終わると早速私の部屋に招きいれて二人で一つのベッドに横たわると
視線を細めて笑う。
「なんかこういうの久しぶりな気がします」
「私も・・・」
そういって私はすぐに命ちゃんとキスを交わす。深いものではなく
あっさりとした啄むようなキスである。
そうしているうちに互いの体は熱くなって命ちゃんの吐く息も熱を
帯びてきていた。
「萌黄・・・」
「命ちゃん・・・」
潤ませた瞳が私の心を刺激する。あぁ、なんて可愛いのだろう。
世界のなにものよりも可愛くて愛おしい。私はそんな気持ちを持って
命ちゃんの胸の辺りに頭を押し付けてその温もりを感じていた。
「萌黄、かわいいです」
すると今度は命ちゃんの方から私の首元にちゅっちゅっと可愛らしい
口づけをしてくる。嬉しいけれど、ちょっとこそばゆい。
やや汗ばむ命ちゃんから良い匂いがしてきた。
まさに二人の世界。
今なら何でもできるという状況なのに、徐々に私の性的な気持ちが
落ちていくのを感じた。
「どうしました?」
「命ちゃん、ごめん。今日えっちは無理っぽい」」
「ふふふ」
「?」
「私はこうして萌黄を抱きしめているだけでも十分幸せですよ。
萌黄は違うんですか?」
「そんなことない!」
でもしばらくしてなかったから、少し気持ちというか体の方というか
溜まってるような感覚があったから少し残念なだけであった。
こういう時に疲れが溜まっているとこんな悲劇が舞い降りてしまうのか。
今後気をつけることにしようと心に決めた私であった。
なでなで・・・
私がそんなことを思っている間にいつの間にか頭を撫でられていることに
気づいた。
「萌黄の髪の毛、やわらかくて気持ちいい」
「命ちゃんのだってつやつやさらさらヘアーじゃん。うらやましい」
私のは柔らかいけれど少し癖があってもっこもこしてるから髪を整え辛い
せいもあっていつも簡単にポニテにしてしまっているから命ちゃんのような
綺麗なストレートは正直羨ましかった。
「そんなことないですよ、わんこみたいで可愛いです」
「むぅ、そんなこと言われると悪い気はしないね」
私はわんこ派だからね。猫も好きだけど。
「そういう命ちゃんは狐みたいで可愛いよ。まぁ、狐だけど」
「そうですか?」
「そうそう、野性味が抜けた狐っぽい」
「なんですか、それ・・・はふっ、くすぐったいれふ」
私は命ちゃんが言葉を言い終わる前に顎の下に指を差し入れて
撫でていた。猫ならごろごろ言うかもしれない箇所だ。
「ンーッ・・・!クゥーン」
「ね、狐っぽいでしょ」
「変な喘ぎ声出させないでください!」
顔が真っ赤になってもうどうにかなってしまいそうな命ちゃんの額から
頬に流れる汗を舐めとった。
言葉にならない声が命ちゃんの口元から漏れてちょっと厭らしい。
すっかり敏感になっているようで、こんな彼女の姿を見るとなおさら
満足させたくなるのだけれど、私の体がついていけないのが残念だ。
「もう、萌黄ったらぁ・・・」
怒る声もすっかりなよなよしてしまった、完全に力が抜けている状況。
「んふふ、命ちゃんの汗あまいよ~」
「そんなわけないじゃないですか・・・」
「しょっぱいけど、甘いよ」
甘い気分に浸れるという意味で。彼女の汗の匂いとしょっぱさで
十分に酔い痴れることができるくらい甘い感覚でいられるのだ。
「そんなこといったら萌黄のだって甘いです」
そういって私のマネをするように汗を舐めとって、自信を持った表情で
私を見つめ返してくる。そうやってムキになってくるのが余計に可愛くて。
命ちゃんはその後私の両頬に両手を当てて近寄らせて額同士を
くっつける。そのまま流れるように口を重ねていく。
今度は長く甘く深い接吻。チーズのようにとろけあって、私たちは
一体化するような錯覚を覚えながら愛情と快感の中で溺れていく。
目を瞑り、相手の温かさ、匂い、味。全てが濃縮されて
思考は早々に止まり、もはや本能だけで相手を求めている。
「愛してるよ、命ちゃん」
「私も・・・。萌黄・・・」
目を開いて見えるものは好きな人だけ。
しばらくの時間。私たちはそうして久しぶりの愛を確かめ合った。
「ただいま~」
「おかえりなさい」
「萌黄と二人でなにしてたの?」
「あ、いや・・・それは・・・その・・・」
私たちがイチャつくのを終わらせた一時間後にマナカちゃんたちは
家に戻ってきた。質問から命ちゃんの表情を見ると察したように
マナカちゃんは口を閉じて別の話題を振った。
ヒトミはそれとは別に私たちの営みを感じていたのだろう。
少し羨ましそうな顔をしていたのが。ちょっと気持ちよかった。
「とにかく、このお話はやめて何かしましょう!えぇ、そうしましょう!」
命ちゃんの慌てふためく姿に全員が笑いながら見守っていた。
我が家の天使。幸せの象徴。言葉にすると全てが安っぽく感じる。
そんな我が家の宝を見て私はまた胸を高鳴らせていた。
また時間ができたら互いに感じあいたいそう、思っていた。
お終い
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本編から外れてただ二人がイチャイチャするだけのお話。これからそういうタイプの話は日和にしちゃおうかなって思います(覚えてれば