No.610494

魔法先生ネギま! 正義と悪のマギステル・マギ候補生 プロローグ

霞月さん

タイトル通り魔法先生ネギま!の二次創作作品です。
夏季休暇を利用して友人から借りて読んでいるうちにハマったので書きたくなりました。優等生のネギ君に素行不良の親友がいたら、と思いつつ筆をとっています笑。
恋姫の方もそろそろ再開したいと思いますので、そちらもよろしくお願いします

2013-08-20 03:57:56 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3018   閲覧ユーザー数:2916

血。

 

赤い物。生臭い物。人の体を駆け巡る物。酸素を運ぶ物。

 

それに塗れて立つ少年が一人。口からは乾いた笑い。抑揚の無い不安定な笑い声はその少年に似つかわしく無い、それこそ狂人の物だった。

 

ケラケラ、ケラケラケラ。ナンデ?

 

そう呟いた少年に近付く者が一人。紫煙を燻らせながら眼鏡越しに血塗れの少年を見て少しだけ目を細めた男を、少年は凝視した。

 

マダイタノ?オジサンハダレ?

 

君を助けに来たんだ、と男は語る。目は嘘を言っていないようなので少年は笑い、そして倒れた。慌てて男は少年に駆け寄ると脈を取ったが、不整脈などの心配は無くトクントクンと規則正しい脈拍が伝わって来て安堵した。

 

「この子があなたの息子ですか、ヴィズル……」

 

遣る瀬無い呟きも漏らした後で男はスーツの胸ポケットから出した通信機に語り掛けた。

 

「こちら高畑、目標の保護に成功。回収に来てくれ……戦闘の準備はいらない」

 

目の前に広がる惨状に戦闘などが起こるわけもないと思い、そう加えてから通信を切った。そうして再び紫煙を肺へ落とす。深く吸い込んだ煙がニコチンを脳へと供給するが、思わず嘔吐感に襲われた。ニコチンへの拒否反応ではなく血生臭さが鼻に着いたからだ。

 

間も無く到着した迎えに合流して、男はその場を後にした。スヤスヤと眠る幼子の顔を見つつ、彼の行く末を案じながら。

 

 

厳かな雰囲気の式典。荘厳な協会のような建物の中で行われるそれは主役に子供達を迎えて、大人によって行われていた。子供達が並ぶフロアよりも段差の分高い位置で立派な髭を蓄えた老人が卓を挟んで子供達を見ながら演説をする。子供達の明るい前途を望み、巣立ちを祝福する目は優しい。

 

「以上を、私からの送別の祝詞とさせてもらう。さて、主席ネギ・スプリングフィールド、及び次席ルーン・オースキ・龍視、二名は壇上にて卒業生代表の挨拶を」

 

老人から呼ばれた二人の少年は壇上へと歩くが、その姿は両極端だった。赤髪の少年はカチコチになるほど緊張しており、右手と右足、左手と左足が同時に出ており、ロボットダンスでも踊っているようだった。対して腰に届くまで黒髪を伸ばした少年は緊張し切った学友に苦笑しながら置いて行くペースでスタスタと壇上へ。

 

「ネギ!シャキッとしなさい、シャキッと!男の子でしょ!」

 

赤髪の少年ーーネギに怒鳴った少女はその直後目線で教師から怒られたために直様静かにしたが、少女からの激励にネギは落ち着きを取り戻した。そんな様子を見ていた黒髪の少年ーールーンは再び苦笑してネギに小声で話し掛けた。

 

「相変わらずアーニャの尻に敷かれてんなぁ、ネギ」

 

ルーンは冗談のつもり言ったのだが、無垢な友人は慌てた様子を見せたのでさっさとスピーチに移った。正直、自分なんかが次席としてスピーチをする羽目になるとは思っていなかったため、テンプレートな優等生仕様のスピーチしか用意できなかったせいだろう。自分の本性を卒業まで嫌という程見せて来た学友と恩師が苦笑している。保護者は皆流石次席だ、と感心してくれている様だが、正直多少申し訳なく感じた。

 

滞りなくスピーチを終えれば、次はネギの番だ。先程の優等生スピーチをした手前、保護者の皆さんのイメージを崩さないためにもネギのスピーチに聞き入った振りをしながら頭の中で昨夜読んだ魔術書の内容を反芻する。興味深い内容だったなぁ、と思っているうちにネギはスピーチを終えた。

 

学友の並びに二人で戻れば、次は卒業証書の授与が待っている。これが曲者だと、無能な先輩達が言ってたな、と思いつつ式の進行を邪魔しないように楚々とした態度で老人から証書を受け取ると、頭の中に直接語り掛けられた。

 

『普段からそういう礼儀正しい態度をとってくれていたらのぉ……』

 

どこか諦念の混じった念話に思わず苦笑しそうになりながらも、ルーンは念話で老人に言葉を返した。突っかかるのは簡単だが、目の前の好々爺にはさんざっぱら世話になった上に迷惑をかけ続けて来たのだから、噛み付くなどとは思うはずもなかった。

 

『すみませんね、校長。今までこんな悪ガキの面倒を見てくださってありがとうございました』

 

余計な事をいうとせっかくの礼にケチがつくと思ったから短く簡潔に、その分感謝の念をたっぷり込めて。老人は戸惑ったようにこちらを凝視したが、満足そうに頷いてくれた。証書を丸めて壇上を後にする背中を老人が優しく見てくれているのを感じて、少しだけ涙を堪える努力を要した。

 

 

「ネギ、ルーン。あんた達は何て書いてあったの?私はロンドンで占い師よ」

 

快活そうな赤髪の少女ーー先程緊張していたネギに一括をかましたアーニャがルーンとネギに話し掛けて来た。内容は卒業証書に関して。卒業証書には卒業後の修行が書かれてあり、それに準じる必要がある。一種の職業体験のような物だとルーンは認識しているが、そこは自分達の母校、普通であるはずも無い。

 

「二人は修業の地はどこだったの?」

 

続いて声をかけて来たのはルーン達よりも歳上でかなりの美人の部類に入る金髪の少女。名はネカネ・スプリングフィールド。ネギの姉代りにして従姉という事もあり、ルーンは彼女に好意的な感情を抱いている。優しい言葉で尋ねられたネギが今から浮かび上がるとこ、と答えたので続いて頷いた。

 

すると直様浮かび上がる修行内容。ネギと同時に浮かび上がったので先に自分の証書を見たが、背後から覗き込むアーニャとネカネが大声を上げたので思わず術を使うところだった。内容は確かにアレだが、そこまで驚く事はないだろうと苦笑しつつ、ネギの修行がとんでもない内容である線も疑って彼の証書を覗くと不可解な文字。自分と全く同じ内容、違うのは宛名だけでそれ以外はそっくりそのまま。

 

『A TEACHER IN JAPAN』

 

久々に母国に戻れるしいいかもな、などと思っていたが友人と同じ内容に思わず大声をあげてしまった。

 

「ネギと一緒!?いくら素行不良だからって優等生くっつけるか、あのジジイ!!」

 

暖簾に腕押し、糠に釘。その後ネカネやアーニャ、ついでにネギと校長の元に向かって抗議(ネカネとアーニャはほとんどネギの心配だったがそれは置いておく)した物の決定は覆らず、相方となるネギは校長に丸め込まれたため、二つの諺を実体験する羽目となったのだった。


 
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