No.605934

地球防衛軍3/4 戦闘車両

最終更新:16/3/19 一部改変

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・E551ギガンテス

 E551ギガンテスとはアメリカのGD社(ジェネラル・ダイナミクス社)が開発した主力戦車である。名前はギリシア神話に登場するギガース(巨人族)の複数形であるギガンテスからとってつけられた。ギガンテスは型式毎に性能が大幅に異なるため、本項ではギガンテスの無印型について主に記述する。

 2013年当時、異星人が地球に接近している事実から、アメリカの軍需産業はこれを仮想敵と見立て、積極的に議員へのロビー活動を行った。兵器の輸出拡大を狙ったロビー活動は功を奏し、軍事力に劣る国家に異星人に対抗するための軍事力を販売するという統合配備計画は議会を通り、輸出用の低性能な戦車を開発することが決定した。

 性能よりも低価格が求められたため、GD社はM1エイブラムス用の工廠を利用できるようにいくつかのパーツはM1エイブラムスと共通化しており、外観も大きく似通っている。

 乗員は車長、操縦手、砲手の3名。操縦席からオーバーライドして砲塔の操作もできるため、無理やり1人で戦闘することも不可能ではないが、状況把握、操縦、攻撃をすべて1人でこなす必要があるため、搭乗者には人間離れした高い技量が求められる。

 主兵装は105ミリ榴弾砲。榴弾砲という名前であるが実質的には戦車用のライフル砲であり、従来のロイヤルオードナンス社の105ミリライフル砲で用いられる砲弾は流用することができる。榴弾だけでなく徹甲弾や成形炸薬弾なども使用可能である。自動装填装置が備えられており主砲は約3秒で装填が可能。砲弾は弾薬庫に35発の弾頭を搭載できる。

 機銃は標準装備していない。生産性を向上させるために同軸機銃は撤廃されたが、砲塔の車長ハッチか砲手ハッチにリングマウントを後付けして、そこに機銃を付け足すことができる。スモークディスチャージャーは1組ずつ砲塔側面に取り付けられる。

 FCSは搭載されていないと言ってもいい性能であり、その射撃精度は搭乗者の練度によって大幅に左右される。主砲の照準は走行すると大きくずれてしまい、命中精度は極めて低い。C4Iによる情報共有は考慮されていないため、各国の第3世代戦車との連携は困難である。

 装甲は公式には複合装甲とされているが、事実上ただの圧延鋼板で極めて脆弱である。対戦車攻撃を想定していないスティングレイM1の複数回の射撃で正面装甲を破れるとされる。また自身が発射した榴弾砲が至近距離に着弾した際にも損傷を負う危険すらあるとされる。ただしモジュラー方式であるため、被弾した際の交換や新しい複合素材へのアップグレードは容易である。

 動力はディーゼルエンジンである。アメリカ軍のM1エイブラムスではガスタービンエンジンが使われていたが、ガスタービンエンジンは軽量の割に出力が高いが燃費が非常に悪く、潤沢な兵站能力を持つアメリカ軍以外では運用が難しいためディーゼルエンジンが採用された。だが一般自動車のエンジンを流用したため出力が致命的に不足し、機動力は劣悪なものとなってしまった。

 無印型はあまりにも低性能であり、多くの国家はギガンテスの購入をしようとはしなかった。ただし整備性については評価が高く、技術顧問派遣などサポート体制を売りにしたことから、もとより主力戦車すら保持していなかった後進国を中心に採用が検討された。

 だが冷戦の終結からずっと軍縮傾向が続く中で、ドイツのレオパルド2を筆頭に第3世代戦車の投げ売りが続いており、ギガンテスでは高い性能を持つ他国の戦車に太刀打ちできなかった。

 結局のところ無印型のセールスは失敗に終わり、改良を施したD型によってギガンテスの販売が模索された。

・E551ギガンテスD

 当初、アメリカではギガンテスを運用する予定はなかった。ギガンテスは先進的なFCSやデータリンクシステムを搭載しておらず、アメリカの持つ既存兵器との連携が困難であることが予想されたためである。しかしギガンテスの採用を検討していた国家は、ギガンテスの運用実績を要求。評価試験のためにアメリカは一部の部隊にギガンテスを導入することを決定した。

 しかしギガンテスの性能は電子機器以外の面でも既存兵器との差は大きく、無印型の運用を諦め改修に着手した。元から改修を見越していたためターレットリングは大きく取られており、120ミリ榴弾砲を持つ砲塔への換装は容易だった。複合装甲の素材を置き換えたギガンテスはJ型と命名され運用される運びとなった。

 一方で無印型は輸出用としても性能が劣悪であった。特に105ミリ砲の火力不足、低性能な電子機器、装甲の耐弾性の低さは問題であった。戦車すら保持しない国家向けという趣旨であったが、それすらも達成できる見込みではなかったのである。

 無印型の性能向上にあたってGD社は120ミリ榴弾砲の搭載を要求したが、DDTC(国務省防衛取引管理部)の承認が得られず105ミリ口径に収めることとなった。GD社は105ミリ榴弾砲を長砲身に改造することで初速を向上させたが、森林や市街地では取り回しが悪く肝心の火力も105ミリ砲では限界が見えていた。

 装甲はやはり複合装甲ということになっていたが素材そのものに変更はなく、単純に分厚くすることで耐弾性を高めていた。そのため車体重量が増加し、駆動系に不調をきたしやすくなり整備性は悪化した。

 結局のところ、D型の輸出は失敗に終わった。戦車として欠陥に溢れたD型は途上国にとっても不要であり、ある程度の性能を持ったJ型並みの能力が求められた。しかし議会は頑なに120ミリ砲の搭載を拒否しており、さらなる改良によってD2型が生み出されることとなった。

・E551ギガンテスD2

 ギガンテスD型の輸出は失敗、議会はギガンテスD型の改修をGD社に要求した。海外での採用が失敗に終わった理由をGD社はD型の性能不足に起因するものと判断しており、開発途中であったJ型の海外輸出を提案した。しかし国防上の理由でこれが却下されたため、GD社はD型をさらに強化したD2型の開発に着手した。

 120ミリ榴弾砲の搭載は許可されなかったため、またしても105ミリ榴弾砲が搭載されている。火力増強のため砲身はD型のものよりさらに長くなり、薬室も同時に強化された。砲弾初速は向上し有効射程が伸びたものの、砲身寿命が極端に短くなっている。長い主砲は熱の影響を受けやすく、命中精度に少なくない影響を及ぼしている。また後退時に跳ね上がる泥が砲身先端の砲口照合装置ミラーにかかってしまう。

 複合装甲の素材はJ型で採用された新素材の物を劣化させたものである。無印型やD型では複合装甲でありながら実のところ材質がほぼ鋼鉄であったが、こちらはJ型の物を元にしているため劣化仕様ではあるが比較的高い耐弾性を示す。しかし導入した国家では爆発反応装甲が装備されている事が多く、導入国の間で複合装甲の性能に疑問があったものと思われる。

 エンジンは諸外国向けのディーゼルエンジンである。D型の物は諸外国向けの劣化品であったが、別種のエンジンを採用したことで速度が大幅に向上している。しかし代わりに燃費が犠牲になっており、航続距離は長くない。

 D型と比較すると性能は向上したと言って差し支えない。複合装甲の採用で重量は抑えられたため駆動系の不備は改善された。しかしいかに長砲身といえど105ミリ砲では120ミリ砲の威力に見劣りしており、D2型を導入した国家にはドイツのラインメタル社から120ミリ滑腔砲を購入し強引に取り付けた例も見られる。

 アメリカはD2型を導入する諸外国への技術移転を認めていたため、戦車の製造技術を持たない国に好意的に受け取られたが、採用数は当初の見通しをはるかに下回る結果となった。最終的にD2型の売り込みを諦めるようGD社は議員に訴えJ型の販売が決定されるに至った。

・E551ギガンテスJ

 ギガンテスJ型はアメリカが自国で運用するために開発し、後に他国へ輸出された仕様である。

 アメリカ陸軍は自らの戦力にギガンテスを導入することについて意欲的ではなかった。すでにM1エイブラムスが主力戦車として存在しており、性能に劣るギガンテスの導入は陸軍にとって不要なものであった。

 議会はギガンテスの運用実績を求めており、陸軍にギガンテスを運用することを望んでいた。だが限られた予算から運用する戦車の量を増やすことは不可能であり、議会の要求したギガンテス配備の裏にあるM1エイブラムスの定数削減は、陸軍としては受け入れられるものではなかった。

 一方でGD社はギガンテスの改修を進めていたが、無印型やD型と同様にデータリンクシステムの搭載は考慮されなかった。これは歩兵の装備する戦闘用アーマースーツとの共同運用が前提であったためである。

 戦闘用アーマースーツとは、衝撃を与えると硬化する液体素材を用いたリキッドアーマーであり、短距離探知用のセンサーや味方兵士とのデータリンクシステムといった先進的な電子機器が搭載されたものである。搭乗員に戦車兵用の仕様にした戦闘用スーツを着用させ、戦車に搭載するデータリンクシステムを省き低コスト化を図ろうとしたのである。

 ただし戦闘用スーツにデータリンクシステムが搭載されたものの、ギガンテス本体の電子機器類は無印型やD型から変化はない。これはM1エイブラムスを指揮車として、麾下のギガンテスを移動砲台として運用する戦闘教義の現れである。

 M1エイブラムスはアップデートに伴いセンサーを改良し、索敵能力を向上させることが計画されていた。このアップデートされたM1エイブラムスを指揮車として運用し、精密な情報を麾下のギガンテスに伝達するハイローミックスの体勢を構想していた。

 これはギガンテスがやむを得ず導入されたときのための苦肉の策であり、陸軍としてはギガンテスの運用は決して望んでいたものではなかった。たとえM1エイブラムスのセンサーが強化されたとしても、遮蔽物によって容易く索敵範囲が狭まる地上戦においてギガンテスとの連携は机上の空論と言えた。

 砲はGD社が独自開発した120ミリ榴弾砲に変更された。榴弾砲という名前であるが実質的には滑腔砲で、多くの第3世代戦車に使われるNATO仕様の120ミリ滑腔砲との砲弾互換性を有している。砲の火力はドイツのラインメタル社製の120ミリ滑腔砲に比べてわずかながら劣るものの、国産であることを優先し搭載が決定した。

 装甲は劣化ウランを使用しない新開発された複合装甲である。D2型で使われていたものは輸出仕様の劣化品であったがこちらは純正品であり、他の第3世代戦車の装甲に匹敵する。それでも劣化ウラン装甲を用いたM1エイブラムスと比べると耐弾性に劣るとされる。

 無印型では諸外国向けということでディーゼルエンジンに変更されたが、J型は自国運用ということで、当初はガスタービンエンジンに立ち戻る予定であった。しかしD型とD2型のセールスが性能不足によって失敗したため、やむなくJ型の輸出が決定。ガスタービンエンジンは燃費が悪く海外での採用が困難であると予想されたため、ディーゼルエンジンの搭載が決定した。D2型のエンジンより強力なものを搭載しており、出力の上昇によって機動力が向上した。

 本車両は2015年に量産が開始され、アメリカ陸軍に順次配備された。しかし国連による連合地球軍構想の実現に伴い、世界各国の戦力で構成されるEDF(連合地球軍)が発足。アメリカ陸軍はギガンテスへの不信から、配備されたJ型の多くをEDFに所属させることとした。M1エイブラムスは今まで通りアメリカ陸軍によってのみ運用され、前述したギガンテスのM1エイブラムスとの連携は文字通り空想に終わった。

 輸出はある程度の成功を収めた。D型やD2型は技術移転を認めていたものの、このJ型では120ミリ砲や複合装甲などにアメリカの最新技術が使われていたため、部品生産をすべてアメリカで担うこととしていた。それでも120ミリ砲を搭載したJ型は受け入れられ、多くの国家で導入が決定された。

 2017年の戦いでは、世界各地でJ型が戦線に投入された。EDF北米方面軍は当初、貧弱なFCSによって遠距離の敵を狙い撃つことを苦手としていたギガンテスに期待してはいなかった。アメリカでは陸軍が運用するM1エイブラムス、カナダではレオパルト2が主戦力として期待されていたが、優秀なFCSをもってしても数に勝る巨大生物を阻止することができず接近戦を強いられた。対戦車戦では不可欠であったFCSも、対巨大生物戦では必ずしも必要な物ではなくなってしまった。電子機器によって生産費用のかかる第3世代戦車よりも安価なギガンテスJ型は各国陸軍に大いに歓迎された。

 当初はアメリカの有り余る工業力から日本など他国への輸出がされたものの、戦局の悪化によって輸送が困難となり、アメリカはギガンテスの製造方法の詳細をインターネット上にアップロードし各国での生産を認めた。その後もJ型は各国ごとに改修が重ねられ、膨大な数の派生型が生み出された。

・メルトバスター

 2017年の戦いにおいて人間同士の戦争を想定した戦略と戦術しか持たなかったEDFと各国軍では、兵站に大きな負担がかけられていた。巨大生物を倒すには対人戦よりも多くの弾丸を必要とし、その弾丸を製造する工場も飛行ドローンによる空襲で破壊されつつあった。

 巨大生物の地底からの侵攻と、空母型円盤の防衛線を超えた急襲によって補給路の安全を確保することも困難となっており、物資の安定的な補給はいつか破綻するものと考えられていた。補給の問題が顕在化する中で、EDFは巨大生物の死骸から直接採取できる強酸液に着目し、その結果開発されたのが強酸液を噴射するアシッドガンである。

 当時、巨大生物の強酸を軍事転用する構想はすでに実用段階であり、歩兵用装備のアシッドガンは量産体制に入ろうとしていた。この技術を流用し、放水車ならぬ放酸車を開発する計画がイギリスにて始まった。

 アシッドガンは強酸液を断続的に放射するものであったが、イギリスが開発したメルトガンは砲口に8個の蓮口が設けられ、散弾のように放射することができる。これはアシッドガンと平行して開発が進められていたアシッドショットと似た仕様で、甲殻巨大生物の放つ強酸弾を擬似的に再現しようとしたものである。瞬間的に高圧で放射される散弾状の強酸液は、戦車砲のキャニスター弾のように機能することが想定されていた。

 開発されたメルトガンはウォーリア歩兵戦闘車に搭載され実射試験がされた。しかしこの試験においてメルトガンから放射された強酸液は、目標の的から大きく手前の地点に着弾してしまった。甲殻巨大生物は腹部末端の粘着性の膜に強酸液を満たしゼリー状の強酸弾を作るのに対し、メルトガンでは膜を作ることに失敗しており、高圧噴射するとすぐに膜がはじけて中の強酸が霧散してしまう。そのため圧力を弱めざるを得ず、数メートルの放射しかできなくなってしまったのである。もちろんこの射程では敵の懐に飛び込む必要があるが、敵から手痛い反撃を受けることは必至だった。その後もメルトガンの改良は継続したものの目立った成果が出せず、開発計画は凍結されるに至った。

 しかし試作された数個のメルトガンは戦力の不足から、ギガンテスJ型の砲塔を改造し搭載された。メルトバスターと命名されたこのギガンテスは、前線部隊に届けられ実戦で運用された。メルトガンは至近距離の巨大生物であれば撃破できたものの、距離が開くとまったくの無力であった。また搭乗員の後ろにある砲塔バスル内部に強酸が満たされるため、隔壁が損傷すると強酸が搭乗員にかかる恐れがあった。

 メルトバスターの大半は戦闘により破壊され、生き残った一部の車両はJ2型に改造されており、長らく現存するものはないと考えられていた。しかし戦場に遺棄された車両が発見され、レストアされた上で戦車博物館に展示された。2025年7月初旬に開催される予定であった日本での展覧会のためにメルトバスターは搬送されていたが、2025年の戦いが勃発したことによるどさくさで行方不明となっている。戦闘の激化によりメルトバスターは現地で実戦に参加したという記録がわずかながら確認されており、これが事実かどうか現在でも調査が進められている。

・E551ギガンテスJSカスタム

 アウトレンジ攻撃というのは戦闘において極めて有効なものである。敵が攻撃できないような遠方から一方的に攻撃できれば、こちらは一切損害を被ることなく勝利することができる。これは戦闘において基本的なことであり、歴史をたどれば銃火器だけにとどまらず、弓矢や投石といったものもアウトレンジ攻撃を踏襲したものに含まれる。

 これが一気に崩壊したのが2017年の戦いである。アウトレンジ攻撃を得意とする爆撃機や砲兵は、フォーリナーの飛行ドローンにより大損害を被り、戦車や狙撃兵も処理能力を超えた膨大な数の巨大生物に接近を許し、逆に殲滅されるケースが頻発した。

 戦争中期以降、EDF製の歩兵用火器が強力になり、複数人の部隊による銃撃で巨大生物や飛行ドローンの撃破が可能になると、北米方面軍や極東方面軍は好んで歩兵を主力にした戦術を用いた。

 しかしアウトレンジ攻撃は漸減という意味では役に立たないわけではない。それどころか規模の小さい群れならば十分に殲滅可能で、狙撃銃を装備した歩兵部隊によって、巨大生物を寄せ付ける前に殲滅しきる例も存在していた。巨大生物の群れがどれほどの規模であるかは時と場合により様々であり、必ずしもアウトレンジ攻撃は無駄ではなかった。

 各方面軍の砲兵は飛行ドローンの度重なる空襲により甚大な損害を被っていたが、砲兵の火力支援は決して不要なものではなかった。何かしらの代替手段で砲兵に匹敵する火力を得ようとする試みは世界各国で散見された。

 EDFシベリア方面軍は戦車の運用方法を変える試みをとり、装甲砲兵計画と呼ばれるものを発案した。これは要約すると「飛行ドローンの攻撃に耐え切るほどに装甲化された自走榴弾砲で、強引に前線部隊を火力支援する」というものであった。

 装甲化した自走榴弾砲を新規開発できるほどの余裕はシベリア方面軍にはなかったため、ギガンテスの車体を流用することが決定された。ギガンテスはアメリカが開発したものであるがロシアにも輸出されており、戦中の技術共有によってギガンテスの製造工場も置かれていた。

 シベリア方面軍技術研究部はウラル車両工場などと共同して、装甲化された自走榴弾砲の開発を開始した。

 ギガンテスの車体に新規開発された115ミリ長距離榴弾砲が搭載された。長距離榴弾砲という名前は、ギガンテスに搭載される砲の公式名称がどれも「榴弾砲」を名乗っていることに因んでの命名である。実際にはこの115ミリ長距離榴弾砲は滑腔砲であり、ソ連製の115ミリ滑腔砲との砲弾互換性を有している。

 115ミリ長距離榴弾砲の最大の特徴は液体装薬が採用された点である。2017年当時では試験用を除くすべての火砲は固体装薬を用いており、液体装薬式のものは存在していなかった。

 液体装薬とは従来のような個体の装薬ではなく、液化した薬剤を薬室に注入し、点火させて燃焼させ砲弾を発射するものである。個体装薬と比べて砲弾初速が向上するほか、砲弾のコストがかからない。ただし砲の構造は複雑化するため、こちらに関してはコストがかかる。技術的に成熟している個体装薬と比べ、液体装薬は技術的にハードルが高かったのだが、ロシアはこれを実現したのである。

 液体装薬を採用したことで初速が大幅に向上しており、徹甲弾の威力や命中精度の向上に成功している。また薬室に注入する液体の量を調節することで、初速を調節することができる。戦車砲として見るとメリットはないものの、支援用の榴弾砲としては運用上の柔軟性が増すことになる。

 また液体装薬式ではあるが従来の固体装薬と一体化している砲弾も使用可能である。115ミリ滑腔砲を搭載するT-62主力戦車はロシアではすでに退役していたが、115ミリ滑腔砲用の砲弾が相当数放置されていることが発覚していた。当時は交通路や工場の破壊が著しかったことから既存の砲弾を再利用することとなり、液体装薬と固体装薬を両方運用できるハイブリッドなものとなった。

 ギガンテスJSカスタムは115ミリ長距離榴弾砲が示す通り、砲兵用の装備でないことは誰の目にも明らかであった。技術研究部は元から装甲化された自走榴弾砲の開発は不可能と判断しており、液体装薬によって射程を無段階に変化させられる火砲によって軍部の要求を達成しようと考えていた。装甲についても後付けの増加装甲で対応していた。

 そしてこの115ミリ長距離榴弾砲は紛うことなき失敗作であった。

 ギガンテスを運用する人数は3名、もしくは1名のどちらかであるが、大戦中期以降は人員払底が著しく1名で運用できるタイプが主に使われるようになっていた。1人で操縦や攻撃を行わなくてはならないギガンテスは操作方法が簡便化されており、その一環でJSカスタムでは薬室に注入される液体の量が固定されていた。注入される量は最大に設定されており、発射時の凄まじい砲口エネルギーによって砲撃時の反動は車体を吹っ飛ばすほどであった。撃つたびに車体が大きく揺れ動く反動によって、撃つごとに再度手動で照準を合わせる必要が生じている。これは凍った地面でも走れるようにロシア製のギガンテスは軽量化が施されており、発射時の反動制御が難しかったことにも起因している。

 命中精度についても初速の向上によって移動する目標には当てやすくなったものの、FCSは従来のギガンテスと同じく貧弱なままであった。

 転用が期待されていた115ミリ滑腔砲用の砲弾は長らく放置され続けていたことから大半が使用不能になっていることが砲の開発中に発覚しており、わざわざ新規に砲弾を製造しなければならなくなった。

 また115ミリ口径の榴弾では支援用の火砲としてはあまりに火力不足であった。徹甲弾であればJ型に搭載される120ミリ榴弾砲をも凌ぐ破壊力を持っていたが、前述した通り砲弾の大半が使用不能になっていたことから、新造された試験用のAPFSDS弾がわずかに使用されたに留まっている。

 JSカスタムはシベリア方面軍では少数が実戦に投入されたのみで活躍の機会はほぼなかったものの、中東方面軍に少数が供給されシリア地方やイラク北部にてT-62と共同して運用された。

 JSカスタムは何がしたかったのかよくわからない珍兵器でありながらも初の液体装薬を導入した戦車として、戦車開発史を語る上で重要な存在となっている。

 なおJSカスタムが戦車であるか自走榴弾砲であるかは識者によって意見の相違があったが、現在では概ね戦車に分類されている。

・イプシロン装甲レールガン

 イプシロン装甲レールガンとはアメリカとイスラエルが共同開発した対装甲戦車である。無印型は第1試作車であり、本格的な戦闘は考えられていない。

 2017年の戦いにおけるフォーリナー側の装甲兵器はヘクトルである。ヘクトルはフォーリニウムよって堅固な装甲を誇っており、各国の第3世代戦車であっても複数回攻撃しなければ撃破できなかった。時期が進むにつれてフォーリニウム材の最適化がされ装甲はより堅固になっていき、戦車砲でも苦戦を強いられるようになった。

 戦車が損耗し歩兵が戦場の主役になると戦車砲の開発は途絶えがちになり、大戦末期頃には歩兵用の狙撃銃でヘクトルに対処するようになっていった。幸いにも歩兵用火器はフォーリナー技術を取り入れた事もあって加速度的に発達し、戦車砲に匹敵する火力を持った狙撃銃が開発されるなど大幅に強化されていた。

 もちろんこれらの狙撃銃でもヘクトルを倒すには複数回の射撃が必須であり、その間に反撃を受ければ逆に壊滅させられてしまう。リスキーな戦術ではあったが、物資が不足する戦況ではやる以外になかった。

 戦後になるとヘクトルに対抗するための新型戦車を開発する計画が持ち上がり、アメリカとイスラエルが共同で戦車を開発する政府間協定を結んだ。

 コンセプト研究は極めて短い期間で終了した。両国ともとにかく火力を優先しておりアメリカが開発したレールガンを搭載することで一致した。レイアウトは両国から数種類が提案され、それぞれモックアップが作られた。砲塔戦車案、ケースメイト戦車案、頭上砲案などが提案され、最終的には頭上砲案が採用された。

 主砲はアメリカの技術研究部が開発したレールガンである。見た目は大きいが従来の戦車砲と比べると小口径である。これ以上大口径化すると戦車に搭載できないためである。APFSDS弾の使用を前提としており、榴弾や成形炸薬弾は開発されていない。砲弾自体は非常に小さいが、レールガンの加速力で弾頭の装甲貫徹力を補っている。仰角は非常に広く取れるように設計されており、上方向の目標にも対処できる。これは上空の輸送船を攻撃する事を想定している。

 レールガンの動作に必要なエネルギーはすべてバッテリーで賄っている。フォーリナー技術の解明で急速に発展したバッテリー技術によってレールガンを動作させる事に成功したが、第1試作車では電力不足により初速が落ち込んでいる。

 搭載する砲弾は25発でレールガン後部のバナナ型の弾倉に搭載される。簡易な装甲に包まれてはいるが弾倉が外部に露出する形になっており、被弾したら砲弾が失われる欠点を残している。弾薬庫を車内に収める形も検討されたが、砲身を切り詰める必要が生じるため廃案となった。

 副武装として砲塔左右にマシンガンが搭載されている。巨大生物が接近してきた際の緊急用に搭載されたもので、本車両の低い運動性を補うために旋回能力を持っており、備え付けられたガンカメラはペリスコープの役割を果たす。また正面から見たときレールガンの弾倉を守る空間装甲のとしての役割も持つ。弾数は500発。再装填するためには乗員が車外に出なければならない。

 左右の砲塔側面にスモークディスチャージャーが搭載される。対フォーリナー戦では発煙弾の類は無意味なため、実質的に対人戦用のものである。

 装甲は第3世代戦車とほぼ変わらないセラミック系複合装甲を備えている。耐酸性と対ビーム性を備えた装甲の開発に苦労しており、第1試作車の時点では重さを得るためのバラストとしての機能が重点に置かれている。本格的な装甲は第2試作車に後回しされることになった。

 乗員は車長、操縦手、砲手の3名である。車長席からオーバーライドして操縦と攻撃ができるため、1人でも一応戦闘は可能である。マシンガンは砲手席と操縦手席から使用できる。操縦手以外の乗員は砲塔バスケット内に配置する仕組みである。

 乗り込むためのハッチは後部ハッチのみである。乗員それぞれのハッチはなく全員が後部ハッチから乗り降りするため、非常時の脱出の際につっかえる危険がある。

 エンジンは前方配置で乗員の前方に置かれる。正面に被弾した場合は空間装甲として機能し乗員の生存性に寄与する。出力は高いがレールガンの重量により速度が出せず機動力は致命的に低い。

 フロントエンジンでありながらもレールガンの重量によってリアヘビーとなっている。そのため走破性が低く、前進するより後退するほうが障害物を超えやすいという珍事を招いている。

 第1試作車である無印型は両国がそれぞれ数両を試作し試験を実施した。レールガンの命中精度は十分な値を示したが、反動が激しく撃った直後は車体が後退してしまう事が問題視された。

 部隊側の試験でも懸念が多く、車長席から全周視界を得られない事や、頭上砲の仕組みから乗員が武装にアクセスすることができず、些細な損傷でも火力を喪失する事などが不評であった。一方でレールガンの火力がヘクトルを撃破するに足るならこれら不満点も飲めるとも報告しており、イプシロン装甲レールガンの開発は継続することとなった。

・E651タイタン

 2017年の戦いを世界中で戦ったギガンテスは、後退戦術を用いて巨大生物と戦っていた。後退戦術とはその名の通り後退しつつ接近してくる巨大生物に順次攻撃する戦法で、俗に「引き撃ち」と呼ばれている。

 その一方で後退戦術には、自身がひたすら後退するため拠点の保持ができないという欠点を抱えていた。ギガンテスに限らず各国の持つ第3世代戦車の複合装甲でも巨大生物の放つ強酸は防ぎきれるものではなく、直撃弾を同じ箇所に受け続ければすぐさま破壊されてしまう。戦車が本来持つべき火力と装甲の内、後者が人類の持つ戦車には欠けていた。後退戦術は戦車の装甲が機能しなかったがために編み出された戦術でもあった。

 戦後、EDF欧州方面軍は拠点防衛用の兵器を求め、各国陸軍の間で主に2種類の意見が交わされた。

 ひとつは「巨大生物が接近し切る前に大火力で殲滅する」というものであった。これはいわば日本においてベガルタが担っていた分野である。ベガルタが持ち前の大火力で遠距離の巨大生物を攻撃し、かいくぐってきた巨大生物は直掩の歩兵によって殲滅するという具合である。これは一定の戦果をあげた戦術ではあったが、それでも巨大生物の突破力の前に逆に殲滅されるケースも多く、この意見は不確実性が指摘された。

 もうひとつの意見が「厚い装甲が施された重戦車によって強酸に耐え切る」というものである。巨大生物の酸に耐えられるように、全面にフォーリニウムを使った特殊合金やフォースフィールドによる複合装甲を張り巡らせ、強酸そのものを無効化する目論見であった。しかし強酸を完全に無効化することは戦車程度の大きさでは不可能であり、装甲の同じ部分に繰り返し強酸を受け続ければ融解してしまうことが予測された。こちらの意見も不確実性が指摘された。

 意見はまとまらず、結果として折衷案が選ばれ、火力特化の車両、装甲特化の車両、両者の特徴を備えた車両の3種類を試作することが決定した。火力特化のA車をフランスが、装甲特化のB車をイギリスが、両者を備えたC車をドイツがそれぞれ開発することとなった。

 フランスはA車の試作途中にアメリカからBM03ベガルタを購入し配備することを決めた。このBM03を拠点保持用の戦力とすることを決定し、A車の試作を放棄し戦車開発計画から離脱した。A車はモックアップのみが作られ、そのデータはイギリスとドイツに提供された。

 イギリスが作ったB車は電磁複合装甲を装備していた。これは従来の複合装甲の表面部分にフォーリニウムを使った特殊合金が貼られている。通電させると相変態を起こし激的に耐酸性が向上する性質を持っているため、対巨大生物戦において高い防御性を発揮するが、衝撃に弱いため壁などの障害物に当たると簡単にへこんでしまった。また電磁複合装甲を常時稼働させるエネルギーを賄うことができず、通電中にエンジンが頻繁に停止しまうなど欠陥を抱えていた。

 ドイツの作ったC車は艦載用に開発されていた粒子砲を搭載しており、装甲には従来の複合装甲に耐酸対ビーム塗装が施されたものが用いられた。これは火力に関しては申し分なかったが、装甲の脆弱性が指摘された。また車体が軽いため粒子砲の反動に耐え切れず、発射すると車体ごと吹き飛んでしまった。

 欧州方面軍はB車とC車を元に、第2次試作としてイギリスとドイツが共同で両者の改良型であるD車の試作を始めた。このD車は粒子砲の反動に耐え切れるよう車体重量を大幅に増しており、さらにかなりの重装甲化がはかられている。全長は約25メートルに上り、これは巨大な戦車として名高いシャール2Cやマウスの倍以上という史上最大の大きさを誇っている。

 しかしD車でも粒子砲の反動制御が難しく、撃った瞬間に車体が大きく後退してしまう結果になった。D車案は放棄することが決定したが、当時はすでに2025年中頃に入っており、フォーリナーの再侵略により戦車開発計画は凍結され、引き続いて行われる予定だったE車の試作も中止してしまった。

 そしてフォーリナーのドイツ侵攻により、D車は急場しのぎに実戦投入されることとなった。D車は極一部の技術研究部員が勤務時間外に私費を投じて整備と改造を続けており、寄贈できる博物館を探している状態にあった。

 ベルリン防衛戦にて突如現れたこの戦車は、見た目の仰々しさもあって現地の兵士たちの間で話題になり、テレビや新聞で積極的に報道されインターネット上でも波紋を呼んだ。さらにこの戦車に興味を持った中国や日本は、欧州方面軍から同じものを取り寄せて試験を行うに至り、「E651タイタン」と公式に型式番号と名称がつけられた。

 主砲はレクイエム砲という名の粒子砲で、もともと艦載用に開発されていたものである。戦車の大きさでは搭載することは難しかったため、砲身を大幅に切り詰めて無理矢理搭載している。砲身の加速ブースター部分が失われた結果、弾速が極めて低下している。

 その弾速たるや試射を見た兵士が「着弾までにレクイエムを歌いきれる」と揶揄するほどであり、このジョークにちなんで「レクイエム砲」と呼ばれるようになり、後に公式でその名称が使われるようになった。十分な加速ブースター部分があり、高速の粒子弾を撃ち出せる艦載用の長砲身型にもこの名前は受け継がれている。

 着弾時には大爆発が引き起こされ、それと同時に爆発の衝撃で粒子が霧散し散弾のように飛び散り、周囲の物体を貫いていく。榴弾と似た特性であるが、120ミリ口径の榴弾よりもはるかに高い破壊力を持っている。ただし粒子の減衰を抑えるはずの粒子弾外郭の収束フィールド部分に欠点が残り、頻繁にフィールドを突き破って内部の粒子が外部へ逃げてしまうため、想定より大幅に火力が下がっている。この問題はM2型に搭載された改良型のレクイエム砲では改善されている。

 粒子弾の生成には莫大なエネルギーが必要であるため、大容量の燃料電池が使われる。燃料電池は粒子弾生成にのみ使われるが、それでも発射できる弾数はわずか10発のみである。大型のプラズマジェネレーターを内蔵したものも開発されたが、こちらは再充填に40秒もかかってしまうため即応性に欠けていた。

 技術研究部員独自の改造によって砲塔上部にさらに2つの副砲塔が搭載され、側面の脆弱性を低減させている。副砲塔に搭載する弾数は40発である。小口径なため火力は低い。主に榴弾が搭載されていたが、急場しのぎに備えられた砲塔なため副砲塔のFCSがメインコンピュータと繋がっていない。また左右の砲塔が干渉しないよう旋回角度が制限されており、照準中に目標が左右に移動したら照準を合わせられない。さらに主砲塔を旋回させた場合その真上の副砲も当然影響を受けるため、副砲手が狙いを定めても主砲塔が旋回したら狙いがずれてしまうなど、非常に使い勝手の悪い武装であったという。

 主砲塔の側面にはマルチランチャーが取り付けられており、発煙弾やグレネード弾の発射が可能である。発射角度が非常に制限されており、グレネード弾では非常に狭い範囲しか攻撃できないため、M2型ではグレネード弾が搭載できない代わりにミサイルが搭載できる仕様に変更された。

 車体には副武装として機関銃が備え付けられている。巨大生物などの軟目標を排除するための武装である。機関銃ではあるが銃身が長く高い攻撃力を持っている。銃は固定式で旋回できないため、目標を狙うには車体そのものを旋回させる必要がある。

 装甲は複合装甲であり、従来のセラミックなどに加えてフォーリニウムが使われている。巨大生物の酸を完全に無効化することはできず、複数体にたかられると低い運動性も相まって耐えられなかったとされる。

 乗員は車長、主砲手、2名の副砲手、操縦手の計5名である。緊急時には車長席からオーバーライドして主砲塔の操作と操縦が可能であり、1人でも最低限の戦闘が可能となっている。

 砲塔部分の開発はドイツが大きく関わっているため、主砲塔と副砲塔にはドイツ語のフォネティックコードがあてがわれている。主砲塔はアントン、右の副砲塔はベルタ、左の副砲塔はツェーザルと名付けられ、車長が砲手に目標を指示する場合はそれぞれこれで呼称する。

 もともと試作機をそのまま実戦に投入したものであるため、多くの弱点が残っている。先に述べたレクイエム砲の低弾速性、副砲塔の照準のつけづらさだけでなく、重量の問題が特に大きい。

 500トンを越えるその重量によってサスペンション、履帯や転輪、軌道輪にトランスミッションが頻繁に破損してしまった。履帯の修理のような従来の戦車なら搭乗員がやっていた作業もその重量から不可能で、パワーフレームを備えたフェンサーの助けを借りる必要があった。

 牽引も極めて困難で、並の牽引車では窪地にはまったタイタンを引き上げることはできない。動けなくなったタイタンを別のタイタンが牽引しようとしても、エンジンがたびたびオーバーヒートしてしまった。もともと量産を視野に入れていない試作車であったため、タイタン用の牽引車両は作られておらず、後に専用の重牽引車が作られるまで故障した車両は戦場で放棄された。

 他にも移動するだけで道路を破壊し、大抵の橋も渡れないため運用が極めて難しく、欧州方面軍では数両が追加生産されるのみに留まっている。一方で極東方面軍はタイタンの運用を模索し改良を続けており、M2型やM3型を開発している。

 

 
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