No.603590

一刀の晋王転生録 第四章拠点・闇那

k3さん

投降分その四。

2013-07-31 22:55:51 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1761   閲覧ユーザー数:1628

  拠点、闇那

   「私にも撫で撫でを」

 

 

「闇那、すまないがこれについて至急調べてほしい」

 

「はい、畏まりました! あっという間に終わらせて見せます!」

 

 一刀から任務を受けた闇那はすぐさま現地を向かっていった。

 

 そんな彼女の様子を見て、彼は僅かに首を傾げる。

 

(何か、いつもより気合入っていたみたいだなぁ)

 

 それにはとある理由があった。

 彼女は羨ましかった。あの孤児院の子供達が。

 

 子供達を優しい瞳で見つめる一刀の姿が、今でもあの光景が頭の中から離れない。

 

(羨ましい……羨ましい!)

 

 何度も思い出しては、悶々とする日々。ついに彼女は決意した。

 

(私も……一刀様に撫で撫でしてもらうのです!)

 

 彼女は走る速度を速める。だがその表情はだらしなく、にやにやしたもので、何とも締まらなかった。

 そんな彼女の仕事は今まで以上に早いものだった。

 

 だからと言って彼女に手抜かりなどは無い。彼女にとって一刀の依頼は命を掛けて果たさなければならない物。

 

 一刀の気になるところを一切の漏れは無く、隅々まで調べつくし、それに関わる人物も徹底的に調べた。

 

(これだけでは足りません、まだまだ調べないと。それも徹底的に! そして早く!)

 

 そしていつも以上の成果を上げるため、確認も怠らない。

 

 すべては一刀に頭を撫でて貰うために。

 

 ……その動機はいささか不純かも知れないが……。

 数日後、闇那は一刀に報告書を持ってくる。

 

「よくやった。内容もかなり良い物だし、早く来てくれたから対処する時間も余裕が持てる」

 

「お褒めに預かり光栄です」

 

「言葉だけじゃこの成果に対して報いることは出来ないなぁ、俺に何か闇那に出来る事は無いかな?」

 

(!? き、来た!)

 

 闇那は深呼吸して、自分の兼ねてからの望みを言った。

 

「わ、私の頭を撫で撫でしてください!」

 

 一刀は呆気に取られる。

 

「え、えっとそんなので良いのかな?」

 

「そんなのではありません! 是非! お願いします!」

 

 彼女の力強い発言に一刀は若干引くが、すぐに微笑みの表情をする。

 

「分かったよ」

 

 一刀は闇那の頭を撫でる。

 

 闇那は気持ちよさそうに一刀の手の感触を楽しむ。

 

 ――しばらくしてそれが終わり、闇那は実に幸せそうに顔を緩ませていた。

 

「一刀様、ありがとうございます! では私はこれで!」

 

 彼女は疾風の如く、一刀から離れていった。

 

 そんな彼女を見つめながら一刀はまた撫でて見るかと呟いた。


 
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