No.600853

真・金姫†無双 #48

一郎太さん

おひさです。

10話ずつ章立てしていると、後半になるほど文字数が減っていく現実。

いや、20代まではそんなことなかったんすけどね?

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2013-07-23 22:19:28 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:7014   閲覧ユーザー数:5472

 

 

 

#48

 

 

紫苑さんや桔梗さん、璃々ちゃんに別れを告げ、荒野を歩く。

 

「ぜーっ…ぜぇぇっ……」

 

翠たんから貰った馬に乗り、ゆったりとした旅だ。

 

「ぜはーっ…ぜはぁ……」

 

そろそろ妹達にも会いたくなったし、旅用の路銀もたっぷり。

 

「はぁ゙―っ、ぜはぁ゙ぁあっ……」

 

店も、喧嘩を売ってきたメッシュヤンキーな女をボコボコにし、ひと通り仕込んで任せてきたので、後顧の憂いもない。

 

「ぜはーっ、ごほがはっがはっ!」

「さっきからうるせぇぞ、波才ぃっ!」

「べぶちっ!?」

 

咽た波才に、馬上から適当に物を投げる。鼻の下に当たった。

 

「うわ、痛そぉ…」

「暴力はダメですよ、一刀さん……」

 

隣で馬に揺られる詠たん達がそれぞれの感想を漏らす。

 

「だ、だって、なんでアタイだけ馬じゃないんすか!? 余ってんじゃないすかぁ!」

 

鼻と口を押さえながら叫ぶ波才。手を離したことで、荷車がゴトッと音を立てて傾いた。

 

 

「そりゃアレだ」

「あれ?」

 

涙目のはっちゃん。加虐心が余計にそそられる。

 

「そそられないでくらさいっ!」

 

呂律が回っていない。サド侯爵が目覚めそうだ。

 

「出オチってやつだな」

「あぅ…」

 

そんな訳で、場所を移すぜ。

 

 

 

 

 

 

――――長沙。

 

 

そんなこんなで第二の故郷へと帰還。何もかもが、みな懐かしい。

 

「何言ってんすか?」

「なんとなく」

「?」

 

首を傾げる波才の横で、月ちゃん達も疑問符を浮かべていた。

 

それはいいとして。

 

「さて、先に城に行くべきか、店に行くべきか、だが……」

 

俺としては一刻も早く妹たちに会いたいのだが、店にも城にも妹たちがいる。どちらから先に行こうか迷っちまうな。

 

「店にしたら?」

 

そんな事を考えていれば、詠たんが口を開く。

 

「なんで?」

「食事処の店員が城に行くのは無理でも、城の人間が食事をしに行く事は可能でしょ。少しでも可能性のある方にしてみれば?」

「なるほど。一理ある」

 

流石は詠たん。軍師なだけある。

 

「ご褒美に撫で撫でしてやろう」

「別に褒美なんていらないわよ」

 

憎まれ口を叩きつつも、俺の手を享受する詠たん。

 

「デレてきたっすね」

「詠ちゃんも素直になったんだね」

「ツン:デレ比はだいたい3:7といったところなのです」

「ん…素直がいちばん……」

「そこっ! 変なこと言わないっ!」

 

顔を真っ赤にして反論するも、俺の手を振りほどこうとはしない。

 

「可愛いなぁ、もぅ」

「ふんっ!」

 

やっぱ詠たんは可愛いなぁ。

 

 

 

 

 

 

そんな訳で、俺たちは『焼鳥・北郷』へとやって来た。

 

「「「「「…………」」」」」

 

そして、言葉を失う。

 

「え…なに、コレ……」

 

俺の口から出てきた言葉も、この程度だ。

 

「……ねぇ、一刀」

「………………なに?」

 

詠たんが話し掛けてきた。その声も、若干震えている。

 

「なに、この店?」

「……俺にもわかんない」

 

そう、俺にもわからない。ここにあるべきはずの居酒屋はなりを潜め、『居酒屋』とは形容もできない建物が聳えていた。

 

「ねね…なんて、読む?」

 

字が苦手な恋たんが、ねねたんに問いかける。ねねたんも目を丸く見開いたまま、答えた。

 

「『侍女(メイド)喫茶(カフェ)』……と、書いてあるのです」

「……?」

 

可愛らしく首を傾げる恋たん。俺だってそんな風に現実逃避したいよ。

 

「マジで……なに、コレ?」

 

果たしてそこにあったのは、ねねたんが答えた通り、『侍女喫茶・北郷(ノース・ホーム)』と看板が掲げられた1軒の店。どうやって作ったのかもわからない塗料でピンクと白に塗られた外観、ポップな事態の看板、立て看板には『お帰りなさいませ、ご主人様』などと書かれている。

 

「へぅ…『北郷』と書かれているってことは、一刀さんのお店なんですよ、ね?」

「そうだと思う。場所も間違っちゃないし……」

 

月たんも、初めて見るタイプの店に戸惑いを隠せないでいた。

 

「と、とりあえず入ってみれば分かるんじゃない? アンタの妹がいるかどうか」

「お、おぅ。そうだな……」

 

詠たんに促され、俺は扉に手を掛けた。

 

 

 

 

 

 

ガラッ。

 

「お帰りなさいませ、ご主人様!」

 

出迎えたのは、スミレ色をした髪の、眼鏡少女。営業用のスマイルはいつもの通りだが、その服装が違った。

 

「今日はお帰りになるのが早いんですね」

 

どうやって考え出したのか、黒を基調とし、白エプロンで暗さを隠したミニスカメイド服。無駄にフリフリしていて、胸元の紅いリボンがアクセントとなり、人和の大人しさを隠すだけでなく、可愛らしさを全面に押し出した仕上がりになっている。

 

「連絡がなかったから、まだ何も準備してない――――」

 

そこで、ようやく彼女も開店前の来客が俺だという事に気づいたらしい。

 

「にい、さん…?」

「あ、あぁ……」

 

驚きに目を見開いた人和と同様に眼を見開いたままの俺。ただし、その驚きの理由は異なる。

そんな俺を他所に、人和は振り返り声を荒げた。

 

「姉さん達! 兄さんが帰ってきたわよ!」

「えっ、お兄ちゃん!?」

「アニキが帰ってきたの!?」

「天和…地和……」

 

三女の呼び声に、厨房から天和、奥の扉から地和が飛び出してきた。服装は言わずもがな――細かい違いはあるものの――三女と同じである。

 

「おにーちゃーーーーんっ!」

「アニキーーーっ!」

「兄さんっ!」

 

抱き着いてくる妹達を抱き締めながら、俺の頭は混乱に満ちていた。

 

何故、妹たちがメイド服なんかを着ている?

何故、居酒屋から喫茶店に変わっている?

何故、こんな水商売みたいな店になっている?

 

何故――――。

 

そして、出て来た言葉が。

 

「妹たちが……」

「お兄ちゃん?」

「アニキ?」

「どうしたの、兄さん?」

 

相変わらずの可愛らしい瞳で見上げてくる妹たちに目もくれず。

 

「妹たちが、グレちまったぁぁあああああああああああああああっ!!」

 

俺は現実から逃避するために駆け出すのだった。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

そんなこんなで、#48。

 

 

ようやく長沙まで帰ってきた一刀くん。

 

 

妹たちに何があったのか。

 

 

新たな妹の出現に、旧妹sはどうするのか。

 

 

そんなこんなでまた次回。

 

 

バイバイ。

 

 

 


 
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