No.597161

超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 リーンボックス編

さん

その4

2013-07-13 10:52:02 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:659   閲覧ユーザー数:626

「対女神システムーーーフォール・ダウン・ヴィーナスシステム、通称FDVシステム」

 

『えぇ、それが私とネプテューヌをあの時、弱体化させた代物よ』

 

ラステイションでの戦い。

大陸内で技術力の一位、二位を持つアヴニールが作り出した最強の兵器『ハードブレイカー』、それは凶悪な性能を持ち、高火力のレーザー兵器に大量のミサイルに加え、巨体とは思えないほどの旋回能力と機動力を持った俺達がやっとの思いで倒した代物だ。

特に俺達に追い詰めた物は、あの女神の力を吸収しているかのように見えたあの円盤のようなシステムだ。

あれが起動してから、半透明のバリアを発することが出来るようになり、防御力は格段に増した機動力も鎧を装着していない状態だと、目に捉えるないほどに。

 

「……なんで、そんなものが」

 

『こっちが知りたいわよ……でも、そんな代物を造るだけ女神に対して不安感を抱いている連中がいるのは確かね』

 

はぁ…とディスプレイ越しにノワールの憂鬱のため息が吐く姿が見えた。

今俺達は、リーンボックスの大手企業が開発したインターネット電話サービスでテレビ電話をしていた。

あちらはアヴニールや国政院の隠蔽してきた悪行を暴き出し、更に組織として一から見直すとしてラステイションのトップであるノワールが指揮を執っているとのことだ。多忙な時期の中で、俺に話したいことがあるらしくこうやっていま連絡を取り合っている。

 

「アヴニールがそのFDVシステムを開発したのか?」

 

『それについてだけど、謎の男に無償で渡された設計図を元にしたらしいわよ』

 

「謎の男?」

 

『えぇ、なんでもコスプレの様な燕尾服姿が特徴的な男性らしいわ』

 

その男はそんな危険な物を造ったのに、態々それをアヴニールに渡した?

こういうのもなんだが、そんなものがあれば過激派ギルドにもいけば十分資金と機材の確保は出来る。

それをしなかったのは、その男が態々そんなものを作っておいて何も要求せず渡したのは、あまりに可笑しい。

 

「その男の行方は?」

 

『不明よ。全く足取りが掴めないわ』

 

「……それは不味いな。……所でそのFDVシステムはどうなった?個人的には破棄したほうがいいと思うが……」

 

アレを使った時のノワールとネプテューヌの様子からしてかなり力が消耗してしまうんだろう。

もし、あれが長時間使用し続けられば、女神はそこらのモンスターですら苦戦を強いられてるまで弱体化されてしまうかもしれない。ギルドの過激派には親の仇の様に女神を憎む輩もいるのだから、そんなものはあってはいけない。

 

『とっくに破棄されたわよ。これまた、どこかの誰かさんに』

 

「……された?」

 

『えぇ、アヴニール本社の地下にFDVシステムを開発している実験室があったんだけど、地下室まるごと、まるでマグマでも流されたように(・・・・・・・・・・・・)全部真っ黒で機材は姿形も残っていないわ。更に技術博覧会のあの日、何者かが本社にハッキング攻撃を仕掛けてFDVシステムに関わる全てのデータだけを破壊尽くして復元不可能なのよ』

 

それはまたと呟いた。

アヴニールはあんなことを仕出かしたが、あれでもラステイションではトップ3に入るくらいの大手企業だ。

勿論、セキュリティはそうとう頑丈に造っているだろうが、それをあっさりと破りしかもFDVシステムのデータだけを破壊した。

少なくても言えるのは、そのハッカーは最初からFDVシステムのことを知った上で、それだけを狙ったことだ。

 

『本当に最初からなかったように(・・・・・・・)FDVシステムは闇の中よ。誰がそんなものを開発して、誰がそれを壊したのか……足取りはまったく掴めないわ』

 

「そうか……ところで、一ついいか?」

 

えぇいいわよとノワールはこの話が始まった時からどうしても確認したことが合った。一度、大きく深呼吸をしてゆっくり口を開いた。

 

「ネプテューヌ……あいつはプラネテューヌの女神なのか…?」

 

革新する紫の大地『プラネテューヌ』、四大陸の中で最も技術的水準が高く、今は女神不在とのことで守護の力が弱まり、モンスターの被害が後を絶たない大陸だ。

元から変身できる時点で、ネプテューヌは人間ではないというのは分かっていた。女神だとも疑って女神に作用するシステムが効いたということで既に答えが出たのだ。

しかし、仮にもだ。流石に……ネプテューヌは女神らしくない。明るく元気で常にテンションが高い、しかし後先考えず行動すタイプ故にしょっしゅうトラブルに自分から突っ込むような奴が、まさか最先端を行くプラネテューヌの女神だと誰が信じれる?

もっとこう……知的で凛々しくカリスマ溢れた女神を想像していたんだが。

 

『はぁ……、そうよあいつがプラネテューヌの女神、ネプテューヌよ。あんな奴に負けているのがいまだに納得できないわ』

 

「そ、そうか…」

 

『そういえば、ネプテューヌは記憶喪失なんだっけ?』

 

「あぁ、コンパ曰く地面に頭から落ちて、それが原因だと考えている」

 

『…………』

 

ん?ノワールの顔が険しい物へとなっていく。主に俺がコンパの名を口に出してからだ。

暫く沈黙が走り、どう話しかけようと悩んでいると、ノワールは俺に表情が見えない様にそっぽを向き、震えた声音で話しかけてきた。

 

『紅夜は、あの娘の彼氏なの?』

 

「………はぁ?」

 

ノワールの質問に思わず首を傾げた。コンパと俺が?

 

「違う、あいつはただの仲間だぞ?」

 

『で、でも…すごく仲いいように見えたし…』

 

「まぁ、確かにネプテューヌのパーティーだと多分コンパと一番仲がいいかもしれない……けど、そういう関係じゃない。それに俺よりいい男なんてたくさんいるし、あんな優しい娘には俺には似合わないさ」

 

俺はモンスター狩りという不定期でいつ死んでもおかしくない仕事をしているんだ。

そういう関係になってしまえば、俺はそいつに捧げてしまうんだろう。今までの力とか全部……俺は、みんなを守ってやりたい、救いたい。

だから、俺には背中を任せたらいけない。俺の理想が苦行で、いつなにが合っても可笑しくないのだから。

 

「……仲間だよ。あいつは」

 

『そ、そう……ちょっとだけ安心したわ』

 

「何か言ったか?」

 

『な、なんでもないわよ!』

 

耳まで真っ赤なノワールが振り向き凄い形相で叫んできた。一体なんだ?

 

『コホンっ、とにかく私から依頼があるわ』

 

「依頼?」

 

『出来るだけでいいから、その燕尾服の男とアヴニールを襲ったハッカーを調べてほしいの』

 

「な、それはめちゃくちゃだぞノワール……」

 

まともな手がかり無しでどうやって探せと?多分その両方は今はラステイションにいる確率は低いだろう。

だとしてもリーンボックス、ルウィー、プラネテューヌの大陸内を調べるとしてもまるで広大な砂漠から特定の一粒を探せと言っているものだぞ?

 

『報酬は保障するわ。……けど、私達女神の関係がいまどうなっているか知ってる?』

 

「守護女神ハード戦争…か」

 

『知っているとわね……ベールにでも聞いたかしら?』

 

「半分、愚痴だったがな……」

 

四大陸の水面下で起こっているシェアエネジーの取り合い。

四女神が集まりシェアエネジ―を武力によって奪い合う戦い。それが守護女神ハード戦争。

 

『えぇ、私が言うのもなんだけど女神同士の仲は最悪よ。それにアヴニールと国政院については完全に私の管理ミス、それが他国に流れてしまえばシェアが一気に失う可能性がある。……だから、いま他国に協力を要請することは今のラステイションには無理よ。それにあちらが都合よく頷いてくれるとも限らない。……四大陸とパスがあるあなたしか頼めないの紅夜』

 

「面子の問題か……女神も苦労しているんだな」

 

『それに関しては、言い訳できないわ。まだ信じられる優秀な人材が集まっていないの』

 

「了解した。こっちも色々と調べてみるよ」

 

『頼んだ方が言うの変かもしれないけど……いいの?』

 

ディスプレイに映るノワールは真剣で不安な表情だった。

面子の問題であるが、この案件事態にはさほど関係ない俺を巻き込むに罪悪感を感じているのか。

俺は、そのそんなノワールの心配ないと強めに言い放ち、笑みを造った。

 

「助け合うのが……友達だろ?」

 

『!……うん、お願いね紅夜』

 

ノワールは大きく開いた向日葵の様な笑みを造った。

お前に不安な顔は似合わないし、そんな表情を視れるだけでも十分やりがいがある。

 

「任せろ。信頼できる情報が手に入り次第、お前に連絡するよ」

 

『えぇ、分かった。……え、えぇっと』

 

もう話は終わったと終了のボタンを押そうとしたとき、ノワールは顔を赤くしながらモゴモゴ何か言っている。

何か伝えたいことがあるだろうか?俺は暫くノワールの伝えたいことが口に出るまで待つことにした。

 

『そ、その……!』

 

「ん?」

 

『ま、また一緒に買い物に付き合ってくれる…?』

 

切願の表情でノワールは恥ずかしそうに消えそうな声でそう言った。

………はっきり言わせてもらおう。

 

 

な ん だ こ の 可 愛 い 生 き 物 は ! ?

 

 

まるで道端で捨てられた子犬のように寂しそうな顔でこちらを真っ直ぐ見つめる眼差し、まるで金縛りでも掛かったように目を外せない。

うるっとした瞳からはどうしようないくらい保護欲が湧き出す!ディスプレイが非常に邪魔だ!

 

「勿論だ。お前が行きたいところに一緒に行こう」

 

『い、言っておくけど別にこれはデートじゃなくて、ただいっぱい物を買う予定だから男の手を借りたいだけなんだからね!』

 

「はいはい、分かっているよ」

 

正気に戻ったように言い訳を口にする顔真っ赤なノワールに俺は微笑んだ。

なんだか、この頃は凄く毎日が楽しい。思い悩むことはたくさんあるけど、それでも俺には守りたい笑顔と守りたい未来がある。

まだ一年しかこの世界で俺は生きていない。繰り返される日々に思い出が重なっていく。

辛いこともあったし、楽しいこともいままで合ったが、それでも今の俺は間違いなく幸せだ。必死で弁解するノワールの声をBGMに明日は一体何があるかと俺は胸を躍らせた。

 

 

 

 


 
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