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GGO~剣客の魔弾~ 第29弾 因縁の再会

本郷 刃さん

第29弾です。
因縁の再会にして邂逅、果たしてハジメとキリトはどうするのか?

どうぞ・・・。

2013-07-03 10:14:53 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:9572   閲覧ユーザー数:8604

 

 

 

 

 

 

 

 

第29弾 因縁の再会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメSide

 

砂漠を駆け抜け、奴と真正面から相対した私は右手の銃剣『バヨネット・ソードモデル』で死銃へと突きを繰り出す。

しかし奴は僅かに状態を逸らし、そのまま針のような刃で高速の突きを放ってきたが、それを回避し、後方へと引く。

奴との距離は約5m。

 

「……エストックか。この世界に反して、随分と珍しい武器を使うものだな。どうすれば手に入る?」

「銃剣を、持っているにしては、不勉強だな、【黒の剣帝】。

 《銃剣作成》スキルで、作れる。長さ、重さは、この辺りが限界、だがな」

「……そうか、覚えておこう」

 

ふむ、長さと重さに限界はあるが…作ることは可能、か。私の返答に奴は愉快そうに声を出す。

 

「刀を使う、お前には、その程度のものは、大いに不満、なんだろう、な」

「……別に問題はない。刃があれば…いや、刃がなかろうと、お前は私が潰す」

「くくく、やはり、お前は、面白くて、いいな」

 

顔を覆うスカルフェイスのマスクが怪しく笑った気がするのは、気のせいではないはずだ。

実際、奴から放たれる濃密な殺意がそれを認識させているのかもしれない。

 

「【黒の剣帝】、腕が、鈍ったか? 現実世界の、腐った空気を、吸い過ぎた、だろうに」

「……攻撃の精度のことを言っているのなら、それは当然だ。

 先程のはただのジャブ、それに…現実世界での命のやり取りを知らないような人間に、本気を出す必要もない」

「なんだ、と…?」

 

こちらを挑発するつもりで言ったのだろうが、逆にこちらの挑発に耳を傾けてきた。

 

「……私やキリト達は、現実世界で殺しの手段(殺人剣)を習得している。

 故に、命のやり取りであったSAOや現実とは違って、お前如きに本気を出す必要もないということだ」

「お前、殺す…!」

「……随分と沸点が低いようだな? リーダーの指示を仰がないと、何も出来ないのではないか?」

「………」

 

“リーダー”という単語を聞いた辺りから、僅かにだが自制するような気配を感じた。

 

「……『ゼクシード』達を殺したのは、黒星(ヘイシン)の力でもなければ、お前自身の能力ではないのだろう?」

「なら、なんだと、言う?」

 

喰いついたな…。相手の両眼を睨みながら、今回の一件における手口を語る。

 

「……『メタマテリアル光歪曲迷彩(オプチカル・カモ)』製のマントを使い、

 総督府の端末で大会出場者の住所を調べ上げ、部屋に予め共犯者を侵入させ、銃撃に合わせて薬品を注射、

 心不全による変死を演出…多少の差異はあれど、これが大まかなシナリオということだ。

 そうだろう?……SAO史上最悪の殺人(レッド)ギルド、『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)』の幹部であるトップスリーの1人、

 刺剣(エストック)使いの赤眼を持つ男、『XaXa(ザザ)』」

「…いつから、気付いて、いた…」

 

特に否定する様子は見せないが、赤い眼を細めたのには気が付いた。

 

「……手法を予想出来たのは先程だが、お前であるとは最初の段階から予測していた。

 その擦過音が混じったような喋り方をするのはお前くらいなうえに、赤眼を表現してくれていたからな」

「本当に、面白い、奴だ。だからこそ、殺りがいが、ある」

「……お前に私は殺せない。この世界のお前を、私が殺すからだ」

 

私もゲーム内とはいえ本気の殺意を滲ませる。

この男とその仲間の手により、SAOを含めて数多もの無辜の命が奪われた。

命を奪ってきた私が言えることではないが、仮想世界を現実へと窶した人間に、

現実(いま)を生きる私が負けるわけにはいかない。

 

「だが、いいのか? あの女と、アスナを、放っておいて」

「……どういう意味だ?」

「俺が何時、この世界にいる、死銃が、俺だけだと、言った」

 

そうか、やはりこの世界にいる『死銃』はコイツだけではなかったか。

 

「……あぁ、そのことか。それならば少しの心配もしていない」

「なに…?」

 

私が感じたもう1つの悪意と殺意、それにキリトが気付かないはずがない。

私はシノンとアスナがいる場所に視線を向け、死銃(ザザ)もそちらへと僅かに視線を向けて、

その赤い眼を大きく点滅させた。

 

「バカ、な…」

「……アレこそが、私達の王【漆黒の覇王】キリトだ。さぁ、私達も始めよう…戦いを」

「…殺して、やる! お前も、アイツらも!」

 

シュー、シューという懐かしき擦過音を鳴らしながら殺意を漏らすステルベンことザザ。

私は銃剣を左手に持ち替え、奴へと向けて移動、私の銃剣と奴のエストックがぶつかり合った。

そして、私の銃剣が砕け散る。

 

「……恐ろしいまでの強度だな…」

「このゲームで、最高の金属だ。宇宙戦艦の、装甲板らしいぞ。くっくっく…」

「……砂地でのステップは師匠に教わったから、回避はどうとでもなるか。ならば私もコイツでいくとしよう」

 

砕けた銃剣の代わりに、新たに光剣のマットブラック塗装を展開する。

 

「……まだまだ相手になるぞ、ザザ」

「こい、ハジメ…!」

 

再び剣を交える私達。私の光剣はすり抜けたが、それでも奴の攻撃を回避する。

厄介だが、勝ってみせよう。別の地点で、他の悪意と戦っているキリト達に応える為に。

 

ハジメSide Out

 

 

 

キリトSide

 

駆け抜ける俺はその悪意の気配を感じた場所、アスナとシノンがいる洞窟のあった岩山へと全速力で向かう。

ハジメは死銃と対峙し、アスナとシノンは役目を終えたと気を抜いてしまっているかもしれない。

それに、もしもあの悪意が俺の勘から外れていなければ、間違いなく奴は…!

 

「間に、合わせて、みせる…!」

 

言葉を漏らしながら、走り抜ける。

岩山の頂上にいる2人を視認、ホッとしたのも束の間、2人の背後に幾つかの光の粒が流れた…まさか!?

 

「アスナァァァッ! 後ろだぁぁぁっ!」

「っ!? ハァッ!」

 

俺の叫び声に気付いたアスナは、すぐさまその右手に持っていた白の光剣を振り返りながら振るった。

続けて彼女は『コルト・ガバメント』を連射する。

そこに現れたのは、不気味な道化師(ピエロ)のような仮面を着けた人物だった。

取り敢えず2人は無事だが、あの道化師がどれほどの実力者か分からない。

 

「ふっ!」

 

俺は岩山の下に辿り着くと岩の僅かな突起部分を蹴り上げながら、10mという高さを登り上げた。

 

「オォォォッ!」

「ちっ!」

 

―――ガキィンッ!

 

俺は頂上に到着するやいなや、すぐさま道化師に斬り掛かった。

 

「「キリト(くん)!?」」

 

俺の声を聞いたとはいえ、いきなり現れれば驚くだろうが、いまはそんなことを気にしている場合ではない。

だが、そこにシノンの声が掛かった。

 

「待って、キリト! その人は『フィンズ』、私の知り合いで…!」

「シノンの連れか? 随分と好戦的だな」

 

俺を止めようとするシノン、確かに『フィンズ』と呼ばれた道化師は彼女の知り合いのようであり、

2人の様子を見ているアスナは相手が武器を下ろしたのを確認し、少し申し訳なさそうにした。

だが俺は、警戒を緩めずに右手の『フォトンソード・カゲミツG4』マットブラック塗装を道化師に突きつけたまま殺意を放つ。

 

「いまは『フィンズ』なんて名乗っているのか?

 その濃厚な殺意と悪意は忘れられるものじゃないんだがな……そうだろう?

 殺人ギルド『ラフィン・コフィン』のトップスリーにしてリーダー。

 俺を殺したかっただろ、『PoH』?」

「え…?」

 

俺の言葉にアスナは驚愕を含めて小さく呻いた。

シノンは意味が解らないという表情をしているが、仕方がないだろう。

だが間違いなく、目の前の男は笑っている。

 

「Wow、さすがはキリトだな。相変わらずOccultみたいな感覚をしてやがる」

「当たってほしくはなかったがな…SAOの『第2次ラフコフ討伐戦』以来か。

 いや、ALOでお前が実験体にされていた時が正しいのか?」

「他の人間は、その辺の記憶がないみてぇだな?俺にはくくく、印象が強かったが」

「その精神力と執念だけは買ってやるよ…」

 

なんせこいつは、須郷を殺したのだからな…。

だが証拠などがない以上、俺の見たものも証言に一切ならないので、『神霆流』の胸の内に秘められているが。

 

「ゲームの中とはいえ、お前の女とターゲットのシノンを殺せば、面白そうだったんだが…上手くいかなねぇなぁ?」

「俺達がこれ以上のことをさせると思ったのか?」

「くく、それもそうだな」

 

まるで友人との会話のようにも聞こえるだろうが、内容は物騒極まりない。

アスナは先程とは打って変わって警戒を一切緩めず、

シノンもまさか知り合いが死銃の仲間だとは思わなかったのだろう、恐怖している様子が窺える。

 

「1つ聞きたい。お前がこのゲームにいたのは偶然なのか?」

「まぁな。PKがOKなGAMEだ、少しばかりは楽しめそうだったとこで、ザザの奴がやっていることを知ってな。

 今回の計画を持ち込ませてもらったってわけだ」

「第2層の詐欺事件といい、PK手段の考案といい、頭の回転とカリスマ性は高いくせに、

 やたらと物騒なことばかり引き起こしやがるな」

 

SAO第2層での詐欺事件を提案したのも、様々なPK手段を考案して広めたのもコイツだった。

やけにカリスマ性も高いのでついていく面倒な奴らまで多い。

 

「まぁそう言うなよ…楽しめただろ?」

「殺すぞ、貴様ぁ!」

 

笑みを浮かべながらそんなことを抜かすフィンズことPoHに対し、俺は抑えきれん怒りと殺気をぶつけたが、

それでも奴は口笛を吹きながら余裕な表情を見せている。

それとは逆に…。

 

「キ、キリト、くん…」

「あ、ぁ…」

 

俺の後ろにいるアスナとシノンの苦悶の声が聞こえる。

精神を攻撃されているも同じ状況だ、俺はゆっくりと怒気と殺気を弱めた。

 

「アスナとシノンはここに居ろ……行くぞ!」

「ぐっ…!」

 

俺は2人にそう言い残すと、瞬時に足に力を溜めて解き放って接近する神霆流の歩法術《零間》を使い、

左手で奴の頭部を仮面ごと鷲掴みにして移動した。

 

「Suck、随分と手荒い真似をするじゃねぇか…」

「これくらいが丁度良いだろう? 俺達には」

「違いない」

 

俺は獰猛な笑みを自分で浮かべているのが分かる。

恐らくは奴も、仮面の下では嫌な笑みを浮かべているのだろうな。

俺の右手には漆黒の光剣、左手には純白の光剣が光を放つ。

一方、奴の右手にはある刃は細いものだが、間違いなくかの魔剣『友切り包丁(メイトチョッパー)』を思わせる刃を構えている。

 

「殺す!」

「It’s show time!」

 

俺達は同時に砂漠の砂を蹴り上げた。

 

キリトSide Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

本作ではキリトの前に、あのPoHさんが現れてくれましたぁ!

 

キリトVSPoH、ハジメVSザザ、結果は分かりきっているかもしれませんが、彼らの戦いをお楽しみに!

 

次回で本選は終了となりますので、最後の戦いを括目してみてください。

 

それでは・・・。

 

 

 

 

 


 
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