No.593218
超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 リーンボックス編2013-07-01 12:30:10 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:616 閲覧ユーザー数:586 |
ーーー人の賢者は考えた。どうすれば敵を倒すことが出来るのかと、結論は己の体での暴力だった。
ーーー二人の賢者は考えた。どうすれば効率よく敵を倒すことが出来るのか、結論は武器を使っての暴力だった。
ーーー三人の賢者は考えた。どうすればより効率よく敵を倒すことが出来るのか、結論は拳銃を使っての自分の手を汚さない暴力だった。
ーーー四人の賢者は考えた。どうすれば更に効率よく敵を倒すことが出来るのか、結論はスイッチ一つで全てを破滅させる無垢な暴力だった。
ーーーさて問題です。ここまでで得た物と失った物はなーんだ?
ノイズーーーそれは、そう表現するにぴったりだった。
黒と白が複雑に点滅しながら、耳を劈く忌々しい音色を鳴らしていた。
俺はただ、そこにいた。距離の概念を感じない、意識すらぼやけている空間にいつの間にかいた。
まるで、壊れてしまったテレビに入り込んだかのようなこの現象に混乱しながら周囲を見渡すが、目に入るのはノイズのみだった。
精神的にダメージがくる映像と音。体の感覚がない幽体離脱でもした気分だ。
ーーー■■■■■■
ノイズ音以外の声がした。
混沌した世界に、人の声がした。
ーーー■■■
混沌を切り裂いて、光が差し込んだ。
それはとても優しくて、温かい光で魅入られてしまった俺は光の中には一つの光景があった。
小さい手を守る様に左右の大きな手が優しく握っていた。
霧が掛かった意識が薄れていく、時間切れなのは本能が理解した。あの光の先に俺の過去があるーーーけど、今の俺には、伸ばす腕すらない、近づく足すらない、許されていない。そして、俺の全ては暗黒に染まって反転した。
「…………あっ」
手に落ちた雫の熱に意識は覚醒した。
全体が微かに揺れる音、俺は乗っている高速鉄道を走る新幹線。
窓から見える光景は森林に埋まっていた。既にラステイションを抜けリーンボックスの街に近づいているんだろうと内心考えて、目元を擦って涙を拭いた。
「……………」
なぜ、俺が泣いていたのか、それはただ手を繋いでいるあの光景の所為なんだろう、ただ心の底から悲しみが後悔が溢れてくる。
始めた見た俺の過去のシーンは、俺には理解できない。ただ後ろめた想いが浮かぶだけだ。
◇
「よし」
右手に箒、左手に雑巾、顔にマスク、そして服装はジャージーーー正に掃除をするためフルアーマー状態の俺は、綺麗さっぱりになった部屋を見て一息ついた。
ラステイションでは、予定以上に時間を消費していた結果、家に帰ってくれば所々が埃っぽいだったので大急ぎで掃除をした。
太陽は空の天上に昇っていて、もうすぐでお昼だ。
午後からは、ベールが遊びに来い的な不機嫌な文章をしたメールが送信されていたので、これから昼食を取り教会に遊びに行く予定だ。
『なんだか、平和だね欠伸が出るくらいに』
「……そうだな。色々合ったな…」
耳を澄ませば元気な小鳥の囀りと木々が奏でる自然の音楽が聞こえる。
街から少し離れた木造建築の俺の家は、いつもこんな調子で安心感を齎してくれる。
ラステイションでは色々と合ったが、無事に解決して事件の傷跡は残っているがあそこの女神、ブラックハートことノワールなら傷を癒してくれるだろう。
ゴミをゴミ袋に詰め、教会に行くついでに街の焼却炉行きに向かう準備をして昼食を準備する。
『思ったんだけど』
「ん?」
手作りのドレッシングをかけたサラダを食べていると、デペアが呟いた。
『ニヒル、君は専業主夫として働けるんじゃない?結構マジで』
「……はぁ?」
何、言ってるんだこいつ。……ん、ちょっと味が薄いな。
『性格いいし、料理は平均より上クラスだし、なによりイケメンだし、モンスター狩りなんて危なくて不定期な仕事はやめたら?』
「言ったろ、デペア。俺は困っている人たちを救える仕事がいいんだ。特定だけの人に仕えるなんて絶対に無理だ」
『………はぁ、その思想は、まるで使い捨ての英雄だよ』
デペアは深いため息をして俺に呆れていた。
使い捨ての英雄……少なくても、俺よりずっと様々なことを知って、経験しているデペアに俺はそんな目で見られるのか。
けど、それもいいかもしれない、それでも誰かの絶望を振り払えたなら俺はそれで満足だ。
「ごちそうさま」
丁度の時間になったので、いつもの漆黒のコートを羽織り俺は教会に向かうため、家から出た。
外に出るとともに眩しい陽光が目に入ってきた。空は晴天で昼時、太陽の輝きは一層強くなる頃だ。
フードを被り、ゴミ袋を手に俺は、ベールが待つ教会目指して足を進め始めた。
◇
「紅夜」
ゴミ袋を捨てると聞き覚えのある声に俺は振り向いた。
そこには、動きやすそうなメイド服のような服装をした黒いリボンで紅いツインテールをした冷淡な顔つきが特徴的な俺にとって恩人の一人であるケイブ先輩だ。
「久しぶりです。ケイブ先輩」
「えぇ、……ラステイションはどうだったかしら?」
「なかなか、刺激的な毎日でした」
苦笑しながら答える。
異常なモンスターとか、空とか、ノワールとか。
とにかく自分一人じゃ何もできなかったかもしれない。そう考えれば、本当にネプテューヌたちとの出会いは良かった。
ケイブ先輩は街の警備中で、俺の目的地である教会まで付いてくることになった。
「無事に帰ってきてくれて良かった」
「簡単にやられるほど、弱くありませんよ」
「もう解決したらしいけど、ラステイションでは大きな事件があったらしいから、心配したわ」
「………へ、へぇ」
「噂では、紅夜ぐらいの男性と少女三人組とブラックハートが解決したらしいわ」
中世を感じる街中を歩きながら必死で冷や汗を抑える。
別に隠す必要はないかと思うが、心配させるのは嫌だ。
幸福か、不幸か、ケイブ先輩は人の機微に疎く隠しきれるはず……。
「………紅夜?」
「ひゃあい!?」
突然、声をかけられ思わず奇鳴が喉から出てしまった!不味い!
「……どうしたの?」
「な、なんでもありません!」
「…………」
目を細めて睨むような視線と共に静かなプレッシャーを送ってくるケイブ先輩。
背中に脂汗が流れていく、必死で視線をずらしながら、何か打開策はないかと脳内をフル稼働する!
「……仕事に戻るわ」
「……はい?」
「困ったことがあったら、いつでも頼りなさい」
ため息を一つ、ケイブ先輩は人混みの中をものともせず消えていった。……とりあえず、助かった?
『(絶対に気づいているよ。バカ)』
……なんだか、デペアにバカにされた気がした。
既に目的地である教会は目の前だ。
だが、俺は普通に行くのではなく教会の裏を回る様に迂回した。
仮にも、会う予定の人物はこの国のトップの権力者である女神ベールなんだ。遊びに来ましたーどうぞ、どうぞ……なんて、俺とベールの間ならともかく、教会関係者は眉を細めて色々と言ってくるので、ベールは気にしていないが、俺は教会関係者に睨まれるのはキツイので、公共な場所での出会い以外は、ベールの部屋に直接おじゃまするようにしている。
周囲に人気いないことを確認すると、魔法により風を操作、目の前の教会のある一点、わざとらしく空いているベールの部屋を狙って俺はその場から跳ぶ。
「おじゃまするぞ。ベー………」
窓際に足を置いて彼女の名前を呼ぶ声が止まった。
何故か、ベールはゲームをしていた。
いつもの狩ゲーや、彼女が嵌っているPCゲームの女神オンラインをしている訳ではない。俺の視線の先にはベールがプレイしているディスプレイに表示されているCGとボイスだ。
『や、辞めてくれ僕は男だよ・・』
『男だろうが関係ない。お前は俺の
『う、うわぁぁぁぁ!!』
………ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!!
何がヤバイのか俺も良くわからないけど、ネプテューヌシリーズだと絶対にありえないジャンルの展開が広がっている!!!
到底、この小説の設定であるR-15では描写してはいけないイベントが発生している!?
「おじゃましましたぁぁぁぁ!!!!」
本能に赴くままに足を動かす。
この場所はとにかく危険だ!
「まぁ、お待ちになって」
「ぐぇぇ!?」
ベールに背中を向けた瞬間、強い衝撃が意識に直撃した。
コートの襟首部分を捕まれた刹那に壁を蹴ってしまったので、下半身だけが宙に舞い上半身は女神の力でガッチリ固定されて首が思いっきり縛られ、意識が消えかけた。
「あ、うぅ……べ、ベール……」
「お久しぶりです。紅夜」
空の畏怖感すら感じる黄金色と髪と違い、優しく包み込むような金髪に温厚な容姿、そこらの一般人とは次元が違うほどの美しさと存在感を醸し出す存在。
雄大なる緑の大地の女神であるベールが微笑んでいた。
「けほ、けほ……」
「ごめんなさい。つい、反射的に手が出てしまいましたわ」
ガチで意識が無くなるかと思った。
無事(?)にベールの部屋に入ることが出来た俺は、窓際に靴を置いて相変わらず半裸の男性のポスターや本を詰めるように納められている様々なゲーム、ガラス箱に清潔な状態で入っているフィギュア……正にオタクのような部屋を見渡す。
「手加減しろよ……」
「手加減していたら、逃げられていましたわ」
「そうだけど……」
ーーーおえぇぇぇぇぇ!!
デペア!?お前、俺の中で吐くなよ!
ーーーボク、百合とかなら芸術と褒め称えるけど……無理、BLとかゲイとか絶対に無理ィィィィ!!
ゲロゲロと冒涜的な音色と共にデペアとの感覚が切れた。………心の中に箒とかあるのかな。out。
「紅夜?顔色がよくありませんよ?」
「誰の所為だと思っているんだよ……ったく」
不機嫌に顔を歪めている俺にベールは慈悲深い笑みを浮かべ、優しく俺の頭を撫でる。
物凄く歯痒い気分になったが、そういえば今日のベールの声はどこか覇気がないような……
「……なぁ、ベール」
「なんでしょうか?」
「徹夜、何日目だ」
「三日目ですわ。先ほどから眠くてしかたありませんわ……ふぁっ」
良く見るとベールの目下には、くっきりと隈が出来ている。
またオンラインゲームでのイベントに精を出していただろう、まったくここまで極めるゲーマーはそうはいないぞ。
「体を壊すぞ……俺のことはいいから早く寝ろ」
「…でも、せっかく来てくださったのに……そうですわ」
いいことでも思いついたようにベールは小さく手を叩き、俺に正座しろと言ってきた。
頭に疑問が浮かぶが、とりあえず従い正座するとベールは腰を落として俺の膝に頭を置いて横になった。
「んー、少し硬いですわね」
「お、お前………」
思わず、顔が紅潮する。
既にこの体制が出来上がってしまったので、退けなんて言えない。
動揺して、何を言えばいいか混乱していると徐々にベールの声が聞こえなくなり、寝息へと変わる。
「……まさか、これがしたいために俺を呼んだんじゃないだろうな」
既に寝てしまい、何気に俺のコートを掴んで寝ているベールに呟くが返事は帰ってこなかった。
時刻はまだお昼、一体いつになったら起きるだろうか、俺の足は持つのだろうか……微かな心配が脳裏に過ったが、幸せそうに眠るベールをみれば、そんなことはどうでもよくなった。
帰ってきたんだ。俺にとっての故郷となった大地に。
開いた窓から入ってくる雄大なる自然が生み出す優しき風を感じながら、壁に体重を掛けて俺も静かに瞳を閉じた。
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その1