第16弾 予選終了
キリトSide
アスナへのご褒美(なにをしたかは分かるとおり)を終えて、ハジメのところに戻り、最後の予選決勝の様子を見届けた。
明日はついに本大会となり、俺とハジメとアスナの本来の目的を達する事が出来るのか…。
相手はラフコフの残党と思われる人物、可能性としては『赤眼のザザ』である。
だが謎なのはどうやって殺したか、という一点。
ゲーム内で殺したからといって、現実世界で死ぬはずはない…ならば、どんな手段を用いたのか。
警戒するに越したことはないな…。
「3人はこれからどうするの?」
「とりあえず、今日はもうあがろうと思ってる。銃の戦いは初めてだからな、少し疲れた」
「わたし、大分疲れちゃった…」
「……まぁ、仕方がないだろうな」
シノンがそう訊ねてきたので、俺は取り敢えずここまでと答える。
アスナも疲れた(色々な意味で)ようだし、ハジメも奴と接触した事から精神的な疲労が窺える。
「そう、分かった。それならまた明日、本大会で会いましょう。私が勝つけど…」
「こっちも本気でいかせてもらうからな」
「……楽しみにしている…」
「それじゃあね、シノン」
不敵な笑みを浮かべて言ったシノンに、俺達はそれぞれ応え、GGOからログアウトした。
キリトSide Out
和人Side
「ふぅ、疲れた…」
「わ、わたしは、違う意味で疲れたよ…///」
明日奈の言う違う意味とは十中八九、最後のアレなんだろうが…まぁいいだろう。
しかし、目が覚めて隣に上半身ブラ姿の彼女……うん。
「明日奈、襲っていいか?」
「○△☓◆☆っ/////////!?」
「……はぁ~…やめないか、2人とも」
俺の一言に明日奈は言葉にならない声を上げ、仕切りの向こうにあるベッドから景一の咎める声が聞こえた。
「冗談だよ、冗談…。さすがにこんな時間だし、明日奈に無理させるわけにはいかないし」
「(ぼそっ)それはそれで、残念な気も…//////」
隣で彼女がそう呟いたがさすがにスルーする、既に時刻は夜8時を超えている。
明日奈は俺とデートということになっているのでご家族は心配していないだろう。
夜までデートということなので、なんか期待されていた気もするが…。
とにもかくにも、今日のログインはここまでだ。
あとは明日、夜の8時からだが準備なども含めて少し早めに来よう。
「3人ともお疲れ様。どうだった、ゲームの方は?」
「収穫あり、という感じですね。安岐さんも長時間ありがとうございました」
「なんのなんの、これが仕事だからね。明日も来るんでしょ?任せておきなさい」
安岐さんが少し疲れた様子を見せながら話しかけてきた。
明日も頼むことになるので少し申し訳ない気もするが、頑張ってもらおう。
電極を取り外したあと、服を着た俺達は諸々の準備を整えてから、病院をあとにした。
景一は先に帰る事になり、俺はバイクで明日奈を彼女の自宅まで送っている途中だ。
しばらくして彼女の自宅前に着き、明日奈はヘルメットを脱いで俺に渡した。
「送ってくれてありがとう」
「明日も迎えに来るから。しっかり休めよ?」
「それは和人くんも、だよ♪」
「はは、違いない」
明日奈はバイクに座る俺に寄り掛かって話し、俺は彼女を優しく抱き締め、俺達の間に穏やかな空気が流れる。
だが、明日奈はその空気を破った。
「和人くん、『
「…正確には、ハジメがそれらしい奴と遭遇したらしい。正体については、心当たりがあるそうだ」
「そっか…」
今度はしんみりとした空気が漂う。
敢えて最も可能性の高いザザの名は出さなかった、それは彼女を惑わせるかもしれないから。
俺も明日奈も、恐怖がないといえば嘘になる。それでも…、
「俺には明日奈がいる…」
「わたしには和人くんがいる…」
この事実が不安を掻き消してくれる。
「「俺(私)達は、1つだ(よ)」」
唇を重ね、深いキスを交わし合った。
明日奈と別れて自宅へと帰り着いた俺はリビングに入った。
そこにはスグが作り置きしてくれたのであろう、軽食としてサンドイッチが手紙とともに置かれていた。
コーヒーを用意してから、サンドイッチを口に含む。
手紙には一言、『お兄ちゃん、良かったら食べてね』とだけ。
それが凄く嬉しかったのは、家族の有難みを知っているからだと思える。
多分、スグはALOにダイブしているのだろう、家は静かなままだからな。母さんもまだ帰っていないし。
それを確認してから軽くシャワーを浴びる為、自室で着替えを用意してからシャワーを浴び、再び自室に戻った。
「しかし、どうしたものかなぁ…」
ベッドに寝転がりながら呟く。何度も考えた事だが、『死銃』とどう相対するべきか。
そもそも、ネットを通した殺人とはどんなものか、考えれば考えるほど不可能だ、有り得ないとしか結論がでない。
いまからでも菊岡に連絡して、SAO生還者の情報を提供してもらうか?
『ザザ』のリアルでの個人データを……駄目だ、確かSAO内での詳しい記録などが残っていないから、
犯罪者として立証できないし、情報が取れないはずだ。
「八方塞か……やはり、直接相対するしかないな…」
それが命懸けになるとしても、直接戦って確認するしかない…。
俺は決意を新たに、明日に向けて眠ることにした。
和人Side Out
詩乃Side
キリト達がGGOからログアウトして、明日の為の準備を整えてから私もログアウトした。
ベッドで目が覚めて、瞼を開けば、アパートにある自室の天井が目につく。
そして頭の中にある人の顔が浮かんできた…。
「ハジメ…///」
彼の顔が思い浮かんできた。
頭の中を過ぎるのはハジメの小さな笑みや真剣な表情、静かに佇む様、
そういったものが順番に流れてきて……ハッとする。
「な、なにを、考えてるのよ、私は…///」
なんでハジメを思い浮かべるのよ~/// 私は、ケイの事が好きなのに…///
そのために、GGOで乗り越えようとしているんだから…!
「お風呂に入ってスッキリしよう…」
頭を振りかぶり、ベッドから起き上がってお風呂に入る事にした。
上がってからは予め用意しておいた夕食をレンジで温めてから軽く食べ、
明日に備えて今日はゆっくりと休むように眠りについた。
詩乃Side Out
景一Side
「……ただいま」
「お、帰ったな。おかえり」
「……父さん、今日は早かったんだ?」
家の鍵が開いている事に気付いてドアを開けると、リビングから父さんが顔を出した。
「ここのところ忙しかったからな。部下にも偶には早く帰るように、と言われてな」
「……そっか」
父さんは警察に勤めており、役職は警視庁の警部である。
本来なら、警視としての職についてもおかしくないほど勤め、事件を解決したこともある。
だけどそれは5年前の私の事件が原因で、その話しが流れたらしい。
警視の息子が被疑者とはいえ人を殺したとなれば、問題となることもある。
大人の都合と言いたいが、自分が原因であるんでなんとも言えない…。
まぁ、父さん自身は階級や役職なんてどうでもいいと言っていた、
警察官であれば交番勤務でもなんでもいいと…。
というわけでかなり尊敬しているが、恥ずかしいので言わない。
「今日は桐ヶ谷君達と遊んでいたのか?」
「……うん。あ、ビール注ごうか?」
「あぁ、頼む」
ビールを飲む父さん、愛用しているジョッキが空になったので残りを注ぐ。
「それで、詩乃ちゃんとはどうだ? 最近会ったりしているんだろ?」
「……正直、少し心配してる…。学校で、イジメに遭ってるみたいなんだ…」
「なにっ、本当か?」
私の言葉に驚きを隠せない父さん。
「……大分前からみたいだけど、本人は自分でなんとかしようと思っているみたいなんだ。
だから、こっちから何かするわけにもいかない」
「そう、か…。保護者代わりとしては、なんとかしてあげたいが…。あの娘は強い娘だ、信じるしかないかもな…」
詩乃が東京に進学する際、ウチの両親が保護者代わりとなった。
そうでなくとも気に掛けるつもりだったろうけど。少し空気がしんみりとした時、
「ただいま~」
「お、母さんも帰ってきたな」
「……おかえり」
玄関の方からパタパタとスリッパで歩く音が聞こえ、母さんがリビングに入ってきた。
母さんも仕事が終わって帰ってきたらしい。
「ただいま~って、あら? あなた、帰ってきてたのね?」
「……みんなに早く帰るように言われたらしいよ」
「はっはっはっ、そういうことだ。ほら、母さんも着替えてきて一緒に」
「そうね、折角だから頂いちゃいましょ♪」
母さんを晩酌に誘う父さん、しばらく2人の話に付き合ってから、自室へと戻った。
「……ふぅ、父さんも母さんも、元気だな…」
2人とも40後半を超えている割には非常に若々しく、仕事をバリバリとこなしている。
酒に酔うと大変なのでさっさと逃げるに限る。
寝間着用の服に着替えてからベッドに横たわり、今日のことを考える。
「……『赤眼のザザ』か…本当に奴なのか、それとも奴らに近しい上位の奴か…」
なんにせよ、これでいよいよ油断は出来ない…元々するつもりもないが…。
明日がとにかく本番である、ゆっくりと休むことにしよう。
景一Side Out
To be continued……
後書きです。
今回は休憩回的な話しになりましたね・・・一応、景一の家族も登場しました~。
和人と明日奈は相も変わらずイチャついていますけどねw
次回はGGOにダイブする前の一コマという感じの話しになりますよ~。
それでは・・・。
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第16弾です。
ついに予選が終了し、リアルに戻った和人達の話しです。
どうぞ・・・。