第14弾 剣の射手VS氷の狙撃手
ハジメSide
第5回戦を終えた私は、再びテーブル席に座って大型モニタに映る試合を眺めていたが、キリトとアスナの戦いに思わず苦笑した。
結局、キリトは一度も剣を持たずに予選決勝戦まで駒を進め、アスナ相手でも剣を持たないつもりらしい。
それは余裕の表れか、とも思えるが……実際は本大会における牽制、警戒だ。
私達が決勝戦に行くまでに『死銃』らしきプレイヤーと戦わなかったからでもある。
私は接触してしまった以上、手札を見せることでキリトやアスナへの警戒を緩めさせたが…。
ただ、このキリトVSアスナが始まる前にキリトから話を聞いたが、
3回戦から5回戦までのプレイヤーがあまりにも強く、正直危なかったらしい。
そして現在行われているEブロック決勝、他のブロックよりも早く行われており、2人の近接戦を交えた戦いは眼を瞠るものだ。
だがそこで、決着がついた……アスナが降参し、キリトが勝利した。
「……どちらもさすがだな…」
呟くと近くにアスナが転送され、次いでキリトも戻ってきた。
2人の登場に周囲に少しだけどよめきが起こった。
あれほどの戦闘を見せたのだ、それも当然である。
「……さすがは覇王だな、アスナ相手に剣を1本も使わないとは…。アスナも良い線をいっていたんだが、惜しかったな」
「ALOだったらこうはいかなかったさ、細剣と光剣ではまったく違うからな。だが、貫録を見せるには十分だろう」
「うぅ~、キリトくん強すぎるよ~…」
キリトの言葉を聞いて、手枷を着けていた事を知り、少々呆れた。
アスナはアスナで負けたのが悔しかったのか、何処か拗ねた様子を見せている。
「機嫌悪いな~、どうしたんだよ?」
「だって、その…ご、ほうび…//////」
ああ、そういう事か…。差し詰め、アスナを戦わせる為にキリトが何か言ったのだろうな。
「アスナ、俺は何も勝てとは
「え?なら……「期待してくれて構わないよ」…あぅ//////」
はぁ、もとよりその気だったくせに、何を言うのか…。もう少し自重してほしいものだ。
「それで、シノンの様子は?」
「……狙撃手、しかもかなりのベテランだからな…。私もそうだが、フィールドによっては少し
俺の表情で悟ったのか、キリトは苦笑しながら聞いてきた。
私も狙撃手だが、どちらかというと接近戦の方がむいている。
ま、それでもどうにするが…。
「降参は考え……るわけないよね?」
「……私達をなんだと思っているんだ、アスナ。それはまずありえないな」
アスナは降参しないのかと聞きたかったようだが、途中で言葉をそう変えた。
全力で戦う、まずはそれだけだ。
その時だった…モニタに視線を移してみると、シノンの狙撃が命中し、見事に勝利を収めた。
「……出番のようだから、行ってくる」
「思いきりやってこい」
「ファイトだよ!」
「……ああ」
2人に応援の言葉を掛けられてから、私は予選最後の戦場へと転送された。
ハジメSide Out
シノンSide
第5回戦の対戦相手である『スティンガー』との対戦、彼との戦いは拮抗状態に近かったけれど、
ボーナスとして隠されていた車両系アイテムである装甲車『
HMMWVのウインドウごと狙撃し、HPを0にして勝利した。
その戦闘中も私の中にあったのはどうやってハジメと戦うかという事だった。
彼はおそらく既に決勝への切符を勝ち取っているだろう。
それなら、いまから私が転送されるのは……やっぱり、準備空間だった。
ホロウインドウには『Hazime』の名が表示されている。
「全力で、狙い撃つ……私が、勝つんだから…」
相手がどれだけ強いかは分かっている、だけど…勝つのは私!
転送された先のバトルフィールドは[大陸間高速道]、東西にわかれるように伸びるハイウェイ、そこから降りる事は出来ない。
障害物として乗用車や輸送車などの大型車、墜落したヘリコプターなどを利用して戦う。
私がいる場所はマップのほぼ東端、対戦相手のハジメは最低でもここから500m離れた地点にいるはず。
周囲を見回し、二階設計の大型バスを見つける……アレならいける!
そう思って振り返った、その瞬間だった。
―――チュンッ!
「え…?」
私の肩を、一発の弾丸が貫き、大きなダメージを与えた。
狙撃? 何処から? いや、それよりも、どうやって? 彼は、剣を使うんじゃないの?
まさか狙撃手だったのか? そんな疑問が渦巻くなか、弾丸に貫かれた衝撃で地面に倒れる。
「っ、とにかく、いまは…!」
まずはバスの中に入ろう。体を伏せるように移動し、後部ドアから内部に入って、身を隠しながら2階席へと上がる。
すぐにヘカートⅡを整えて、バス全面のパノラマウインドウに銃口を向けて、伏射体勢を取る。
バスの中ならばレンズの反射光を捉えられる事はない、だけど…こちらの居場所はバレているはず。
なら、せめて一撃で決めないと! スコープの視野を見つめ、指をトリガーに添わせる。
そしてスコープで見つめる先に、彼は……居た、ただ…。
「っ、バカにしているの…! こっちが、手負いだからって…!」
真っ直ぐと、こちらに向けて歩みを進めているだけだ。
遮蔽物に身を隠すでもなく、走るでもなく、ただこちらに向けて歩いてくるのみ。
そのあまりにも無防備な姿に怒りが湧き、スコープの照準を頭に合わせ、彼の表情をみた。
「……っ、舐めてはいない、みたいね…」
ハジメの表情は真剣そのものだった。
右手には銃剣を持ち、左手にはデザートイーグルを持ち、堂々と歩んでくる。
まるで、いつでも来いと言っているような…。
「なら、お望み通りにしてあげる…!」
大きく息を吸い、吐き出す…。そして額に向けた照準、トリガーを一気に引き絞る。
―――ドァガァァァンッ!
その銃声と共に音速の弾丸が放たれ、バスのフロントガラスを破壊し、ハジメ目掛けて一直線に向かって行く。
―――終わりよ!
そう、そのはずだったが……彼はそれを、音速の弾丸を、回避した…。
ほんの少し、動いただけなのに…。
「あ…ぁ、ありえ、ない…。そんな、音速、なのよ…」
あまりの出来事に呆然とし、しかしここで退くわけにはいかないとスコープで狙いを定めた。
そこでスコープ越しに彼はこちらを見た、獰猛な笑みを浮かべ、呟く。
―――……見つけた…。
背筋をゾクリッと悪寒が駆け抜けた。そのまま歩いてこちらに向かってくるハジメ。
すぐにボルトハンドルを引いて装填し、2射目を放つ……が、避けられる。
それはそうだ、2射目からは予測線が見えているのだから。続けて再装填、発射…当たらない。
4射目、5射目、6射目と続けるが、全て避けられる。
その間にも見た彼の冷たい笑み、ただ真剣なのかもしれないけど、私の心を深く強く揺すぶる。
怖い、いつもは狩る側にいる私が、今では獲物の方だ。
ハジメはまさに、狩人…。
「こう、なったら…!」
賭けに出るしかない、むこうから攻撃してこないのなら、こちらの提案を飲んでくれるかもしれない。
私はヘカートⅡの最後の装填を終えると、破壊したフロントガラス部分から飛び出し、そのまま彼の前に躍り出る。
「……隠れないで出てきたか」
「もう、弾が1発しかなくてね…。私は、勝つ為に、貴方に提案したいの…」
「……どうぞ」
「1発勝負。私が一定の距離からこのヘカートⅡで撃って、貴方が生きていれば、降参するわ。
勿論、当たればHPを全損できるからその時は私の勝ち…どう?」
正直、こんなものに乗らなくてもハジメは勝てる、むしろ乗らない方が勝てる。
だけど私は勝ちたい、こんな方法は間違っているのかもしれないけど、それでも…ケイの傍に、立ちたいから…。
「……『PGM・ウルティマラティオ・ヘカートⅡ』、現実世界でのカテゴリーは『
全長1380ミリ、重量13.8kg、50口径の巨大な弾丸を使用する。乗ったところで、私に勝ち目はないな…」
まさか、そこまで知っているなんて…やっぱり、ダメみたいね。
「……だが面白い。乗ろうじゃないか」
「え……いい、の?」
「……ああ。予選決勝には相応しいだろうしな」
私達は短く話し合い、ウエスタン・スタイルの決闘ということになった。
お互いの距離は10m、ハジメは銃剣を構え、私はヘカートⅡを構える。
スコープに広がるのは滑らかな浅黒い肌、そして銀の髪と笑み。
ハジメには
そして、ハジメが1発の弾丸を左手で弾き、それが空中に舞った。
―――キンッ!
地面に弾薬が落ちたその瞬間、私はトリガー引き、弾丸を放った。放たれた弾丸はハジメ目掛けて掛けていき、
―――ガァァァンッ!
彼が振り下ろした銃剣、強烈な音ともに弾丸は真っ二つに引き裂かれてハジメの遥か後方へと飛んでいった。
同時に彼の銃剣は砕け散ったが、それでもありえない…こんな、ことが…。
「……さて、シノン。私は生き残ったぞ」
「………はぁ…。負けたわ…
いつの間にか目の前にまで接近し、左手のデザートイーグルを私の喉に突きつけていた。もう、これ以上は無理ね…。
降参の言葉を言い、予選決勝戦は私の敗北、ハジメの勝利となり、戦いは終わった。
シノンSide Out
To be continued……
後書きです。
というわけで、ハジメVSシノンはハジメの勝利で終わりました・・・予想通りですねw
ハジメはバトルスタート直後に遮蔽物の上に乗り、ドラグノフ狙撃銃でシノンを狙撃したのです。
隠れることを選ばずに、ね・・・w
さすがにヘカートⅡの威力に耐え切れずに銃剣は砕け散りましたが、
独自設定で大会中に破壊された装備は自動修復されるという設定ですよw
次回はハイライト、キリト達が
それでは・・・。
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第14弾です。
ハジメVSシノン回になります、果たしてどんな戦いになるのか?
どうぞ・・・。