第2弾 条件と報酬
和人Side
「えっと、それじゃあ本当の本題……キリト君。
キミにはGGOにログインしてこの『死銃』というプレイヤーに接触してもらいたい」
『
「なるほど………分かった…」
「引き受けてくれるんだね、それなら「まずはこのフォークでお前の眉間に穴を開けてやる」………」
笑顔で喜びの表情を浮かべようとした菊岡に対し、俺は良い笑顔で絶対零度の声音で言いのけた為、
彼は汗を流しながら引き攣った笑顔になった。
「単刀直入に言えばいいものを……死銃に撃たれてこい、ってな…」
「い、いや~、その~、あははは…」
冷たい視線で俺が言えば、どもりながら苦笑いを浮かべる菊岡。
俺は一度溜め息を吐いてからまた言葉を紡ぐ。
「GGOにログインして奴の調査をするくらいなら、別に俺じゃなくてもそっちに人材がいるだろう?
どうして俺に頼む必要がある…」
「それについてなんだけど、彼はおそらく『強者』しか撃ってくれないと思う。
ゼクシードと薄塩たらこも、GGOでは有名なプレイヤーだった。
だからこそ、VRMMOでその高みにいるキミに頼んでいるんだ」
だがGGOにはプロがいる。プロと呼ばれるプレイヤー達はゲーム内で実際に金を稼いでおり、
『ゲームコイン現実還元システム』を用いて電子マネーとしている。
今では電子マネーで買えない物はないので、現金でなくとも十分なのだ。
そのプロ達の中でもトッププレイヤーは月で20万円から30万円を稼いでいると聞く。
そういった彼らは数多のプレイヤー達の接続料で生活しているため、他のゲーム以上に妬まれたりするのだ。
俺の話しを聞いた菊岡は思案している。
「俺、いや俺達以外にアテはあるだろう?」
「それがキミ達以外には本当にVRMMOプレイヤーの知り合いがいないんだよ。
実際、ハクヤ君達に至っては番号変えられちゃったし」
ああ、そういえばメアドや番号を変えていたが、そういう事だったのか。
俺は俺でコイツとはそれなりに伝手を持っておきたいから教えているが。
「いつものバイトじゃなくて、仕事という事にして調査協力費として報酬も支払うよ」
「……どうしてそこまでしてこの一件に執着する? 一種のオカルトともとれる程度の偶然で済むはずだぞ…」
報酬を払ってまで解決しようとする意図が奇妙に思え、俺は問いかけた。
「
規制推進派はこれを手札にして技術の後退を迫るかもしれないからね」
「本気でことに臨むのなら直接運営企業に当たれば、ログの解析やIPアドレスを辿れば本名や住所が判明するだろ?」
俺の問いに答えた菊岡の言葉に対し、新たな言葉を投げかける。
彼は僅かに苦悶の表情をしながら喋り出した。
「GGOを運営している『ザスカー』と呼ばれる企業は、確かにアメリカにサーバーを置いている。
だが本当に『ザスカー』なのかも分からない、会社の所在地に電話番号、メールアドレスでさえも未公開だからね。
『ザ・シード』の公開以来、怪しげなVRワールドは増えている」
「ふむ…」
『ザ・シード』、その由来の詳細を知っているのは俺とエギルだけである。
簡単な話しならば明日奈、志郎、烈弥、刻、景一、公輝も知っているが、専門外なので詳細は知らない。
「前置きはここまでにしよう。勿論、最大限の安全措置は取らせてもらう。
撃たれろとも言わない、危険だと判断すれば逃げて構わないし、
キリト君の判断だけで確かな証拠になるからね……行ってもらえるかい?」
嫌な予感はあった…それがこの依頼の事なのか、それともこれから起きるかもしれない事なのか。
だが決して逃げてはならないと、心の奥で感じ取る……これは、デスゲームの一端なのかもしれないから。
「分かった、引き受けよう……ただし、条件と報酬を提示させてもらう」
「聞こうじゃないか」
依頼の受諾と条件と報酬の提示を聞いて、臆面もなく笑みを浮かべる菊岡。
俺も一切の遠慮なく言いのける、コイツに遠慮なんかしてられないからな。
「条件だが、1つ目は景一を連れて行きたい。本人が承諾すればだが…」
「それは構わないよ。僕としても出来るだけ安全に行ってもらいたいからね」
「2つ目は人材や金を使ってもらう事になるな…。GGOの装備を集めてもらいたい。相手は死銃だけじゃないからな」
「なるほど、確かに強さを証明するには他のプレイヤーとも戦わないといけないか。出来る限り集めさせるよ」
条件はOKだ、次は報酬だな。
「報酬だが、もし死銃が本当に殺しをしていたのなら景一が同行した場合は1人25万、俺だけなら30万だ。
何もなかった場合はいらない」
「ハジメ君が同行した場合は計50万。分かったよ、そこもなんとかしよう。
何もなくてもバイト代として少しは出させてもらう」
「契約成立、だな」
命懸けの場合もあるからな、これくらいは弾んでもらおう。
あ、その前にコイツに言っておかないといけない事があったな。
「菊岡、お前には1つ覚悟してもらいたい事がある」
「覚悟、かい?」
「俺が死んでも恨むなよ? その時は精々、明日奈に殺られてくれ」
「………マジ?」
「犯人殺して、多分お前の事も地の果てまで追いかけそうだからな。一応だ、俺も死ぬ気はないから」
そう告げてデザートの残りをつっつき、コーヒーを啜る。
少しばかり唖然としていた菊岡は正気に戻った。
「そうそう、忘れるところだったよ……今の言葉のせいで…(ぼそっ) これに死銃の音声が録音されてあるから、聴いてくれ」
「ああ」
そういえば最初の事件の時に居合わせたプレイヤーが録音していたと言っていたな。
俺はイヤホンを耳につけ、その音声を聞く。
最初は周囲の喧騒が聞こえたが、それも聞こえなくなり、1つの声が響いてきた。
『これが本当の力、強さだ! 愚か者共よ、恐怖と共に俺の名を刻め! 俺とこの銃の名は『死銃』、『デス・ガン』だ!』
それを聞いた瞬間、俺は録音であるにも関わらず、そこから強烈かつ純粋な殺意を感じ取った。
俺はこの殺意を知っている……だが、思い出したくないとも思う。
「どうかしたのかい?」
「いや…少し、な…」
俺の変化に気付いた菊岡が珍しく心配そうな表情で尋ねてきたが、取り敢えず大丈夫ということは伝えた。
そのあと、菊岡と別れて店をでた。
あの声、あの殺意、共に俺が思い至った相手がいた。
ジョニー・ブラック、赤眼のザザ、そしてPoH……SAO史上最悪のレッドギルドである『
奴等の純粋とも言っていい殺意が音声から伝わる明らかな殺意に似通ったものを感じたからだ。
「果たしてどう動く事になるのか…どのみち、相手が誰であろうと倒すけどな。っと、忘れる前に電話しておくか…」
携帯端末に登録してある景一の電話番号を選択し、電話を掛ける。
『……和人か、何か用か?』
「景一、頼みがある」
『……頼み?』
「ああ、実は………」
俺は菊岡からの依頼と事の経緯について話した。
『……なるほど。だが別にお前や私でなくとも問題無いと思うのだが…』
「俺が感じ取った殺意……それがラフコフのものに類似していても、か?」
『……っ、そういうことか…。分かった、私も協力しよう』
ラフコフ関連だと予想を話せば、景一は協力を受け入れてくれた。
「すまない。お前にとっては辛いことだと思うが…」
『……気にするな。辛いのは私よりも、詩乃の方だからな…』
景一の過去については知っている、ただそれが朝田さんにどう関係しているのかは分からない。
しかし込み入った話であるのは間違いないと思う。
『……予定が決まったら連絡をくれ。それではな…』
「分かった、それじゃあな」
通話を終えた俺はやはり申し訳ないと思いながら溜め息を吐き、彼女との待ち合わせ場所へと向かう。
和人Side Out
景一Side
「……銃の世界『ガンゲイル・オンライン』、か…」
和人との通話を終えた私は自室の椅子に深く座り込んだ。
私が詩乃と詩乃の母と共に巻き込まれた事件から既に6年が経っている。
今朝みた悪夢とも言える夢、それのせいで陰鬱になっていたところで掛かってきた和人からの電話。
謎のプレイヤー『死銃』と心不全による2人の死者との関係、銃の世界。
正直に言えばあまり乗り気ではなかったが、和人が言った事が本当であれば、この一件に最も適しているのは私である。
それに私がいれば命の危機も多少は減るだろう。
「……GGO、これで少しは前に進む事が出来ればいいが…」
私は1人呟いてから首を振り、ベッドに横になってALOへとログインした。
景一Side Out
To be continued……
後書きです。
和人さんが菊岡に思いきり条件を突きつけましたw
銃の詳しい景一の参加と装備調達の許可、ウチの和人さんならこれくらいは言うだろうと思いました。
むしろ原作でも人材使っての装備調達くらい可能だったり、と思ったり・・・。
次回は和人と明日奈のデート話しですね、皇居周辺デートw
それでは・・・。
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第2弾です。
菊岡からの依頼に対し、和人は・・・。
どうぞ・・・。