episode176 フリーダムの真意
「・・・・」
隼人は周囲を警戒しながら千冬とフリーダムの所に向かっていた。
(一夏を助けたと思えば、今度は襲撃とはな。ますますあいつの目的が分からん)
そのままフリーダムを見る。
(それに・・・子は父に勝てない、か・・・)
隼人は千冬とフリーダムの会話を聞いていた。
(やはり、フリーダムの正体は――――)
するとその瞬間隼人の前に何かが横切る。
「っ!」
隼人はとっさにスラスターを噴射して停止するが、その直後に左側から何かがぶつかってきて、吹き飛ばされる。
「くっ!」
とっさに背中に背負うアームドアーマーDEのスラスターを噴射して体勢を立て直す。
「邪魔立てはさせんぞ、黒獅子よ」
「なに?」
すると隼人の前に二体の機体が現れる。
「これはフリーダムと、その血筋の戦いだ。誰も立ち入ることは出来ない戦いだ」
「何だと・・・」
「そこで大人しく見ているがいい」
「・・・・」
と、ノアは左腕を横に伸ばすと、グリッターも同様に右腕を横に伸ばす。
「・・・・」
「何をふざけた事を。今更父親振るのか!!私達を捨てておいて!!」
「・・・・」
フリーダムは何も答えない。
「だったら・・・その通りにさせてもらう!!」
千冬はウイングスラスターを噴射して飛び出す。
フリーダムは背中のウイングを展開して上に飛び上がると右手のビームライフルの引き金を引きビームを放つ。
千冬は急上昇してビームをかわすとすぐにフリーダムの方に向かう。
その間にカートリッジをリロードして刀身にエネルギーを纏わせると、勢いよく斜めに振るって光波を放つが、フリーダムは宙返りをするようにして光波をかわし、直後に両サイドアーマーの折り畳まれたレールキャノンを展開して放つ。
「っ!」
千冬はとっさに左腕のシールドで弾丸を防ぐがその衝撃でシールドが砕け、更に吹き飛ばされるもとっさに体勢を立て直してレヴァンティンの柄を持ち直す。
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
そこから一気に飛び出してフリーダムの近くまで来てレヴァンティンを横に振るうが、フリーダムは身体をずらして斬撃をかわす。
更にレヴァンティンを連続で振るうも、フリーダムは身体をずらしたり左腕のシールドで受け流したりして斬撃を回避する。
「くぅっ!」
千冬は勢いよく縦に振り下ろすが、フリーダムは左腕のシールドを前に出して斬撃を受け止めると、右脚を横に振るって千冬の左横腹に蹴りを入れる。
「っ!」
それによって横に吹き飛ばされ、フリーダムはビームライフルをリアアーマーにマウントして左サイドアーマーの白い棒を抜き放つと先端からビーム刃を出し、一気に飛び出す。
千冬はとっさにレヴァンティンを振るい、フリーダムもビームサーベルを振るって刃を交える。
「私が憎いか」
と、鍔合いの最中フリーダムは千冬に問う。
「あぁ憎いさ!それがどうした!!」
「恨むなら恨むがいい。私がやった事に変わりは無いのだからな」
「何を分かり切った事を今更!!」
千冬はフリーダムを押し返すも、フリーダムは背中のウイングの間のキャノンを前の方に展開して高出力ビームを放つも、千冬はウイングスラスターを一瞬で爆発的に噴射させて飛び上がってかわすと、レヴァンティンのカートリッジをリロードし、刀身を一定間隔にワイヤーに繋げて分離させ、撓らせながら勢いよく振るう。
フリーダムは向かってくるレヴァンティンの先端を蹴り飛ばすと、瞬間加速の如く飛び出す。
「っ!」
千冬はとっさにかわそうとするが、フリーダムはその前に懐に入り、腹部に膝蹴りを入れる。
「ぐっ・・・!」
その衝撃で後ろに吹き飛ばされるも、すぐにレヴァンティンを通常刃に戻して両手で持ち直すとすぐに縦に振り上げるが、フリーダムは横に身体をずらしてかわす。
千冬は連続でレヴァンティンを振るうが、フリーダムは全ての斬撃をかわす。
「くっ!」
千冬はレヴァンティンを素早く振るうが、フリーダムは左腕のシールド先端の切れ込みの間に挟みこむ。
「しばらく見ていなくても・・・お前の太刀筋は大して変わってないな」
「っ!」
千冬はレヴァンティンを引き抜こうとするが、がっちり挟まれてビクともしない。
「それで世界最強とは・・・笑わせる」
フリーダムは強引に左腕を動かしてレヴァンティンを下に向けさせ、千冬を見る。
「っ!」
するとフリーダムは左腕のシールドを振り上げて千冬からレヴァンティンを弾き上げ、とっさに後ろに下がると、さっきまでいた場所に何かが横切る。
「ちっ!」
と、スラスターを噴射して方向を変えると同時に停止する。
「兄さん!」
そこには輝春のAGE-1が浮いていたが、姿が若干異なっていた。
グランサが破壊された為、代わりに両腕両脚のパーツを換装し、両腕にブレードを搭載し、更に両脚にもブレードを搭載した『レイザーウェア』を装備していた。
「輝春か・・・久しいな」
フリーダムは輝春のAGE-1レイザーの方を向く。
「話は聞こえていたぞ・・・・・・親父」
「そうか。お前も気付いたか」
「本当なら感動の再会なんだろうが・・・そんな状況じゃない」
輝春は両腕のブレードを展開して両手に持つ。
「どういう理由か説明してもらうぞ。きっちりとな!!」
スラスターを一気に噴射して一気に飛び出す。
フリーダムはビームサーベルを一回横に振るうとスラスターを噴射して飛び出し、輝春がブレードを縦に振るうと同時にビームサーベルを横に振るい、刃を交える。
直後に両者は同時に離れると一気に飛び出して再度接近し、得物を振るって激しく衝突して交える。
フリーダムは輝春を強引に押し返して回し蹴りをしようと左脚を振るうが、輝春は宙返りするように飛び上がってかわすと、左脚前面のブレードを出して振り下ろす。
「っ!」
とっさに左腕のシールドを前に出して斬撃を受け止める。
「・・・かわしやがったか」
舌打ちをしてフリーダムを睨む。
「・・・ふん」
フリーダムは輝春を強引に押し返すと、背中のキャノンと両サイドアーマーのレールキャノンを展開して一斉射撃を放つ。
「くっ!」
その場からスラスター全開に噴射して上に向かって急上昇して砲撃をかわす。
しかしその直後にフリーダムが一気に輝春に迫るとビームサーベルを横に振るって左手のブレードを弾き飛ばす。
「っ!」
更にフリーダムはビームサーベルを縦に振り下ろすが、輝春はとっさに右手のブレードを前に出して斬撃を受け止める。
その直後にフリーダムは輝春の腹部に膝蹴りを入れる。
「っ!?」
吹き飛ばされそうになるも、フリーダムはAGE-1レイザーの右腕を左手で掴むと、右手に持つビームサーベル先端を首筋に向ける。
「・・・っ!」
輝春は抵抗するも、ビームサーベルの先端が近付き、首元が熱くなる。
「無駄な抵抗はしない事だな。千冬もな」
「くっ!」
フリーダムは後ろに目を向けると、背後にはレヴァンティンを回収して千冬が身構えていた。
「何も変わってないな・・・お前達は・・・」
「・・・・」
「・・・・」
フリーダムの言葉に二人はガリッと奥歯を噛み締める。
「・・・・」
するとビームサーベルのビーム刃が消えると、柄を左サイドアーマーにマウントする。
「次はもっと腕を上げるのだな」
「くっ・・・」
「偉そうに言いやがって・・・!」
二人はその通りな為に言い返せれず悔しがる。
「だが、これだけは言わせて貰うぞ。それを信じるか否かはお前立ち次第だ」
「・・・・」
「・・・・」
「私と杏子は・・・お前達を捨てたくて捨てたわけではない」
「な、に?」
「どういう事だ?」
「・・・また来るぞ」
そしてフリーダムは背中のウイングを展開し、二人を一瞥してから後ろの方に向いて飛び出す。
「・・・・」
「・・・・」
千冬と輝春は合流すると、フリーダムが飛び去った方を見る。
「捨てたくて捨てたわけじゃないだと・・・」
輝春はボソッと言葉を漏らす。
「なら、その理由は何なんだ」
千冬はレヴァンティンの柄を握り締める。
「理由を言わないと・・・分からないだろうが・・・・」
「・・・・」
「また会おう、黒獅子よ」
「・・・・」
ノアとグリッターは隼人に一言告げるとフリーダムと同じ方向に飛び去った。
「・・・・」
隼人は目を細めてノアが飛んでいった方を見つめる。
(千冬さんや輝春さん、一夏の父親・・・。でも、何であんな姿なんだ・・・)
それから千冬と輝春を翻弄したフリーダムを思い出す。
(それに・・・かなりの強さだな。まぁあの千冬さんの父親だから、か)
色々と考えが交差するが、周囲を警戒しながらネェル・アーガマに向かう。
「・・・・?」
そうしてネェル・アーガマの右格納庫に入ると、そこに颯とヴィヴィオが待っていた。
「颯?どうしてヴィヴィオが?」
隼人は床に着地するとバンシィ・ノルンから人間の姿に戻る。
「それが、ヴィヴィオがどうしても兄さんのお迎えに行きたいって言うから、連れて来たの」
「そうなのか?」
隼人が聞くと、ヴィヴィオはこくりと頷く。
「・・・そういや、そのリボンはどうしたんだ?」
見れば、ヴィヴィオの金髪が青いリボンで結ばれてツインテールっぽい髪型になっていた。
「これは私が結んであげたの。まとめた方が良いかなって思って」
「そうか。でもまぁ、似合ってるな」
するとヴィヴィオの表情に喜色が浮かぶ。
「それにしても、何があったの?」
「それがな――――」
隼人は颯に説明する。
「そうなんだ・・・」
颯は表情を険しくする。
「でも、一夏さんや千冬さん、輝春さんのお父さんが何で機械に?」
「まだ機械だって決まったわけじゃないが・・・・・・何となくあの機体から生き物の気配がなかった」
「・・・・」
「また来るとか言っていたから、恐らく近い内にまた来るかもしれん」
「・・・・」
ぐ~・・・
「「?」」
すると腹の虫が鳴る。
しかし隼人でも颯でもない。
「うぅ・・・」
どうやらヴィヴィオの腹の虫のようであった。
「腹が減ったのか?」
「・・・・」
こくりと縦に頷く。
「そうか。そういやそんな時間だな」
「そういえば・・・そうだね」
颯はAGE-FXの待機状態である青いクリスタルを手にして時間を表示させると、ちょうどお昼時であった。
「そんじゃぁ、行くか」
「そうだね」
そうして三人は一緒に格納庫を出た。
「しかし、あれでよかったのか?」
「あぁ」
フリーダムとノア、グリッターは飛行しながら話していた。
「まだ序章に過ぎない。今はあれぐらいで十分だ」
「そうか」
「やはり、次は織斑一夏と戦うのか」
と、ノアが聞く。
「あぁ。あいつと戦うのは初めてだ。力が未知数な以上、もしかすればあの二人より力を秘めているかもしれん」
「うむ」
「確かに織斑一夏は無限の可能性を秘めている。お前が思う以上に」
「・・・・」
「だが、時間には気をつけるのだな」
「分かっている。僅かに与えられた貴重な時間だ。無駄にはしない」
「そうか。ならば、いい」
そうして三体は一気に飛び出し、空の彼方へと飛び去った。
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トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!