episode174 気掛かりな事
Gシステム78を後にしたネェル・アーガマは次の目的地である大西洋・・・魔の三角海域へと向かっていた。
しかし大西洋に向かう前に、ネェル・アーガマは一旦秘密ドッグへと向かっていた。
距離的に考えても補給は必須。大西洋での戦闘を有利にする装備を取りに行くと同時に束が大西洋で役に立つものある物を秘密ドッグで作っていたので、それを取りに行くのも兼ねている。
それから三日経った――――
「しかし、本当にいいのか?」
「うん・・・」
その頃隼人と簪は中央格納庫に居り、隼人はコンソールを使ってある作業を行っていた。
「まぁ、簪が言うんなら別にいいんだが・・・それでもなぁ」
「・・・・」
「そもそもを言えば・・・何でこれを武器の一つにしたいんだ?」
二人の目の前には独立展開された打鉄弐式・改と、Gシステム78で交戦したグフが持っていた大きなハンマーがあった。
「それは・・・その・・・」
簪は少し頬を赤くして視線を逸らす。
「・・・・」
「・・・カッコ・・・よかったから?」
と、疑問系で上目遣いで隼人を見る。
「・・・・」
隼人は呆れ半分で頭を掻く。
「最もな理由は?」
「・・・その、ね・・・あるアニメでね・・・こんな感じのハンマーを使ったロボットが居たの・・・。それを思い出して・・・」
「使ってみたくなった、か?」
コクリと簪はうなずく。
(ハンマー言うとどっかのロボットアニメの必殺技として使われていたよなぁ・・・まさかそれじゃ無いだろうな・・・)
そう思いながらハンマーを量子変換して打鉄弐式・改にデータとして保存する。
「試しに素振りでもしてみてくれ。使えるかどうかのテストだ」
「うん」
既にISスーツを着ていた簪は打鉄弐式・改に乗り込むと起動させ、保存されているハンマーを展開して両手で持つ。
「・・・・っ」
しかしハンマーが少し重いのか少しふらつく。
それから素振りを行ったが、振るうスピードが遅く、更にぎこちない。
「正直使いこなせないんじゃなぁ・・・」
「・・・・」
簪は少しガッカリする。
「まぁ試しにGモードでもやってみてくれ」
「うん」
簪はGモードのフルアーマーガンダム七号機を展開する。
「・・・・?」
その時簪はある違和感を感じていた。
「どうした?」
「・・・さっきより・・・ハンマーが軽い?」
「なに?」
すると簪はさっきと違い、ハンマーを軽々と片手で振るっていた。
「・・・え?」
その光景に隼人は目を見開く。
「Gモードなら使えるって言うのか?どんな構造してんだよ・・・」
訳が分からず頭を掻く。
「私に聞かれても・・・」
簪は苦笑いして戸惑う。
「・・・まぁ、使えるのが分かれば・・・いいかな」
疑問は残るが、とりあえずは置いておく。
「そのハンマーの名前・・・どうする?」
「名前・・・」
簪は両手で持ってハンマーを見る。
「調べてみれば、そのハンマーは打撃面に接した箇所にハンマーの何十倍の重さに相当する衝撃を叩き込む構造になっているみたいだ」
「・・・・」
「それに見た目が重そうなハンマーだからな。まんまだが・・・『ヘヴィーハンマー』って言うのはどうだ?」
「ヘヴィーハンマー・・・・・・うん。いい名前と思う」
「なら、決まりだな」
そうして簪はフルアーマーガンダム七号機を収納して床に降りる。
『各員に通達します』
と、フェイの声が艦内放送で流れる。
『集合できるクルーは速やかにブリッジに集合してください。繰り返します――――』
「・・・何が・・・あったのかな?」
「分からんが、すぐに行こう」
「うん。私は着替えてくるから・・・先に行ってて」
「分かった」
二人はすぐに格納庫から出た。
「あの子が居なくなった?」
「うん・・・」
ブリッジで隼人達は束よりある事を聞かされた。
この場に居るメンバーは隼人、セシリア、ラウラ、エリーナ、簪、ユニコーン、リインフォース、ツヴァイ、束、アーロン、フェイ、フィアで、残りは女の子が居た病室とは別の病室で寝ていた。
「あの子を検診をしようと病室に行ったんだけど・・・そしたら姿が無くて・・・」
束は少し落ち込んで両手の人差し指の先端を擦り付ける。
恐らく自慢の警備システムが脱走した事を感知できなかったのがショックなのだろう。
「あの子・・・もう目を覚ましたのか・・・」
隼人はボソッと呟く。
「では、今もこの艦内のどこかに?」
ラウラが怪訝そうに聞く。
「うん。でも、どの監視カメラの映像に映って無いんだよねぇ・・・」
基本他人嫌いの束であるが、ようやくメンバーに慣れてきて普通の喋り方になっていた。それでも親しい人との喋り方ではないが・・・それでもマシな方だ」
「だから、全員で探しに?」
「事は早く済ませたいしね」
「だが、一人の女の子の為に全員で探す必要はないだろ」
「まぁアーロンの言う事も分かるけど・・・まだ油断なら無いからね」
「・・・・」
「じゃぁ、お願いね。私は引き続き監視カメラで探すよ」
「分かりました」
そうしてその場に居たメンバーはすぐにブリッジから出て女の子の捜索に入る。
「それで・・・その女の子について何か分かったのか?」
「いやぁ・・・そうでもないみたい」
ラウラとユニコーンは艦内の通路を歩いて女の子を捜していた。
「分かったとすれば、普通の人間の身体じゃないみたい」
「そうか・・・まぁ、見つけた場所が場所だからな」
「まぁね」
ユニコーンは前を見る。
「それが何らかの影響を起こさなければいいんだけど・・・」
「・・・・」
『隼人さんが見つけた女の子・・・Gシステム78の最深部に居たんですよね』
『あぁ』
リインフォースとツヴァイは後部格納庫の方を探していた。
『なぜそこに居たのかは分からない。だが、場所が場所だからな。恐らく普通の人間ではない』
『そうですよね・・・』
ツヴァイの表情が険しくなる。
『そういえば隼人さんはその女の子を救出してから、ずっと気に掛けているんですか?』
『そのようだ』
『・・・・』
『だが、あそこまで心配する隼人は・・・あまり見た事が無い』
『そうなんですか?』
怪訝そうな表情でツヴァイは聞く。
『あぁ。少なくとも・・・私が見る限りじゃ簪に次ぐ位かもしれん』
『簪さんに・・・ですか』
『とても大切にしているからな・・・隼人は彼女を・・・』
『そうですね』
「・・・・」
隼人は左格納庫上部にやって来て周囲を見る。
(どこに行ったんだ・・・)
格納庫内にある機材の陰を隅々と探す。
(しかし、束さんの警備システムにすら引っ掛からない。やっぱりどこか違うのか・・・)
ベッドで眠っていた女の子を思い出すと目を細める。
(戦闘機人でなければ・・・一体・・・・・・)
そう思いながら探していると、後ろから物音がする。
「・・・・?」
隼人は後ろを振り向くと――――
「あ・・・」
そこには隼人がGシステム78の最深部で見つけた女の子が立っていた。
背は自分の腰辺りまであり、瞳の色は右目が緑で、左目が赤と虹彩異色のオッドアイだった。少しボサついていた金髪は今では綺麗になっていた。
(・・・やっぱり・・・似てるな)
とあるキャラクターの容姿が脳裏を過ぎる。
「こんな所に居たのか。随分探したんだぞ」
隼人は女の子に近づこうとしたが、女の子は少し怯え後ずさりする。
「・・・・」
このままだとラチが明かないと思い、その場でしゃがんで女の子と視線を合わせる。
「大丈夫だ。俺は敵じゃない」
「・・・・」
「いい子だから・・・こっちに来てくれ」
隼人は優しく女の子に語り掛ける。
「・・・・?」
と、隼人はある事に気づく。
(よく見たら・・・ノルンに・・・似ている?)
隼人が本来の力であるバンシィ・ノルンを発動させた時や、ついこの間精神崩壊しかけた隼人を叱責して立ち直らせたノルンの姿を思い出す。
目の前の女の子とノルンは何となく似ていた。いや、かなり似ていた。
(ただ単な空似・・・なのか?)
「・・・・?」
すると女の子は隼人の顔を見始めると、首を傾げる。
「・・・・」
女の子は恐る恐る隼人に近付いてきた。
「・・・・」
「・・・・」
じーっ、と女の子は隼人を見つめる。
(急にどうしたんだ・・・?さっきまで怯えていたって言うのに・・・)
隼人は見つめられて少し戸惑うが・・・・・・・・・その直後に女の子は目に涙を浮かべる。
「え・・・?」
「・・・う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
と、女の子は突然泣き出し、隼人に抱き付いた。
「っ!?!?」
状況が理解できず、頭の中が真っ白になる。
(な、な、な、な、何でいきなり泣き出すんだ!?)
混乱するも、すぐに気持ちを落ち着かせる。
「はぁぁぁぁぁ・・・」
深くゆっくりと息を吐くと、女の子の髪を優しく撫でる。
「・・・大丈夫だ。もう怖くないぞ」
「・・・・」
隼人は一旦女の子を離して顔を見る。
「名前・・・あるか?」
「・・・・」
女の子は少しの間黙るも・・・
「・・・・・・ヴィヴィ、オ」
女の子は弱々しく呟いた。
「ヴィヴィオか。いい名前だな」
隼人は笑みを浮かべる。
「・・・・」
「みんな心配して探している。戻ろうな」
「・・・・」
ヴィヴィオはゆっくりと頷く。
隼人は女の子を抱き抱えながら立ち上がり、女の子を連れて行く。
「・・・まぁ、何も起こらずにその子を見つかったのは良かったんだけどさぁ・・・」
束は微妙な顔をしていた。
「・・・・」
隼人も少し困惑し、一緒に居たユニコーンも疑問があった。
なぜなら――――
「何でそんなに懐かれているの?」
「・・・・」
ヴィヴィオは隼人が着ているIS学園の制服のズボンの裾を掴んで隼人の後ろに隠れていた。
「俺に聞かれても・・・」
さっきの事もあって、なぜ懐いたのか分からなかった。
「でも、本当に懐かれているよね」
ユニコーンがヴィヴィオを覗き込むも、ヴィヴィオは更に隼人の後ろに隠れようとする。
「何かしたの?」
「何もするわけないだろ」
少し悪戯な笑みを浮かべるユニコーンに速攻で拒否する。まぁ何もしてないと言うと嘘になるが・・・
「・・・とりあえず、ヴィヴィオ。一旦離れてくれるか?」
と、隼人はヴィヴィオの方に向いて言うも、ヴィヴィオは横に首を振るう。
「・・・・」
ため息を付いて頭を掻く。
「どうする、はっくん?」
「どうするって言われても・・・」
隼人は困った表情を浮かべる。
「まぁ、とりあえずその子を病室に戻してきてくれるかな?」
「は、はい」
隼人はヴィヴィオを連れて病室に向かう。
「しかし、中々懐かれちゃっているねぇ」
「そうだねぇ」
と、束とユニコーンは棒読み風で言う。
なぜか会った当初よりこの二人は意気投合して仲が良かった。
「とりあえずは・・・あの子について詳しく調べるしかないね」
「それが一番だね。それで、最初よりどのくらい分かったの?」
「そうだねぇ・・・分かったとしたら・・・あの子の細胞がちょっと変わっているんだよね」
「変わってる?」
ユニコーンは怪訝な表情を浮かべる。
「うん。私は人間の身体の事はあんまり詳しくないけど、それなりには分かっているつもりだから」
「・・・・」
「なんて言うか・・・あの子の体内の細胞が日に日に変化しているんだよね」
「と、言うと?」
ユニコーンは怪訝な表情で聞き返す。
「毎日細胞が成長したと思えば元に戻ったりしているんだよねぇ」
「細胞が毎日急激な変化・・・」
険しい表情を浮かべて静かに唸る。
「普通の人間じゃそこまで急激な細胞変化はありえないよ。でも、あの子は毎日急激な変化をしている」
「それって・・・身体が毎日変化しているって事?」
「簡単に言ったら、そうだね。まぁ普通じゃありえない事だけど」
「・・・・」
ユニコーンは顎に手を当てて考える。
「それと、あの子から妙なエネルギー反応が検知されているんだよね」
「エネルギーが?」
「うん。それも毎日強弱分かれているんだよね」
「・・・・」
「見つけた場所も場所だけど、謎が多いや」
「そうだね」
二人はそのままヴィヴィオの事について話し合う。
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トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!