No.580166

真・恋姫†無双 ~胡蝶天正~ 第二部 第03話

ogany666さん

お待たせして、申し訳ありません。
またしても私用で1日ほど投稿が遅れてしまいました。
今後共頑張っていきますので、どうかよろしくお願いいたします。
それでは、お楽しみください。

2013-05-26 00:22:59 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:9177   閲覧ユーザー数:6266

 

 

 

 

 

 

この作品は、北郷一刀の性能が上方修正されています。はっきり申しましてチートです。

 

また、オリジナルキャラクターやパロディなどが含まれております。

 

その様なものが嫌いな方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

討伐を終えて城下を凱旋した後、兵達に戦の後始末の指示をすると、俺は三人を城の方へと案内する。

城門を抜けて城の中に入ると、俺の片腕で瀟洒な侍従長、鄒がメイド服を着ていつもの様に出迎えてくれた。

「お帰りなさいませ、一刀様。お怪我は御座いませんか?」

「ただいま、見ての通り傷一つないよ。鄒、彼女達は今回の討伐で現場の指揮を頼んでね、お礼も込めて城へ案内したんだよ」

「左様で御座いましたか。・・・・お初にお目に掛かります。この城の侍従長を勤めさせていただいております、韓鄒と申します。以後お見知りおきを」

「おお、これはご丁寧に…。風のことは程立と呼んでくださいー」

「我が名は趙雲、大陸を旅する流れ者だ」

「郭嘉と申します」

一通り互の自己紹介が終わると、鄒はこちらに向き直り、俺が居ない間の報告を始めた。

「一刀様が居られない間でご報告しなければならない重要な案件は二つほど御座います。一つ目は朝廷からの書簡が届いており、内容は新しい刺史の人選についての事です」

「・・・・・分かった。後で目を通しておくから机の上に置いといてくれ。それで、もう一つの案件と言うのは?」

「はい、ご出立なされる前にお聞きしておりました村人の件なのですが、この城内にて一刀様のお帰りを待ち続けております」

「え、何で?住まいや仕事は与えたんだよね?」

「はい、滞り無く。ですが、一刀様に直接お礼を言うまでここから離れないと申しておりまして、今も一刀様のお部屋の前で待ち続けております」

「そうか・・・・・・ここまで連れてきてもらえるかい?」

「畏まりました」

鄒はそう言うと無駄の無い動きで俺の部屋へと向かい、しばしの間待っていると娘一人とその両親と思われる初老の男女二人を連れて俺の所へと戻ってきた。

村人たちは俺の姿を確認するとこちらへ走り出し、俺の前まで来ると膝と両腕をついて平伏し、父親と思われる男が俺に感謝の言葉を口にする。

「太守様ぁ!!この度は娘を助けていただきありがとう御座いましたぁ!!この御恩!どの様な言葉を述べても言い表せるものでは御座いません!!」

「良いんだよ、新平の民を守るのは俺の務めだからね。娘さんに大事が無くて本当によかった」

「しかし!話を聞けば娘を攫ったお方は」

「それ以上は他言無用。あの村で君達に起きた事は誰にも言っちゃあいけないよ」

「は、はい・・・・」

俺は男の言おうとした事を自らの言葉で遮り、やんわりと忠告する。

男はそれを聞いて事の次第を察したようで、ただ一言返事をするとそれ以上この内容に深入りすることはなかった。

「それじゃあ、俺はそろそろ行くけど、ここでの暮らし頑張るんだよ」

「はい!ありがとう御座います!」

助けた村人達は俺に謝意を伝えると、そそくさとその場を後にする。

その一部始終を見ていた風たちが俺の傍まで来て今の事を聞いてくる。

「お兄さん、あの人達は一体何だったのですかー?」

「彼らの事も後でお話します。今回の件にも深く関わっている事ですからね・・・。鄒、三人をどこか落ち着いて話せる場所へ案内して欲しい。」

「畏まりました。それでは、客間までご案内致します」

「あれ?俺の部屋は駄目なのかい?」

「・・・・落ち着いてお話になるには、今の一刀様の机はそぐわないと判断致しましたので、客間へとご案内しようと思ったのですが・・・」

俺の問いに鄒は少し間を置いた後、至って普通にそう答えた。

俺の机が客人と話すのに向かない・・・・・ひょっとして・・・・・。

「鄒、俺が盗賊団の討伐に出ている数日の間に、書簡や竹簡はどのくらい溜まってる・・・・?」

「はい、先ほどお伝え致しました朝廷からの書簡も合わせますと、全部で四百九十一通が一刀様の机の上に山のように積まれております。その殆どが竹簡です」

「(;゚3゚):;*.:;ブッ!」

俺は鄒の言葉を聞いて盛大に噴いてしまった。

そのぐらいの量ならば文字通り丸一日机の前に噛り付いて全力で作業すれば何とか終わる量ではあるが、机の上にそれだけの数の書簡類が積まれているのであれば、確かに相手の顔など見えはしないので話をするのには向かないだろう。

俺は口の周りを手拭で拭い、平静を取り戻してから鄒に話しかける。

「わ、分かったよ、それじゃあ三人を客間へ案内してくれ。俺は正に刀を預けてから向かうから・・・・」

「畏まりました。それではご案内致しますので、どうぞこちらへ」

三人は鄒に連れられて客間へ向かう。

俺はそこで皆と別れると、正の所まで出向いて刀の手入れを頼み、風たちの報酬を入れた小袋を三つ用意すると、三人が居る客間へと向かった。

 

 

 

 

客間の扉を開けると、三人は揃ってこちらの方を向く。

どうやら、俺が居ない間に茶菓子を食べながら鄒と何か話をしていた様で、恐らくは俺の事を彼女から聞いていたのだろう。

「待たせてすみません。皆の報酬も用意してたら、遅くなりました」

「いやいや、韓鄒殿から司馬懿殿の話を聞いていたのでお気になさるな」

「俺の話ですか・・・・程立さん、一体どんな事を聞いてたんです?」

「・・・・・・・ぐー」

「寝るな!」

「おおっ!・・・・あまりに長いお話でしたので、思わず寝てしまったのです」

「"おはようございました"。それで、俺の事を聞いてた様ですけど、一体何を聞いてたんですか?」

「はいー、お兄さんが如何に素晴らしい人物かという事を、それはもう延々と聞かされていたのです」

「・・・司馬懿殿がお戻りにならなければ、韓鄒殿の話は終わる事は無かったでしょう」

そう言う彼女たちをよく見ると、何だか全員が気疲れしている様に感じる。

俺はそれとなく鄒に何を話して居たのかを聞いてみる事に・・・・。

「鄒、一体三人に何を話していたんだい?」

「はい、一刀様がどれだけ素晴らしいお方で在らせられるかを、お三方にも深く知っていただく為に、幼少の頃より見ております鄒が、一刀様のご威光を余すところなくお伝えしておりました」

「・・・・・ああ~、そっか。なるほど」

つまり三人は墓穴を掘ってしまったようだ。

鄒を通して俺の情報を何か聞き出せないかと探りを入れたようだが、相手が悪かった。

鄒は俺の話となると、周囲の人間を巻き込んで一方的に喋り続ける癖がある。

その上、彼女は裏での仕事を総括するほどの優秀な人物、当たり障りの無い事を適当に話して俺が帰ってくるまでの間の時間を稼いでいたのだろう。

そんな彼女の話を聞かされた風たちに心の中で合掌しつつ、こちらの話を進める事にする。

「とりあえず、これが今回の事に関しての謝礼です。五銖銭(※後漢時代の貨幣で価値としてはジンバブエドル。)だとかさ張るので違う物にしておきました」

そう言って、俺は謝礼を小分けにした三つの小袋を彼女達に渡す。

三人が思っていたよりも小さな袋だったので、最初は怪訝な顔をしていたが、手に取ってみると見た目に反して重い事に気が付き、中身を調べだす。

その中身を確認すると三人は一様に驚き、俺に声をかけて来た。

「最初は何が入っているのか不安でしたが、宜しいのですか?高々旅の者に、これほどの金の大粒を渡しても何も出ませんよ」

「構いませんよ、村を守ってもらった謝礼も兼ねていますからね。金はまた集めれば済みますが人の命はそうは行きません、これでも少ないくらいですよ」

「・・・・・そこまで言うのであれば、ありがたく頂いておきましょう」

そう言うと稟たちは各々の袖の中に小袋をしまい、こちらへと再び視線を向ける。

俺も三人の意識がこちらに向いたのを確認すると話を切り出す。

「さて、俺が今回の件で何をしていたのかを話すんでしたね。それでは先ず、この新平の刺史の事から話さないといけません」

俺は彼女達に事の発端である、数ヶ月前にこの地に赴任した刺史の話を始める。

 

 

 

 

「先任の刺史が高齢の方で数ヶ月前に退官されたのですが、その後釜に赴任してきた新しい刺史には、きな臭い話がありまして・・・」

「官職できな臭い話とは・・・・・宦官からお金で地位でも買ったのですか・・・・?」

「ご明察、宦官もこんな地方の刺史の人事などに興味が無かったらしく、二つ返事で快諾したそうです」

「司馬懿殿はそれを知っても、何も行動をされなかったのですか?」

「別に金で買おうが親族の繋がりで官職に就こうが、その職務を全うするのであれば、俺がとやかく言う義理はありませんよ。ただ、赴任した刺史は宦官に払った金を回収する為に盗賊団から賄賂を貰って略奪を見逃し始めました。流石に、これは捨て置くわけには行きません」

俺は鄒が用意してくれたお茶を口に含み、喉の渇きを癒すと話を続ける。

「そんな折り、この地を視察する為に洛陽から宦官が来るという話しが耳に入りましてね。利用させて貰おうと考えたんですよ」

「司馬懿殿、貴公はその者たちの命を駒として使われたのか?」

俺の言葉を聞いて、趙雲さんがつまらぬものを見るような視線を俺に向けながらそう聞いてくる。

当然だ、腐った役人を排斥するのに、関係ない人間の命を捨て駒にして使うような者は所詮同じ穴のむじなだからな。

「本来ならば、帰りの旅費と言う名目で渡したあの金塊を賊に扮して回収するだけだったのですが、その宦官どもは帰り道でさっきの村人の娘を攫い、洛陽で売り飛ばそうとしました。俺が治めるこの新平の地で、そんな狼藉を働くような下衆に情けをかけるほど、俺は甘くは無いですよ」

「・・・・・水を差してすまない。司馬懿殿、話を続けていただだきたい」

趙雲さんも俺の言葉に納得したようなので話を戻す。

「それで、回収した金塊の箱は間諜を使って盗賊団の砦に配置、都と刺史には宦官を襲った盗賊団を討伐すると申請して進軍し、あとは貴方達が知っての通りです。この辺一帯を脅かす盗賊団の始末、刺史は盗賊団との癒着がばれて、自分にも火の粉が降りかかるのを恐れて辞任、後任人事は賊の証拠品という名目で金塊を納めた俺が決めることになりました」

俺の話が一通り終わり、再びお茶に口をつける。

先ほどよりも冷めており、香りが飛んでしまい、余り美味くは無かったが乾いた唇を湿らせるのならこれで十分だ。

お茶を飲み終えると風が俺に対して話しかけてくる。

「お兄さん、一つ聞いても良いですかー?」

「何ですか?答えられる範囲なら良いですよ」

「お兄さんは、この件で色々と動き回っていたのは分かったのですけど、明確な利益というものが見えてこないのですよ・・・・・。お兄さんはあの金塊と討伐に掛かった費用を引き換えに何を得たのですか?」

「俺が得たものは新平に住まうダニの掃除と治安の回復、そして事後処理と言う形を取った事により、朝廷が俺に関心を向ける事を避ける事が出来ました。あの程度の金塊で済んだのなら安い買い物ですよ」

「司馬懿殿、貴公は何故そうまでしてご自分の能力を隠されるのだ?刺史が賊とつるんでいると裏が取れたのならば、朝廷に知らせて正式に討伐されたほうが名も上がったのではないか?」

尤もな意見だ。

しかし、それをやると奴らがかつて北郷であった俺に興味を抱く事になる。

党錮の禁が収まったとはいえ、まだ黄巾の乱も起きていない今、奴らに目を付けられるのは避けたいので公にこの事を口にするわけにもいかない。

「・・・それだけは教える事が出来ません。俺に仕官でもしてくれるのならば、教えても構わないのですけれどね」

本音を語りつつも、軽い気持ちで仕官の話を持ち出してみたのだが、趙雲さんからの言葉は予想外のものだった。

「なるほど、ではこの趙子龍、司馬懿殿に仕官させていただきましょう。」

「・・・・へ?」

いともあっさり趙雲さんの口から良い返事が聞けたので、間の抜けた声が口から漏れてしまう。

「・・・意外ですね、てっきり趙雲さんは俺の事を毛嫌いしていると思っていたのですけれど」

「嫌っていたというよりも、得体が知れずに警戒していたというのが正しいですな」

「それならば何故、そんな良く分からない人間の下に?」

「確かに得体がしれない御仁ではあるが、私はあなたと言う人間に興味が沸いた。これだけの智勇をお持ちになられるのに名を上げようともせず、何故この地で燻って居られるのか。それを見極める為に仕官をするのであれば、我が人生の深みを増すのに十分な理由と言えましょう」

そう言いながら浮かべる美しい微笑みからは、俺に対する純粋な好奇心が見受けられ、敵意や作意と言った負の感情は含まれていないのが見て取れる。

そんな彼女の自由奔放さと、風たちが信を置く程の人物である事が気に入り、俺は彼女の申し出を快諾する。

「ありがとう、趙雲さんみたいな優秀な将が仲間になってくれるのはとても心強い。俺の真名は一刀、よろしく頼むよ」

「私の真名は星。こちらこそよろしくお願いしますぞ、主殿」

俺と星は席を立って向かい合い、お茶ではあるが杯を手に主従の誓いを交わす。

その様子を見ていた風が真剣な顔で俺に質問を投げかける。

 

 

 

 

「お兄さん、最後に三つほど聞かせてくれませんか?」

「良いですよ、話せる範囲で良ければ」

「都に送った金塊や私たちに払った謝礼はどうやって捻出したものですか?」

「あれは俺が裏で稼いだ私財ですね。新平の民に重税を強いたり、汚職や強奪をしたような汚い物ではなく、至って真っ当な方法で得た財なので心配しなくても大丈夫ですよ」

「そうですかー。では次に、お兄さんは風たちに自分の力をわざと見せてましたよねー、それは何でですかー?」

「・・・・正直に申しますと、俺は貴方達を自分の陣営に引き込みたかったんですよ」

「風たちをですか?」

「ええ、この城に入って気付いたかと思いますが、俺には優秀な将や文官、軍師が居ません。俺の事を知って興味を持ってくだされば、仕官をしてくれるかなぁと思いまして。それで貴方達にはあえて自分の力をお見せしました」

「なるほどなるほど、それでは風たちはお兄さんの術中にまんまと嵌った事になりますねー。お兄さんへの興味が尽きないのは風や稟ちゃんも一緒ですし」

風はあめを舐めながら目を瞑って納得していると、稟が横から割って入る。

「風、最後の質問は私がさせてもらいます。恐らく風も思っている事は一緒でしょうし」

「おおっ!横から割ってはいるほどお兄さんに興味心身とは・・・・いいですよー、稟ちゃんも異性を意識する良い機会でしょうし」

「そ、そういう意味ではありません!まったく・・・・・・・・では、司馬懿殿、最後に一つお伺いする」

稟は風にからかわれて赤面した後、冷静になってからこちらを向いて最後の質問を問うてくる。

「司馬懿殿は漢王朝の権威が失墜してきているこの乱世で、一体何を成そうというのですか?」

稟からの問いを聞き、一呼吸置いてから彼女の問いに答える。

「・・・・・乱世の平定。ですが俺にとってはそれすら単なる通過点に過ぎません。乱世を静めた後の事を考えぬ王など、所詮は人の上に立つ器ではないと考えています。それは戦ばかりを考えて民を導く事が出来ない王に等しいのですからね」

「では、あなたはご自分をこの大陸に覇を唱え、天下を取るほどの人物だとお思いか?この様な辺鄙な地の太守にしては傲慢が過ぎると思いますが・・・」

「いえ、俺は寧ろ臆病な性格でしてね。目的を達成するまでの道程が順序立つまで、余り大きく動きたくはない性分なのですよ」

「・・・・・それでは、もう天下を取る算段は出来ていると言われるのか?」

「本格的な準備に取り掛かったのは五年前、その下準備に取り掛かったのは十三年前、大陸に覇を唱える為の構想を練りだした時期となると・・・・・生まれてすぐになりますかな」

「・・・・」

俺の言葉を聞いて稟は押し黙り、そのまなこは俺を見定めるためにこちらへと向けている。

しばしの静寂、それを破ったのは稟の隣であめを舐めていた風だった。

「お兄さん、今の言葉に嘘偽りはありませんか?」

「ええ、全て事実ですし、俺の思っている事を口にしたつもりです」

「それなら、風はお兄さんに仕えようと思いますー」

風は俺に仕官を申し出たが、俺は華琳の下に行くと思って風たちの説得は半ば諦めていた為、思わず聞き返してしまう。

「程立さんはもう仕える相手は決めていると言っていましたけれど、どうして俺に仕える事にしたのか良ければ理由を聞かせてくれませんか?」

「夢を見まして」

「夢?」

俺はその夢の内容を知っている。

それは日輪を風が支える夢で、日輪の正体は華琳というもの。

ならば俺の下に来るのはおかしい。

そんな事を考えているとは露知らず、風は夢の内容を俺に語り出す。

「はい、風と稟ちゃんはこの前不思議な夢をみたのです。大きな光り輝く日輪を二人で支えて立つ夢なのです。そしてその日輪は陳留で刺史をして居られる曹操さんだと分かりましたー」

「なら、彼女の下に行くのが筋ですよね?」

そう俺が言うと稟が風の変わりに言葉を続ける。

「ですがこの夢には続きがあります。その私たちが支える日輪の隣に、寄り添うようにもう一つ、黒い日輪があることに気が付いたのです。それは曹操様の日輪に近づき、やがて重なって一つになると、荒野と化した大陸全土を照らして肥沃な大地へと生まれ変わらせるのです」

「その時、風たちは思ったのです。風たちが仕えるべきはその黒い日輪の方なのだと、ですが、黒い日輪が誰なのか分からなかったので、まずは曹操さんの所に仕官しようと思ったのですよー」

「そして、司馬懿殿。あなたの言葉を聞いて確信いたしました。その黒い日輪とは・・・・・あなたの事だ。私も司馬懿殿の下に仕官いたします。いずれ美しく輝く日輪の曹操様に必要になる方のようですから」

俺は二人の言葉を聞き終えた後、夢の事を考えながら彼女たちの申し出に答えた。

「ありがとう二人とも、俺が黒い日輪かどうかは分からないけど、天下を照らせるように頑張るよ」

「では、お兄さんに仕官した事ですし、真名を預ける事にしますねー。風と言いますー」

「私は稟です。貴方の覇道、見定めさせてもらいます」

「一刀だ。これからよろしく頼むよ。それじゃあ、三人が仲間になったのと、盗賊団討伐の記念にささやかな宴を用意させてもらうよ。・・・・鄒、お願いできるかい」

「はい、すでに今回の戦勝祝いと言う形で準備を進めております。もう間も無く整うかと」

「流石は鄒、話が早くて助かるよ」

鄒と話していると三人が俺と鄒を交互に見ながら、俺に話しかけてくる。

「あのー、お兄さん。ちょっと聞いてもいいですかー?」

「ん?何?俺の話なら宴の時に話そうと思っているけど・・・」

「いえ、そうではありません。一刀殿は韓鄒殿に真名を許されているのですか?」

「ああ、鄒に真名を預けて、もうかなり経つね」

「では、韓鄒殿は主に真名を預けては居られないのか?見ていると主は先ほどから下の名で呼ばれている様にお見受けできるが・・・・・」

あぁ~、その事か・・・・。

まぁ確かに傍から見ていたらそう感じるよなぁ。

思えば正が俺の下に来た時も同じ様な事を聞かれた気がする。

「そういえば程立様たちには真名をお教えしていませんでしたね。お三方とも一刀様の下に仕官されましたし、鄒も真名をお預けいたします。真名は名と同じで鄒と申します。この城で分からぬ事が御座いましたら、どうぞ鄒にお申し付けください」

「「「・・・・・は?」」」

「お聞き取り辛かったでしょうか・・・・。鄒の真名は」

「「「

    いえ、しっかり聞こえたので心配要りません

    いや、確かに聞こえたので安心されよ

    いいえー、ちゃんと聞こえたのでお気になさらずー

                              」」」

三人とも、かつての俺と全く同じ反応をして、三者三様ではあるが同じ内容の返答を鄒に返す。

その様子を見て、昔の自分とダブらせてしまい、思わず笑ってしまった。

「クックック・・・」

「む。主、人の呆けた顔を見て笑うとは酷いですぞ」

「そうですねー、お兄さんはやっぱり意地悪な人だったわけですねー」

「全くです。仕官するのは少し軽率だったかもしれません」

「いや、ごめんごめん。三人とも昔の俺と全く同じ反応をしたのでつい・・・ね」

三人からの非難を静めていると、鄒が俺に困惑した顔で話しかけてくる。

「一刀様、やはり鄒の真名には何か可笑しな点でもあるのでしょうか・・・・?」

「いやいや、鄒は何も変じゃないよ。気にせずに今まで通り俺の為に頑張ってくれ。ただ、君に任せていた文官の仕事は風や稟に回して欲しい。その分、城の事に専念して貰う」

「畏まりました」

「これで鄒に楽してもらえると思うと一安心だ。正直、君がいつか倒れるんじゃないかと気が気ではなかったからね・・・」

「一刀様、そこまで鄒の事を・・・・ありがとう御座います」

鄒は俺に謝意を伝えると、いつもの様に俺に背を向ける。

その様子を風と稟が見ており、何か面白いものを見ているかの表情で風が稟に話しかけた。

「おおっ!?・・・・これはこれは、何と言う完璧な立ち回り・・・・・。稟ちゃんも一人であれくらいの事が出来るようにならないといけませんね~」

「むむむ・・・・・鄒殿は相当な手練れのようですね。斯くなる上はあの方に師事してその妙技を伝授してもらわねば・・・」

二人がヒソヒソと話している様子を見て、俺は星にどういう事なのか聞いてみる事にする。

「なぁ星、二人は何をヒソヒソと話しているんだ?」

「それはだな主・・・・・・・・・・・いや、お気になさるな。稟がただ自分の同類を見つけたというだけの事だ・・・」

星は俺に何かを言おうとしたが、途中で考え直して話を打ち切る。

星の見ている方向に意識を向けたが、そこにはただ鄒が立っているだけだった。

その鄒が部屋に入ってきた侍女に報告を受けると、俺のほうへ歩いてくる。

「一刀様、宴の準備が整いました。正様もいらっしゃいましたので、広間までお越しくださいませ」

「わかった。じゃあ皆、広間まで行こうか。今日はうおォンと言うまで食べるぞー」

そう言うと俺はかつての戦友二人と、新たな仲間を一人連れて宴の場へと向かう。

宴の席で正や諜報部隊の部隊長を三人に紹介し、俺の素性を話しつつ、ここ数年で一番心休まる宴の夜が更けていく。

刺史の人選やこれから起こる黄巾党への詳細な対応策など諸所の問題はあるが、今はただこの宴を楽しむ。

明日に繋がる鋭気を養う為に・・・・。

 

 


 
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