「……………………………………」
イストワールは不安気に夜空を見上げていた。
夜空には分厚い雲が多く浮遊している。その分いつもよりも周りが暗く感じた。
「イストワール様……」
イストワールの周りに四つの光の玉が浮かび上がる。
「……ゲイムキャラさん……」
各国のゲイムキャラ達だった。イストワールを囲むように浮遊している。
「……不安なのか?」
ラステイションのゲイムキャラが尋ねる。
「えぇ……私は三年前の悲劇を再び繰り返そうとしているのではないかと……」
「そんな事ありません。」
ルウィーのゲイムキャラが答える。
「彼女達はとてもお強い。きっと彼女達なら女神様を救ってくださいます。」
「はい……それは存じてはいますが……やはり嫌な予感で胸がいっぱいで……」
不安そうなイストワールを慰めるようにプラネテューヌのゲイムキャラは彼女の周りをゆっくりと浮遊する。
「信じましょう。悩んでいても何も始まりません。」
「そう……ですね。」
「…………フッ。」
ラステイションのゲイムキャラが乾いた笑いを漏らす。
「それに……今回は奴も居るのだろう?」
「……奴?」
「あのハリネズミだ。」
「ソニックさんの事ですか……?」
「左様。奴は女神候補生程の力にまでは及ばぬが、奴には面白い力が秘められているように感じる。」
「どんな力ですの?」
リーンボックスのゲイムキャラが尋ねる。
「さあな。なんとなくそう感じただけだ。」
「なんとも根拠のない……」
はぁ、とルウィーのゲイムキャラが溜息を漏らす。
「……教祖である私がこんな調子ではいけませんね。」
「でしたら、不安が取り除けるまで私達とお話でもしませんか?」
「そうですね、せっかく久々にお会いできたんですもの。」
「まぁ、悪くはないな。」
「皆さん、ありがとうございます。」
イストワールに笑顔が戻った。
時刻は深夜1時。
あたりはすっかり闇と静寂に包まれている。
分厚い雲に覆われていた空が小さく開き始めた。
「……………………」
空と重なり合うようにその姿はプラネタワーのてっぺんから街を見下ろしている。
「…………ヘヘッ!」
姿――――ソニックは小さく笑った。
「ハッ!」
彼は大きく跳躍し、空中で勢い良く回転すると街へと急降下して行った。ゴォォォという風の音だけが聞こえ、街への距離はどんどん狭まって行く。点々としていた星のような光が段々と大きくなって行く。
ギュウィィィィィィィッ!!
地上が近くなるとソニックが再び高速で回転を始める。
ドッ!
ゴォォォッ!!
無事街中の大道路へ着地するとすぐさま走り出す。
彼にとってスロースピードに見える車をどんどん横切る。幾度もクラクションの音が耳に入った。
ドシュウウウウウゥゥゥゥッ!!
彼は大道路から外れると何処かへと走り去って行った。
「みなさん、いよいよ出発です。準備はよろしいですか?」
翌朝、一同は謁見室に集まっていた。いつも以上に真剣な表情のイストワールがネプギア達を出迎える。
「ひゃ、ひゃいっ!だいじょうぶでひゅっ!」
先頭に立っていたネプギアがガチガチに体を強ばらせ答える。
「アンタ……いくらなんでも緊張しすぎよ……」
「だ、だって……」
ユニが溜息混じりで言う隣ではロムとラムが手を繋いでいる。ユニはあれから傷が完治し、初めて出会った時と同じ万全の状態である。
「……うにゅ……(ふるふる)」
ロムも緊張から……いや不安からか今にも泣き出しそうな顔でラムの手をぎゅーっと握っている。
「大丈夫よロムちゃん!ずーっと手を繋いでてあげる!」
「ふりゅ……(こくこく)」
表情こそ変わらないもののロムは小さく頷いた。
「ネプギアさん、先にこれを……」
イストワールが目の前にボウリングの玉程の大きさのシェアクリスタルを出現させた。
「こ……これが……」
「はい、現在のシェアを凝縮して作ったシェアクリスタルです。」
ネプギアはぎこちない動きでイストワールからそれを受け取った。
「あいちゃん……」
コンパがアイエフに耳打ちした。
「何?」
「あの……シェアが集まったのって実質5pbさんだけのおかげじゃあ……」
「それはまぁ私もちょっと思ったけど言っちゃダメよ…………それより流石にみんな緊張してるわね……」
「無理もないですぅ……これから大きな戦いに行くですから……」
アイエフとコンパも少し不安気な面持ちで候補生達を見つめていた。
「これからいよいよ女神様救出かぁ〜!正義を助け悪を滅ぼす!くぅ〜〜ッ!!」
日本一は何故か興奮気味である。
「女神様が捕まってる場所にどんな珍素材があるか……楽しみですの♪」
がすとはまるで遠足に行く前の子供のようにルンルン気分である。
「……………」
5pbは顔を真っ青にしたまま何も言わなかった。緊張で何も言えないのであろう。
「…………ん?」
「あいちゃん、どうかしたですか?」
「……そういえば、ソニックは何処行ったのかしら?」
「あ……」
アイエフの言葉にコンパはキョロキョロと周りを見回す。
「言われてみれば朝ご飯の時にも居なかった気がするです……」
「あいつ……まさかどっか走りに行ってるとかそんなんじゃないわよね?」
「戦いの前なのにいくらなんでもそれは無いと思いますけど……」
キィッ……
謁見室の扉が開く。室内全員の視線が入り口へと向けられた。
「Hey Guys!!」
片手に花束を持ったソニックだった。
「あ、アンタどこいってたのよ!?」
「走りに行ってたぜ!」
ズデーッとコンパが盛大にずっこける。
「……アンタッ、決戦前に何やってんのよッ!?」
アイエフはソニックへズンズンと近づくと胸ぐらを掴まん勢いで問いかける。彼女の額に複数の血管が浮かび上がっているのは言うまでもない。そしてロムがアイエフの姿に本気でビビってるのも言うまでもない。
「何って……朝のストレッチさ。」
「状況を考えなさいよ!これからの事を考えてスタミナ溜めておくのが普通でしょうがぁッ!!」
「別に走りに行くくらいいーじゃん。俺にとっちゃ近くのコンビニにローリングしながら行くもんだって。」
「最後のローリングの部分が要らないのよ!それをスタミナ使ってるって言うのよッ!!アンタ敵をなめてるの!?女神様が束になってかかっても適わない相手なのよッ!?」
はぁ……とソニックは息を吐いた。
「だからこそ、普段通りを保つのも大事なんじゃないのか?」
「……はぁ?」
「いくら準備を万端にしたって必ずしも成功する訳じゃない。大事なのはいつ何が起こっても普段通り落ち着いて対処する事が大事だと思うぜ?」
今度はアイエフがため息をつくと項垂れる。
「……アンタ程楽天家な奴初めて見たわよ……」
「まぁまぁ、それはそうと……出発は何時だい?俺ならいつでも行けるぜ?」
ソニックが足を踏み出した時だった。
カァァァッ!!
「ッ!!」
突如ネプギアのポケットから青く眩い光が放たれる。
緊張でガチガチ状態だったネプギアは「ヒッ!?」と声を上げたがすぐにポケットに手を突っ込む。中から取り出したのは青く光り輝くカオスエメラルドだった。
「い、一体なにが……ッ!?」
イストワールは眩しそうに目を細め言う。
シュンッ!!
刹那、イストワールを除いた室内の全員が姿を消した。
「…………!?」
イストワールは訳が分からず暫し目をパチクリさせていた。
イストワールの視界に入っていたのは、ソニックが手にしていた花束がゆっくりと宙を舞っている光景…………
そして、先程ネプギアへと渡したはずのシェアクリスタルが落ちていた。
「…………!」
ネプギアはゆっくりと目を開けた。
「ここは…………」
ゆっくりと周りを見回す。どうやらここは森の中のようだった。
「……一体どうなっているのよ……」
周りには仲間達の姿も確認できた。アイエフが目を丸くしたまま周りを見回す。
「みんな、大丈夫か!?」
「はいですぅ……」
「がすともなんともないですの…………」
「でも、ここはどこだろう……」
仲間達が次々と口にする。
「ネプギア……それ……」
ユニが静かにネプギアのカオスエメラルドを指差す。先程までそれが放っていた光は治まり、いつもの状態に戻っている。
「……さっきのは一体なんだったんだろう……」
「そ、それもそうだけど……実はその……――――」
ユニが何かを言いかけ口籠る。
「ユニちゃん?」
「〜〜ッ……やっぱなんでもないわ!」
頬を赤らめたユニがブンブンと首を振る。
「……?」
ネプギアは怪訝そうに首を傾げた。
「今のはまさか……『カオス・コントロール』か?」
ユニの背後から顔を出したソニックがネプギアへと歩み寄ると彼女の手中のカオスエメラルドをまじまじと見つめた。
「え?でもカオスコントロールは……」
「あぁ、カオスエメラルドが自分からカオスコントロールを発動する事は普通あり得ない。」
「でも事実、カオスコントロールが起こった……」
アイエフも怪訝そうに腕を組み首を傾げる。
「……がすとの記憶が正しければですけど……」
口を開いたがすとに一同は視線を向ける。
「がすとは一度ここへ来たような気がするですの。ひょっとすると、ここはリーンボックスではないですの?」
「え?」
ネプギアが再び周りを見回す。
「…………ッ!」
「ね、ネプギアッ!?」
何を思い立ったのかネプギアが走り出す。仲間達はすぐさま彼女を追いかけた。
「…………やっぱり…………」
近くの草を掻き分け、彼女は小さく声を漏らす。
「あれって……リーンボックスの教会?」
彼女の背後に居るアイエフが言う。彼女達の目の前にある建物……まさしく、リーンボックスの教会であった。
一度彼女達が偽の教祖に騙された場所。
――――……そして、何者かがチカの居場所の在処を置いて行った場所。
グワンッ!!
『ッ!?』
刹那、『空気が揺らいだ』。まるで波のように空気が揺らぎ、眺めていて気分が悪くなる。
ゥ………ウゥゥゥ……………
突如聞こえた呻き声。その声に怖くなったロムがラムに抱きつく.
「ふみゅ…………怖いよ〜……!(ぎぅ」
「だっ、誰ッ!?」
アイエフが叫び、カタールを構える。
「待って!なんだか苦しそう……」
5pbがアイエフを制止すると呻き声に耳を傾ける。
アッ…………アァ…………ッ!
呻き声がぜぇぜぇと呼吸を整えているのが分かる。まるで機械音を混ぜたような不気味な声。恐らく女性のものである。
ネプギアは頬に一筋の汗をつたらせながら声に耳を傾けていた。
ハァ………ハァ………タスケテ……………!
「huh!?」
ソニックは咄嗟に聞き返す。
「アンタは誰!?」
ユニは動揺しつつもライフルを構え威勢良く尋ねる。
……オネガイ…………アタシヲ…………タスケテ…………ッ!!
カァッ!!
『きゃあああッ!?』
突如、虚空が輝きだす。彼女達は眩しさに目を腕で覆った。
光は、再び一同の姿を消した。
「…………うぅ…………」
ネプギアは目を開くと倒れていた上体を起こした。
先程と再び周りの風景が変わっている。
彼女にとって本来最も来たくない場所……
――――ここはギョウカイ墓場だった。
「ネプギア、大丈夫か!?」
聞こえた声に彼女は振り返る。
「ソニック!?」
ソニックの姿だった。ソニックはネプギアを助け起こすと周りの仲間達……アイエフを初め倒れている仲間達を手当たり次第揺さぶった。
ネプギアもハッとなり近くに居たユニの体を揺さぶる。仲間達が全員目を覚まし、起き上がるとネプギアと同じく周りを見回す。
「こ、ここって……!」
コンパがアイエフを見つめる。
「えぇ……ギョウカイ墓場ね。」
アイエフが眉間に皺を寄せる。
雷鳴を響かせる真っ赤な空を見上げた後、自身の体よりも遥かに大きい壊れた携帯ゲーム機が山のように積み重なっている周囲を見渡す。
まるで、『地獄』のような光景……
「…………!!(ふるふる)」
ロムが震えながらラムの手をぎゅーっと強く握っている。
「だいじょーぶよロムちゃん。私が手を繋いでてあげる!」
ラムがロムの緊張をほぐすためか笑顔を作り彼女の顔を覗き込む。ロムは何処か安心そうに小さく頷いた。
「ここにお姉ちゃんが……」
ユニも周りを見回していた。彼女が三年前に姉のノワールと自分の中では来るはずであった決戦の地。
「…………」
彼女はグッと拳を作り、歩き出す。
「あ、待ってユニちゃん!」
ユニをおいかけネプギアも歩き出す。彼女に続いて仲間達も歩き始めた。
「へー、ここがギョウカイ墓場かぁ……悪と正義が決着を付けるにはもってこいの場所だね!正義の血が騒ぐよ!」
「ふぅむ……がすとの睨んだ通りですの。ここにはがすとも見た事の無い珍素材の匂いがぷんぷんするですの。戦いが終わったら是非ともこの地を探索したいですの。」
「アンタ達本当に緊張感の欠片も無いわね……」
「…………」
5pbだけは常時顔を真っ青にしていた。
「アンタはアンタで緊張しすぎよッ!」
「ふぇっ!?ご、ごめんなひゃい!」
「はぁ……緊張するなとは言わないけどそれじゃアンタ戦えないわよ?」
そんな二人のやりとりを隣で聞いていたソニックは乾いた笑いを漏らした。
「アンタも何笑ってんのよ……」
「わりいわりい、ちょっと思い出した事があってな……」
「思い出した事……ですか?」
「あぁ。」
ソニックがコンパに親指を立てる。
「俺達が初めて出会った場所もここだったってな!」
「ッ……」
アイエフはソニックの無邪気な発言に目を丸くした。後アイエフもふふ、と小さく笑いを漏らす。
「……そういえばそうだったわね。」
「確かに、あの時ソニックさんが居なかったら私達やられてたかもしれないですぅ……」
「その前に俺がお前達に助けられたけどな!」
へへっ、とソニックが小さく笑う。
「アンタが空から降って来た時ね。」
「からのピクミ●」
「やめろ」
アイエフが鬼のような表情に変わる。
「No problem!俺んとこは任天●とは仲良いからこんくらい――――」
「何度も言ってるけどリアルな話は止めなさいッ!」
ソニックはぶっきらぼうに頭の後ろに両手を組み口笛を吹き始める。アイエフの言葉を無視しているようだった。彼の様子にアイエフは溜息をつく。そんな二人の様子にコンパが優しく微笑む。
「……それにしても……」
アイエフが飽きれたように頬に手を置くと表情を一変させ眉間に皺を寄せた。
「――――さっきの声は一体誰だったのかしら?」
その時だった。
ズオォォォォォォッ!!
『ッ!!』
爆音が轟く。同時に地が大きく揺れた。
「お姉ちゃんッ!?」
ユニは急に嫌な予感を感じ取り走り出す。
「ま、待ってユニちゃん!」
ネプギアも走り出す。続いて仲間達も走り出した。
「ネプギア!」
ソニックはネプギアに追いつくと走りながら彼女の肩を叩いた。ネプギアがそっと彼に振り返る。
「――――パーティの始まりさ。Are you ready?」
ソニックは親指を立て、口の端を上げる。
「えっ?」
しかし、彼の言葉を上手く聞き取れなかったのかネプギアは聞き返した。ソニックは答える事無くスピードを上げてユニの背後を走り続けた。
一同は大きな不安を胸に抱きつつ、走り続けた。
「ウガアアアアアアアアァァァァァァァァッ!!!!」
ジャッジ・ザ・ハードは斧を振り上げけたたましく雄叫びを上げた。その身はボロボロであった。
ズゥゥ……ゥン……ッ!
そのまま斧を振り下ろそうとするも、力が入らずその場に倒れ込む。その大きな質量が地に落ちた影響でギョウカイ墓場全体が大きく揺れた。
「ハッ……ハッ…………」
そんなジャッジに対峙しているその『姿』は息を乱しつつジャッジの様子を伺っていた。
「グオオオォォォォォ……ッ!!てんめぇ…………レーラァァァァァァッ!!どういうつもりだぁぁぁぁッ!!?」
ジャッジは身を倒したまま叫ぶ。
「く……まだ息があるのね……ッ!」
姿――――『レーラ』はジャッジを睨みつけたまま口元の血を腕で拭った。
女神化した彼女は息を切らしたままレッドバーニングソウルを構える。彼女自身もプロセッサユニットに数カ所破れた箇所があり少しボロボロだった。
「レエエエエエエエラアアアアアアアッ!!貴様ァァァァァァッ!!裏切りやがったなぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
ジャッジは叫びながら斧を杖にしてよろよろと立ち上がる。奴が叫ぶ度にビリビリと空気が震えた。
「くッ……!」
(後少し……なのに……ッ!)
レーラは剣を構えたままギリギリと歯軋りをする。
「レーラちゃんッ!?」
聞こえた声にレーラは視線を少しだけ声の方へと向ける。
「…………」
彼女の視界に入ったのは、リーンボックスで相手をした連中――――ネプギア達だった。
「ネプギア、あいつは?」
ユニが尋ねるもののネプギアは答える事無くレーラを見つめていた。
「………………ッ!!」
レーラは表情を複雑そうにゆがめると目元を暗くする。
「…………女神達ならそこに居るわッ!!」
レーラがネプギア達へと背を向けたまま片手で指差した方角――――少し離れた場所で各国の女神達がゲーム機の残骸の山に上半身をもたらせた状態で意識を失っていた。
刹那、レーラの頬を何かが伝った。
「お姉ちゃんッ!」
「お姉ちゃんッ!?」
「お……お姉ちゃんッ!!」
「……お姉……ちゃん……!」
女神候補生達が叫ぶ。
「早くあの人達を連れてこの場を離れなさいッ!」
「レーラちゃんッ!やっぱりレーラちゃんは――――」
ネプギアが口を開くも――――
「うるさいッ!!早くここから消えなさいッ!!アンタ達の顔なんてもう見たく無いのよッ!!!二度とギョウカイ墓場に来ないでッ!!」
レーラが悲痛そうに叫ぶ。刹那、ネプギア達はビクッと肩を揺らし動きを止めた。
「みんなッ、女神達の元へと走るんだ!」
ソニックが叫び、ネプギアはハッとなる。見てみると仲間達は既に女神達の所へと走っていた。少し遅れてネプギアも走り出す。
「グォォォォォォォォォォ…………ッ!!!!」
バッ!
ジャッジは強引に体を起こすと大きく跳躍する。
「逃がすかぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
ジャッジは片腕を巨大な銃器に変形させると女神の元へと向かう一同に銃口を向け先端に光を集結させる。
「こうなればてめぇら全員ぶっ殺してくれるわああああああああッ!!!!!」
ドオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!
ジャッジが叫び、銃口から巨大なレーザーを放った。
「させないッ!!」
レーラが瞬時に堕天使化するとレーザーの先端にたちはだかった。そして、手にしていたレッドバーニングソウルを振り下ろす。
バギャアアアアアアアッ!!
レーラのレッドバーニングソウルから放たれた赤い鎌鼬がジャッジのレーザーを切った。鎌鼬はそのままジャッジへと向かって行く。
「レーラちゃんッ!!」
ネプギアは足を止め彼女の名を呼んだ。
「止まるなッ!」
しかし、後ろから走って来たソニックに腕を引っ張られ再び走り出す。
「でも、レーラちゃんが……レーラちゃんがッ!」
「あいつなら大丈夫だ。」
既に女神達の所へと辿り着いていた仲間達の所へ到着するとソニックがアイコンタクトでネプギアに合図し、彼女からカオスエメラルドを受け取った。
「カオス・コントロールッ!!」
ネプギア達の姿が女神達の姿と共にギョウカイ墓場から消えた。
「グアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
それと同時に、レーラの鎌鼬がジャッジの体を縦半分に切り離した。
ドオオオオオオオオオッ!!
ジャッジの姿が大爆発を起こす。奴の破片が至る所へと飛び散り、レーラは腕で頭を覆った。爆発が治まり、レーラは地へ舞い降りるとふぅ……と息を吐いた。
「…………」
背後から感じ取った気配。咄嗟に振り返る。
そして――――
「…………………」
イストワールはプラネタワーの謁見室で不安そうに胸に手を置いていた。
女神救出を前にして、仲間達の姿が女神を救う唯一の鍵であるシェアクリスタルを置いたままどこかへと消え去ってしまった。これから彼女はたった一人でどうすればいいのか分からず、頭を悩ませていた。
刹那、彼女の不安が全て吹き飛んだ。
パッ!!
「ッ!!」
イストワールは顔を上げ目を丸くした。
先程一瞬にして消えてしまった仲間達の姿が戻って来ていたのだ。
「いーすんさん!」
ネプギアがイストワールの姿を見つけるとその名を呼んだ。
「みなさん、ご無事だったのですね…………」
嬉しそうにしていたイストワールは言葉を止めた。
「…………ネプテューヌ……さん…………」
視界に入ったとても懐かしく、とても会いたかった姿。自らの失敗のせいで姿を消した、大好きな姿。
イストワールの頬を小さく何かが伝った。
「お姉ちゃん達を助け出せました!」
ネプギアの声にイストワールはハッとなり、ブンブンと顔を振ると真剣な面持ちとなる。
「まずは、女神様達をプラネタワーの病室へと運びましょう。」
「私達も手伝うよ!」
「がすともお手伝いするですの。」
「ボクはベール様を……!」
「病室はこっちですぅ!」
仲間達が一斉に謁見室を後にする。
謁見室内に残ったのは二人。
「…………ソニック…………」
アイエフは彼の名を呼んだ。
「…………………」
しかし、ソニックは答える事は無い。眉間に皺を寄せ、地に視線を落としていた。
――――二度とギョウカイ墓場に来ないでッ!!
そして、顔を上げる。
「アイエフ、俺はもう一度ギョウカイ墓場へと戻る。まだ一人、助けてない奴がいる。」
「……分かっているわ、レーラでしょ?」
「あぁ、今から俺一人で…………」
「一人?冗談はやめて。」
アイエフがそっとソニックに歩み寄る。
「――――一人で行かせて、三年前みたいになるのはもう嫌なの。」
アイエフが若干情けない面持ちになる。
「…………」
ソニックは分が悪そうにアイエフから視線を外した。
暫し、沈黙が奔りソニックは視線を彼女へと戻した。
「……邪魔は無しだぜ、Buddy?」
「分かっているわ。」
アイエフがしっかりと頷くとソニックがカオスエメラルドを取り出す。
「カオス・コントロールッ!」
二人の姿が、ゲイムギョウ界から消えた。
「………………」
ネプギアはベッドの上でパープルハートの上体を抱きかかえていた。
「お姉ちゃん……」
小さく姉を呼ぶ。コンパはそっとパープルハートの後頭部に手を起き、口にそっとペットボトルの口をつけ水を飲ませた。
ある程度飲ませるとコンパはペットボトルを離し額の汗を拭った。
「これで全員ですぅ……」
「おっけーですの。あとは皆さんが目を覚ますのを待つだけですの。」
周りを見回すと各ベッド上に意識を失った女神達と心配そうに見守る女神候補生達の姿があった。ベールの所には5pbがいた。
「お姉ちゃん…………」
ユニも姉を呼ぶ。
「お姉ちゃん……!」
「ふりゅ……お姉ちゃん……起きて……」
ロムとラムもホワイトハートの顔を心配そうに覗き込んでいる。
「ベール様……」
唯一ベッドの隣で丸椅子にこしかけた5pbがベールを心配そうに見つめている。
「…………ん………」
ラステイションの女神――――ブラック・ハートの瞼が微かに動く。
「……お姉……ちゃん?」
ユニが身を乗り出し彼女の顔を覗き込む。
「…………ユ……ニ……?」
ブラック・ハートが静かに目を開くとユニの名を呼ぶ。
「……………ッ!」
刹那、ユニは何も言えなくなり同時に目に涙を浮かべた。
「…………遅かったじゃない…………」
ブラック・ハートは照れくさそうに言うとユニの頭を撫でた。
「……ごめッ……なさ……ッ……!」
ユニの瞳から大粒の涙が流れ落ちると、姉に抱きついた。
「………ぁ……あ…?」
ルウィーの女神、ホワイト・ハートも静かに目を覚ました。
「……………ッ」
二人のホワイトシスターは何故か急に照れくさくなり、口籠る。
しかし、何も言わない二人の瞳からも大粒の涙が零れている。
ホワイト・ハートは乾いた笑いを漏らすと二人を自分の胸の中へと抱き寄せた。
「……ありがとうな、二人共……」
「う……うぇぇぇぇぇぇ……お姉ちゃぁん…………」
「ふぇ……くりゅ…………ひっく……ひっく……(ぽろぽろ)」
「……ったく、泣き虫なのは変わってねーな……」
笑いを零すホワイト・ハートの頬にも小さく何かが伝っていたのは言うまでもないだろう。
「……………ぅ…………」
ネプギアの腕の中でパープル・ハートは身じろいだ。
そして、静かに瞳を開く。
「お姉ちゃん…………」
「……ネプギア……あなたが助けてくれたのね……?」
「…………お姉ちゃん……だよね……?本物だよね……?私……ちゃんと助けられたんだよね……?」
「………………」
パープル・ハートはゆっくり体を起こすと、ネプギアの体を優しく抱きしめた。
「…………あなたが、助けてくれた…………ごめんね、ひとりぼっちにさせて……寂しかったでしょう……?」
「…………うッ……!うあああああああああッ!お姉ちゃんッ!」
とうとう我慢できなくなり、ネプギアは声を上げて泣き出す。
「お姉ちゃん!お姉ちゃんッ…………お姉ちゃぁ……ぁん……!」
「…………大丈夫、私はここに居るわ…………これからも、ずっと……側に居るから……………」
半狂乱になり泣き叫ぶネプギアの髪をパープル・ハートは優しく撫で続けていた。
――――やがて、女神候補生達は声を上げて泣き出していた。一方、女神達は優しく妹達を撫で続けていた。その様子を見守っていた日本一、がすとといった仲間達はお互い顔を見合わせ微笑んでいた。
この日、プラネタワーの病室内はしばらく泣き声に包まれていた…………――――
「う……………」
しばらくして、リーンボックスの女神……グリーン・ハートが目を覚ました。
「……ベール様!」
5pbが身を乗り出す。
「………………?」
グリーン・ハートは5pbの姿を見ると小さく首を傾げた。
「ボクは歌手の5pbです。リーンボックスでライブを開いています。そしてチカ様の補佐をしている者です。」
「……チカの……ですか?」
グリーン・ハートは上体を起こそうとするも苦痛に顔を歪めた。
「あ、無理しないで寝ていてください!」
「……申し訳ない……ですわ……」
グリーン・ハートがか細い声で言うと再びその身を横にする。
「…………ここ……は……?」
「プラネテューヌの教会です。」
「そう……ですの……」
ベールは首だけ動かし周りを見回す。仲間の女神達や女神候補生……そしてコンパ達が眠りについている。
各国、女神候補生達が女神に抱きついて寝ているのは言うまでもなかった。
「…………」
何かを思い出すかのように、グリーン・ハートは5pbに身直る。
「…………レーラ、は……何処ですの……?」
「ッ……」
5pbは答えなかった。
そして、室内は再び静寂に包まれる。
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いよいよ、女神救出編