No.577524

IS インフィニット・ストラトス BREAKERS 第二話 和解

raludoさん

IS インフィニット・ストラトス BREAKERS 第二話 和解

 今回も駄文です。

2013-05-18 16:00:19 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:2365   閲覧ユーザー数:2249

刀奈との模擬戦を放課後に控えた今日この頃。

 

俺は今四組の前にいる。

 

「……簪はこのクラスか」

 

俺は刀奈の妹、簪に会うためにこのクラスに来ている。

 

簪とはボディーガード時代の時かなり懐かれていたからな。

 

生きているってことぐらいは報告しなきゃ流石に可愛そうだ。

 

昨日はなんだかんだあって話すらできなかったからな。

 

ちなみに今はSHRと一時限目の合間の休み時間だ。時間は少ないので挨拶程度で済ませるつもりだ。

 

そして、俺は意を決して四組に入る。

 

「え、あれって一組の……」

 

「も、もしかしてうちらに何か用なのかな!?」

 

教室に入ると女子たちが騒ぎ出す。

 

それを俺は無視して目的の人物を探す。

 

すると窓側の席で信じられないものを見るかのような目で俺を見ている流水を思わせるかのような水色の髪をした少女がいた。

 

――目標発見。

 

俺はその少女に近づいていく。

 

そして――。

 

「簪、久しぶり」

 

「……」

 

……あれ?無視されている?

 

――無理もないかもしれない。BREAKERSにいる身分としては自分の存在をできるだけ隠す必要があった。故に更識姉妹にもコンタクトをとれなかったのだ。それなのに急にコロッと目の前に現れれば、愛想を尽かされてもおかしくないな。

 

「……ごめん。例え君が俺を嫌いになっていてもいい。だから、これだけは言わせてくれ。――ただいま」

 

「……っ!ず、ずるい。そんなこと言われたら許したくなっちゃうよ……」

 

簪はフルフルと体を震わせながら、必死に何かに耐えているようだった。

 

「き、嫌いになんてなるはずがない。あなたは私にとって大切な……お兄さんだから」

 

ついに我慢できなかったのか、瞳から涙を滲ませながら俺に抱き付いてくる簪。

 

それを俺は優しく抱き留める。

 

「ありがとう。嫌いにならないでくれて。俺をまだ〝お兄さん〟と呼んでくれて」

 

優しく頭を撫でながら、言葉を紡ぎだす。

 

「さて、そろそろ休み時間が終わるな。簪ももう大丈夫だよな」

 

「(コクッ)」

 

簪は無言で頷くと俺から離れ、そのまま教室から出て行ってしまった。

 

さて、俺も一組に戻るかな――。

 

出口に向かおうとして周りの視線に気づく。

 

……うん。場所を選ぶべきだったな。失敗した。

 

俺は追及を逃れるため、ダッシュで一組に戻った。しかし、追及を躱せても噂までどうにかできるわけがなかった。

 

 

 

 

「ところで、織斑。お前のISだが準備までに時間がかかる」

 

一時限目の開始時、織斑先生が一夏にそんなことを言っていた。

 

「へ?」

 

「予備機がない。だから、少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」

 

……なるほどな。おそらくデータ取りも兼ねているんだろう。でも、そうなると一夏はどこかの企業か、政府に所属することになるな。そうじゃないと専用機はもらえないからな。

 

まあ、夜にIS委員会に問い合わせてみるか。

 

「???」

 

一夏がチンプンカンプンって感じで首を傾げている。……昨日教えたんだけどな。

 

「せ、専用機!?一年の、しかもこの時期に!?」

 

「つまりそれって政府から支援が出てるってことで……」

 

「いいなぁ。私も欲しいな……専用機」

 

一夏に専用機が用意されることを聞いて女子たちが騒ぎ出す。確かに異例のことだからな。俺も専用機を持っているけど、一応俺はIS委員会の提携組織所属ということになっているからな(少し違うが、似たようなものなのでこれで通す)。

 

「織斑、教科書六ページを音読しろ」

 

訳が分かっていなかった一夏に織斑先生が助け船を出す。

 

「え、えーと……『現在、幅広く国家、企業に技術提供が行われているISですが、その中心たるコアを作る技術は一切開示されていません。現在世界中にあるIS四六七機、そのすべてのコアは篠ノ之博士が作成したもので、これらは完全なブラックボックスと化しており、未だ博士以外はコアを作れない状況にあります。しかし博士はコアを一定数以上作ることを拒絶しており、各国家・企業・組織・機関では、それぞれ割り振られたコアを使用して研究・開発・訓練を行っています。またコアを取引することはアラスカ条約第七項に抵触し、すべての状況下で禁止されています』……」

 

「つまりそう言うことだ。本来なら、IS専用機は国家あるいは企業に所属する人間しか与えられない。が、お前の場合は状況が状況なので、データ収集を目的として専用機が用意されることになった。理解できたか?」

 

「い、一応は。でも、それなら紅牙はどうなんだ?あいつも特別に専用機が用意されるのか?」

 

「いや、黒咲はIS関連の企業に所属しているからな。専用機はすでに用意されている」

 

まあ、IS関連企業は嘘だけどな。まさか、面と向かってBREAKERSとも言えないし。

 

「そ、そうなのか……」

 

一夏はどこか納得していないようだったが。

 

「さて、授業を始めるぞ。山田先生、号令を」

 

 

 

 

昼休み。

 

織斑先生が教室を出るときに『黒咲。私と一緒に来い』と言ってきた。

 

……ついに事情聴取の時が来たか。

 

あの先生に隠し通すことはやっぱり無理だな。

 

俺は諦めたようにため息をつき、先生に続く。

 

そして、人気のない場所に連行。使われていない教室に案内される。

 

「座れ」

 

先生に言われ、俺は教室の椅子に座る。

 

「で?お前はなぜこの学園に来た?」

 

いきなり核心を突かれた。まあ、予想はできていたけどね。

 

「……隠しても無駄なのでしょうね」

 

「ああ、ある程度束から話は聞いているからな」

 

――束さん。次会ったときはお仕置きです。

 

「それじゃあ、隠しても意味ないですね。いいですよ話します」

 

「まず一つ、お前はどこの差し金だ?」

 

「BREAKERSです」

 

「BREAKERSだと?……なるほど、IS委員会か」

 

「はい。IS委員会からの任務で、この学園に入学する織斑一夏及び代表候補生の護衛が主な任務です」

 

刀奈とのことは伏せる。

 

「……本当は更識が目的じゃないのか?」

 

「……っ!!」

 

「まあ、それはいい。それはお前個人の問題のようだしな。それよりも、まさかBREAKERSとはな。まあ、そこらの怪しい組織よりは信頼できるな。愚弟共々の護衛、頼むぞ」

 

「……もちろんです」

 

「よし、もういいぞ。とっとと飯を食いに行け」

 

そう言い残し、先生は教室を出ていった。

 

……さすが、織斑千冬。何もかも見通されていたな。

 

まあ、結果的には黙認してもれえたようだから良しとするか。

 

俺はそれ以上の思考をやめ、食堂に向かった。

 

 

 

 

「おまえ、昨日は生徒会に呼び出されて、今日は千冬姉かよ。本当に名にやらかしたんだよ」

 

食堂に到着し、食券でラーメンを受け取り、一夏と篠ノ之さんの処へ向かったら、一夏が開口一番にそう言ってきた。

 

「変に勘ぐるなよ、一夏。大したことはなかったよ」

 

「本当かぁ?まあ、そう言うなら別にいいんだが」

 

一夏が渋々引き下がり、俺は一夏の隣に座る。すると――。

 

「あは、紅牙発見♪」

 

と俺の隣に刀奈が座ってくる。

 

「かた……楯無、もしかして俺のこと探していたのか?」

 

「大丈夫よ、私も今来たばかりだから」

 

そう言い、刀奈は一夏たちに自己紹介を始めた。……って待て!!お前が自己紹介したら……!!

 

「あら、あなたが織斑一夏君で、そちらのあなたが篠ノ之箒ちゃんね。私は更識楯無。この学園の生徒会長よ。そして紅牙のこ・い・び・とよ♪」

 

ああ、やらかしやがった。しかも、わざわざ『こ・い・び・とよ♪』の部分だけ大きな声で言いやがった。

 

シーーーーン。

 

食堂内が水を打ったように静まり返った。

 

そして――。

 

「え、ええええええっ!!」

 

「黒咲君と会長ってそういう関係だったのっ!?」

 

「会長ずるい!!才色兼備でスーパー超人でしかも彼氏持ちなんて……」

 

「く、やはりこの世界に神はいない!!」

 

周りの女子たちが騒ぎ始めた。

 

俺は追及を逃れようとその場から逃げ出す準備をした。が、

 

「ええ、そうよ♪紅牙は私の大事な恋人。だから……手を出したら……許さないわよ?」

 

刀奈が席を立ち、周りを威圧しながら、そう宣言した。

 

「それと、今私達は食事中なの。あまり騒がしくしないでくれるとおねーさん嬉しいかなあ」

 

刀奈がそう言ったことにより、それ以上追及してくる者はいなかった。

 

「よし、これでゆっくりと紅牙たちと話ができるわね」

 

「あ、あのー。俺達お邪魔では?」

 

「え?別に気にしなくていいわよ?こっちも気にせずイチャイチャするから♪」

 

「こ、こんなところでしないでください!!」

 

あ、篠ノ之さんが珍しく突っ込んだ。

 

「いいから、いいから」

 

「よくありませんよ!!」

 

「篠ノ之さん、楯無はこうなるともう止められないから。諦めてくれ。本当に目障りなようなら俺たちは別のところに行くから」

 

「い、いや、そこまではしなくてもいい。あと、私のことは箒でいい」

 

「そうか、ありがとう箒」

 

俺は笑みで返す。だって、ようやく箒と打ち解けたって感じだからな。一応姉には世話になったからな。そういう意味でも交流はしておきたい。

 

「……えい」

 

「え?いたたたたたっ!!」

 

隣に座っている刀奈が頬を膨らませながら俺の頬を引っ張る。

 

「ふーん。私の許可なしにそんな笑顔を振りまくんだ。生徒会の許可なしに、生徒会長の許可なしに!!」

 

「わ、悪かったよ。でも、好意には笑顔で答えなきゃ、だろ?楯無もそこはわかってくれ!!」

 

「むぅ、仕方ないわね」

 

渋々俺の頬を放す。

 

「――やっぱり、俺達お邪魔なんじゃ……?」

 

「そんなことはないわよ。こういうのはねぇ、ギャラリーがいるからいいのよ♪」

 

「だから、場所を選んでくださいって!!」

 

……もうどうにでもなれ。

 

刀奈に振り回される俺達だった。

 

 

 

 

放課後になった。

 

俺は第三アリーナに向かっていた。

 

言わずもがな、刀奈と模擬戦をするためだ。

 

すると、簪がひょこっと現れた。

 

「……どこに行くの?」

 

「第三アリーナだよ。刀奈と模擬戦をするんだ」

 

二人きりの時以外は楯無って呼ぶ約束だけど、簪なら別に問題ないか。

 

「……っ!?あ、あの人と模擬戦するんだ……」

 

……。簪、お前もしかして。

 

「簪、もしかして刀奈と何かあったのか?」

 

「な、何でもないっ!!」

 

そのまま、簪は走り去ってしまった。

 

「……ちょっと、ストレートに聞きすぎたかな。簪には今度謝るとして、刀奈に事情を聴く必要があるな」

 

今日か、明日の夜にでも聞いてみるか。

 

だけど、今は模擬戦だ。

 

俺はそのまま第三アリーナへ向かって行った。

 

 

 

 

第三アリーナでは刀奈が、もうスタンバイしていた。

 

「紅牙、遅いわよー。待ちくたびれちゃった」

 

「ごめん。ちょっと野暮用で。……準備するから待っていてくれ」

 

「はいは~い」

 

刀奈の返事をするのを確認してから、俺はアリーナのピットに入る。

 

「さて、〝零〟起きろ。出番だぞ」

 

俺は自身がつけている腕時計に話しかけた

 

『ん~。マスター、出番がないからすごく退屈でしたよ?』

 

実はこの腕時計は俺のISの待機状態だ。そして、今返事をしたのが疑似人格AIの〝零〟だ。サポート用に搭載されているのだが、束さんが変にいじくったためこのようにして自我が誕生してしまったのだ。

 

「悪いな。でも、ほらお前の出番だからな。しっかりと頼むぞ」

 

『了解しました。マスター』

 

そして、俺はISを起動させるべく意識を集中させる。

 

「――行くぞ」

 

俺が呟いた瞬間、全身が光に包まれる。

 

そして、光が消えると、そこにはまるで騎士を思わせるかのようなISを装着した俺がいた。

 

頭以外はすべて装甲で覆われており、中世の騎士を思わせるかのようなフレーム。青白く光るブルーホワイトが印象的で、後ろの翼がブルーホワイトとブラックのツートンで構成されていた。

 

「よし」

 

俺はスラスターを使い、そのままピットから躍り出た。

 

そこにはIS〝ミステリアス・レイディ〟を装着した刀奈がいた。

 

「あら、ようやくね。ふーん、あなたのISってとても綺麗ね。名前は何て言うの?」

 

「こいつの名前は〝ミスティック・クラッド〟だ。まあ、正確に言うと後ろに〝typeZERO〟付くんだけどな」

 

「〝typeZERO〟?」

 

「まあ、そこは企業秘密ってことで。行くぞ〝零〟。準備は大丈夫だよな」

 

『大丈夫です、マスター。各部すべてオールグリーンです』

 

「よし、じゃあ始めるとしますか」

 

「ええ、望むところよ」

 

そして、俺たちは同時にスラスターを吹かした。

 

まずは刀奈が蒼流旋を装備されている四門のガトリングガンを撃ってきた。

 

俺はそれを錐揉み飛行で避けながら、対艦刀〝ミスティックセイバー〟をコールする。

 

「あら、物騒な近接武器ね」

 

刀奈が言った通り、このミスティックセイバーは大太刀ほどの大きさと太さがあり、また鍔の所にはマガジンが装填されている。

 

「俺は近接戦闘のほうが得意なんでな!!」

 

俺は叫びながらスラスターを全開にし刀奈に迫る。

 

「思ったより速い!!」

 

ミスティック・クラッドの加速力に驚いていたのか、僅かだが刀奈に隙が生まれた。

 

「はあああっ!!」

 

その隙を俺は見逃さず、ミスティックセイバーで斬り込む。

 

「くっ!!」

 

刀奈はそれをギリギリ避け、カウンターとして蒼流旋を横薙ぎに振るった。

 

それを俺はミスティックセイバーで弾き、回し蹴りを叩き込む。

 

だが、読まれていたのか、あっさりと躱され、反撃とし蛇腹剣〝ラスティー・ネイル〟を振るってきた。

 

「甘い!!」

 

俺は左手に〝シュナイダーナイフ〟をコールし、それでラスティー・ネイルを受け止めると同時に右手のミスティックセイバーを一閃させた。

 

「く!!やるわね……」

 

蒼流旋で防いだ刀奈だが完全に防げなかったのか、少しシールドエネルギーを削られたようだ。

 

『マスター、ここは近接での戦闘にこだわるのではなく、遠近バランスよく戦うことをお勧めします。左右に浮いているクリスタルのようなものから、水の反応がしています。おそらくナノマシンだと思われますが、それで水蒸気爆発を起こされたらひとたまりもありません』

 

――水蒸気爆発。確かに厄介だな。

 

そう思い、少し距離を取ると、刀奈がナノマシンで水を操り、高圧水流のブレードをいくつか作り出し、それらを投擲してくる。

 

「くっ!!」

 

俺はそれらを器用に避けるが、それを狙っていたかのようにガトリングガンを浴びせられる。

 

『マスター、シールドエネルギー残量が三分の二を切りました』

 

「くそ。さすが学園最強だな。そう簡単に仕留めさせてくれないか」

 

愚痴りながら俺は牽制として左手のシュナイダーナイフを投擲し、空いた左手にアサルトライフル〝ラピッドシューター〟を呼び出し、火を吹かせる。

 

「む、かなり連射性の高いアサルトライフルね。でも、その分一発の威力は低いわ!!」

 

刀奈はナノマシンで水を操り、高圧水流のドレスを纏い、こっちに急加速してくる。

 

投擲したシュナイダーナイフと銃弾は高圧水流によって弾かれる。

 

「それならっ!!」

 

俺は手榴弾をコールし、刀奈の目の前に投げ、それを撃つ。

 

ドガアアアンッ!!

 

けたたましい爆発とともに俺はその場を離脱。

 

だが、煙から刀奈が飛び出してきた。

 

「その程度でやられるほどミステリアス・レイディは軟じゃないわよ!!」

 

刀奈は急加速しラスティー・ネイルに高圧水流を発生させ、俺に斬りかかる。

 

「だったら、その高圧水流を纏わせる前に勝負を決める!!」

 

迫りくるラスティー・ネイルを蹴り上げる。

 

そして俺は粘着式手榴弾〝セムテック〟を両手に二つずつ粘着させ、刀奈を両腕で殴りつけた。

 

「ちょっ!!あなた正気!?きゃあああ!?」

 

「これでどうだっ!」『これでどうですっ!』

 

刀奈が高圧水流のドレスを作る前に大爆発が二人を襲った。

 

試合の結果は両者のシールドエネルギーが同時に無くなり、引き分けとなった。

 

 

 

 

夜。俺の部屋にて

 

「ふーんだ」

 

あの試合の後、納得いかなかったのか、刀奈は頬を膨らませている。

 

「なあ、まだ怒っているのか」

 

「別に怒ってないわよ?ただ、女の子に対して自爆特攻するなんて、紅牙は随分と鬼畜なのね」

 

き、鬼畜って……。はあ、しょうがないな。

 

「刀奈」

 

俺は刀奈の肩を掴んで俺のほうに向かせる。

 

「ちょ、なに――ふむっ!?」

 

そして、刀奈の唇を奪う。

 

舌を素早く刀奈の口内に滑り込ませ、舌を絡ませる。

 

「ん……ちゅ……あむ……///」

 

それからゆっくりと唇を離す。

 

「も、もう、紅牙ぁ……///」

 

刀奈は先ほどの態度とは打って変わり、頬を染め、ねだるように俺を見ている。

 

それからしばらくは、ひたすらキスをする俺達だった。

 

 

 

 

ふ、ふん。キスなんかで私が許す……けど///」

 

「はは、刀奈は可愛いなあ」

 

特に頬を染めて俺から目を背けているあたりが。

 

「も、もう!紅牙、覚えておきなさいよ……」

 

「はいはい。ところで、話は変わるんだけど……」

 

「なあに?」

 

「――簪のことなんだが」

 

「っ!!……き、聞いたわよ、紅牙。簪ちゃんを抱き寄せたんだって?これは、姉として――」

 

「何があった?」

 

「……」

 

刀奈はそのまま黙り込み、そしてうなだれてしまった。

 

「……そうよね。紅牙が感づかないわけないわよね」

 

しゅんとしょんぼりしてしまった刀奈を抱き寄せ、話を聞く。

 

「その、あの子、私に対して引け目があるっていうか……。私も頑張っているんだけどね」

 

……大体わかった。

 

「……明日の放課後、俺の部屋に来ること。簪も呼ぶから」

 

「え、え?なに?どういうこと?」

 

「それは明日になってからのお楽しみだ」

 

……これは説教が必要だからな。

 

「さて、俺はもう寝るから、刀奈は部屋に戻って」

 

「……ここで寝るわ」

 

「駄目。部屋に戻って」

 

少し怒気を含ませながら刀奈を押し出す。

 

「こ、紅牙?その、怒ってる?」

 

「そんなことないから。さあ、出た出た」

 

刀奈を部屋から追い出し、ドアの鍵を閉める。

 

そして、刀奈の気配がなくなるのを確認して。

 

「簪、刀奈。お前たちは空回りしすぎだ。説教なんて偉そうなこと言っているけど、俺はただ気付いてほしいだけなんだ。こんな誤解、悲しすぎるからな」

 

そして、俺は明日の準備をして、早々に寝た。

 

 

 

 

翌日の放課後。自室にて。

 

「「……」」

 

俺は更識姉妹を正座させていた。

 

「さて、なぜここに来てもらったかはわかるかな」

 

「あ、あの、紅牙?なんで私達正座させられているのかなぁ~なんて」

 

「それはもちろん、これから二人を説教するからだ」

 

「「……」」

 

二人とも見当は付いていたのか、うなだれる。

 

「まずは、簪。何を恐れているんだ?」

 

「……え?」

 

簪の顔が強張る。

 

「刀奈が、実の姉がそんなに怖いのか!確かに刀奈は才色兼備の天才だ。その妹である簪もつらいのは分かる。だけど、勝手にイメージするな!お前の姉はそんなにお前に無関心なのか!!」

 

「っ!!」

 

「ちょ、ちょっと紅牙!!」

 

怯える簪を擁護しようと刀奈が口を挟もうとするが。

 

「刀奈は黙ってるんだ」

 

少し威圧感を出して、黙らせた。

 

そして、さっきとは打って変わって穏やかな口調で語り掛ける。

 

「違うだろ?刀奈がそんな姉じゃないのは簪、君が一番分かっていることじゃないのか?」

 

「わ、私は……ただ、恐れていただけ?」

 

「そうだ。そして、勝手に刀奈をイメージして、勝手に避けていただけだ」

 

俺はそう言い放つと簪は泣き出してしまった。

 

「わ、私、そ、そんなつもりじゃあ……」

 

自分が恥ずかしくなったのだろう。全て自分が勝手にそうしてただけっていうのを理解して。

 

「そして、刀奈も。相手のことを考えない気遣い、優しさはその人を苦しめるだけなんだ」

 

「……それがいけなかったの?」

 

刀奈は恐る恐る聞いてきた。

 

「それが全てとは言わないけど、タイミングが悪かったんだと思う」

 

「……」

 

刀奈は俯いてしまった。

 

「ふう、柄にもないことをしてしまったけど、俺は嫌だったんだよ。どちらも思い違い、勘違いをしているんだから。正直見ていられなかった。やっぱり二人には仲良くしてほしいよ。俺は」

 

俺がこの話をした真意を伝えた。

 

すると簪が――。

 

「……お姉ちゃん!……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ!!」

 

刀奈にしがみつき必死に謝っていた。

 

「ううん。私の方こそごめんなさい。あなたのことを考えずに無神経なことを言って」

 

刀奈も瞳に涙を浮かべながら、簪を抱き留める。

 

俺はその光景に安堵し、二人に気づかれぬよう、静かに部屋を後にした。

 

 

 

 

あとがき

 

いやー、今回は前回よりも文字数が少なくなっちゃったなあ。いやね?ちょうど区切りが良かったんですよ。この後はセシリア戦を書くんですけど、それは次回にもっていく形にしたほうがいいと思いまして。

 

あと、補足ですけど、刀奈と簪の仲が悪い理由は少し独自も入っています。それと紅牙、理由を見抜くの速すぎだろ。って思われるでしょうけど、

 

それが紅牙です。

 

ということで、次回はセシリア戦になると思いますので、またそこでお会いしましょう。

 


 
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