数度に亘った痙攣が収まって、椅子に座る俺の上に脱力するように座りこむ。
未だ蕩けた半眼の彼女と目を合わせ、舌を絡めとると緩く吸い返してくる。
しばらく二人で荒い息を整えると、お風呂行きませんかと言う彼女に頷く。
そのまま抱き上げると色っぽい溜息を吐き、そのまま陶然と目を閉じて首にしがみ付いてくる。こうしているときの彼女は、日頃の毒を吐く姿など想像さえさせない可愛さがある。
この部屋の隣には露天風呂が設えてある。
「七乃さん、服脱がないと」と声をかけると、このまま入っちゃいませんかという気だるげな返事が返ってきた。
確かに今日これに入るのは自分たちだけと思い、そのまま湯船へ入る。
ぬるい湯の中でゆっくりと自分の服を脱いで彼女の服を脱がせても、まだ彼女の瞳は蕩けたままで普段のくりくりしたそれには戻らない。髪留めを外してやり、湯船の脇に置くと前髪が垂れて少し幼くなる表情が可愛らしい。
一通りを終えて隣に座ると、乗っけて下さぁーい、と目を閉じたまま彼女が言う。
「このままじゃ沈んじゃいますよ…もう動けないんですからぁ」
はいはいと答えて彼女を自分の膝の上に乗せ、浴槽の縁が斜面になっているところを探して凭れ掛かる。
薄目を明けてこちらに少し首を捻る彼女に、それと察して体を少しずらして口付けをしてひとしきり舌を絡めると、疲れきったような表情を僅かに緩めて再び目を閉じる。
しばしの無言。
厚い竹垣の外側で風に枝が鳴る他は静寂そのものだが、胸の上に感じる彼女の呼吸が心地良い。
「…今日もいっぱいでしたねぇ」
俺の胸に頬を当てて目を閉じたまま、満足そうに言う。
「…七乃さん、エロ可愛いから」
「ホント何人に言ってんでしょうねぇ、この口は」
姿勢を変えずにちょんちょんと唇に指を当てられると少しくすぐったい。
「…何と言われようと、七乃さんがエロ可愛いという事実は変わらないので」
「全く一刀さんといいお嬢様といい、可愛げがなくなっちゃって」
「俺はともかく、美羽は可愛くなったんじゃない?」
「容姿のことじゃないですよ、『可愛げ』って言ったじゃないですか。それもこれも全部一刀さんと曹真さんのせいですよ、お嬢様があんなにしっかりしちゃうなんて」
「相変わらず歪みない愛情だね…」
「今日だって一緒に来ましょうって誘ったのに断られてしまいましたし」
「あれは七乃さんがいけないでしょ…俺もだけど」
泣きながら自分で開いておねだりするまで焦らし責めとか鬼の所業だろ…つい乗っちゃった俺も俺だけど。
あれくらい昔のお嬢様なら当たり前でしたのに、と僅かに頬を膨らませる彼女のおでこに掛かる髪をかき上げてやる。
「まぁ…こういうひとときもいいですけど」
そうだね、と頷きながら俺も答える。
「俺も七乃さんと二人きりでこうしていられて、嬉しい」
そう言うと、また暫くの沈黙が訪れた。
「…そういう台詞が、人のおっぱい揉みながらここをこーんなにしてでなければ格好良いんですけど、ねぇ」
その彼女の声が上ずっていたのに気がつくと、俺の心拍数も上がってしまう。
「そんな立派なのが浮かんでたらついつい手が行っちゃうって、あとそっちがそうなっちゃってるのは七乃さんがさっきからそこに挟んですりすりするからでしょ!」
「ふふっ、じゃあそういうことにしてあげますよ」
そう言いながらおもむろに向き直って、飄々とした彼女に似げない俺との時だけに見せてくれる熱烈な口付け。それに全力で応えて、彼女を抱きしめると耳元で囁かれた。
「一刀さんがそんな事言うから、なんかまた来ちゃったじゃないですか…。私もう動けませんから、一刀さんが好きにしちゃって下さい」
その囁きに彼女の体を向き直らせてその丸いお尻を抱え寄せ、ここ一応外だからずっとキスしていようと囁き返すと、七乃さんは目を閉じたまま切なげに眉根を寄せて無言で頷く。
その唇を塞げば、あとはお湯が波打つ音とくぐもった彼女の嬌声だけ。
俺と七乃さんの、二人だけ。
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『その後』の、七乃さんと一刀さんです。超短編です。
美羽は…拙作では成長してしまっており誰得と思いましたのでお休みです。
桂花、風は近々書くと思います。冥琳も書けそうですが薬を使ったのでちょっとお休みかな?ねねは…難しいかも…
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