EP8 奈良修行編・クーハ参戦
キリトSide
瞳を開けばそこはALOのイグ・シティにある自宅のベッド、隣には同じく瞳を開いたアスナがいる。
顔を見合わせて笑みを浮かべてから…、
「「ユイ(ちゃん)」」
愛娘の名前を呼ぶ。すると粒子が小さな子供の姿を成し、俺達の前に現れた。
「パパ? ママ? あ、あれ? 確か、パパのお師匠様のところに行っているのですよね…?」
「そのキリトくんのお師匠様のところからダイブしたんだよ」
「夜の間1時間だけなんだけど、それでもユイに会えるから来たんだ」
「わたし、嬉しいです♪」
俺とアスナに抱きつくユイ。3人でゆっくりと談笑でもしようとしたその時、ユイの表情が変化した。
何かを感じ取ったのか窓の外を見ている。
「来ます…」
「「……まさか…」」
娘のその一言で俺とアスナは顔を見合わせてこれから現れるであろう現象と少年を思い浮かべた。
俺と彼女がダイブした時、アイツもすぐ傍にいて同じ回線でダイブしたのだ。
つまりアイツが引き寄せられてきてもおかしくはない。
俺達3人は側の窓を開いて上空を確認、黒い亀裂があって雷が奔っている。
アスナから聞いている噂の現象、前までは茅場の仕業で決まっていたが今回のは間違いなく偶然。
その亀裂から黒髪で俺と同じ年齢ほどの少年が落ちてきた。
外見は違う、けれど俺はそうだと感じる。
「とりあえず、会ってよう」
「そうだね。ユイちゃん、
「はいです」
俺達は自宅から出て、近くに落ちた彼に会いに行った。
自宅から少し離れた広場に落ちてきた少年はいた、というよりもユイが何処にいるのかを教えてくれたからだが。
混乱する様子もなく、落ち着いた様子はさすがというべきだな。
「九葉」
「え?……和人さん!? それに明日奈さんも…」
名を呼べば驚いている九葉、姿は違えどやはりそうだったみたいだ。
俺とアスナはリアルと同じ姿だから余計に驚いたかもしれないが。
「ようこそALOへ。それとこっちではキリトって呼んでくれ」
「わたしは向こうと同じでアスナだよ」
「あ、そっか、ゲームでの名前…。オレは『クーハ』、見て分かるかもしれないけどキリトさんと同じで
クーハ、それが九葉のALOでの名前か…っと、もう1人紹介しないとな。
「クーハ、この子はユイ。俺とアスナの娘だ」
「はじめまして、クーハさん。わたしはナビゲーションピクシーを務めていますから、
なにか分からない事があったらなんでも聞いてください」
「ど、ども…」
いきなり娘と紹介されたのだからクーハが驚くのも無理はない、しかもしっかりとした口調で喋っているのだから。
だが彼は何かに思い至ったのか納得している。
「そっか、キリトさんとアスナさんの娘ならしっかりしてても可笑しくないな」
そこかよ、まぁユイという娘がいたことを暈かしながらだが話したからそれも踏まえてということだと思うけど。
「ところで、オレはなんでここに? ホームタウンってところに送られたと思ったんだけど」
「回線が同じだと稀に起こる現象らしいけど、その稀が見事に当たったようなんだ」
なるほど、と言いながら頷いている。
それとゲーム内での事をどれくらい知っているか訊ねてみると、
予めネットや友人から情報を得ているらしくチュートリアルもちゃんと聞いていたので大丈夫らしい。
ふむ、それならば…。
「クーハ、武器を持って斬り掛かってこい」
「うす」
俺の言葉に彼は1本のダガーを取り出した、やはり自身の型がはまる武器を選んだか…。
アスナとユイは驚いているが俺はそれを無視して剣を抜き放ち、クーハは斬り掛かってきた。
しかし違和感を感じたのか顔を顰めると1回斬り掛かっただけで後退し、焦っている。
「ちょっ!? やっぱ待って!」
「くっくっくっ…どうだ?
「遅いなんてものじゃないよ、遅すぎるって…」
自身の
やはり自分の体が遅いと違和感があるんだろうな。
「え、えっと、どういうこと? 体が、遅い?」
困惑するアスナに俺は説明するべく言葉を発する。
「アスナ、『アルヴヘイム・オンライン』におけるアバターの特徴はプレイヤーの運動能力に大きく依存される…が、
アミュスフィアはナーヴギアと違って一体感が劣る。
その為、武を学ぶ俺達にとってはリアルにおける運動能力と誤差が生じると違和感を感じるんだ。
再現度で劣るアミュスフィアだと特にな」
「それにオレの場合はVRMMO自体が初めてだから違和感が半端じゃない」
説明の後に賛同するように言ったクーハ。
俺達の場合は最初がナーヴギアだったからかアミュスフィアに多少の違和感を覚えた程度で済んだ。
「やっぱりキリトくん達って凄いね~」
果たして俺達が凄いと言えるのか…。
むしろあの再現度と一体感を造り出した茅場の方が凄いに決まっていると思うけど。
「まぁ、クーハもすぐに違和感を失くせると思うよ。ようは慣れだからな」
「それもそっか……よし、じゃあ慣れる為にも空の飛び方でも練習するか」
早速この世界で一番楽しめるものに挑むか、なら練習に付き合うか。
アスナとユイに視線を向けると構わないという風に頷いてくれた。
2人には修行が終わった後に十分に甘えてもらおう。
「ふぅ、ありがとキリトさん。飛行もなんとか熟せるようになれたよ」
「『随意飛行』までマスターしておいて良く言うよ…」
クーハの飛行練習は終わった、言葉通り随意飛行をマスターしてだ。俺達も同じようなものだからなんとも言えないが。
「というか、ホントに良かったのか? キリトさんもアスナさんもユイちゃんも、俺に時間を割いて…」
「いいんだよ。俺としては、お前が居た方が面白いからなぁ…(ニタァッ)」
「「「(びくぅっ!?)」」」
強者は多い方に超したことはない、戦う楽しみが増えるからな。
おっと、アスナとユイまで怖がらせてしまったな、自重しないと…。
「ま、まぁ、試合は今後オレの方が整ってからにでも…」
「分かってるさ、強くなってもらわないと困るからな」
スキルやステータス、装備が揃ってからじゃないと無理があるからな。
「よし、オレは先に戻るよ。確か街の中だからすぐにログアウトできるんだよな?」
「ああ。俺とアスナも少ししたらログアウトするよ」
そしてクーハはメニューを操作してログアウトし、俺はアスナとユイに向き直る。
「じゃあ、時間も少ないけど買物に行こうか」
「「うん(はい)♪」」
俺とアスナはユイを間に3人で手を繋ぎ、店のある大通りへと足を運んだ。
たった20分程度の短い時間だったけれど、食事をしたり、小物をみたりと、楽しい時間を過ごせた。
「パパ、修行頑張ってくださいね♪ ママも楽しんできてくださいね♪」
別れ際にそう言ってくれたものだから2人してユイを抱き締め、ログアウトした。
キリトSide Out
和人Side
ログアウトが終わった俺はアミュスフィアを外し、起き上がる。
「戻ったな。まったく、明日奈とユイちゃんと過ごしていればいいのに、九葉の面倒をみていたなんてな」
「いいんだよ。修行が終わったら、たくさん甘えてもらうから」
志郎が起き上がった俺に声を掛けたので軽く返答しておく。
里香も僅かに苦笑しているが、それよりもだ…。
「明日奈、狸寝入りはやめろ」
「えへ、バレた?」
舌をペロッと出して隣に寝転がっている明日奈が言った。
あ~もぅ、可愛いなぁ~、こんちくしょう…。
「次はあたしと志郎の番よ、そっちは景一が使って」
「まぁ俺達はそこまで時間を割く必要は無いから、早く終わるかもしれないけど」
疲れてるからな、と言っているがやはりALOへは行きたいのだろう。敷居の奥では景一も準備をしている。
「それじゃ、俺と明日奈は行くよ」
「ごゆっくり~♪」
明日奈よ、それは違うと思うぞ…とは言わないで2人で部屋を出ていく。
入れ替わるように烈弥と珪子が志郎と里香の様子を見る為に、朝田さんが景一の様子を見る為に入ってきた。
「でも、ALOが出来るとは思わなかったよ~」
「俺もだよ…時間があまりないのはユイにわるいけど」
俺達はひんやりとした廊下を歩きながら話をしていた。
修行の合間に少しだけとはいえユイと会えるのはまだいい方かもしれないけど。
「明日から、本格的に修行が始まるんだよね?」
「ああ。だから、早めだけど今日は寝るよ」
現在の時刻は9時、あまりにも速いかもしれないが明日からの体力の消費などを考えると出来るだけ早く寝た方が良い。
「うん、そうだね。わたしはもうちょっと起きてるけど……ちゅっ///」
「んっ…わかった、おやすみ」
「おやすみなさい///」
寝る前のキスを交わしてから俺は男子部屋へと入った。
この部屋にはまだ誰も居ないが…うん、明日奈のお陰で良く眠れそうだ。
和人Side Out
To be continued……
後書きです。
てな感じで九葉の名前は『クーハ』となりました。
最初は名前の読みを変えようかと思ったんですけど、それだと『クヨウ』でなんかイマイチ・・・。
かといって『クーファ』にすればリーファと被る、なので『クーハ』です。
最後はいつもの如く甘めで締めくくりましたw
それではまた次回で・・・。
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EP8です。
ALOにダイブした和人と明日奈、それに九葉の様子。
どうぞ・・・。