EP5 奈良修行編・奈良へ
和人Side
俺達の慣れてきた学校生活も新たな時期を迎えるべく、大きな休みに入ろうとしていた。
という授業があるのは今日まで、明日は終業式で俺達に夏休みがやってくる……のだが…、
「「「「「はぁ~………」」」」」
昼休みでカフェテラスで昼食を取っていた俺を含むある5人は一斉に溜め息を吐いた。
「どうしたんだ? 溜め息なんか吐いて」
「幸せが逃げていくぞ~」
「ていうか、お前らでも溜め息吐くんだな」
「何かあったんだよね、その様子だと…」
「まぁ、夏休みにちょっと用事があってな」
「その用事の間はALOにもあまり顔を出せないと思うんだ」
「マジか?」
俺と志郎が少し話せば哲は驚いた様子をみせる。
「詳しい日程はそろそろ送られると思うんですけど…」
「奈良にいる武術の師匠のところに修行に行かないといけないんすよ」
「あぁ~、なるほどな」
烈弥と刻が理由を話して勇介は納得したようだ。
「……少なくとも2週間は泊まりになると思う」
「うわぁ、大変だね…」
景一の言葉に宗司は驚いている、確かに武に関わりがない人から見れば驚くことだな。
「それ、明日奈達には言ったのか?」
「「「「「………」」」」」
沈黙は肯定……ていうか、お前らも言ってないのか!?
「ボ、ボクはてっきり和人さんがスグに伝えたと思ったんすけど…」
「あぁ、それはそうだな」
そうだな、刻はそう思っても仕方がないな。しかし、どうやって伝えようか…。
「どうかしたの?」
噂をすれば影、明日奈が昼食を乗せたトレーを持って傍に来た、里香と珪子と
俺と志郎と烈弥は顔を見合わせ、どうしようかとアイコンタクトを取り、決心。
明日奈達が後ろのテーブルに座ったのを確認してから声を掛ける。
「あのさ、明日奈…」
「ん、なぁに?」
可愛らしく首を傾げる彼女がこれからどう反応するかを予想して少し居た堪れなくなるが、言わなければならない。
「夏休みなんだけどさ、俺達2週間くらい奈良に行かないといけないんだ」
「……………え?」
「その、師匠からの招集で修行に行くんだけど…」
「……………(ピシィッ!)」
あ、石化した。隣に座っている里香がつついているけれど反応が無い。
「駄目ね、ショックで動かないわ」
「叩いたら砕けたりして?」
「いまの明日奈さんなら有り得ると思います」
里香、幸、珪子が順番に言うが……もしかして、気付いてないのか?
「里香、珪子……志郎と烈弥も行くんだぞ」
「「……………(ピシィッ!)」」
やっぱり、いま気付いたか…。そして2人が固まった事で一足先に明日奈が硬直から復活した。
「どういうこと、和人くん! わたし、そんなの聞いてないよ!」
「「そうよ、そうよ!」」
「い、いや、俺達もいま言ったし、なんて言えばいいかも分からなくてさ…」
「「う、うん…」」
彼女の言葉に里香と珪子も瞬時に復活して同意し、俺はどう答えれば良いものかと考えながら返して志郎と烈弥も頷く。
しかも景一と刻、黒猫団の5人は少し離れたテーブルへと避難している、逃げたな…。
「ちゃんと説明して!」
「わ、分かった、落ち着いてくれ。説明するから…」
中央に明日奈、右隣に里香、左側に珪子が座り、俺達はそれぞれの正面に座った。
そして師匠から招集を受けていて、夏休み中に2週間以上の修行に行かなければならない事を告げる。
それを聞いた3人は眼に分かるほどに落ち込んだ。
「2週間も会えないなんて…」
「寂しいわよ…」
「です…」
そう呟く彼女達、気持ちは分かる。
俺達だって会えないのは嫌だと思っているがこればかりはどうしようもない。
なんとかできればいいんだけどなぁ…。
「いつから行くの…?」
「今はまだ分からないんだ…。今日、明日にでも連絡が来ると思うけど…」
珪子の問いかけに烈弥は気まずそうに答えている。
「取り敢えず日取りが決まったら教えるから、な?」
「絶対よ…」
志郎は里香を宥めるように優しく言葉を掛けている。俺も明日奈の手を握って安心させる。
「大丈夫だって、2週間なんてあっという間だから」
「うん…」
こうしてこの場はなんとか治める事が出来たけれど、甘えてくるのは間違いない。
あ、そうだった…。
「刻、スグにはお前が伝えろよ」
「……え?」
刻は鳩が豆鉄砲を喰らったような表情をした。
本日の授業も終わり、自宅へと帰宅した俺の携帯端末に一通のメールが届いた、師匠からか。
―――3日後、こちらに来てください。期間は2週間を目途にしています。
移動代は私が出しますので心配なく。
3日後、明日で学校が終わって1日空けてから向かう事になるわけだ。
だがメールにはまだ続きがあった、それは…。
―――あ、恋人同伴でも構いませんよ。その時はメールで折り返してください(笑)
「「「「「「………は?」」」」」」
間違いなく他の5人と声が重なったはず、そう俺は思った。
というか師匠は何を考えているんだ?……いや、むしろ何も考えてなさそうだな。
単純に弟子の恋人を見たいだけだろう、明日奈とスグと雫さんとはあった事があるし。
「連絡してみるか」
小さく呟いてから明日奈へと連絡をしてみる。
「もしもし、明日奈~?」
『和人くん、どうしたの?』
「修行の予定が決まったから伝えようと思って、3日後からなんだけど…」
『そうなんだ…』
しょんぼりとした声を漏らした彼女の様子が思い浮かんで苦笑し、だけど明るくなる話題を教えてあげる。
「師匠がさ、明日奈達も一緒にどうかって言ってるんだけど、どうする?」
『……それって、一緒に行ってもいいってこと?』
「そうだよ」
『行く! お父さんとお母さんに話して、絶対に行くから!』
電話の向こうではしゃいでいるのが良く分かる。きっとベッドの上で笑顔でいるのだろう。
「それじゃあ師匠には伝えておくから、ご両親にちゃんと説明しておいてくれ」
『は~い///♪』
そこで通話を終える。まさか師匠から言ってくるとは思わなかった……気がしないでもない。
むしろあの人なら楽しんでいそうだからな~。
とりあえず、師匠にメールの返事をしておこう、明日奈が参加と…。
――3日後
朝9時、俺達は東京駅に集まっていた。
駅に着いているのは俺と明日奈、刻とスグ、志郎と里香、烈弥と珪子、公輝と雫さんであり、景一はまだ来ていない。
その時、こちらに向かってくる景一が見えた……が、隣に誰かが一緒にいるようだ。
「……すまない、遅れた」
「出発にはまだ時間があるから大丈夫だ。それよりもその娘は?」
時間に遅れたと思ったのか景一は謝ってきたが、勿論時間はまだまだ余裕がある。
俺は彼と一緒に来た女の子に興味があり、他のみんなも同じようだ。
「……紹介する、幼馴染の朝田詩乃だ」
「は、はじめまして、朝田詩乃です。よろしくお願いします」
なるほど、噂の幼馴染だったのか。まさか連れてくるとは思わなかったけど…。
挨拶をされたので俺達も自己紹介をし、出発する為の新幹線に乗り込んだ。
女性陣はそれぞれ固まって座る。
明日奈とスグ、朝田さんが同じ向かい席に座り、隣の向かい席には里香と珪子と雫さんが座って話しをしている。
俺達男は裏側の向かい席に座っている。
「それにしても、直葉ちゃん部活は大丈夫だったのか?」
「師匠って剣の世界では有名だろ? そこで鍛えてもらうって言ったらあっさりとOKしてくれたらしいぞ」
「どおりで…」
公輝が疑問に思ったようで訊ねてきたので俺が答える。
「僕としては景一さんが朝田さんを連れてきたのが少し意外でした」
「……あいつにも、息抜きが必要だ」
烈弥は景一に話しかけると少しばかり翳りのある表情で返事をしていた。
俺達はそれに気付きながらも、当事者の問題であるからこれ以上は何も聞かなかった。
いまは話題を変えようか。
「修行、どうなると思う?」
「「「「「山に放り込まれると思う(っす)(思います)」」」」」
うん、そう言うと思ったよ…。しかしそれだと師匠が明日奈達を呼んでいいとは言わないと思う。
差し詰め俺達のやる気を煽るつもりだろうな。
「なにはともあれ頑張るしかないか」
「全盛期には近づきたいところだな」
「何が起こるか分かりませんしね」
「力を取り戻す理由には十分っすよ」
「……まぁ死なない程度にな」
「んじゃあ今はゆっくりしますか」
俺、志郎、烈弥、刻、景一、公輝は順番に意気込み、談笑を始める。
奈良まではまだ掛かるからな。
和人Side Out
To be continued……
後書きです。
『閃姫Next』の目玉の1つである新編「奈良修行編」が始まりました!
今回は奈良へ向かう段階でしたけどね。
皆さんも予想外かと思いますが、なんとこの段階で詩乃が参戦ですw
とは言いましても、彼女がシノンであることは和人達どころか景一にも明かしません。
今後の物語としては明かしても面白いかもしれませんが、自分としては原作沿いで行きたいので。
あと和人達男性陣が詩乃のことを「朝田さん」と呼んでいるのはまだ知り合って間もない上に、彼女が女性だからです。
なので男性陣が「詩乃」と呼ぶのはGGO編後ということになりますね。
それでは次回で・・・。
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EP5です。
今回から「After後半」の新編突入になります。
どうぞ・・・。