No.563195

ALO~閃姫After story~ EP15 種子が芽吹く時

本郷 刃さん

EP15です。
前回の続きでALOにダイブしてからの話しですよ、種子が芽吹きます。

どうぞ・・・。

2013-04-06 09:05:27 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:12407   閲覧ユーザー数:11343

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

EP15 種子が芽吹く時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトSide

 

ALOへとダイブし、央都アルンに現れた俺とリーファを迎えに来たのはユイだった。

 

「パパ、リーファさん、待ってました!」

 

「どうしたんだ、ユイ?」

 

「慌ててるみたいだけど…」

 

落ち着きが無い様子のユイに訊ねる俺とリーファ。

みんなが北側のテラスに集まっているらしいので、一先ずそこへ移動することになった。

 

 

 

辿り着いた北側のテラスにはいつもの面子が集まっていた。

アスナ、黒衣衆、リズ、シリカ、クライン、エギル、月夜の黒猫団、そして俺とリーファとユイである。

 

「一体何があったんだ?」

 

「……ALOの閉鎖が決定した」

 

「「なっ!?」」

 

問いかけた俺の疑問にハジメが淡々と答え、俺とリーファは絶句した。

どおりでみんなの空気が重いと感じたわけだ。

 

「いつ閉鎖されるんだ?」

 

「予定じゃあ明後日の、正確には次の深夜0時だと…」

 

さらに聞いてみると今度はシャインが答えた。

俺達が来る少し前にアナウンスが入り、それが決定したらしい。

アスナは直接彰三氏に訊ねたそうで、事実だという裏付けも取れた。

リーファはその事実にショックを受けており、ルナリオに支えられている。

それはそうだろう、彼女はこのゲームの古参の1人で空を飛ぶ速さに魅せられているのだ、そのショックは俺達以上だと思う。

 

「なんとかできねぇのかよ…」

 

「父さんでも、どうにもできないそうです…。レクト・プログレスは、解散しましたから…」

 

「アスナさん…」

 

クラインが悔しそうに呟き、アスナは申し訳なさそうにし、そんな彼女をティアさんが労わっている。

しかもそれだけではないらしい…。

 

「まだ稼働していた他2種のVRMMOも、今日の深夜の内に閉鎖されるってさ…」

 

「最後に閉じられるのが、ALOということですね…」

 

ハクヤがまた新たな事実を口にし、ヴァルもそれに続くように言葉にした。

どうにか、か……茅場から託された『世界の種子』、これに賭けるしかないのかもな…。

 

「さすがに今回ばかりは、俺達が何かをしたところで意味は無いだろう…。

 取り敢えず、いまはこのゲームを楽しむしかないだろ?」

 

「まぁ、うん…そうっすね」

 

俺の言葉にルナリオが苦笑しながら頷き、他のみんなも『楽しむ』ということを実践するつもりらしい。

ただリーファは、まだ立ち直るのは難しいだろう。

その時リズが「あっ、そうだ」と、声を上げた。

 

「キリト! アンタ昼間の女の人はなんなのよ!?」

 

「うぐっ、それをここで聞くか…」

 

「女の人って、なんなのかしら…キリト君?」

 

リズの問い質しに俺は言葉が詰まり、カノンさんが少々意地の悪い表情で聞いてきた。

みんなからの視線も痛い…。

 

「うわ「先に行っておくが浮気じゃないぞ、シリカ」あ、あはは…」

 

苦笑して俺から視線を外したシリカ、やはり浮気というつもりだったんだな。

そんな俺が困った様子を見せているとアスナから救いの手が差し伸べられた。

 

「違うの、リズ。キリトくんは浮気なんかしてなかったよ」

 

その一言でみんなは「なぁんだ」とでもいうように笑っている。

おい、さっきまでの態度と随分と違うじゃないか…。

 

「じゃあ誰だったのよ? 道を聞くとかにしては随分と真剣な表情だったし…」

 

「えっと、それは~…」

 

「「「「「あっ…」」」」」

 

リズの言葉にアスナは少し動揺し、黒衣衆の男性陣はどうやら昼の事を思い出したようだ。

お前ら、今更思い出すのかよ…。

 

「リズ、その話しなんだが…「いいよ、ハクヤ」いいのか、キリト?」

 

リズに声を掛けようとしたハクヤを制して、俺は簡潔ながら説明することにした。

一応、みんなにも関係のある事だからな…。

 

「俺が昼間に会っていた人は、茅場の元交際相手の女性なんだ」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

みんなに驚愕の表情が浮かび、黒衣衆男性陣とアスナは重苦しそうな表情になる。

ことを尋ねたリズは申し訳なさそうにしているため、俺は微笑を浮かべて答えた。

 

「彼女に茅場からの最期の言葉を伝えたんだ。ただそれだけだよ…」

 

「お兄ちゃん……何も、言われなかったの…?」

 

リーファにもアスナと同じ心配をされてしまったが、俺は首を縦に振って応じた。

 

「大丈夫、礼を言われただけだから…」

 

「そうか、なら良いんだが…」

 

俺が言うとエギルもホッとした様子である。

 

「はぁ、みんなして辛気臭い顔するなよ。今日もどっか行ってみようぜ」

 

そう言うともうみんなはしんみりしないようにして、笑みを浮かべてから今日は何処に行こうかを話し合う。

俺はユイを手招きしてからこっそりと彼女と話す。

 

「ユイ。俺が茅場から受け取った『世界の種子』、俺のナーヴギアのローカルエリアにあるみたいなんだが、

 それをパソコンのメモリチップに落としたい。やってもらえるか?」

 

「分かりました。他の皆さんには言わない方がいいですか?」

 

「ああ。信用は出来るが、どんなものかは分からないからな…」

 

「了解です」

 

俺はこうしてユイに頼んだ。『世界の種子』、果たしてどんなものなのか…。

今日のALOをプレイしたあと、ユイの手によって俺のナーヴギアからパソコンのメモリチップへと種子は移された。

 

キリトSide Out

 

 

 

和人Side

 

例の如くALOで寝落ちした後、数時間を経て俺は眠りから覚めた。

早速パソコンの中にあるはずの種子を探してみる、すぐに見つかったのだが……そのファイルは巨大だった。

俺が改造したパソコンといえど、これの解析には無理がある。

 

「アイツに頼むのが得策か…」

 

そう呟き、俺は携帯から頼りになるだろう人物へと連絡を繋げた。

 

 

 

その人物へと連絡を繋げ、会うことを了承してくれたので朝食をさっさと済ませて目的の場所へと向かった。

その場所とは『Dicey Cafe』である。

 

「朝早くに済まないな、エギル」

 

「構わないさ。お前が急用だって言うくらいだからな」

 

俺がスツールに座るとコーヒーを一杯出してくれた、朝のサービスらしい。

コーヒーを味わってから、エギルに話しを持ち出した。

 

「エギル、お前にあるファイルを解析してもらいたいんだ」

 

「どんなものなんだ?」

 

俺は『世界の種子』が入っているメモリチップを取り出し、彼に手渡した。

 

「『世界の種子』と呼ばれている……茅場の形見だ…」

 

「なっ!?……大丈夫なのかよ?」

 

「危険性はない、俺の名前に懸けてそれは保障する。だが、どんな物なのか、それ自体は分かっていない…。

 出来ればエギル、お前に頼みたい…」

 

エギルは一度は訝しげな表情をしたが、俺が真剣に頼み込むと思案をしてから…、

 

「分かった、任せてくれ。絶対に俺が解析してみせよう」

 

「頼む…」

 

彼ならばやってくれる、そう信じて俺は待つことにした。

開店前の店だが、エギルがチーズケーキを用意していたのでそれを購入してから俺は帰宅した。

 

和人Side Out

 

 

 

キリトSide

 

その日の午後、俺とアスナはALOへとほぼフルダイブしていた。

それは今日の夜、ALOが閉鎖されてしまうからだ。

俺とアスナは会えなくなってしまうユイの為に、一緒の時間を過ごした。

そしてその時間が訪れる…。

 

『間もなく、『アルヴヘイム・オンライン』が閉鎖されます。

 プレイヤーの皆様、身勝手な理由により、このゲームが閉鎖されることとなり、誠に申し訳御座いません。

 そして今日までの間、このゲームをプレイしていただきまして、誠にありがとうございました』

 

俺とアスナとユイは3人で手を繋ぎながらアナウンスを聞いていた。

みんなは気を利かせてくれて、既にログアウトしたり、他の場所に移動したりしている。

リーファは人目も憚らずに大泣きしてしまうほどだった。

アスナとユイも目を潤ませている…。

 

「ユイちゃん…」

 

「ママ、泣かないでください……また、またきっと、すぐに会えますから…」

 

涙を流してユイを抱き締め、俺もアスナとユイを抱き締める。

正直に思うと、本当にあの『世界の種子』でなんとかなるのかは分からない。

だが、アレに掛けるしかないのだ。

どうにもならない時は、俺がなんとしてもユイを、ALOを助けてみせる。

 

「ユイ、少しの間の別れだ…。また、必ず会おう…」

 

「またね、ユイちゃん…」

 

「はい…パパ、ママ…」

 

言葉を交わし、ユイは自身の姿を粒子化させて消えた。

おそらくアスナのナーヴギアに移動したのだろう。

俺は泣きだすアスナを抱き締めて、この世界が閉じるのを待った。

 

キリトSide Out

 

 

 

和人Side

 

昨日のALOの閉鎖から一晩が経ち、スグは落ち着いた様子を見せていたが、それでもあの落ち込み様は仕方が無いと思う。

さすがに今日は学校なので準備を整えてから早くに学校へと向かって行った。

俺も自分の準備を終えて、朝食を済ませると学校へと向かった。

 

 

 

学校での授業を終えた放課後、俺はエギルからの呼び出しを受けて、彼の店へと急いで移動した。

夜の時間帯以外は奥さんに店を任せて、彼はコネクションを駆使し、

徹夜で解析を進めてくれていたらしく、その成果もあって先程解析が完了したと報告があった。

店に着いた俺は乱暴に扉を開けて店内へと入った。

 

「エギル!」

 

「おいおい、慌てすぎだぜ……こっちに来い」

 

出迎えたエギルは苦笑しながらも俺を店の奥へと通した。

事務所に当たる部屋にあった1台のパソコン、その画面には1つのファイルがあり、

それをクリックして開いてみて……驚愕した…。

 

「これは……こんな、ものが…」

 

「凄ぇだろ? 俺も解析が終わった時は驚いたもんさ…」

 

「凄いなんてものじゃない……『ザ・シード』、これは新たな時代への進出が可能だ…。

 数多のVRMMOの誕生を可能とし、閉鎖された世界を救う事が出来る…」

 

『世界の種子』と呼ばれていたものの名は『ザ・シード』というらしい。

これは(解説は原作4巻、または本作品の前部『ALO~閃光の妖精姫~』第40魔を参照)というものだ。

 

「だが、何故茅場はこれを生み出したんだろうな…」

 

「……至ってシンプルな答えだよ…アイツは、『真なる異世界』を求めているんだ…。茅場らしいな…」

 

エギルは「俺には良く分からんな」と言ってから、視線で俺にどうするかと問うてきた。

 

「エギル。このプログラム・パッケージ、『ザ・シード』を全世界のサーバにアップロードしてくれないか?」

 

「っ、本気か?」

 

俺の言葉に彼は大丈夫なのか?と、問いかけるように聞いていた。

 

「ああ…。個人、企業を問わず、誰にでもダウンロードできるように…」

 

「……分かった、お前が言うのなら俺は口を挟まないさ。しっかりとやってやる」

 

エギルは頷き、作業に取り掛かってくれた。

俺もその作業工程を見守り、しばらくしてその作業は終わりを迎えた。

あとは、種子がどう芽吹いていくのかを見守るだけである。

 

「キリト、コイツはお前が持っていろ」

 

「そうだな…」

 

俺は大元の『ザ・シード』が入ったメモリチップを受け取った。

 

「エギル、ありがとう。この礼は必ずするから…」

 

「気にしないでいい、またここに来てくれればな」

 

「そうか……じゃあまた」

 

「おう!」

 

そうして俺は店を後にした。

 

「まったく…こっちはお前に山ほど借りがあるんだ。むしろこっちが借りを返せたくらいだよ…」

 

そうエギルが言っていたのを、俺は知らない。

 

 

 

そして数日後、飛んだ種は地に着いて根を下ろし、芽吹くと花を咲かせて、VRMMOというジャンルに復活の兆しを与え始めた。

さらに十数日後、5月最初の土曜日にALOは復活を果たすことになるが、今の俺はそれをまだ知らない。

 

和人Side Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

はい、種子がついに芽吹きました!

 

芽吹くまでの様子はこんな感じで良かったでしょうかね?

 

まぁ自分はこんな感じで良かったと思っていますがw

 

次回とその次の話しは「キリト、奈良県へ行く」が主旨となっています。

 

ずばり奈良県にはあの人が・・・・・・それでは次回をお楽しみにw

 

ではでは・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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