No.559326

IS−インフィニット・ストラトス−黒獅子と駆ける者−

トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!

2013-03-26 08:54:46 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:639   閲覧ユーザー数:626

 

 

 

episode139 白き方舟

 

 

 

「・・・・」

 

それから二日が経ち、隼人は学園の敷地内にある広場の木の下で腕を首の後ろに組んでもたれかかるように座り込んでいた。

 

・・・と言うより寝ていた。

 

「・・・・」

 

 

 

「・・・で、何か用があるんじゃ無いのか、シノン」

 

「お気づきでしたか、ゼロ」

 

と、木の後ろよりシノンが出てくる。

 

「何か言う事でもあるのか?」

 

隼人は目を閉じたまま聞いた。

 

「言い遅れた事がありまして」

 

「・・・・」

 

「シャーリー・ラムゼイと言う者の事ですが」

 

「シャーリーがどうしたって?」

 

「・・・ゼロの正体に疑問を抱いているようです」

 

「だろうな。俺も聞かれたよ。まぁうまく言い包めたがな」

 

「・・・・」

 

「何も言って無いだろうな」

 

「もちろん。ゼロが不利になる要素は作っていません」

 

「そうか」

 

隼人は目を開けて立ち上がった。

 

「お前がそういう性格で助かるよ」

 

「・・・・」

 

 

 

「それで、どうだ?ジェスタ・キャノンの使い心地は?」

 

「文句の言いようが無いですね」

 

それからして二人は敷地内を歩いていた。

 

「拠点防衛としては十分な性能を発揮しています。その上サブフライトシステムを使用しているので機動性の問題も解決しています」

 

「上々だな」

 

 

 

「しかし、最近疲れ気味ですね」

 

「当たり前だ。毎日のように戦いばかりじゃ、俺でも疲れるさ」

 

「・・・・」

 

「お前は疲れなんか感じないんだろ」

 

「大体は。ですが私も生体パーツに疲労が溜まれば同じ事になります」

 

「疲労が溜まればねぇ」

 

 

 

 

 

「あっ、兄さん!」

 

と、颯が隼人を見つけるなりすぐに駆け寄ってきた。

 

「・・・姉さんも・・・居たんだ」

 

颯はシノンを見るなり少しムッとしていた。

 

「姉呼ばわりされるものでは無いのですがね」

 

「・・・一応私より先に生まれたのなら・・・姉みたいなものだから」

 

「まぁ確かにそうなるな・・・」

 

「まぁ、好きに呼ぶといいです」

 

「・・・・」

 

こう見たら三人の顔は本当にほぼ同じに等しかったが、それぞれの特徴を持っているので一目で分かる。

 

隼人はロングヘアーで眼帯を付け、颯はミドルヘアー、シノンはショートヘアーでこめかみの髪を束ねている。

 

「で、颯は何の用があるんだ?」

 

「あっ、そうだった。織斑先生が兄さんを呼んでいたよ」

 

「千冬さんが?」

 

「何でも急の用みたいですから、職員室に急いで行った方が・・・」

 

「分かった。こういうときに限って何か嫌な予感がするんだよな」

 

と、呟きながら隼人は職員室に急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

 

「よくは分からないものですね」

 

「・・・・?」

 

と、シノンが隼人が居なくなってから少しして口を開く。

 

「あなたも・・・何があってそのような事になったのか」

 

「・・・どういう意味ですか」

 

「戦闘機人は本来戦うために生み出された。余計な感情は必要ない」

 

「・・・・」

 

「あなたも・・・かつてはそうだったはず」

 

「・・・あなたは何が言いたいんですか?」

 

「いいえ。ただ、戦闘機人にも・・・色々な可能性があると言う事ですよ」

 

「え・・・?」

 

「あなたは・・・その一例です」

 

「・・・・」

 

「私も・・・その可能性があれば良いのですがね」

 

「姉さん」

 

「でも、私には出来ない・・・」

 

そう呟いてシノンはその場を離れた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たか、隼人」

 

そうして隼人は職員室に来ると、そこに千冬が待っていた。

 

「一体どうしたんですか?」

 

「さっき束より連絡があった」

 

「束さんから?」

 

「何でも準備をしていろとの事だ。理由までは言って無いが・・・」

 

「・・・・」

 

「今から三十分後に到着するそうだ。迎えてやろうじゃないか。やつが自信を持って持ってくる大作とやらを見に」

 

「は、はぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして隼人達はIS学園がある人工島の浜辺で待っていた。

 

浜辺に居るのは隼人、一夏、箒、セシリア、鈴に千冬、輝春である。残りは学園の方で警戒している。

 

「それにしても、束さんは何を持ってくるんだろう」

 

「私が分かるわけないだろ。姉さんの事など・・・」

 

「だが、大作など言っているからな。たぶん大きな物でも持ってくるんだろうな」

 

「・・・・」

 

 

 

 

「そろそろ時間ですね」

 

「あぁ」

 

と、隼人が時間を確認した時だった。

 

 

 

 

「・・・・?」

 

隼人は何かに気付いて海のほうを見る。

 

 

 

 

 

 

 

すると突然海が荒れると海面が膨れ上がる。

 

「な、何だ!?」

 

全員すぐに臨戦態勢を取る。

 

 

 

そして膨れ上がった海面が爆ぜ、巨大なものが出てきた。

 

「こ、これは・・・」

 

「で、でかい・・・!?」

 

「・・・・」

 

それを見てその場に居た全員が驚く。

 

「何なのこのでっかいの?・・・空母?」

 

「潜水艦じゃありませんか?海中から出てきましたから・・・」

 

「空母の様な甲板を持ってるな。って言うより、戦艦っぽいが、あれだけ巨大なものが・・・浮いている事自体驚く所だろ」

 

目の前には空母の様な飛行甲板を前に三つと後ろに短いのを一つ持ち、表に三つ、裏に二つのハッチを持っていた。各所に砲塔を持ち、対空機銃が多数各所に配置されていた。潜水艦の様な潜行機能を持っている白い艦船がいた。何よりかなり巨大な物だが、浮いている事が何より驚くべき点だろう。

 

(それに・・・この形状って・・・まさか・・・)

 

隼人は目の前にある艦船に見覚えがあった。

 

 

 

『にゃははははっ!!さすがに驚いているね!!』

 

と、聞き覚えのある声がスピーカーより流れると、甲板に一人の人影が出てくる。

 

『これぞ天才科学者篠ノ乃束が作り上げたバインドの対抗する力!!その名も『ネェル・アーガマ』だよ!!』

 

と、束が豪語した。

 

「ネェル・・・アーガマ?」

 

「それに、バインドの対抗する力って・・・」

 

「それが・・・戦艦?」

 

「・・・・」

 

(やっぱり・・・あの船か。ってか、何であの戦艦を・・・)

 

見覚えのある戦艦の名を束が言った事に驚いていた。

 

(何気にUC版か。ってか、よくこれを作ったな)

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、よくもまぁこんなものを作ったものだな」

 

「いやぁそれほどでも♪」

 

「褒めてない」

 

そうして海面に着水したネェルアーガマの甲板上に全員上がって束より話を聞く。

 

「空を飛ぶ戦艦を作るって、お前一人でも戦争が起こせるレベルだな」

 

(そりゃ言えてる・・・)

 

輝春の言い分に隼人も内心で賛同する。

 

 

「まぁでも、バインドが大群で現れるのは何年か前に予想していた事だから、それに備えて力を蓄えていたって訳」

 

「・・・・」

 

「知っていたのか?」

 

「アーロンと密かに調べてたからね。今日までずっとね」

 

「・・・・」

 

「それに、アーロンが長い間頑張ってくれて、はっくんのアイディアがあったお陰でこれが完成させたんだよ」

 

「・・・・」

 

 

 

「でも、今はそれよりも・・・」

 

「・・・・」

 

束は箒の前に来ると、優しき抱き締めた。

 

「ね、姉さん・・・」

 

箒は少し戸惑った。

 

「・・・今は箒ちゃんが無事で帰って来たことが・・・嬉しいよ」

 

「・・・・」

 

いつもの調子からは想像できない、優しい笑顔が束にあった。

 

「・・・心配を掛けて・・・・・・ごめんなさい」

 

「いいんだよ。私は箒ちゃんが無事であればそれでいい」

 

「・・・・」

 

 

 

 

 

 

「いつもの調子じゃ見れない稀な笑顔だな」

 

「そうだな」

 

と、千冬と輝春はその様子を見ていた。

 

 

 

 

「で、説明をしてもらいたいな。色々とな」

 

「うん。じゃぁ、ゆっくりと、説明してあげるよ。付いて来て」

 

そうして束の後にみんな付いていく。

 

 

 

 

中央甲板奥のハッチを開けて中に入ると、そこで全員驚く物を見る。

 

「こいつは・・・」

 

「し、信じられませんわ」

 

「・・・・」

 

「姉さん・・・」

 

「すげぇな、こりゃ」

 

格納庫内には自動整備を受けている機体が並べられていた。

 

「これ全部・・・IS学園にあった・・・無人機・・・だよな?」

 

「それも・・・俺が考えたリゼルディフェンサーの『aタイプ』と『bタイプ』を全てか」

 

格納庫内には少なくとも十機ぐらいはあるリゼルディフェンサーの両タイプが並べられていた。

 

「そういや詳細を聞いてなかったわね。IS学園にもあったこれってなんなの?」

 

鈴が隼人に聞いてきた。

 

「俺が考案した機体を束さんがISの技術を応用して作り出した無人機・・・リゼルだ」

 

「リゼル・・・」

 

「それに増加ユニットとして『ディフェンサー』を装備した物だ」

 

「だが、さっきaタイプやbタイプとか言っていたが・・・それはどういう意味なのだ?」

 

今度は箒が聞いてきた。

 

「aタイプはロングライフルを二基搭載したもので、bタイプはミサイルコンテナを装備した物だ」

 

「なるほど。異なる装備でどんな状況にも対応できる、と言うことか?」

 

「そういうことだ」

 

 

「これ全てお前が?」

 

「うん。私の秘密ラボで作って居たんだよ。IS学園で作ったのは試作品で、向こうで量産していたんだよ」

 

「すげぇ・・・これだけの数を短時間で・・・」

 

「・・・相変わらずお前と言うやつは・・・あまりにもやり過ぎだ」

 

「このくらいしないとあいつらに対抗できないからね。後、両サイドの下部格納庫にも十体以上のリゼルディフェンサーを搭載しているよ」

 

「ここにあるのは一部なのか?」

 

「そういう事。その上部格納庫は戦闘員のIS調整や整備の為の格納庫になっているんだよ」

 

「・・・・」

 

「今居る中央格納庫はそのどっちでもある複合格納庫」

 

「・・・・」

 

「リゼルディフェンサーの他にガンキャノン・ディテクターも艦の防衛の為に搭載しているよ」

 

「・・・・」

 

千冬はあまりもの凄さ、と言うよりここまで来ると呆れるレベルになり、それで頭に手を置く。

 

 

 

 

 

「本当に凄い、束さんは」

 

隼人も少し苦い顔をしていた。

 

「ふふふ。さすがのはっくんも驚き物でしょ?」

 

「えぇ。さすがの俺でも降参です」

 

隼人は呆れ半分で言う。

 

「しかし、あのデータでこんな物を作り出すなんて。正直凄いとしか言いようが無い」

 

「あのデータ?」

 

箒は怪訝そうに隼人に聞く。

 

「あの時・・・お前が紅椿を受け取った時に、取引で交換条件として俺が束さんに渡したデータさ。その中に外見データが混じっていたのかもな」

 

「・・・・」

 

 

 

「さすがに一部は再現できなかったけど、ほとんどは再現できているよ」

 

(ハイパーメガ粒子砲の事か。確かにあれは再現出来そうにないな)

 

 

 

 

「それにしても、この船の制御って・・・」

 

「全部コンピュータだよ」

 

「艦の操舵でもですか?」

 

「うん。あらゆる物全てが超高性能コンピュータ制御何だよ」

 

束はドヤッ!顔を決めた。

 

「は、ははは・・・はぁ・・・ここまで来ると凄すぎて呆れるレベルだ」

 

「同感だな」

 

 

 

 

 

「俺もそう思うな」

 

と、格納庫の奥の扉が開いてアーロンが入ってきた。

 

「どうだった、アーロン?」

 

「問題無い。ちゃんと調整はしておいた」

 

「さっすが♪」

 

 

 

「束の傍に居たお前でも驚くか」

 

「まぁな。しかしこれほどの戦艦を一人で作り上げるのだからな。天才科学者と言ってもレベルと言うのがな」

 

「そりゃ言えてる」

 

 

 

 

 

 

「で、お前が言う準備と言うのは・・・誰を連れて行くか、そんな所か」

 

「それもあるね。後は長旅に備えての準備とか。

 

「・・・・」

 

「準備を終え次第すぐにドイツに向かうよ」

 

「ドイツ・・・」

 

「バインドに占領されている場所じゃねぇか」

 

「このネェル・アーガマはやつらと戦う為に作られている」

 

「ドイツを奪還するため、か」

 

束とアーロンはうなずいた。

 

「やつらがドイツを占領した理由は分かってないが、奪い返せば何か分かるかもしれんからな」

 

「なるほど」

 

 

「つまり、ここからは死と隣り合わせの戦いになるか」

 

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

 

「本当の戦い、か」

 

「編成はちーちゃんに任せるよ。決まったら言ってね」

 

「・・・あぁ」

 

 

 

 

 

 

「と、言う事だ」

 

千冬は専用機持ちを集めて話し合った。

 

「ここからは死と隣り合わせの戦いになる。本当であれば生徒をそんな所に連れて行くわけにはいかんのだが、そうは言ってられない状況だ」

 

「・・・・」

 

「だが、無理をしてまでくる必要は無い。抜ける者が居れば、抜けても構わん」

 

「・・・・」

 

隼人は呆れたようにため息を吐く。

 

「野暮な質問ですよ、千冬さん」

 

「・・・・」

 

「決まっているじゃないですか。付いて行くのは」

 

「神風・・・」

 

「そうだろ、みんな?」

 

と、隼人は後ろを向いて言う。

 

「あぁ。もちろんさ」

 

と、一夏が言う。

 

「ここまで来て逃げては末代までの恥じだ」

 

と、箒が言う。

 

「代表候補生として、最後まで戦いますわ」

 

と、セシリアが言う。

 

「まぁね。候補生として逃げるわけに行かないわね」

 

と、鈴が言う。

 

 

 

 

「そういう事です。他のメンバーに聞いても同じ答えですね」

 

「お前達・・・」

 

千冬は申し訳ないような表情を浮かべるが、すぐに気持ちを整える。

 

「すまないな」

 

「礼はいいですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしてこのような編成になった。

 

 

 

 

 

攻略部隊に隼人、一夏、箒、セシリア、鈴の他、颯、シノン、マドカ、ユニコーン、バンシィ、リインフォース、ツヴァイに千冬、輝春、クラリッサの構成となる。

 

シャーリーと山田先生率いる教員部隊はIS学園の防衛の為に残る事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、本当に凄いな」

 

「あぁ」

 

隼人と一夏、箒はネェル・アーガマのブリッジに居た。

 

他のメンバーは別室にて待機している。

 

「火器管制に航路管制、その他の管制全てがコンピュータ制御って言うのがまた・・・」

 

「本当に姉さんは・・・凄い人だ」

 

箒はブリッジを見回す。

 

二人の他に千冬、輝春、艦長席と思われる席にアーロンが座り、その近くに束が立っており、フェイとフィアがそれぞれレーダや機器を見ていた。

 

くーことA、S10は機関室で動力炉の整備をしている。

 

 

 

「これより我が艦はバインドに占領されたドイツ奪還の為に旅立つ。これからの戦いは今までのやつらとの戦いでも厳しいものになるだろう」

 

アーロンはイスに備え付けられている受話器で艦内放送をする。

 

「無事に帰る為に、各員の健闘を祈る」

 

そうして受話器をイスに戻す。

 

「中々シンプルな演説だね~」

 

「その方がいいだろう。緻密に言った所で疲れるだけだ」

 

「かもね」

 

 

「針路をドイツに向け、発進する」

 

アーロンの指示にフェイが航路設定をする。

 

「しかし、他の国の領土を横断して良いのか?」

 

「大丈夫だよ、ちーちゃん」

 

と、束が説明に入る。

 

「基本強力なステルスと光学迷彩で外からは見えない。それに高い高度を飛行するから見つかる心配はほとんど無いよ」

 

(オリジナルには無い機能か。凄いと言うか、何と言うか・・・)

 

それを聞いて隼人は内心で唸る。

 

「準備が良いと言うか、何と言うか・・・」

 

千冬はため息を付く。

 

 

 

「マスター。針路設定完了しました」

 

「こちらも完了しました」

 

と、フェイとフィアがアーロンに伝える。

 

「よし。・・・・・・ネェル・アーガマ・・・発進せよ!」

 

アーロンが指示を出すと、ネェル・アーガマは唸りを上げてブースターが点火し、水飛沫を上げながら大型のPICで宙に浮いてそのまま大空へと飛び立った。

 

それを見送るようにIS学園のグラウンドに山田先生と教員部隊、シャーリーが敬礼をしていた。

 

ネェル・アーガマは光学迷彩を起動させて景色に溶け込むように空に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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