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真・恋姫無双 刀蜀・三国統一伝 第六節:その名は黄忠漢升、城主にして一児の母

syukaさん

何でもござれの一刀が蜀√から桃香たちと共に大陸の平和に向けて頑張っていく笑いあり涙あり、恋もバトルもあるよSSです。

2013-03-19 04:54:59 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:6728   閲覧ユーザー数:4998

まえがき コメントありがとうございます。第六編開始します!入蜀編ですが、老将たちが出てきますね。紫苑さんは20代なのにおばさん呼ばわりされるのは可哀想ですわ・・・。それなら祭さんとか・・・敢えて何も言わないでおきましょう。それではごゆっくりしていってください。

 

 

長坂を渡りきり益州へと入った私たちは諷陵へと入城した。朱里ちゃんたちが風評を広めていてくれたのですんなり事が運んだ。朱里ちゃんたち様々だよ~。長老さんたちが私たちを認めてくれていたのも大きいけど、逆を言えば劉璋さんの政治に参ってるってことなんだよね・・・。私たちが謁見の間でご主人様たちの帰りを待っていると一人の兵士さんが謁見の間に入ってきた。

 

「報告です!」

「なんだ!」

「北方より砂塵を確認しました!こちらにゆっくりと進んできています!」

「ほ、北方? ご主人様たちがいた長坂橋は・・・。」

「東方じゃな。」

「では、どこかの軍が進軍しているのでしょうか?」

「こーんな時に面倒なことが起こりそうねん。」

「では私が行こう。雛里、流琉、ついて来てくれるか?」

「分かりました。」

「了解です。」

「愛紗ちゃん、気をつけてね。」

「はい。」

 

愛紗ちゃんは雛里ちゃんと流琉ちゃんと一緒に謁見の間を出て行った。

 

「愛紗ちゃん・・・ご主人様・・・どうか、無事でいて。」

「桃香様、大丈夫ですよ。」

「月ちゃん・・・そうだよね。」

「桃香は心配しすぎなのよ。というか、愛紗たちや鈴々たちが怪我をしてくるなんてそうそうないんだから。」

「愛紗はともかく一刀はまず心配しなくていい。あれは今の状態ならまず死なん。」

「うん、皆ありがとうね。」

「我々は主たちが無事に戻ってくるのを待ちましょう。」

 

・・・

 

「雛里、私たちの部隊の展開はどうなっている?」

「万全です。しかし、どこの部隊なのでしょうか?」

「分からん。私たち以外にまだ軍が残っているとすれば孫呉に曹魏、あとは益州の劉璋に涼州の馬騰くらいか。」

「報告です!」

「なんだ!」

「あちらの軍隊に動きが見えました!」

「全軍警戒態勢!相手の動きに注意しろ!」

「待ってください!どなたかこちらに近づいてきます。」

「どういうことだ?」

 

話し合いでも持ち込みに来たとでも言うのか?ということなら軍使の線が濃厚だな。

 

「私が話してこよう。もしものことがあれば雛里、隊の指揮を頼む。」

「分かりました。愛紗さん、お気を付けて。」

「ああ。」

 

私はあちらの隊とこちらの隊の境界線まで進み出た。

 

「あなたが部隊の代表者か?」

「ああ。私は馬超孟起。西涼太守馬騰の娘。」

「馬超・・・あの錦馬超か!」

「どの馬超かは分からねえが多分合ってると思う。」

「噂は予々耳にしている。見目麗しく、義に篤い西涼の姫。その槍捌きは白銀の流星と謳われ、一騎当千の強さを誇るとな。」

「うう、なんだか背中がむず痒くなるな。それで、あんたは?」

「私は関雲長。劉備が一の家臣にして彭城の青龍刀。」

「関羽!?あの美髪公の関羽か!?」

「またその名か・・・。その二つ名は認めたくないがその関羽だ。」

 

この名は勝手に一人歩きしているのか・・・。ハタ迷惑なものだ。

 

 

「艶やかな黒髪をなびかせ、悪を討つ正義の武将。その刃は悪を討ち、その槍は槍を切り裂く。・・・って。」

「はぁ・・・。」

「有名人にはよくあることさ。それにしても、なんで関羽は益州にいるんだ?劉備は徐州に拠点を置いてるって聞いていたんだが?」

「色々とあってな・・・。そういう馬超殿は?西涼にいなくて良いのか?」

「こっちにも色々あったんでな・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

 

お互いに黙り込み静寂が流れる。

 

「・・・腹の探り合いは止めようぜ。」

「そうだな。私もこのような交渉の場は好きではない。」

「私から言うぜ。曹操に西涼を攻められてな。私たちは逃げ延びてきたんだ。」

「馬騰殿は!?」

「母様は生きているよ。まだ朝廷の方から戻ってきてないんだ。」

「不幸中の幸いか。」

「そうだな。そういやそっちにうちの兄様がいたな。これも兄様に伝えないと・・・。で、そっちはどうなんだ?」

「私たちも曹操に攻められてな、徐州を抜け出さざるえなくなったんだ。それで劉璋が悪政を敷いていると情報を掴んだから乗っ取ろうということにな。」

「・・・そうか。なぁ、頼む!兵糧を都合してくれないか?明らかに兵糧が足りないんだ。」

「すまないがうちも他に賄える分はないんだ。いつ落ち着けるかも分からないからな。」

「そうか・・・そうだよな。」

「これからどうするんだ?」

「行く宛てはないからな。益州を放浪しながら野垂れ死ぬかも。」

「・・・それなら私たちの盟主劉備の下で共に働かないか?」

「兵糧で私たちを売るつもりはないぜ。」

「そのつもりはないさ。というか、私たちも馬超殿のような有能な将をほっておくわけにはいかないし、蒼もいるから。これで見放したら後が怖いからな。」

「兄様がいるからといって家臣になれっていうのもな・・・。」

「ふふっ、私たちは家臣というより仲間意識の方が強いからな。」

「どういうことだ?」

 

馬超殿が納得のいかない顔をしている。

 

「こればっかりは口で説明するより実際に会ってもらうほうが早いな。」

「そうだな。私たちもこのまま話すだけじゃ埒が明かないし、同行させてもらうよ。」

 

・・・

 

やっとお城に着いた・・・。彭城に入城した俺たちはひとまず謁見の間に向かった。

 

「ただいま。」

「ご主人様~!!」

「おわっ!」

 

桃香がいきなり抱きついてきたのでおもわず後退してしまった。

 

「ご主人様・・・ご主人様!」

「うん、待たせてごめんね。」

「ううん!ご主人様・・・無事で良かった。鈴々ちゃんも、恋ちゃんに霞ちゃんも。」

「余裕だったのだ!」

「(こくっ)」

「思わぬ伏兵がおったのが想定外やったね。」

 

俺は桃香の頭を撫でながら月を見やる。

 

「月、曹魏将の中に華雄がいたよ。」

「華雄さん!?」

「あいつ、生きていたのね。」

「月様に私が生きているとだけ伝えてくれって言われたからね。」

「そうですか・・・ご無事で何よりです。」

 

月は華雄が生きていることにほっとしたようだ。やっと憑きものが落ちたみたいだな。

 

「・・・あれ?そういえば愛紗たちの姿が見えないんだけど・・・警邏に出てるの?」

「愛紗さんは北方で砂塵を確認したので様子を見に行ってもらっています。」

「ただいま戻りました!」

 

 

お、噂をすれば影だな。

 

「愛紗、お疲れ。」

「ご主人様!・・・よくご無事で。良かった。」

「う~、ご主人様~!」

「兄様~~~!!!」

「ごふっ・・・。」

 

愛紗を片手で頭を撫で労わっていたとこに、雛里と流琉のタックルにより脇腹が抉られた錯覚を覚えた。どちらの威力が大きかったのかは語らずとも良いだろう。

 

「さ、三人とも、お疲れ。それと心配をかけたね。」

「いえ・・・。」

「ご主人様、あまり心配かけないでくださいね。」

「今日はお料理大盤振る舞いしますね!」

 

三者三様の返事をもらったとこで、愛紗が姿勢を正し砂塵が発見された現場での報告をもらうことになった。

 

「西涼の馬超殿たちの軍隊だった。」

「翠が!?西涼はどうした!?」

 

蒼が身を乗り出してきた。

 

「曹操に攻められて敗走してきたんだ。」

「馬超殿!?そこで待っていてくれと言ったはずだぞ。」

「じっとしとくのも性分じゃないんだ。兄貴、久しぶりだな。」

「ああ。だが、お袋はどうした?」

「母様は朝廷から戻ってきてないんだ。」

「朝廷か・・・。」

 

朝廷と聞くと薔薇のことが思い浮かぶな。元気にしているだろうか・・・。女の子が男のふりをするのって気苦労が多そうだから自由に出来ればいいんだけど、皇帝だからそういうわけにもいかないからなぁ。

 

「それで、西涼にも戻れなくなった馬超殿たちに桃香様の下で共に仲間として働かないかと提案したんだ。それなら兵糧も工面できるからな。」

「え?私?ご主人様じゃないの?」

「俺もそうだけど桃香もだよ。」

「そっか~。」

 

なんか空気がのほほんとしてきたぞ・・・。桃香の独特な空気っていうのかな?

 

「と、とりあえず、一つ聞かせてくれ。あんたたちが目指しているものってなんだ?兄貴がここにいるのと私たちが仲間になるのは別問題だからな。」

「みんな仲良く、平和な世の中を作ること!それとね、みんなの笑顔!それだけあれば私は満足だよ。」

「そうですね、みなが満足に食事を取り共に笑い、安心して就寝することが出来る。それが理想ですね。」

「今の世の中はどこかおかしいのだ。力があれば何でもまかり通るのだ。それじゃあ力を持たない人たちの立場がないのだ。鈴々たちは弱い人たちを守るために戦っているのだ。」

「馬超ちゃん、そんなに難しく考えることないのよん♪」

「おわ!?」

 

どこからか出てきた貂蝉に馬超さんが仰け反った。そりゃあの顔がドアップで映ったらこうなるわ。俺なら回れ右して逃げるレベル。

 

「化物!?」

「それは言い過ぎねん。けど、私と馬超ちゃんの仲だから許してア・ゲ・ル♪」

「うっ!?」

「月は見ちゃダメ。目に毒だから。」

「は、はい?」

 

俺は月の目を片手で隠した。あの貂蝉のウインクは目に毒だ・・・。あわよくば俺も見たくなかった。

 

「お姉様~、もう仲間に入れてもらおうよ~。」

「蒲公英!勝手に入ってくるなって言ったろ!」

「だって~、お話が長すぎて蒲公英お腹空いた~。」

「そんなもの、気合でどうにかしろ!」

「そんな熱血体育会系なこと言われたくないよ~。」

「軟弱だから腹が減るんだ!私なんてちっとも『ぐぅ・・・』」

 

 

なんか可愛らしい音が謁見の間に響く。馬超さんの顔がみるみるうちに真っ赤になっていく。

 

「お姉様、私なんてちっとも・・・なんだって?」

「う、五月蝿い!//」

「あはは♪馬超さんも無理しなくて良いのに~。」

「うっ!」

 

桃香の何気ない一言に馬超さんの生真面目な雰囲気が霧散していった。桃香って何気ない一言が追い討ちになることが多いからなぁ。

 

「飯は置いておくとして、この乱世にそんな夢物語みたいなことを信じてるやつらがいるなんてなぁ。」

「乱世だからこそだよ。夢物語でも人々の平穏を忘れちゃいけない。それまで忘れたらただの狂人になってしまうからね。」

「そっか・・・。分かった。私はあんたたちの家臣になるよ。」

「蒲公英もなる~♪」

「う~ん、家臣っていうより仲間だよ!みんな仲間!」

「いや、だからそれは分かってるよ。けど私たちは劉備様の家臣だろ?」

「その前に仲間なの!」

「いやだから・・・。」

「馬超殿よ、我が二人の主に関しては深く考えない方が良い。変わったお二方だからな。」

「別に変わってないよ~。普通だもん。ね、ご主人様。」

「うん、特に変なとこはないと思うよ。」

 

変なとこはない・・・よな?

 

「楽天的なだけなのだ。」

「鈴々ちゃんひど~い!」

「ぷっ、あはは!まぁ、分かった。私は変でもなんでもそういうのは好きだからな。あんたたちの仲間になるよ。」

「本当!?」

「ああ。私は馬超孟起。真名は翠だ。よろしくな。」

「じゃあ私も~。蒲公英はね、馬岱!真名は蒲公英。よろしく~♪」

「私は劉備玄徳。真名は桃香、よろしくね、翠ちゃん、蒲公英ちゃん。」

「俺は北郷一刀。字と真名は持ち合わせてない。ついでに、天の御使いなんて呼ばれている。よろしくな、翠、蒲公英。」

「よろしく、桃香様。あと、その・・・。」

「よろしくお願いします。桃香様、ご主人様♪」

「ごしゅ・・・蒲公英!何言ってるんだ!?//」

「だって~、皆そう呼んでるから蒲公英もご主人様でいいかな~って。」

「うっ・・・。」

 

翠の顔がまた真っ赤になっていく。確かにご主人様なんて普段呼ぶような言葉じゃないしな。俺も最初はこの呼ばれ方に戸惑ってたし。なんか懐かしいな。

 

「呼び方は何でもいいんだよ。あ、御使い様だけは勘弁してくれ。あれだけは呼ばれると背中がむず痒くなるんだ。」

「ご、ご主人様・・・。よろしく・・・。」

「ああ、よろしくな。」

 

・・・

 

翠と蒲公英の加入を祝ってささやかな宴が開かれることとなった。今日は俺と流琉、清羅で料理を作ることにした。月と詠には部屋割りを翠と蒲公英に教えてもらっている。蒼もそっちに行ってるみたい。

 

「厨房も徐州に比べて少しだけ広くなったので使いやすいですね。」

「そうですね。料理をする私たちにとっては嬉しい限りです!」

「よ~し、ちゃっちゃと作っちゃおう。」

「はーい。」

「分かりました。」

 

何を作ろうかなぁ。霞と星がいるからお酒の肴と大食らいが約二名いるから結構な量もいるし・・・作り甲斐があるな!

 

 

「私の分も所望する。」

「ん?・・・おわ!鈴か・・・。ビックリした~。」

 

 

俺が何か作ろうか考えていたので鈴が背後からにょきっと顔を出したことに少し焦ってしまった。

 

「鈴さんこんにちはです。」

「先日ぶりですね。」

「そうだな、先日ぶり。あの時はすまなかった。私の気は無差別に影響を与えてしまうものでな、少々恐怖を与えてしまったと反省している。」

 

あれは少々じゃなかったけどな・・・口に出したら拗ねられそうだから言わない。

 

「いえいえ!頭を上げてください。」

 

流琉が手を交互に振りながらしながら慌てている。まさか鈴が頭を下げるなんて予想だにしなかったんだろう。

 

「私、あれで鈴さんが凄い人なんだって分かったんです!怖いとかは全然思いませんでしたから。」

「流琉ちゃんたちほどの武官ではない私にはきついものがありましたけど、私も流琉ちゃん同様恐怖は感じませんでしたから。お気になさらず。」

「そうか、そう言ってもらえると助かる。それと、私は人でなくて竜だからな。」

「そうでした!すみません。なんだか格好良いお姉さんみたいだなぁって思ったので。」

「ふふっ、流琉は面白いやつだ。」

 

流琉は卑弥呼たちが来たときもそうだったけど、異質な人たちでも戸惑いなく仲良くなるよな。俺も鈴とは仲良くなれた?けど、あの漢女たちはなぁ・・・。頼りがいのある仲間だってことは否定しないけどさ。おっと、話が逸れたな。

 

「それで鈴、今日はどうしたのさ?いきなりご飯食べたいなんて初めてじゃない?」

「竜だって腹ぐらい減る。生物だからな。それともなんだ?一刀は私が光合成でもしていると思っていたのか?」

「いや、そこまでは思ってないけどさ。それでも今までこうやってお腹減ったって言って出てくることはなかったから。」

「この姿は燃費が悪くてな、お前たちと同じように食事を摂らねば私も調子が出らんのだ。ついでに暇だしな。」

「・・・後者の発言は深く考えないとして、何か食べたいのとかある?」

「そうだな・・・五目炒飯がいいな。」

「了解。」

 

また珍しいものをチョイスしたな。五目かぁ、あれは色々と食材を使えるから料理してて楽しくなる。彩りもいいし。

 

「じゃあ鈴は愛紗たちが謁見の間で配膳してるからそっちの手伝いをしてきて。」

「何を言っているんだ?私は一刀の料理姿を見守っていると決めたのだ。」

「・・・何故に?」

「夫を支えるのは嫁の仕事だと星がな。」

「ぶっ!・・・いや、俺と鈴がいつ夫婦になったのさ?」

「人間たちは互いに好いている男女は夫婦になるのではないのか?」

「うん、それは間違ってないね。」

「では問題ない。私は一刀を好いているし、一刀も私を好いている。というか、劉備軍は皆一刀の嫁だと思っていたのだが・・・。」

「確かに仲間だけど・・・まだ嫁ってわけでは。・・・?」

 

両隣で顔を真っ赤にしているお二方。この短時間で一体何が起きた?

 

「私が兄様のお嫁さん・・・//いいなぁ。」

「私がご主人様のお嫁さん・・・否!ご主人様が私の嫁!」

「いや!違うからね!清羅の脳内回路でどこをどう変換したら俺が嫁になるのさ!?」

「さあご主人様!私の胸にどーんと飛び込んできて!」

「だから人の話を・・・。」

「じゃあ私が抱きしめてあげる~~~♪」

「話を聞けーーーーー!!」

 

大暴走した清羅に捕まり抱きしめられた俺。ここまでは良かった・・・良くないか。それから顔が清羅の豊満な胸の谷間に埋もれる形となり危うく天のお花畑に旅たつとこだった・・・。三分ほど経過してようやく解放してもらい、少し頭がふらふらするが料理を再開する事が出来た。なんで料理中に疲れなきゃならんのだ・・・。

 

・・・

 

 

宴が始まり、翠と蒲公英はそれぞれ分かれて話している中俺は蒼と鈴とのんびり酒を呑んでいた。

 

「兄貴、改めてうちの妹たちを陣営に引き込んでくれたことに礼を言う。ありがとうな。」

「いやいや、別に知らなかったわけじゃないし俺としても仲間が増えるのは嬉しいからね。それに、蒼もそのまま放浪されるよりはこっちの方が安心するでしょ?」

「そうだな。しかし、あいつらは一癖あるから苦労すると思うぜ。」

「う~ん、むしろ俺たちの中で一癖ない子はいないと思うけどなぁ・・・。」

「・・・確かに。」

「ふむ、人間というのはそんなに変な奴ばかりなのか。」

「鈴・・・それはちょっと酷いぞ。というか、鈴もそれを言うなら結構変な部類だからね?」

「どこがだ?」

「可愛いけどどこか抜けてるとことか竜なのに人間の俺に加担しているとことか。」

「ふむ、私は可愛いか。うむ、もっと褒めるが良い。」

「いや、そっちじゃなくてね・・・。」

「さっきのは兄貴の発言が悪い。誰にでも可愛いだの綺麗だの言うから女の子がどんどん寄ってくるだぞ?」

「思ったこと口に出すようにしてるからなぁ。というか癖?」

「兄貴みたいに天然でそういうのが一番質悪いぜ・・・。」

「?」

「一刀、なぜ首を傾げているのだ?」

「何でも口にするのっていけないことなのかなぁって。」

「私は一刀のそういうところは好きだぞ。」

「/// そういう事をさらっと言うのはずるい。」

「兄貴、全く説得力ないからな。」

「そんな素直なところに惹かれたところも大きいからな。一刀は見ていて飽きない。」

「蒼・・・なんか恥ずかしいな、これ。」

「何を今更・・・。」

 

何というか・・・自分で言って相手を恥ずかしがらせるのに相手に言われると照れるんだよなぁ。あれだ、最強天然人畜無害男だ。これで頼り甲斐があるってのが不思議だぜ。鈴に頭を撫でられている兄貴を傍から眺めながら俺は酒を仰いだ。

 

・・・

 

それから翌日、俺たちは朝から他の城を攻めるため彭城から軍を率いて移動を始めた。

 

「ご主人様、これから戦と考えるとちょっと不安です・・・。」

「胡花は初めてだもんな。落ち着くまで手でも繋ぐ?」

「は、はい♪」

「胡花ちゃん、いいなぁ・・・。」

「桃香様、私たちはこれから戦に行くのですよ。」

「と言いながらも主と胡花の仲睦まじい光景から視線を外せない愛紗であった。」

「せ、星!あまり茶かすな!///」

「愛紗、顔がゆで蛸みたいなのだ!」

「う、五月蝿い!///」

 

それを背後から眺めていた兵士たちはそれぞれ感想を述べていた。

 

「将軍たち、なんか楽しそうだよな。」

「普段の会話と変わらないっすね。」

「それにしても北郷様の周り、馬鉄様以外は女の子しかいないんだな。」

「昨日の宴で隊長、金髪の美人に頭撫でられてたぞ。」

「くそ~、俺もそんな美人に頭撫でられたいぜ~!」

「お前のとこの隊長の関羽様も美人じゃねえか。」

「・・・関羽様が撫でてくれるなんて思うか?」

「思わねえ。だが、張遼様よりマシだと思うぜ?」

「一番訓練がきつくない隊長って誰だろうな?」

「韓飛様。」

「典韋様。」

「公孫賛様。」

「いや、北郷様だと思うぞ。俺の主観からだけど、張遼様や関羽様に比べれば甘い方だと思う。だよな?」

「ん?私?」

「うん。」

「そうだね。きつくないとは言わないけど、訓練の後にお疲れって笑顔で言ってもらえるのが良いよね。」

「分かる分かる!それと、隊長の思案顔ってなんか可愛いのが良い!」

 

 

北郷隊の女子面々が隊長の話で盛り上がっていく。

 

「はぁ・・・毎度思うけど、北郷隊長絶対なんか持ってるよな。」

「同じ男として自信なくすわ・・・。」

 

いつもどおり男兵と女兵のテンションが反比例していく兵士たちであった。

 

「ところで明里、今向かっているお城の城主って誰か分かる?」

「今回向かう先の城主は黄忠さんという方です。仁徳があり弓術の達人であり治世がある良将との噂を聞きますね。」

 

黄忠さんか。五虎将軍の一人にして弓術の達人。史実では老将として有名だからお婆ちゃんなのかな?・・・とはいっても他の子たちを見てるからどんな姿をしててもあんまり驚かない気がする。

 

「けどさ、結構なとこまで来たけど全然兵の姿が見えねえな。私たちのこと気付いてないのか?」

「翠姉様は相変わらず頭悪いよね~。」

「蒲公英、本当のことでもあんま言ってやるなよ。」

「蒼も結構酷いこと言うよね。翠だって何か考えがあって言ってるのかもしれないし。」

「何も考えてなくて悪かったな!」

「翠ちゃん、大丈夫だよ。私も難しいこと分かんないもん♪」

「桃香様・・・。」

「お姉ちゃんはいつもお気楽極楽だからこのくらいで丁度いいのだ。お兄ちゃんと一緒なのだ。」

「鈴々、今日の晩御飯抜きな。」

「そ、それはあんまりなのだ~。」

「冗談だよ。」

「ほっ。」

「鈴々ちゃんってどこにご飯が消えていくのか不思議ですよね。」

「いっぱい食べればいつか愛紗みたいにバインバインに・・アイタ!何するのだ!」

「そういう事を言うなといつも言ってるだろ。というか、なんでお前はいつも胸の例えがいつも私なんだ!//」

「愛紗のバインバインは見慣れてるからすぐに頭に出てくるのだ!」

「鈴々ちゃん、桃香様のはどうなのかしら?」

「桃香お姉ちゃんのも大きいけど何でか愛紗の方が脳裏に焼きついているのだ。」

「愛紗ちゃん、良かったね♪」

「全く嬉しくないです・・・。」

 

移動中になんでこんな話に・・・。

 

「蒼、こういう時って男は居場所がないよね。」

「話に参加してくればどうだ?」

「勘弁してくれ・・・。」

 

・・・

 

「黄忠様!劉備軍と思われる砂塵を確認しました!」

「分かったわ。ありがとう。」

「黄忠様、民は劉備軍を歓迎する雰囲気を醸し出しております。劉備に降った方が黄忠様、璃々様のためだと思います。」

「それは劉備達と一戦交え、相手の理想を知ってからです。」

「・・・出過ぎた真似をしました。お許しください。」

「いえ、分かっているのです。私もこのまま劉璋の下で働いていては悪い方向に進んでいくだけであると。あなたは篭城戦に向けて準備をしておいてください。」

「分かりました。失礼します。」

 

さて、どうしようかしら。民のことを考えても璃々のことを考えても劉備の下に降るのが良いでしょう。ですが、私も武人です。戦の前からみすみす城を明け渡すなど出来ません。私がしっかりせねば!

 

「お母さん、どうしたの?」

「璃々・・・大丈夫よ。だから安心してお城の中で待っていて。」

「分かった。けど、無理しないでね。」

「ええ、勿論よ。」

 

そうよ、璃々のためにも・・・私はここで判断を間違えてはいけないわ。

 

 

・・・

 

邑の手前まで来ると兵が弓を用いて攻撃してきた。どうやら篭城戦を決め込んだらしいな。まぁ、ここはうちの軍師たちの入れ知恵によって想定はしていたけどね。

 

「そういえばうちに弓を使う将っていないよな・・・俺が使うわけにもなぁ。」

 

そうぼやきながらも俺は迫り来る豪雨の如き矢を気弾だったり嵐によって弾き返している。う~ん、こうジリ貧なのが続くとうちの兵糧が心配になってくるわけで。

 

「こ~んなの、痛くも痒くもないわよん。」

「後二、三倍くらいあった方がちょうど良いかの。」

 

あんたたち化物基準で考えないでください。兵が死んじゃいますから。ちなみに、月と桃香は中軍で待機してもらってる。指揮は詠に任せて護衛のために恋を配置している。

 

「ご主人様、兵の体力もそろそろ限界が近いようです。」

 

俺と共に行動をしている朱里から兵の近況が聞こえてきた。

 

「ありがとう。うちの隊は一度下がらせて。ここは俺だけでも十分場をしのげるから。」

「分かりました。左翼、一度下がってください!」

 

とりあえず兵を下がらせて俺だけになった。とは言っても貂蝉と卑弥呼が矢をちぎっては投げ、ちぎっては投げてるからそんなにこっちに飛んでこないっていうのが現状。そんなことを考えていたらぴたっと矢の雨が止んだ。おや?

 

「ご主人様、城門が開き誰か出てきます!」

 

先鋒に出ていた愛紗が俺の下に駆け寄ってきた。

 

「白旗を振っていますので交渉したいのでしょうか?」

「おそらくそうだろうね。誰かいる?」

「はっ!」

「桃香たちに城門が開いたことを伝えてきて。誰か出てきたことも一緒にね。その後の判断は桃香と詠に任せるから。」

「御意。」

「じゃあ愛紗、ついて来てくれるかな?出てきた人と話してみるから。」

「分かりました。」

 

俺は愛紗と共に城門にいる白旗を持った人の下まで向かった。

 

「あなたが黄忠さんですか?」

「ええ。あなたが劉備?」

「いえ、俺は劉備軍の武官、北郷一刀です。」

 

黄忠さんはお婆ちゃんじゃなくてお姉ちゃんみたいなお母さんみたいな雰囲気な人だった。

 

「降参してくれるのですか?」

「いえ、あなたたちの話を聞かせていただこうと思いまして。」

「話を聞いて黄忠殿はどうされるおつもりだ?」

「あなたたちが私の納得出来ぬ方々であればこの身朽ちるまで戦い続けるだけです。私も城主として城をやすやすと明け渡す事は出来ませんから。民のためにも、兵のためにも。」

「それで、聞きたい話とは何でしょうか?」

「あなた方は何のために戦っているのですか?」

「それは私が話します。」

「桃香、やっぱり来たんだね。」

「えへへ、やっぱりこういう事は私の口から言わないとね。」

 

桃香の後ろには月と詠、それと恋がいた。結局皆連れてきちゃったんだね。

 

「あなたは?」

「はじめまして。私が劉玄徳です。」

「ではもう一度問います。あなた方は何のために戦っているのですか?」

「私たちはこの大陸の人たちが笑って平和に暮らせるように戦っているんです。益州の劉璋さんは悪政を敷いていると平原にまで噂が届いてきました。そんな人が政治をしていたら民の人達はずっと無理をして生活しないといけないじゃないですか!私はそんな状況を放っておくわけにはいきません!」

「それでは、そのためにたくさんの敵兵を殺していくのですか?」

 

 

「確かにそこは否定しません。ですが、私たちに力があることを証明しなければ人もついてきませんし民も安心して生活できませんから。それに、私たちがどうにかしなきゃもっとたくさんの人たちが苦しい思いをすることになります。」

「俺たちもそれが自己満足なのは分かっています。ですが、それで誰かが幸せになれるなら俺は戦い続けますよ。勿論根っからの悪人と大切な仲間を傷つけるやつには容赦しませんけどね。」

「ご主人様、とっても強いんですよ~♪」

「なんで桃香がそんなに嬉しそうなのさ?」

「だって、ご主人様のことを誰かに自慢できるって私も嬉しいもん♪」

「そっか。」

「ふふっ、あなた方に毒気を抜かれてしまいました。劉備様、あなたの下に降ります。」

「えっと、私もそうなんですけど太守はご主人様と一緒にやっているんです。」

「えーと、北郷一刀様がご主人様ですか。」

「う、うん。黄忠さんは好きに呼んでいいからね。」

「私もご主人様と呼ばせていただきます。それと、私の真名は紫苑、あなた方に預けます。」

「私の真名は桃香です。よろしくね、紫苑さん。」

「俺は字と真名を持ち合わせてないから。よろしくね、紫苑。」

 

紫苑の降参と共に俺たちは入城した。民の人たちも諸手を挙げて歓迎してくれたから良かった。人達の様子から見て紫苑が慕われてることが分かったからね、見た目通り優しいんだろうね。それから今日は兵と将の休息のためにそれぞれ早めの就寝をとることになった。

 

「ご主人様、紫苑です。」

 

俺が割り当てられた部屋で休んでいると紫苑がやって来た。

 

「どうぞ。」

「失礼します。」

「どうしたの?」

「いえ、少し傍に居させて欲しいと思いまして。・・・迷惑ですか?」

「ううん、そんなことないよ。けど、璃々ちゃんはいいの?」

「璃々はもう寝ていますので。ご主人様たちが来たことに安心したのでしょうね。」

「そっか。それは良かった。」

 

紫苑は寝台に座る俺に寄りかかってくる。

 

「私には夫がいたのですが、璃々が生まれてすぐに戦死したので。どこかで寂しかったのかもしれません。」

「そんなことがあったんだ。俺が夫さんの代わりにはなれないけど、紫苑の心の支えになれるように俺も頑張るからさ、寂しくなったらいつでも頼ってきてよ。」

「はい、ありがとうございます。ふふっ、ご主人様は大胆ですね。」

「?」

「まさかご主人様から口説かれるとは思いませんでした。」

「・・・そんな風に聞こえた?」

「そのようにしか聞こえませんでしたよ♪」

「気を付けます。」

「いえいえ、私からすれば嬉しい限りですので。待ちきれない時には私から誘惑しに行くかもしれませんので、その時はよろしくお願いしますね♪」

「・・・あ、あはは。待たせないように善処します。」

「ええ♪それではお休みなさい、ご主人様。」

「お休み、紫苑。」

 

紫苑が部屋を出て行くとなんだか気が抜けた。今までうちにいないタイプだからな、それで緊張してたのかも?

 

「待ちきれないときは誘惑しに来るって言ってたからなぁ・・・気を付けよう。」

 

俺はそんなことを考えながら蓄積した疲労もあって夢の中へと誘われた。

 

『ふふっ、今日も可愛い寝顔だな。』

 

鈴が勾玉から一刀の寝顔を見ていたのは本人は知る由もなかった。

 

 

あとがき 読んでいただきありがとうございます。今回は翠、蒲公英、紫苑と璃々ちゃんが劉蜀入りしました。最年少&最年長が加入しましたね。一刀の貞操が紫苑に朝駆けされないか心配です。・・・羨ましいなんて思ってないですよ?まぁ、それは置いておきましょう。次回は巴郡に攻め入りますよ~。それでは次回 第六節:怒涛の喧嘩武将! でお会いしましょう。次回もお楽しみに!

 


 
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