真・恋姫†無双~赤龍伝~第113話「思春の怪我」
ある日の演習での出来事。
ドサッ
思春「ぐっ!」
思春がバランスを崩して落馬し、地面に右肩を打ちつけた。
思春「くぅ……」
苦痛の顔を浮かべながら、思春は右肩を押さえる。
雪蓮「ちょっと思春、大丈夫?」
思春「はい。これぐらい何ともありません」
額に汗を浮かべながら思春は答えた。
雪蓮「全然大丈夫には見えないわよ。ちょっと衛生兵ー!」
赤斗「どうしたの?」
赤斗が思春たちの所まで駆けつけてきた。
雪蓮「何で赤斗がくるのよ?」
赤斗「忘れたの。今日、僕は衛生兵の手伝いだって事」
雪蓮「そういえば、そうだったわね」
赤斗「まったく。…で、どうしたの?」
雪蓮「思春が落馬して肩を打っちゃったみたいなのよ。診てあげて」
赤斗「わかったよ。ほら思春診せて」
思春「私なら大丈夫だ。かまうな! くっ…」
右肩を抑えながら思春は赤斗の手を払った。
赤斗「大丈夫じゃないだろ。しょうがないな。よっ」
思春「な、何をする!?」
赤斗は思春をお姫様だっこした。
赤斗「本陣まで戻るよ。ここじゃ治療もままならないしね。じゃあ雪蓮も演習がんばってね」
雪蓮「ふふ…。赤斗も思春の事たのんだわよ♪」
赤斗「OK」
思春「ちょっと待て。降ろせ!」
赤斗は思春の抗議を無視して、演習場を駆け抜けていった。
赤斗「これで良し♪」
思春「……」
赤斗「まだ痛む?」
思春「いや」
赤斗「2~3日は右肩は安静にしておくんだよ」
思春「……随分と手際がいいのだな」
治療を終えた右肩を気にしながら思春は赤斗を見る。
赤斗「まあね。先生との修行なんかで、しょっちゅう打ち身とかにはなってたから、これぐらいならお手の物かな」
ちょっと自慢げに赤斗は話していると、蓮華がやってきた。
蓮華「思春! 怪我をしたって聞いたけど大丈夫!?」
赤斗「蓮花」
蓮華「赤斗、思春は大丈夫なの?」
思春「蓮華様。ご心配をお掛けして申し訳ありません。私なら大丈夫ですので」
蓮華「そう。それならよかったわ。今度からは気をつけてね」
思春「はっ!」
赤斗「そうそう思春」
思春「なんだ?」
赤斗「明日も診るから、時間が空いてる時に僕のとこに来てね」
思春「……わかった」
翌日―――。
思春「入るぞ」
赤斗の部屋に思春が尋ねてきた。
赤斗「待ってたよ。さっそく始めようか。そこに座って上着を脱いで」
思春は赤斗に促され、椅子に座り服を脱いだ。
赤斗「それじゃ、右肩を見せて」
棚に置いてあった薬箱を持ってきた赤斗が、思春の横に立つ。
赤斗「痛みはどう?」
思春「動かすと、少し痛む」
赤斗「そうか。じゃあ、この軟膏を塗ろう」
そう言うと赤斗は、薬箱の中から軟膏を取り出すと、自分の手に塗り始めた。
軟膏の臭いが部屋に充満する。
思春「何だそれは?」
赤斗「自家製の軟膏さ。臭いはきついけど、すごく効くから」
思春「自家製だと? まさか、お前が作ったのか?」
赤斗「そうだよ。鍛錬のついでに、山で採ってきた薬草で作ったんだ」
思春「…本当に大丈夫なんだろうな?」
疑いの眼差しで思春は赤斗を見る。
赤斗「先生に教わったものだから大丈夫。それに天の知識を元にして作ったから」
思春「……わかった。早くやれ!」
覚悟を決めたかのように思春は叫んだ。
赤斗「それじゃ行くよ」
軟膏を塗った赤斗の手が、思春の右肩に触れた。
思春「ひゃっ!!」
赤斗「ご、ごめん。冷たかった?」
思春の小さな悲鳴に赤斗は驚き手を離した。
思春「い、いや。何でもない。…ちょっと、驚いただけだ。続けろ」
赤斗「本当に大丈夫?」
思春「いいから続けろ!」
赤斗「はいはい」
再び赤斗は思春の右肩に軟膏を塗り始めた。
思春「ぅぅ…」
思春は軟膏を塗られている間、ずっと声が出ないように必死に我慢をしていた。
赤斗「はい。あとは包帯を巻いてお終い」
思春「ふー」
赤斗に悟られないよう思春は小さく息を吐いた。
火蓮「赤斗いるか? 入るぞ!」
思春「か、火蓮様!?」
赤斗「え、火蓮さん? どうしんたですか?」
いきなり部屋のドアが開き、現れた火蓮に赤斗と思春は驚いた。
火蓮「なぁに、昼飯を誘いにきただけなんだがな。お邪魔だったようだな。何だったら出直して来てもいいぞ♪」
赤斗と上半身がさらしのみの思春を見て、火蓮は二人をからかう。
思春「い、いえ! そのようなことは!」
思春が顔を真っ赤にして否定する。
赤斗「そ、そうです! 包帯を巻けば終わりますから、ちょ、ちょっと待っていて下さい!」
赤斗も半裸の思春と二人きりという状況に気がつき、思春と同じく顔を真っ赤にしていた。
火蓮「あははははっ……」
火蓮は慌てる二人を見て楽しむのであった。
つづく
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主人公も含めてオリジナルキャラクターが多数出てきます。
未熟なため文章や設定などにおかしな部分が多々あるとは思いますが、長い目で見てくださると助かります。