第28魔 想い伝え、決意する
リーファSide
宿屋を出たあたしはルナ君を探そうと思ったけれど、彼が何処に居るのかも分からないのでは意味が無く、
仕方なしにドーム前の階段に来て座っていた。
アスナさんは不安で仕方が無いんだと思う。
大好きな人が囚われて、近くまで辿り着いたもののすぐ側に行けないもどかしさ。
あたしもルナ君と想いが繋がることが出来たらなと思うけど、
今この想いを伝えても、迷惑なんじゃないかと思ってしまう。
その時……、
「お~い! リーファちゃ~ん!」
「え?……レコン!? アンタ、どうしてここに!?」
捕まっていたはずの仲間であるレコンが街の方から走ってきた。
「いや~確かに捕まってたんだけど、サラマンダーの2人がいきなり解放してくれて、
理由聞いてみたら一時的に同盟を組んだっていうもんだから驚いたよ。
で、そのあとはシグルドに毒でも与えてみようかと思ったら居なくなってたし、
折角だからここまで辿り着いたんだ」
しかもトレインという名のMPK(モンスタープレイヤーキル)の手法を使って、
モンスターを他のプレイヤーに擦り付けてきたらしい。
なんということを…(呆れ)。
「あれ? ルナリオ君と他の人達は?」
「ぁ……うん、今は…ちょっとね…」
レコンの問いかけに先程の事を思い出してしまい、暗くなってしまう。
彼も空気を察してくれたのか、聞きの姿勢に入ってくれている。
「みんな…不安、なんだよ…」
「不安?」
小さく呟くあたしの言葉に彼は首を傾げる。
「ルナ君も、アスナさんも、他のみんなも……あともう少しが届かなくて、不安なんだ…」
「……それは、リーファちゃんも?」
「ぇ……うん…」
「そっか…」
あたしが紡ぐ言葉にレコンは真剣に聞いてきた。
すると深呼吸をしてからあたしの正面に立った、なんだろう?
「リーファちゃん……僕は、直葉ちゃんのことが好きだよ…。異性として…」
「なっ/////////!?」
いつもの弱気な
「い、いきなり、なにを「聞いて」ぅ…///」
「僕は、笑ってる直葉ちゃんが好きなんだ…。
初めて話したALOのことを教えてって言われた時は、真面目な表情で話し掛けられたけどね。
でも、ALOで笑顔を見て、リアルでも少しずつ話せるようになって、凄く嬉しかったんだ。
そんな、笑顔を浮かべてるキミが好きだよ」
「ぁ、ぅ…//////」
いつもとは違う彼の態度に驚きと戸惑いがありながらも、
あたしは心の奥にある好きな人への想いが大きく躍動するのが分かった。
だから…、
「……あ、たし…あたしは「言わないで…」ぁ…」
「大丈夫、分かってるから…。ただ、ケジメを付けたかったんだ…」
返事を言おうとするあたしをレコンは優しげな表情で遮った。
彼は一度顔を俯かせると、顔を上げて笑ってから言った。
「行って、彼のところに……それで、伝えて…直葉ちゃんの想いを…」
「あ…で、でも、何処に居るのか…」
「北側のテラスに居るよ。さっき見かけたからね…」
ニカッと笑いながらそう言った。レコンは強いなぁ…あたしよりも、全然。
「不安なんか、吹っ飛ばしちゃえばいいんだよ! だから……頑張って!」
「……うん、ありがとう!」
彼の後押しを受けて、あたしは心に決めた。翅を展開して少し飛び立つ。
「レコン、アンタ…良い男だよ!」
そう言ってから北側のテラスに向けて飛翔した。
リーファSide Out
レコンSide
「良い男、か…」
そうは言うものの、振られちゃったんだよね…。
まぁ、彼と彼女が一緒に居て、想い合っていることくらい見てて分かったけど、さすがになぁ…。
だけど、彼女のあんな表情は見ていたくないし、彼女が幸せになれるならそれでいい。
だから、
「あ~~~~~!」
吹っ切る為に大きな声を上げた。
レコンSide Out
ルナリオSide
未熟っすね…。アスナさんのあの様子を見て、自分の不甲斐無さにイライラするっす。
北側のテラスに居るボク、人気も無かったので『ヴェンダイヤ』を取り出し、型に当て嵌めながらハンマーを振るう。
須郷への怒りと自身の不甲斐無さへの苛立ち、唯々武器を振り回し、最後に地面に叩きつける。
衝撃波が生まれて風が巻き起こる……その時、
「ルナ君…」
「リーファ…」
彼女が空中からやってきて、地面に下りるとボクの傍まで歩み寄ってきたっす。
「ルナ君、あたしと……勝負して…」
「な、なにを…っ!?」
驚くボクを無視して彼女は翡翠の長刀『シルフィル』を抜き放ち、そのままボクに向けて突きつける。
その瞳に宿る炎はキリトさんに似た決意の火だったっす。
ボクはそれに体が震える、武者震いだ。相対するリーファは、剣士だ!
「手加減……しないからな?」
「っ……勿論」
ボクのいつもの喋り口調が消えた。あぁ、本気で戦えるのだ、これは嬉しい。
ボクとリーファは空中へと飛び上がった。
一定の距離を取って相対するボク達。
リーファはシルフィルを構えており、その瞳はボクを真っ直ぐに捉えている。
ボクもアイテムストレージを操作して、1本の棒を出現させた。
濃紅で両端に金色の輪がはめられた直棒、長さは2.5mはあるだろう、名を『
「ハンマーじゃ、ないんだね?」
「元々ボクの得物は棒なんだ。ただ、力で押し潰すハンマーが身に合っただけだ」
リーファの問いに答える。互いに構え取り、相対する……そして、
「「っ!」」
同時に前方へと飛び出した。彼女の剣撃を棒で受け止めて、そのまま弾き飛ばし、追撃を加える。
それを一回転して回避し、突っ込みながら剣を振り下ろしてきた。
さらにそれを受け止めてから弾き、お互いに距離を取る。
「「っ!!」」
だがすぐに間合いを詰めて打ち合う。2合、3合、さらに武器をぶつけ合う。
楽しい……好きな人と武器を交えているはずなのに、それが凄く楽しいと思う。
いや、好きな人だからこそなのか? そこでリーファが一気に距離を取ると突撃を仕掛けてきた。
錐揉み回転を加えながら長刀を突きだしてくる。真っ向勝負か、面白い!
「受けて立つ!」
そう叫んでリーファに立ち向かう……その時、
―――刻君……
「っ!?」
彼女の声が、聞こえた気がした…。
―――刻君……あたし…
迫りつつある彼女の瞳を見つめながらこちらも立ち向かう。
―――あたしは…刻君のことが……
これは、一体……そしてリーファは…、
「刻君っ!」
長刀を手放してそのままこちらに向かってきた。
「っ!? 直葉!」
ボクも棒を手放してリーファを抱きとめる。その衝撃に後退するものの、しっかりと彼女を抱き締めた。
「リーファ…?」
「名前で、呼んで…」
「ぁ……スグ…いや、直葉…」
抱きとめたままの彼女の頼みを聞き、彼女の名前を呼んだ。
「刻君……あたしね、刻君のことが…好き…///」
「っ、直葉…」
僅かに涙を溜めながらボクを見つめてそう言ったリーファ。
「ずっと、ずっと、刻君のことが好きで…。だけど、分からないけど…不安になって…」
ボクは、彼女の何を見ていたのだろうか?
自分の目標であるキリトさんの救出に目が眩んでいたんじゃないのか?
それで、彼女のことを見ていた気でいたんじゃないのか…。
「ホント、情けないな…」
「え?」
呟くボクにリーファは首を傾げる。ボクは言葉を続ける。
「ごめん、リーファ…。今すぐには答えは出せない……だけど…」
「………」
「キリトさんを助けたら、必ず返事をするよ…必ず」
「はい…」
ボクの答えにリーファは笑顔を浮かべた。ならせめてと思い、
「いまはこれで我慢してくれ(ちゅっ)」
「あ…//////」
彼女の頬にキスをした、頬を真っ赤に染めるリーファを愛おしく想う。
「行こう、キリトさんを助けに…」
「っ、うん♪」
ボク達は自分達の武器を回収し、ドーム前の扉へと2人で向かった。キリトさんを絶対に助ける。
キリトさんの為にも、アスナさんの為にも、リーファの為にも、みんなの為にも、
そしてなにより……自分自身の為にも!
ボクは改めてそう決意した。
ルナリオSide Out
To be continued……
後書きです。
どうだ! レコンがカッコイイだろ! 漢を見せたんですよ!
そしてリーファの告白に、ルナリオも決意を新たにしました!
さて、次回にて再びグランド・クエストに挑むことになりますが・・・皆さん、準備はよろしいか?
武器は持ちましたか? アイテムは? 魔法詠唱の準備は?
なればよろしい、次回世界樹前にて集合です!
それでは・・・。
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第28魔です。
タイトルが意味するものとは・・・レコンが少々カッコイイです!
では、どうぞ・・・。